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テキストマイニング分析の適用

ドキュメント内 著者 金井 茂樹 著者別名 KANAI Shigeki (ページ 73-80)

第3章 市民の声のテキストマイニング分析

第 4 節 テキストマイニング分析

4.2 テキストマイニング分析の適用

今回対象とした質問文に対する回答枠がひとつであったため、回答には良い点と改善点 に関する記述が混在していた。そこで、「良いと思います」、「すぐれている」、「改善してほ しい」、「期待する」、「望む」、「不便」、「心配」などの言葉を手がかりとして、最小限の文 字編集を行い、回答データを良い点に関する記述472件、改善に関する記述890件に分割 した。平均回答長は「良い点」41.11文字、「改善点」87.6文字となった。なお、全回答642 件のうち19件については、良い点と改善点以外の内容のため分析対象から除外した。

(1)分析方法

この二つの自由記述データ(回答原文)について分かち書き処理を行うとともに、句読 点、助詞、特殊記号を除き、構成要素(語句)の抽出を行い、分かち書きの不備の削除、

同義語・類語の置き換えを行った13)。閾値 2 以上の語句を対象に対応分析を行い、そこから 得られた成分スコアをもとにクラスター分析を行った。最後に、各クラスターの特徴から 住民が感じているA自治体の良い点および改善点について考察した。

(2)分析結果

良い点に関する記述については、出現頻度 2 以上の全構成要素数(2,681 語)に対して異 なり構成要素数が 392 語であり、その割合が 14.7%である14)。他方、改善点に関する記述 は、出現頻度 2 以上の全構成要素数は 10,246 語、異なり構成要素数は 1,534 語であり、こ れが全体に占める割合は 15.0%である。

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良い点、改善点のいずれにおいても出現頻度が最も高かった語句は自治体名称であった。

前者において出現頻度が 20 以上のものは、A自治体(名称)、公園、子育て、緑、子ども、

支援、充実、良さ、高齢者、環境、医療費であり、後者においては出現頻度が 40 以上のも のは、A自治体(名称)、子ども、人、道路、高齢者、自転車、施設、政策・施策、公園、

場所、歩道であった。公園、子ども、高齢者が双方に共通している語句である。対応分析 で得られた成分スコアをもとにクラスター分析を行い、住民が感じるA自治体の「良い点」

と「改善点」についてそれぞれ四つのクラスターに分類整理を行った(表 3-3 および表 3-4)

15)。また、クラスターごとに自由回答(原文)を検定値順に整理したものが表 3-5 と表 3-6 である(一部)16)

表3-3 「良い点」に関する主なクラスター

クラスターラベル サイズ クラスターの特徴 性年齢割合

クラスター1

「都会の中のみどり」 106

「緑」「公園」という語句に代表されるグルー プ。

(*)クラスターサイズが最も大きい

男性 27.4%、女性 67.9%

(*)性年齢別では「女性 30~39 歳」が約 23%を占めている。

クラスター2

「高齢者福祉・子育 て支援」

86 「高齢者福祉」「子育て支援」という語句に代 表されるグループ。

男性 24.4%、女性 70.9%

(*)性年齢別では「女性 30~39 歳」が約 21%を占めている。

クラスター3

「都市整備」 20 「施設」「公園」という語句に代表されるグル ープ。

男性 30.0%、女性 65.0%

(*)性年齢別では「女性 30~39 歳」が約 20%を占めている。

クラスター4

「子育てへの援助」 46 「子ども」「医療費」「保育料」という語句に代 表されるグループ。

男性 28.3%、女性 65.2%

(*)性年齢別では「女性 40~49 歳」が約 30%を占めている。

(注)サイズはクラスターに属するサンプル数

表3-4 「改善点」に関する主なクラスター

クラスターラベル サイズ クラスターの特徴 性年齢割合

クラスター1

「日常生活における 行政サービス」

191

「高齢者施策」「災害対策」「ごみ対策」という 語句に代表されるグループ。

(*)クラスターサイズが最も大きい

男性 35.1%、女性 61.3%

(*)性年齢別では「女性 30~39 歳」「女性 40

~49 歳」「女性 50~59 歳」(3 区分)で約 42%を占めている。

クラスター2

「政策資源配分」 97 「子育て支援」、「生活保護」という語句に代 表されるグループ。

男性 41.2%、女性 58.8%

(*)男性、女性ともに「30~39 歳」がもっとも 高くなっている(男性 11.3%、女性 20.6%)。

クラスター7

「交通網整備」 50 「交通」という語句に代表されるグループ。

男性 30.0%、女性 64.0%

(*)性年齢別では「女性 30~39 歳」と「女性 40~49 歳」(2 区分)で約 36%を占めている。

クラスター11

「道路環境整備」 103 「自転車」、「歩道」、「車道」という語句に代 表されるグループ。

男性 39.8%、女性 53.4%

(*)男性は「30~39 歳」、女性は「40~49 歳」

がもっとも高くなっている(男性 10.7%、女性 12.6%)。

(注)サイズはクラスターに属するサンプル数

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表3-5 「良い点」のクラスターにおける自由回答の原文(一部)

クラスタ

ー1 検定値 検定値

(無調整) 自由回答(原文) 性年齢区分

1 4.8189 4.8189 緑が多い 女性 60~69 歳

2 3.549 3.549 公園が多い。 男性 18~29 歳

3 3.0393 3.0393 公園が多い。緑が多くて良い。 女性 60~69 歳

4 3.017 3.017 公園の緑が多いのが良い。 女性 40~49 歳

5 2.8392 2.8392 公園が多いこと。 男性 60~69 歳

6 2.3963 2.3963 A 自治体は緑が多い。公園も多いところが良い。 女性 40~49 歳

7 2.285 2.285 緑が多いのがいいと思う。 女性 40~49 歳

8 2.279 2.279 緑と水の豊かな街並み 男性 50~59 歳

9 2.2483 2.2483 公園が多いのが良いと思います。 女性 30~39 歳

表3-6 「改善点」のクラスターにおける自由回答の原文(一部) クラスタ

ー1 検定値 検定値

(無調整) 自由回答(原文) 性年齢区分

1 1.4266 1.4266 老人施策が少ない。 女性 70 歳以上

2 1.2249 1.2229 熟年者施設、高齢者の住居を作って欲しい。 女性 30~39 歳 3 1.0735 1.1588 熟年者施策、生活環境等お年寄りに優しい区を作って

頂きたい。 男性 60~69 歳

4 0.9091 1.0827 区内で働く場所が減っている。 女性 60~69 歳 5 1.0057 1.0478 ただ良い公園があまりないと思います。 女性 30~39 歳 6 0.884 1.0297 もっと高齢者に優しい町づくりを望みます。 女性 30~39 歳 7 0.9398 0.9664 熟年者施設、バス便が少ない。病院が少ない。 女性 30~39 歳 8 0.8408 0.9522 健康な熟年者が気軽に参加できる為の施設を望みま

す。たとえばゲートボール、ラウンドゴルフなど。 女性 18~29 歳 9 0.8073 0.874 近所の触れ合う小規模な施設があればと思います。 未回答

各クラスターに分類された検定値の大きいサンプルを中心にその特徴を分析し、その特 徴を意味づけるラベリングを行った。

良い点についてのクラスター1 は、緑や公園という語句に代表されるグループである(ラ ベル:「都会の中のみどり」)。このクラスターサイズは 106 であり最大となっている。A自 治体は都会のなかにあって、緑の多さを感じられるという点が最も評価されている。クラ スター2 は、高齢者福祉、子育て支援といった語句に代表されるグループであり、A自治体 の施策のうちとくに高齢者と子どもを対象にしたサービスが評価されている(ラベル:「高 齢者福祉・子育て支援」)。クラスター3 は、施設や公園といったまちづくりに関するクラス ターである(ラベル:「都市整備」)。具体的には図書館、公園、水辺整備に代表される施策 が評価されている。クラスター4 は、子どもの医療費や保育料といった子育て施策のうち具 体的な負担額に関わる施策に対する評価になっている(ラベル:「子育てへの援助」)。

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他方、改善点についてのクラスター1 は、高齢者対策、災害対策、ごみ対策といった語句 に代表されるグループである(ラベル:「日常生活における行政サービス」)。ここでは、特 別養護老人ホームや高齢者の働く場の拡充、水害時の避難場所の確保、ごみ収集の早朝化 や不法な持ち去り防止といった日常生活に密接に関わる課題と改善案が指摘されている。

クラスター2 は、子育て支援、生活保護に代表されるグループである(ラベル:「政策資源 配分」)。子育て支援については、ひとり親世帯への助成金の増額、奨学金の充実といった 具体的要望がある反面、A自治体の子育て支援は過剰サービスとの意見も少なくない。また 生活保護については、より厳格な審査が必要であるとの意見が多くみられる。クラスター7 は、交通の利便性についてのグループである(ラベル:「交通網整備」)。鉄道や路線バスに よる地域内の南北交通の利便性向上を望む意見が多くみられる。クラスター11 は、自転車、

歩道、車道という語句に代表されるグループである(ラベル:「道路環境整備」)。ここでは、

自転車のマナー向上、自転車レーンの整備、歩道のバリアフリー化、車道幅の拡張といっ た改善案がみられる。

(3)考察

今回の自由記述データの分析から、住民が感じている A 自治体の良い点は「都会の中の みどり」をはじめ、「高齢者・子育て支援」、「都市整備」、「子育てへの援助」で構成され、

改善点は「日常生活における行政サービス」、「政策資源配分」、「交通網整備」、「道路環境 整備」で構成されることが明らかになった。この事例分析の結果は、「子育て支援」という 語句が良い点と改善点の双方のクラスターに頻出している点が特徴的である。これは、子 育て支援施策に対して高い評価を得ている一方で、A自治体は子育て支援に対する政策資源 が偏っているのでないか、という資源の再配分に関する問題が提起されたものと解釈する ことができる。つまり、A自治体には、子育て支援サービスに対して満足している住民がい る一方で、そのサービスを享受していない住民または享受しても過剰サービスと判断する 住民が存在しているということである。この分析結果から、A自治体と他自治体との子育て 支援サービスに関する比較分析の必要性が示唆される。A自治体は多くの政策資源を投入し ている子育て支援事業に対する住民満足度が高いことを把握していると推測されるが、今 回の自由記述データの分析から、そのサービスを享受していない住民の意見を把握するこ とができたことは、住民から高い評価を得ているサービスについては、常に適切な資源配 分がなされているか否かを継続的に確認する必要があるという知見が得られたと解釈する ことができる。これは市民の声を起点とした新たな情報開発の事例であり、自由記述デー タの分析からでなければ得られない情報のひとつといえる。

また、今回の改善点に関する回答件数は 890 件であり、良い点の回答数 472 件の約 1.9 倍になっている。平均回答長も 87.6 文字であり、良い点 41.11 文字の 2 倍以上の文字数に

ドキュメント内 著者 金井 茂樹 著者別名 KANAI Shigeki (ページ 73-80)