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自治体世論調査の実施状況と特性

ドキュメント内 著者 金井 茂樹 著者別名 KANAI Shigeki (ページ 96-108)

第4章 自治体世論調査の現状

4.2 自治体世論調査の実施状況と特性

ここでは、この調査結果の分析により自治体世論調査の特性を明らかにする。

(1)実施団体と未実施団体の人口規模

今回の調査では、調査対象の 144 団体のうち 124 団体から回答を得た。回収した 124 団 体のうち、本章が対象とする調査を実施している自治体は 86 団体であった。実施していな い自治体は 38 団体であり、その内訳は東京都下特別区 1 団体、都下の市 2 団体、神奈川県 2 団体、千葉県 17 団体、埼玉県 16 団体である。実施している 86 団体はいずれも調査の概 要、質問項目、クロス集計表、結果を含めて報告書として公開している。

実施 86 団体の人口を 5 万人以下~50 万人以上の 6 階級に分類したものが図 4-7、実施し ていない 38 団体を分類したものが図 4-8 である。そして、人口規模別の実施団体と未実施 団体の比率を表したものが図 4-9 である。回収した 124 団体のうち 10 万人以上の人口規模 は 78 団体あるが、そのうち 66 団体(84.6%)が世論調査を実施している一方で、10 万人 未満の 46 団体のうち 26 団体(56.5%)は実施していない。つまり、人口規模が大きい自 治体ほど世論調査を実施する傾向にあるといえる。

84

図4-7 世論調査実施団体の人口規模別件数

図4-8 世論調査未実施団体の人口規模別件数

図4-9 人口規模別実施団体の割合 2

18

28 10

14 14

0 5 10 15 20 25 30

5万人以下 5~10万人 1020万人 2030万人 30~50万人 50万人以上

6

20 9

2 1 0

0 5 10 15 20 25

5万人以下 510万人 1020万人 20~30万人 30~50万人 50万人以上

25.0%

47.4%

75.7%

83.3%

93.4%

100.0%

75.0%

52.6%

24.3%

16.7%

6.6%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

5万人以下 5~10万人 10~20万人 20~30万人 30~50万人 50万人以上

実施している 実施していない

85 (2)世論調査の実施時期と実施間隔

次に、実施 86 団体の調査実施時期について、月別の実施件数とその平均回収率を表した ものが図 4-10、実施間隔別件数を表したものが図 4-11 である。

自治体の世論調査は、夏季休暇等により一般的に在宅率が低いとされている 7~9 月の 3 か月の間に 86 団体中 37 団体、全体の 43%が集中して実施されている。これは、自治体世 論調査の多くが、次年度の政策形成や予算編成(一般的に 10~12 月に実施される)の基礎 資料としての活用が想定されていることが理由だと推測される8)。実施時期と平均回収率の 関係についてみると、7~9 月に実施された調査の回収率が他の月の回収率と比べてとくに 低いとはいえず、むしろ 1 月、2 月の調査の回収率が相対的に低い傾向にあるともいえる。

また、調査の実施間隔については、実施団体のうち、「毎年の実施」が 4 割近くを占め最も 多く、次に「隔年」、「3 年に 1 度」となっている。「5 年に 1 度」は基本計画策定時などに 実施する団体が多いことを示している。

図4-10 世論調査の月別実施件数と平均回収率

4 4 4

2 7

17 20

9 8

4 4

3 45.5% 46.0%

55.5%

51.7%

53.3%

47.1%

51.9%

47.8% 49.2%

59.4%

52.3%

52.1%

0 5 10 15 20 25 30

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

86

図4-11 世論調査の実施間隔別件数

(3)母集団・抽出台帳・抽出方法

今回の調査から、実施86団体はいずれも、地域に居住する一定の年齢(18歳または20歳)

以上の男女個人を母集団として設定し、住民基本台帳を抽出枠(sampling frame)として 活用していることが明らかとなった。そして、調査法については、86団体のうち42団体が 単純無作為抽出法、38団体が層化二段抽出法により対象者の抽出を行っているを確認でき た(未回答6団体)9)。また、実施86団体のうち85団体(無回答1団体)が標本抽出時に電算 システムを活用していることが確認できた。つまり、自治体世論調査においては住民基本 台帳(データベース)から無作為抽出することによって標本の代表性を確保しているので ある。なお、住民基本台帳とともに外国人登録原票10)を利用しているのは10団体であった。

(4)外部事業者への委託状況と選定方法

世論調査の外部委託については、世論調査を実施している86団体のうち69団体が民間の 調査会社などに委託を行い、9団体は委託せずに独自に調査を実施していることが確認でき た(未回答8団体)。この自治体の委託事業者の選定方法を整理したものが表4-3である。

この表からわかるように、自治体の委託事業者の選定方法は入札金額のみで決定する指 名・一般競争入札が多くなっている(54/69団体(78.3%))。次いで、契約上の公平性や 透明性の問題がしばしば指摘される随意契約が多く(8/69団体(11.6%))、選定候補業者 からの企画提案を組織内部の選定委員会などで審査するプロポーザル型公募方式はわずか 8.7%(6/69団体)にとどまっている。その他、調査の実施と分析にそれぞれ異なる選定 方式(一般競争入札および随意契約)を採用している団体があった。

指名・一般競争入札における落札業者のほとんどが過去に実績のある調査会社であり、

29 13

12 4

15 9

4

0 5 10 15 20 25 30 35

毎年 隔年 3年に1 4年に1 5年に1 その他 未回答

87

入札金額だけで選定しても調査実施上は何ら問題がないとも考えられる。しかし、2005年 に内閣府の「地域再生に関する特別世論調査」、「食育に関する特別世論調査」および日本 銀行の「生活意識に関するアンケート調査(第23回)」を受託した実績のある調査会社でデ ータ捏造など不正な処理が行われたこと11)が明らかになったように、過去の実績だけでは判 断材料として十分であるかどうかは議論の余地がある。

表4-3 委託業者の選定方法

委託業者選定方式 団体数 割合

指名競争入札 36 52.2%

一般競争入札 18 26.1%

随意契約 8 11.6%

プロポーザル型公募方式 6 8.7%

その他(一般競争入札および随意契約) 1 1.4%

計 69 100.0%

(5)調査票の作成方法と分析方法

自治体の調査票の作成方法と分析方法についての結果を整理したものが表 4-4 および表 4-5 である。表 4-4 から、約 7 割(86 団体中 59 団体)の自治体では委託業者と協力して調 査票を作成していることが確認できる。他方、調査結果の分析については委託業者と協力 して分析している団体は約 6 割(86 団体中 53 団体)であり、若干ではあるが結果の分析よ りも調査票の作成を協力して行っている団体が多いことがみてとれる(表 4-5)。

表4-4 調査票の作成方法

調査票の作成方法 団体数 比率

区市が原案を作成し、委託業者と共に調査票を完成する 48 55.8 % 区市のみで調査票を作成し、委託業者の関与なし 19 22.1 % 委託業者が原案を作成し、区市と共に調査票を完成する 10 11.6 % 原案作成をせず、両者(委託業者・区市)で調査票を完成する 1 1.2 % 委託業者のみで調査票を作成し、区市の関与なし 0 0.0 %

未回答 8 9.3 %

88

表4-5 調査結果の分析方法

調査結果の分析方法 団体数 比率

委託業者が分析主体となるが、区・市の関与あり 46 53.5 %

委託業者のみで分析を実施、区・市の関与なし 14 16.3 %

区・市のみで分析を実施、委託業者の関与なし 11 13.3 %

両者(委託業者・区市担当者)で分析を実施 7 8.1 %

区・市が分析主体となるが、委託業者の関与あり 0 0.0 %

未回答 9 10.5 %

(6)標本1件あたりの経費

調査経費については、外部事業者への委託の有無によって大きく異なっている。ここで は委託を行っている団体(69団体)について、調査法別の標本1件あたり経費(調査全体の 経費(外部委託経費)/有効回収数)を算定した(表4-6)。なお、この経費額は調査担当 職員の人件費などは含んでいない。

面接法は、標本 1 件あたりの最大値は 3,000 円を超えていて、最小値でも 2,000 円以上 であり、最も経費を要する調査法となっている。留置法においては、最大値こそ面接法と ほぼ同じ水準であるが、最小値は面接法の 3 分の 2 程度になっている。郵送法については、

最大値は面接・留置法の半分以下、最小値にいたっては面接法の 5 分の 1、留置法の 4 分の 1 程度の水準になっている。平均値も標本 1 件あたり経費が面接法の 3 分の 1、留置法の半 分以下の水準となっている。つまり、経費の面から考えると郵送法はもっとも選択されや すい方法であると考えられる。

表4-6 世論調査における標本 1 件あたりの経費

最大値 最小値 平均値

面接法 3,363 円 2,100 円 2,948 円

留置法 3,437 円 1,400 円 2,246 円

郵送法 1,634 円 352 円 942 円

(7)調査法別の実施団体数および回収率

今回の調査では、面接法を採用している団体が実施 86 団体中 7 団体(8.1%)、留置法 18 団体(20.9%)、郵送法 61 団体(70.9%)であり、圧倒的に郵送法を採用している自治体 が多くなっている。なお、中野区、北区、江戸川区で採用されている訪問回収と郵送回収 との併用による方法(複合調査法)は留置法に含めている。各団体の最新の調査における 調査法別の回収率(最小値・最大値・平均値)を整理したものが表 4-7 である。

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表4-7 調査法別の団体数および回収率

調査法 実施団体数

(比率%)

回収率(%)

最小値 最大値 平均値

面接法 7(8.1%) 68.2 88.2 77.9

留置法 18(20.9%) 56.7 80.1 71.6

郵送法

61(70.9%) 29.0 68.4 49.8 督促 38 32.8 68.4 52.5

14 29.0 54.2 44.8

面接法の回収率は、最小値が 60%台後半、最大値が 80%台後半、平均値も 70%台後半と なっていて、全体として高水準を維持しているといえる。留置法の回収率は、最大値こそ 80%を超えているが、最小値が 40%を切るなど回収率の変動幅が大きくなっている。これ らに対して、採用団体がもっとも多い郵送法の回収率は、最大値でも 70%に達しておらず、

最小値にいたっては 30%を割り込むような状況にある。

(8)調査法別回収率の推移

今回の調査結果から、調査法ごとの団体数および平均回収率の推移(1996~2006 年)を 整理したものが図 4-12 である。郵送法を採用する団体が増加している一方で、その平均回 収率は低下傾向にあることが確認できる。

図4-12 世論調査の調査法および回収率の推移

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

0 5 10 15 20 25 30 35 40

‘96 ‘97 ‘98 ‘99 ‘00 ‘01 ‘02 ‘03 ‘04 ‘05 ‘06

採用団体数 平均回収率 面接法 留置法

郵送法

留置法 面接法

郵送法

(年)

(団体数) (回収率)

ドキュメント内 著者 金井 茂樹 著者別名 KANAI Shigeki (ページ 96-108)