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自治体における世論調査の意義と品質

ドキュメント内 著者 金井 茂樹 著者別名 KANAI Shigeki (ページ 81-84)

第4章 自治体世論調査の現状

第 2 節 自治体における世論調査の意義と品質

2.1 本章で取り扱う世論調査

世論調査(public opinion poll)は、1930 年代のアメリカで成立した人々の意見を量的デ ータとして統計的に扱う方法である。この「世論調査を区分する角度には、目的、調査対 象者、方法、テーマ・調査内容、調査対象者の意識のレベル(意見・態度)、調査主体、仮 説検証か問題発見か、個別質問の結果か構造解明か、時系列調査か一時点の調査かなどさ まざまある」(鈴木,1996,p.189)といわれ、様々な形で実施される個別の調査が世論調査 であるか否かを判断する一義的基準は設定できないとされている(児島,1996)。

そこで、本章では一般的に承認されている要件である①社会的に重要とされている問題 に関する意見・態度を調査していること、②社会調査の統計的手法を用いていること、③ 個人を対象としていること(大谷ほか,2005,p.9)のほかに、④実施主体が自治体であるこ と(外部委託を含む)、⑤その地域に居住する住民のみを対象にしていること、および⑥継 続的に実施していること、を要件として設定し、自治体ごとに同じ基準で比較できるもの とした。なお、本章においてはとくに「世論」概念には言及せず、「世論とは集団的意見」

(松本,2003,p.169)と簡略に定義するものとする。

2.2 世論調査の意義と品質

この世論調査は、自治体のなかでどのように位置づけられているのであろうか。ここで は、自治体の広聴活動の枠組みからみた位置づけとその意義、およびその品質について確 認する。

(1)自治体広聴活動の枠組みと世論調査の意義

第 3 章でみたとおり、実務の現場において日常的に市民の声を聴く広報活動は政策形成 においてますます重要になってきている。ここでは、第 3 章でみた自治体広聴の枠組みを 再掲する(表 3-1)。

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表3-1 自治体広聴の枠組み(再掲)

収集態度 情報の特徴等

自治体の収集態度

受動的:住民が主体 能動的:自治体が主体

実務上の分類 個別広聴 集団広聴 調査広聴

手 法 面談、手紙、はがき、

電話、メール、SNS

対話集会、懇談会、モ ニター制度など

統計的手法を活用した 世論調査・意識調査・ウェブ調査など

情報の性質 個別情報 [集まるデータ]

個別的な意見・要望・苦情など

構造情報 [集めるデータ]

提示した問題群に対する意見構造分布

情報の形式 主にテキストデータ 主に数値データ

一部テキストデータ

傾 向 情報量の増加 情報品質の低下

期待される活用 事業の改善・課題発見 政策形成の基礎

問 題 点 意見の個別性・代表性 調査票の制約

この表に示したとおり、能動的な活動に分類される調査広聴では、「世論調査」や「意識 調査」といった調査手法が用いられる。最近ではインターネットを活用したウェブ調査も 活用されるようになってきている。受動的活動によって得られた「個別情報」は、住民の 自主的行動によるものであり、その内容は提供者の個人的関心といった性格を持つもので ある(山本,1985,p.143)。これに対し、能動的活動によって得られた「構造情報」は、住 民のある一定の問題に対する意見構造や分布といった性格を持つものでり、とくに調査広 聴によって得られる情報は、サンプリング理論等の統計的手法を活用して母集団から抽出 した標本から得られるという点が特徴的である。両者の性格の違いから期待される活用も 異なっている。すなわち、個別・集団広聴によって得た情報は、主として個別事業の改善 や地域の課題発見への活用可能性を有する一方で、調査広聴によって得た情報の多くは、

政策形成のための基礎資料として汎用的に活用されることが想定されている。これについ ては、たとえば継続的な調査によって得られた地域住民の永住意向の時系列変化は、今後 の政策形成のうえで重要な基礎資料になることが考えられる。

このように、自治体の世論調査は能動的な活動として行われるものであり、自主的に発 言する住民のみならず、発言の場をとざされた「無告の民」に声をあげさせるメディアで あり、公式のチャネルに乗らない民意を吸い上げるメディアでもある(香内,1988,p.3)。 つまり、「サイレントマジョリティ(沈黙する大多数の市民)」を含んだ住民全体の意見構 造や分布を可視化(母集団の特性を推測)するところに世論調査の意義がある。

70 (2)世論調査の限界と品質確保

このように、世論調査は自治体の広聴活動のなかで重要な意義を持つものであるが、世 論を測定するという世論調査そのものへの批判や限界も指摘されている。たとえば、世論 調査の「限界として一定の質問(刺激)に対する回答(反応)の形で把握されるのが一般 であり、人間の刺激に対する反応なるものは、刺激が与えられた条件(刺激の形式、刺激 を与えるものと反応するものとの関係、刺激を与えられた場合の周辺の条件、とくに他人 の存在の有無など)によってかなり変化するとすれば、『世論調査』が真実の『世論』を測 定しているかどうかについていろいろな問題点がある」(山本,1985,p.113)と指摘されて いる。また、「人びとの欲求は本人が意識しない、前意識、無意識の形で存在しうるし、そ れは言語に頼らざるをえない世論調査では、手法が発達した現在においても依然測定不可 能でなくとも著しく困難である」(児島,1991,p.62)として、人の欲求と意識とのズレによ り世論調査による民意測定は情報通信技術が発達した現在においても困難であるとされて いる。さらに、社会調査の観点からは、調査法に応じて結果が変わることや「人々のある 問題に対する意見や態度の分析、構造、変化を計量的に一般化した形で測定できるという 利点を持つが、世論の表層的把握にとどまる」(大谷,2005,p.9)などネガティブな評価も なされている。

しかしながら、このような限界が指摘されながらも、「潜在する世論を数的に顕在化させ る方法は、世論調査に依拠するほかに考えられない」(松本,2003,p.170)、「世論の把握に かんし、世論調査を上回りうるような方法を持ち合わせていない」(同,p.182)、「ともかく

『世論調査』以外に、“存在”している『世論』を把握する方法がないとすれば、それに依 存せざるをえないことは確か」(山本,1985,p.113)など、「世論調査を世論の科学的測定方 法」としてとらえたうえで一定の限界を認め、調査法に応じて結果が変わるという世論自 体の浮動性を知った上で、適切な読み方を進めるポジティブな評価もなされている(上 田,2003)。

このような世論調査を自治体が活用していくためには、世論調査が持つ限界を認識した うえで、調査の基礎となる調査法のたゆまぬ練磨・研鑽(林,1985)と調査自体の品質追求

(石川,2005)といった継続的な改善が不可欠である。とくに、自治体世論調査の品質につ いては、「目的が特定された調査は正確さを限界まで抑えることができるのに対して、汎用 目的の調査は、広い利用に応えるべく高い正確さが要求される」(本川,2005,p.60)と指摘 されているように、政策形成の基礎資料といった汎用的な目的を持つ自治体世論調査には、

民間企業が実施するマーケティング調査や市場調査以上の高い正確性が要求されるのであ る。

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ドキュメント内 著者 金井 茂樹 著者別名 KANAI Shigeki (ページ 81-84)