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議会広報

ドキュメント内 著者 金井 茂樹 著者別名 KANAI Shigeki (ページ 60-64)

第2章 自治体議会広報広聴の基礎的枠組み

第 4 節 議会広報広聴の基礎的枠組み

4.3 議会広報

議会による広報活動が対象とする情報とその手法・チャネルについて検討を行う。

(1)議会が提供する政策情報

二元代表制の一翼を担う議会も、地域住民に対して十分な情報提供を行う必要がある。

議会は議事機関であることから、議会広報が対象とする主たる情報は政策情報である。議 会は、首長と同様に政策的条例提案が可能であることから、住民に提供する政策情報は、

基本的には行政広報と同様に考えることができる。ただし、議会の審査機関としての役割 と広報との関連について、「地方議会はその大小いずれを問わず、内容のある審議を、わか りやすい言葉で、市民の前に展開することが要請」(中村,1993,p.389)され、その広報は 本来的に、「地方自治体の行政施策にかかわる審議状況や団体の意思決定の過程を住民に周 知することを任務としている」(本田,1995,p.185)ものであり、「議会広報における政治と は、党派的・政略的な内容ではなく、決定をめぐる住民間の利益の調整の過程を意味する。

議会広報は、この調整の過程を主体とした構成とならなければならない」(同,p.201)と指 摘されるように、合議制である議会は、独任制である首長とは異なり、利害調整の過程で ある審議プロセス自体に関わる情報の提供が強く求められる。このようなプロセスに関わ る情報は独任制である首長による行政広報にはない議会広報独自のものである。なお、議 会は執行機関ではないことから、行政広報が対象とする生活情報・文化情報・イベント情 報といった住民への直接的な行政サービスに関わる「公共サービス情報」は議会広報の対 象情報から除外している。

つまり、議会は政策形成過程における、争点情報、基礎情報、専門情報、選択肢情報と ともに具体的な政策提案に対して、どのように利益調整を行い、どのような結論に至った のかという審議プロセス自体に関わる情報を提供していかなければならない。本研究では、

具体的議案の審議プロセスに関わる情報を「審議情報」として定め、議会が提供すべき政 策情報を、①争点情報、②基礎情報、③専門情報、④選択肢情報、⑤審議情報の五つの情 報に区分して考えることとする。なお、上で述べた議会広報広聴の定義のなかの「審議プ ロセスの公開」とは、審議情報を含めた政策情報の公開を意味するものである。

(2)広報手法・チャネル

昨今の自治体議会は、広報手法・チャネルとして本会議・委員会の公開、議会報告会、

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議会広報誌・紙に加えて、ウェブサイトを中心とした動画配信システムや会議録検索シス テム等を活用している。

今後は、審議プロセスを視覚化・透明化していくために、政策情報のなかでもとくに、

議会と首長の“討論の広場”の記録でもある審議情報をいかに住民に公開・提供していく かが重要になっている。審議情報の提供手法として電子媒体と印刷媒体が活用されている。

電子媒体の中心はウェブサイトと連動した動画配信システムと議事録検索システムであり、

印刷媒体の中心は議会広報誌・紙である。動画配信システムは、ウェブサイトと連携して 本会議や委員会のライブ中継や録画中継により議会における審議情報をリアルに住民に提 供することができる。また、会議録検索システムにより、過去の審議プロセスにおける首 長や議員の発言内容をテキスト文書でいつでも確認することが可能である。この二つのシ ステムの長所は未編集かつ詳細の情報を提供する点にあり、利害調整の過程である審議プ ロセスの視覚化・透明化という点において意義がある。しかしながら、住民がこれらのシ ステムを通して審議情報を得るためには、動画であれば再生時間、議事録であればそれを 読む時間の確保が必要になるという短所がある。他方、伝統的な広報手法である議会広報 誌・紙には、紙面の制約や編集に多大なリソースを必要とするという短所もあるが、議会 にかかわる膨大な情報がコンパクトに編集された形で提供されることから、住民は短時間 で審議情報の要点を把握することができるという長所がある。

このように、電子媒体と印刷媒体にはそれぞれ長所と短所があり、膨大かつ詳細な情報 を提供可能な電子媒体のみがあれば十分ということではない。利用者の視点からは、電子 媒体と印刷媒体の相互補完的な提供が必要なのである。インターネットが普及した現在に おいても審議プロセスや審議結果を短時間で得られる議会広報誌・紙といった紙媒体の意 義は失われることはない。議会は、読者が読みやすい議会広報誌・紙とするために継続的 な努力と創意工夫が必要である。

以上の議論を踏まえ、議会広報広聴の基礎的枠組みを整理したものが表 2-1 である。

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表2-1 議会広報広聴の基礎的枠組み

本質・理念 分類 情報 情報の内容 主な手法

(本質)

情報開発 価値創造 による 信頼関係 構築・維持

(理念)

真実性 双方向性

網羅性 並行性

(展開)

戦略的 継続的

受動的 個別的 広聴

市民 の声

個別情報

(個人論的視座) 住民の個別意見・要望・提案など

請願・陳情、公聴会・

参考人・面談、

手紙、 電子 メール、

SNS 能動的

集約的 広聴

民意 構造情報

(全体論的視座) 問題群に対する住民の意見構造や分布

世論調査、モニター 制度、ウェブ調査 住民投票

政策 広報

争点情報 直面する課題・議案の論点・説明 (印刷媒体)

広報誌・紙 報告書 冊子 パンフレット チラシ 新聞・雑誌

(電波媒体)

テレビ ラジオ

(電子媒体)

ウェブサイト 音声配信 動画配信 SNS 基礎情報

政策形成の基礎資料

統計、地図、法務・財務情報など議案の背 景や地域特性を表す情報

専門情報

個別課題解決のための技術情報 地震・津波・土砂災害・インフルエンザなど の危機管理情報

選択肢情報

政策目標設定の争点と選択理由・実施に 伴う予算・人的資源・行為規範のあり様、技 術的可能性など

審議情報 審議プロセスに関する情報、討議資料、議 事録・各議員の表決

(注)筆者作成

第 5 節 おわりに

自治体に広報広聴が導入されて以来、行政は住民との信頼関係の構築をめざし広報広聴 の発展向上のために努力してきた。他方、議会は議員定数や議員報酬に焦点をあてた改革 を行い、住民との信頼関係の構築をめざす広報広聴の改革は重視されてこなかった。また、

議会広報広聴は個別論点としては学術的にもほとんど研究されてこなかった。しかし、議 会基本条例を軸にした自治体議会改革のなかで議会独自による広報広聴が議論され、議会 広報広聴の枠組みの構築が必要になってきた。第 2 章では、これまでの議会と住民との関 係の変遷を踏まえたうえで、行政広報広聴の基礎的枠組みを手がかりとしながら、広報と 広聴がそれぞれ対象とする情報と手法・チャネルについて考察し、議会広報広聴の基礎的 枠組みを提示した。この枠組みは、議会が四つの理念(真実性、双方向性、網羅性、並行 性)に従い、多元的なチャネルを通して、個別情報と構造情報の集約・調整および政策情 報の公開・提供という情報循環を実践することにより価値の創造を実現し、審議プロセス の公開(政策情報の提供)を通して住民との信頼関係を構築・維持するというものである。

最後に、議会広報広聴の課題について述べる。まず、収集した民意(個別情報と構造情

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報)を政策形成に有用な情報としてどのように結晶させるのか、議会の情報分析力や政策 形成能力という議会の質的向上の問題である。次に、議会が質・量ともに十分な政策情報 を公開していくためには、議会に対する資源配分を改めて検討していく必要がある。首長 に比べて有する政策資源が絶対的に少ない状況のなかで、議会改革の本質に関わる議会広 報広聴への資源について再検討するという問題である。最後に、政策形成過程の各フェー ズのなかで議会が具体的にどのような広報広聴活動を行っていくのかを詳細に検討してい くことである。「情報なくして参加なし」、「情報は民主主義の通貨」といわれるように、広 報広聴が活発に行われていない議会は、住民の意見・要望を十分把握できていない状況に あることは明らかである。議会と住民との関係の希薄化を克服し、新たな関係づくりのた めの手段として、あらためて議会広報広聴について議論すべきではないだろうか。

1) 議会基本条例の制定団体は、2014 年 4 月の段階で 571 団体(31.9%)まで増加してきている。

自治体議会改革フォーラムウェブサイト

http://www.gikai-kaikaku.net/gikaikaikaku_kihonjourei.html [2014-9-1 accessed]

2) 総務省は、地域主権戦略会議「地域主権戦略の工程表(案)」(2009)に沿って、2010 年 1 月 から地方行財政検討会議を開催し、地方自治法の抜本的な見直し案の検討を行った。

3) 合併特例法では「議員の職を失うことが合併の障害とならないよう、合併後 1 年間は、合併 前の市町村の議会の議員は全員が合併後の新市町村の議員として存在できる。又は、合併後の 1 任期間は、地方自治法の定める合併後の新市町村の定数の 2 倍の数まで議員数を増員できる」

という議員の在任特例があったことから、短期的には選出基盤の変更が議員と住民との関係に 及ぼす影響はほとんどなかったと考えられる。

4) 革新自治体の行政広報の例として、東京都の「対話集会」(美濃部亮吉)、横浜市の「一万人 市民集会」(飛鳥田一雄)などがある。

5) 昭和の大合併は、1953 年の町村合併促進法及び 1956 年の新市町村建設促進法により、「町村 数を約 3 分の 1 に減少することを目途」とする町村合併促進基本計画(昭 28 年 10 月 30 日 閣 議決定)の達成を図ったものである。合併の結果、1947 年に 10,505 団体あった市町村は 1965 年には 3,257 団体に減少した。詳細は、総務省ウェブサイト「合併デジタルアーカイブ」参照。

http://www.gappei-archive.soumu.go.jp/index.html [2012-9-10 accessed]

6) 1998 年に議会三団体から自主的な改革案が提示されたことも、それまでに議会と市民との関 係の再構築には至っていないことが読みとれる。

7) 公益財団法人東京財団は、68 議会基本条例を調査分析し、実効性ある条例とするための三つ の必須要件(「議会報告会」「請願・陳情者の意見陳述」「議員間の自由討論」)を提示しながら、

地方議会改革のモデルを公表している。

8) 三浦(1986,p.44)は、地方自治体の広報を政治広報と行政広報に分類し、議会広報を政治広 報のひとつとして位置づけている。

ドキュメント内 著者 金井 茂樹 著者別名 KANAI Shigeki (ページ 60-64)