第7章 自治体ウェブサイトにおけるペルソナの作成と活用
第 4 節 定量的調査による課題抽出
4.2 ウェブ調査の分析
この調査の対象者は、無作為抽出や事前登録制ではなく、Aウェブサイトを訪問・閲覧し た任意のユーザ(非確率標本)であり、かつ回答に対する報酬等は設定していない(オー プン型調査)。したがって、回答者はAウェブサイトへの関心が高く、どちらかといえば行 政に対して協力的という傾向があると推測される。この回答の特徴として、性別において は、「女性」が 57%と約 6 割を占め、年代では「30~40 代」が 72.1%と約7割を占めてい る。性・年代別では「女性・30 代」と「女性・40 代」で全体の回答者の 44.3%を占めてい る。また、回答者のインターネット利用年数が 6 年以上の割合は 92.4%であり、全回答者 がほとんど毎日インターネットを使用していることから、回答者はインターネットを利用 した情報検索について一定程度のスキルがあると考えられる。同居人については、「就学前 の子ども」または「小中学生」がいる回答者は 87 人であり、全回答者の 55.1%であった。
以上から、この調査の回答には「行政に協力的」な「就学前の子どもまたは小学生を持 つ 30~40 代の女性」の意見が強く反映されていると考えられる。
(1)記述的分析
この調査における個別評価項目と総合評価項目の結果をまとめたものが図 7-1 である。
ここでは、「満足」と「どちらかといえば満足」をあわせて「満足層」、「どちらかといえば 不満」と「不満」をあわせて「不満層」として整理している。
調査結果をみると、総合評価項目である「満足度」は、満足層(47.7%)と不満層(44.9%)
が同程度の比率であり、Aウェブサイトはユーザにとって必ずしも満足度の高いサイトとは いえない状況にある。個別評価 10 項目のうち、とくに「情報の見つけやすさ」は、不満層
(47.4%)が満足層(33.4%)を大きく上回っていて、解決すべき課題となっている。
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図7-1 満足層・不満層の回答比率
(2)クロス表の分析・対応分析
次に、クロス表の分析および対応分析を行った。個別評価 10 項目と総合評価項目である
「満足度」のクロス表の関連性について“ピアソンのカイ二乗統計量”を算出した。10 項 目すべてについて、カイ二乗統計量の検定結果は有意(P < 0.01)であった(独立モデル を仮定)。とくに、「好感度」(266.3414)、「メニュー構成のわかりやすさ」(213.680)、「情 報の見つけやすさ」(195.580)のカイ二乗統計量は、相対的に大きくなっている。つまり、
調査 10 項目と「満足度」との間には関連性があると推測される。そこで、次にこの 10 項 目と「満足度」について対応分析を行い、それぞれの成分スコアとその相関係数を確認し た。相関係数は、「好感度」(0.89)、「情報の見つけやすさ」(0.86)、「情報量」(0.84)、「メ ニュー構成のわかりやすさ」(0.82)となり、いずれも検定結果は有意(P < 0.01)であっ た。表 7-3 は、相関係数が大きい「好感度」と「満足度」の成分スコアを整理したもので あり、図 7-2 は各選択肢への成分スコアの同時布置図である。この図から 2 つの項目の選 択肢への回答傾向が類似していることが確認できる。
以上の分析から、Aウェブサイトは「情報の見つけやすさ」、「情報量」、「メニュー構成の わかりやすさ」が解決すべき課題になっていると考えられる。
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
画面表示の速さ 文章の読み易さ 画像の見やすさ サイト内の統一感 操作のわかりやすさ 好感度 更新頻度 メニュー構成のわかりやすさ 情報量の多さ 情報の見つけやすさ 満足度
満足層 どちらともいえない 不満層
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表7-3 対応分析で得られた成分スコア
項目
成分 質問選択肢
第 1 成分スコア
(c1)
第 2 成分スコア
(c2)
第 3 成分スコア
(c3)
好感度
01 満足 1.8473 1.3811 0.0163
02 どちらかといえば満足 0.4245 -0.8951 -0.2029 03 どちらともいえない -0.3747 -0.0843 0.7906 04 どちらかといえば不満 -0.9227 0.5092 0.0403
05 不満 -1.0321 0.6663 -0.7965
満足度
01 満足 1.6500 1.0944 0.0075
02 どちらかといえば満足 0.3858 -1.0272 -0.2258 03 どちらともいえない -0.1212 -0.4474 1.0016 04 どちらかといえば不満 -0.7174 0.2673 0.4381
05 不満 -0.9803 0.6025 -0.5949
× 好感度 □ 満足度 図7-2 好感度と満足度の同時布置図
満足 満足
どちらかといえば満足 どちらかといえば満足
どちらともいえない どちらともいえない
どちらかといえば不満 どちらかといえば不満 不満 不満
157 (3)自由記述回答の分析
自由記述回答について、30 代と 40 代の女性ユーザの意見を、「情報の見つけやすさ」、「メ ニュー構成のわかりやすさ」、「情報量の多さ」の観点から整理した。「就学前の子ども」ま たは「小中学生」を持つ女性ユーザ 87 人のうち、自由記述の回答者は不満層 26 名、満足 層 9 名であった(自由記述の回答率は 40.2%)。
この不満層 26 名の意見に対して、一定の意味を有するように定性的コーディングを行い、
元のテキストデータから分析単位である文書セグメントを抽出した10)。そして、その内容の 類似性をもとに 26 名の意見を 38 個に分割し、個別調査項目 10 項目ごとに分類した。その 結果、「情報の見つけやすさ」15 件、「情報量」19 件、「更新頻度」1 件、「操作のわかりや すさ」1 件、「メニューの構成のわかりやすさ」2 件、これ以外の項目はいずれも 0 件であ った。件数が多かった「情報の見つけやすさ」関しては、「欲しい情報に行き着くまでの 操作(クリック)が多い」、「イベント情報がさがしにくい」、「粗大ごみのコンテンツ が探せなかった」という意見がみられた。また、東日本大震災による福島第一原子力発電 所事故後にこの調査を実施したことから、「情報量」についての意見として、「圧倒的に放 射能関連の情報がまだまだ少ないです。もっと具体的に放射線の数値を個別に調べて情報 を提供してほしいです」、「調査した箇所がわからない。写真もしくは地図でどのあたり で調査したのか知りたい」など、その半数以上(10 件)が原発事故によって拡散した放射 線に関する意見であった。さらに、「台風情報などの緊急情報を迅速に掲載してほしい」、「台 風時の学校からの下校に関する情報を掲載してほしい」など Twitter や Facebook などの SNSを活用したリアルタイムの情報掲載を望む意見があった。
以上の三つの分析をまとめたものが表 7-4 である。これらの分析を総合的にみて、このA ウェブサイトの課題として、「いかに情報を見つけやすくするか」および「いかに情報量 を増やしていくか」という二点を指摘することができる。
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表7-4 調査 10 項目と総合満足度との関連性・不満層の意見傾向
調査項目 満足層
割合
不満層 割合
カイ二乗 統計量
成分スコア
相関係数 自由記述 情報の見つけやすさ 33.4 47.4 195.580 0.86 15
情報量の多さ 39.1 38.5 193.515 0.84 19
好感度 48.7 31.6 266.341 0.89 0
更新頻度 36.0 32.8 130645 0.70 1
操作のわかりやすさ 50.5 28.3 164.900 0.76 1 サイト内の統一感 54.9 17.6 111.515 0.68 0 メニュー構成のわかりやすさ 39.8 37.2 213.680 0.82 2
文章の読みやすさ 63.8 13.2 87.228 0.61 0
画像の見やすさ 52.5 15.1 124.947 0.67 0
画面表示の速さ 69.5 9.4 76.999 0.56 0