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利用品質

ドキュメント内 著者 金井 茂樹 著者別名 KANAI Shigeki (ページ 150-153)

第6章 自治体ウェブサイトの品質

第 3 節 自治体サイトの評価フレームワーク

3.2 利用品質

それでは、これら公共サービス情報と政策情報を自治体はどのように公開していけば、

ユーザの利便性向上につながるのであろうか。ここでは、ウェブサイトに関するユーザビ リティとアクセシビリティの二つ概念について確認する。

(1)ウェブサイトの使いやすさ

前述したとおり、自治体サイトは行政広報広聴の網羅性・並行性の理念にしたがい、あ らゆる状況にあるユーザにとっても使いやすいものでなければならない。ウェブサイトの 使いやすさについては、これまで「情報デザイン」、「情報アーキテクチャー」、「ユーザビ リティエンジニアリング」といった研究領域において、ユーザビリティ(Usability)の問 題として議論されてきた。たとえば、情報デザインの領域においては、使いやすさを向上 させるために“情報の組織化”という視点から議論されている。また、情報アーキテクチ ャーの領域では、デジタル情報を構造物としてとらえ、情報の構造化、ナビゲーションシ ステム、ラベリングシステム、検索システム等の手法によって使いやすさを改善するとい うアプローチがとられている。さらに、ユーザビリティエンジニアリングの領域では、ユ ーザの視点に立ったシステム・インターフェイスの開発・改良というアプローチがとられ、

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ユーザ調査、ユーザテスト、ガイドラインチェック、ヒューリスティック評価、ウォーク スルー評価等のユーザビリティ評価手法についても様々な研究が行われている。このよう にウェブサイトの使いやすさについては複数の領域から数多くの研究報告があるものの、

ウェブサイト構造の複雑性もあり、各領域の使いやすさに関する基本概念の整合性が確保 されているとはいえない状況にある(Rosenfeld,2002,p.10)。昨今の自治体サイトの運用 管理の実務においては、情報の構造化、ラベリング、ナビゲーション、検索システムとい った手法とともにユーザ調査やユーザテストが実施されるなど領域横断的な品質改善策が みられる。このような状況にあって、2009 年 7 月に「電子政府ユーザビリティガイドライ ン」(IT戦略本部)が公表された。このガイドラインは、各府省がオンライン申請システム 等の新規開発および改修における企画、設計・開発、運用および評価の段階で利用するた めのものとされているが、オンライン申請システムのみならずウェブサイトの運用、評価 においてもユーザビリティ(Usability)の概念を重視していくことがあらためて示された ものといえる。

他方で、自治体サイトは行政広報広聴の網羅性の理念から、年齢、性別、高齢者、障害 者、外国人を問わず、あらゆるユーザが利用できるものにしなければならない。この多様 な環境にあるユーザについては、これまでアクセシビリティ(Accessibility)の問題として 議論され、総務省はこれを「高齢者や障害者といった、ホームページ等の利用になんらか の制約があったり利用に不慣れな人々を含めて、誰もがホームページ等で提供される情報 や機能を支障なく利用できること」と定義し、“誰もが使えるウェブサイト”である「みん なの公共サイト運用モデル」を推奨してきている5)

このように、自治体サイトの使いやすさが、Web ユーザビリティ(Web Usability)と Webアクセシビリティ(Web Accessibility)の二つの観点から検討されてきていることを 踏まえて、利用品質はこの二つで視点から構成されるものとした。以下では、さらにこの 二つの概念の詳細を確認する。

(2)Web ユーザビリティと Web アクセシビリティ

①Webユーザビリティ

Web ユーザビリティは、前述のとおりユーザビリティエンジニアリング領域において研 究されてきた概念である。ユーザビリティの先駆的研究者であるNielsen(1994,pp.26-36)

は、ユーザビリティを「学習しやすさ」、「効率性」、「記憶しやすさ」、「エラー発生率」、「主 観的満足度」という構成要素を持つ「使いやすさに関わる質的な属性」として定義してい る。また、国際規格ISO9241-11やそれに対応するJIS Z8521は、ユーザビリティを「特 定の利用状況(Context of use)において、特定のユーザによって、ある製品が、指定され た目標を達成するために用いられる際の効果(Effectiveness)、効率(Efficiency)、ユーザ

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の満足度(Satisfaction)の度合い」と定義して、特定ユーザによる特定の利用環境におい ての「目標を達成するための使いやすさ」であるとしている6)。さらに、黒須(2007)は、

「ISO の定義における構成要素のなかの効果と効率の結果として満足度がもたらされる」

として、構成要素から主観的特性である満足度(Satisfaction)を除き、客観的特性として 効果(Effectiveness)と効率(Efficiency)の二つの特性を示している。

このようなユーザビリティの概念に関する様々な議論のなかで、ウェブサイトの運用現 場にあっては、有効性と効率性に配慮しながら、ユーザ調査、ユーザテスト、ヒューリス ティック評価、ウォークスルー評価などの様々な手法が用いられ、PDCA サイクルによる 継続的改善が行われている(篠原,2004)。最近では、仮想的なユーザを詳細にデザインし、

そのユーザが利用することを想定して製品開発を進めるペルソナ手法を中心とする UCD

(User Centered Design)がウェブサイトにも適用されはじめている7)。自治体サイトにお いても、このようなウェブサイト評価手法が適用される事例もみられるようになってきて いる。

②Webアクセシビリティ

Web アクセシビリティは、「高齢者や障害者など心身の機能に制約のある人でも、年齢 的・身体的条件に関わらず、ウェブで提供されている情報にアクセスし利用できること」(総 務省)と定義されるように、すべてのユーザがウェブサイトを“使える”ようにすること を目指すものである8)。言い換えれば、前述した国際規格 ISO9241-11 のユーザビリティ の定義における「特定ユーザ」を最大限に拡張していくことと解釈できる。ウェブ(World

Wide Web)で使用される各種技術の標準化を推進する為に設立されたW3C(World Wide

Web Consortium)は、1999 年にWebアクセシビリティの指針として、国際規格「WCAG

(Web Contents Accessibility Guidelines)1.0」の勧告を行った(現在はWCAG2.0)。日 本においては、このWCAGを踏まえて日本工業規格(JIS規格)が、2004 年にJIS X8341-3

「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス-

第3部:ウェブコンテンツ」(以下、アクセシビリティJISという)を策定している9)。総 務省は、2005 年にウェブアクセシビリティ維持・向上のための運用モデルである「みんな の公共サイト運用モデル」を策定し、自治体サイトの取り組み支援を行った。多くの自治 体は、この 2004 年のJIS規格の策定を契機として、高齢者や障害者もアクセス可能とする ために、ウェブサイト上のテキストデータに対する音声読み上げソフトへの対応や文字サ イズ・画面コントラストの変更を可能にするといった対応を行ってきた。最近では、アク セシビリティの対象が、小・中学生や外国人にも拡張され、子ども向けサイトや多言語サ イトを開設する自治体サイトも多くみられるようになった。

しかしながら、前述したアクセシビリティ JIS の記述のなかに「十分な」、「見やすい」

といった曖昧な表現があることから、自治体サイトが JIS 規格にどの程度対応しているか

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を客観的に判断することができず、JIS規格への対応を宣言している自治体サイトのなかで も、その対応レベルには大きな差がみられるのが現状である10)。このJIS X 8341-3は 2010 年に改正され、国際規格(WCAG2.0)と同一基準となり、技術に依存しない記述となった(改 正後、このJIS規格はJIS X 8341-3:2010と表記される)。総務省は、この改正に合わせ て 2010 年に「みんなの公共サイト運用モデル」を改定するとともに、国・地方公共団体等 におけるウェブアクセシビリティ評価の取組を促進することを目的として、「みんなのアク セシビリティ評価ツール(miChecker:エムアイチェッカー)」を開発し、全国の自治体に 対して配付を行った11)。これにより、各自治体の実務担当者は運用するウェブサイトのウェ ブアクセシビリティ対応を客観的に評価することが可能となったのである。

ドキュメント内 著者 金井 茂樹 著者別名 KANAI Shigeki (ページ 150-153)