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行政広報

ドキュメント内 著者 金井 茂樹 著者別名 KANAI Shigeki (ページ 43-46)

第1章 行政広報広聴の基礎的枠組み

第 4 節 行政広報広聴の基礎的枠組み

4.3 行政広報

次に、行政による広報活動が対象とする情報と手法・チャネルについて述べる。

(1)公共サービス情報と政策情報

行政が広報活動によって提供しなければならない情報は何であろうか。地域情報に関し ては、しばしば情報社会論のなかで地域概念とともに議論され、多様な定義・分類がなさ れてきた。そのなかでも、林(1999,pp.30-55)は、地域情報を「地域社会を含んだ日常生活 における生活者の行動および関心に関わるいっさいの情報」と定義するとともに、その具 体的な内容から以下のように分類している。すなわち、①生活情報:日常生活において便 益や実益を伴う情報、②文化情報:地域に関わる知識・教養・趣味(歴史、習俗、芸術、

芸能、行事、宗教、娯楽)などの情報、③イベント情報:地域に関係する事件・できごと・

催し・予兆などの情報、④争点情報:地域において賛否や是非を伴う情報、の四分類であ る。生活・文化・イベント情報は、住民への直接的な行政サービスを提供する施策や事務 事業に関する情報が中心であり、サービス受益者たる住民に公開・提供していかなければ ならない情報である(以下、公共サービス情報という)。また、地域の新たな価値創造を目 指すシティプロモーションやシティセールスが対象とする地域の産業振興や観光情報など は、地域の魅力という観点から公共サービス情報を再構成・拡張した情報と考えられる(以

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下、シティプロモーション情報という)。これらに加えて、住民の生命に関わる災害情報・

防犯情報・保健予防等に関連する情報の継続的な発信の必要性はいうまでもない(以下、

安全・安心情報という)。

他方、地域情報のひとつとして分類された争点情報は、地域の論点に対する賛否や是非 の判断など住民が政策・施策を考えるうえで必要となる情報である。すわなち、地域住民 が自ら政策や制度の策定の主体となるために必要な情報である(以下、政策情報という)。

この政策情報は、政治学や行政学においては、①争点情報、②基礎情報、③専門情報に分 類される(松下,1991,pp.91-95)。争点情報は、自治体が直面している多様な課題を整理し て争点として公開する情報と定義され、「市民運動がとりあげている問題、地域・業界団体 の圧力、政党間の争点」などがこれに該当する。基礎情報は、行政がもつ統計、地図、法 務・財務情報など自治体の地域特性や政策構造に関する情報として定義され、政策争点を 政策解決に結びつけるには不可欠の情報として位置付けられている。また、専門情報は、

個別の課題を解決するための技術情報と定義されるものであり、ごみ処理施設に関連して いえば、その立地、性能、設計、運営ノウハウなどが専門情報に該当する。地震や津波、

土砂災害、インフルエンザなど緊急的な状況に関する高度に専門的な危機管理情報もこの 専門情報に分類される。

また、政策情報には、争点情報、基礎情報、専門情報を総合・編集した「政策選択肢情 報」の提供が不可欠であるとされている(新藤,2001,p.211)。これは、政策目標設定の争点 と選択理由、それらの実施に伴う予算・人的資源・行為規範、さらに技術的可能性などを 示した情報である。「選択肢の立て方がまずく、人々の意見をうまく分節化することができ なければ、住民たちは、またしても自分たちは正当に代表されていないという感覚を持つ」

(杉田,2006,p.13)と指摘されるように、事実情報の公開のみならず、それらを行政が政策 という切り口から検討した結果を選択肢として示すことも重要となる。さらに、評価情報 も政策情報のひとつとして公開することが必要である。それは、「住民は、行政サービスの 供給における地方政府のパフォーマンスに関する正確な情報を提供されなければ、地方政 府の行政責任について有効な判断を行うことができない。また、地方政府もそのパフォー マンスに対する住民の評価が得られなければ、行政サービスの供給における行政責任を果 たすことはできない」(伊藤,1996,p.40)からである。

以上みたとおり、本研究では行政広報が提供する情報を「公共サービス情報」と「政策 情報」に区分して考え、公共サービス情報を対象とする広報を「公共サービス広報」とし、

政策情報を対象とする広報を「政策広報」ととらえるものとする。

32 (2)広報手法・チャネル

行政広報は、前述した情報をあらゆる手法を活用して住民に提供していかなければなら ない。これまでは、公共サービス情報と政策情報のいずれについても、その提供手法は印 刷媒体が中心であった。公共サービス情報の場合は、行政サービスを網羅的に掲載した、

いわゆる「暮らしの便利帳」や「暮らしのガイド」といった冊子や定期的に発行する広報 誌・紙が中心であり、政策情報の場合も、総合計画書や予算決算書をはじめとする印刷媒 体であった。印刷媒体の場合は、紙面や印刷経費の制約等から十分な量と質の提供は困難 であった。

この印刷媒体の持つ制約を克服したのがウェブサイトである。開設当初こそデータの保 存容量やネットワーク回線の速度に制約はあったが、保存容量の急速な増加とブロードバ ンド回線の普及によって、ウェブサイト上にはテキストや画像に加え、音声、動画を活用 して膨大な情報を高品質に公開することが可能になった。また、動画によるライブ中継や 防災用のライブカメラ、雨量測定レーダーによるリアルタイムの情報提供も可能になって きている。さらには、双方向かつ迅速なコミュニケーションを可能にするSNSが災害時に 効果を発揮した事例もしばしば報告されている。このように、広報手法の多様化により行 政と住民を結ぶチャネルが着実に増加し、そこに流れる情報の品質も向上してきている。

チャンネルの多様化は、全ての住民に情報提供を要請する網羅性の理念に従うものと考え られる。ただし、行政が多様な手法のなかから、どの手法を選択するかについては、資源 配分に関わる問題でもあり、地域住民の特性を踏まえた慎重な議論が必要である

以上の議論を踏まえ、行政広報広聴の基礎的枠組みを整理したものが表 1-3 である。

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表1-3 行政広報広聴の基礎的枠組み

本質・理念 分類 情報 情報の内容 主な手法

(本質)

情報開発 価値創造 による 信頼関係 構築・維持

(理念)

真実性 双方向性

網羅性 並行性

(展開)

戦略的 継続的

受動的 個別的

広聴 個別 広聴

個別情報

(個人論的視座) 住民の個別意見・要望・提案など

面談、手紙、はがき、電 話、メール、 電子会議 室、SNS

集団 広聴

対話集会、懇談会、モ ニター制度など 能動的

集約的 広聴

調査 広聴

構造情報

(全体論的視座) 問題群に対する住民の意見構造や分布 世論意識調査、モニタ ー制度、ウェブ調査

公共サービス広報

(お知らせ広報)

生活情報 日常生活において便益や実益を伴う情報

(印刷媒体)

広報誌・紙 報告書 冊子 パンフレット チラシ 新聞・雑誌

(電波媒体)

テレビ ラジオ

(電子媒体)

ウェブサイト 音声配信 動画配信 SNS 文化情報 地域に関わる知識・教養・趣味等の情報

イベント情報 地域の事件・できごと・催し・予兆など プロモーション情報 地域特性の観点から公共サービス情報を編

集した情報

安全安心情報 防災・災害情報(平時・発災時・発災後)・防 犯情報・保健予防情報

政策広報

争点情報 直面する課題・議案の論点・説明

基礎情報

政策形成の基礎資料

統計、地図、法務・財務情報など議案の背景 や地域特性を表す情報

専門情報

個別課題解決のための技術情報 地震・津波・土砂災害・インフルエンザなどの 危機管理情報

選択肢情報

政策目標設定の争点と選択理由・実施に伴う 予算・人的資源・行為規範のあり様、技術的 可能性など

評価情報 政策・施策・事業評価など自治体のパフォー マンスに関わる情報

(注)筆者作成

ドキュメント内 著者 金井 茂樹 著者別名 KANAI Shigeki (ページ 43-46)