第7章 自治体ウェブサイトにおけるペルソナの作成と活用
第 5 節 ペルソナの作成と適用
5.2 定性的調査の実施
次に、このカテゴリーに属する 4 名のユーザを対象にインタビュー調査を実施した。
160 (1)インタビュー調査の概要
インタビューでは、はじめに被験者に対して年齢、職業、趣味、家族構成、インターネ ット利用状況(日常生活、情報通信技術に関する経験・知識、インターネットの利用状況、
情報通信機器、SNSの利用状況)について質問を行い、次にAウェブサイトの利用状況(頻 繁に見るまたは見たコンテンツ、Aウェブサイトの良い点と改善点)について自由に発言し てもらった。なお、インタビューの場所は、A自治体本庁舎の会議室で、記録(メモ・録音)
は当該ウェブサイトの担当職員が行った。被験者にはインターネットに接続したノートパ ソコンを見ながら質問に回答してもらった。対象者は、Aウェブサイト担当職員の人脈をも とに以下の 4 名を選んだ。
調査名 A自治体ウェブサイトユーザインタビュー調査 調査期間 2011 年 11 月 25 日 ~ 12 月 10 日
調査対象 性別/年齢/職業/家族構成
(a さん) 女性/38 歳/派遣職員(週 5 日程度)/夫・保育園児(2 歳)
(b さん) 女性/34 歳/パート社員(週 4 日程度)/夫・保育園児(4 歳)・
小学生(1 年)
(c さん) 女性/41 歳/自営業手伝い/夫・小学生(5 年)と中学生(1 年)
(d さん) 女性/43 歳/主婦/夫・幼稚園児(4 歳)・小学生(1 年・5 年)・
中学生(1 年)
調査手法 半構造化面接
実施場所 A自治体本庁舎会議室
161 (2)インタビュー調査の分析
インタビュー前半のインターネットの利用状況を整理したものが表 7-5 である。
表7-5 被験者のインターネット利用状況 利用
年数 インターネット利用状況
aさん 15 年
・子どもを毎朝保育園に預けてから出勤するので、朝はとても忙しい。保育園でお昼寝しているの で、子どもが夜 11 時過ぎまで寝ない。とにかく自分の時間がない。
・前職が IT 企業勤務。情報通信技術に関する経験・知識が豊富であり、普段からPC、スマートフォ ン、タブレット端末を活用している。
・家でパソコンは毎日使う。使わない日はない。スマートフォンは便利だけど画面が小さいので情報 がとりづらい。
・SNSはmixi、Facebook、Twitterを利用している。とくにリアルタイムで情報をとれる Twitterは毎日見ている。A自治体のTwitterをフォローしている。
bさん 8 年
・子どもを毎朝保育園に預けるのが大変。夫も子育てに協力してくれるので、子どもにはできるだけ よい環境を提供してあげたい。
・情報通信技術に関する経験・知識はあまりないが、情報検索、ネット通販、子育て掲示板などイン ターネットを頻繁に活用している。調べ物はすべてインターネットを利用する。
・家ではPCでインターネットを利用することが多い。スマートフォンがほしい。
・Twitter に登録しているが、PCだとどうしても、利用しなくなってしまう。
cさん 15 年
・日常生活は時間的には比較的余裕がある。
・情報通信技術に関する経験・知識はあまりないが、前職でPCを使っていたので、ワードやエクセ ル(関数)は比較的得意。
・家では PC、スマートフォン、タブレット端末を使用しているが、タブレット端末を購入してから、PC
はメールの送受信だけで、ほとんど使わなくなった。
・mixi、Facebook、Twitterを利用している。Twitter以外は、情報の収集のみで利用。A自治体 のTwitterをフォローしている。
dさん 10 年
・時間的にはかなり余裕がある。ただ、小学校の PTA 役員をしているので、昼間小学校に行くこと が多い。
・会社で働いたこともほとんどない。情報通信技術に関する経験・知識はない。
・これまでは必要なときにしかインターネットを使わなかったが、スマートフォンの購入後は毎日イン ターネットを使うようになった。
・Twitterは登録している。A自治体のTwitter をフォローしている。
次に、インタビュー後半の A ウェブサイトの利用状況についての自由意見の分析を行っ た。前述した定量的調査における自由記述の分析と同様に、定性的コーディングを行い、
文書セグメントを抽出した。その結果、頻繁に利用されるコンテンツとして、「休日診療や 夜間診療の病院」、「治癒証明」、「一時保育情報」、「放射線測定情報(空間、食品)」など子 どもに関するもの、そのなかでもとくに緊急性を要するものが多数を占めた。また、この 利用状況のコメントから、被験者たちはほとんどの場合、明確な目的をもってA ウェブサ イトを閲覧していることが明らかになった。
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Aウェブサイトの改善点については、以下のような意見があった。「検索機能を使ってキ ーワードを入力すると、意味不明な文字列が検索結果の上位に表示されるときには、イラ ッとくることがある」、「欲しい情報があるのかどうかわからない。見つけづらくても少な くとも検索ではひっかかってほしい」(aさん)、「とにかく探しやすいページにしてほしい。
ひとつの入り口ではなくいくつか入り口を作ってほしい」(b さん)など、目的とする情報 に最短の時間、最小の手間で到達したいという意見が多かった。また、「台風の状況など
twitterでリアルタイムに情報がほしい」(cさん)といった迅速な情報提供を望む意見があ
った。他方、評価できる点については、「情報はだいぶそろっていると思う」、「たいてのこ とはウェブサイトの情報で大丈夫」(c さん)、「子どもの急病や休日診療の病院、夜間診療 の病院などをよく調べたので、今ではどこにあるかわかっている。すぐ探せる」、「だいた い必要な情報の場所はわかる」(d さん)という意見があった。ただし、これらの比較的好 意的な意見は中学生の子どもを持つ被験者からのものであり、Aウェブサイトを長期間にわ たって利用しているという“適応”によるものだと推測される。
以上の分析から、「就学前の子どもまたは小学生を持つ 30~40 代の女性」というカテゴ リーに属するユーザを特徴づける項目(以下、パラメーターという)として、①家族構成・
子どもの数(多-少)、②日常の繁忙性(忙-暇)、③情報通信技術に関する経験・知識(豊
-貧)、④インターネット利用年数(長-短)、⑤モバイル端末の利用頻度(高-低)、⑥A サイトの利用頻度(多-少)、⑦Aサイトの利用年数(長-短)、⑧検索機能活用(多-少)、
⑨SNS利用(多-少)を設定した。
(3)ペルソナ基本文書作成
これまでの分析結果をもとに主観的なデザインによってペルソナを作成する。前述した クーパー(Cooper,1999)は、ペルソナ開発の注意点として以下のように述べている。「ペル ソナは正確さよりも厳密さのほうが重要だ」(p.129)、「ペルソナは厳密にすればするほど、
デザインツールとしても有効性を増す。その理由は厳密になってくるほどペルソナはゴム でなくなるからだ」(p.128)、「ペルソナを厳密にするという観点からは、平均というのは 除外する必要がある」(p.130)とあるように、ペルソナの本質はその厳密性にこそあると している。また、ムルダーとヤール(Mulder,Yaar,2007)も「経験的にも複数のデータソ ースから得たユーザ情報を関連づけたときこそ、優れた洞察が生まれるのは確かだ」(p.83)
とあるように、客観的データをいかに主観的に結びつけるかの重要性を指摘している。
そこで、以上の注意点を考慮して、上で設定した九つのパラメーターを、①忙しい日常 生活、②2 人の子ども、③情報通信技術に関する経験・知識が豊富、④インターネット利用 は長い、⑤モバイル端末の利用頻度は低い、⑥Aサイトの利用頻度は少ない、⑦Aサイトの 利用年数は短い、⑧検索機能活用は多い、⑨SNS 利用は少ない、と設定した。そのパラメ
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ーターごとに具体的に記述したものがペルソナ基本文書(表 7-6 一部抜粋)である15)。
表7-6 ペルソナ基本文書(一部抜粋)
氏名 ○山○子(34 歳) 身長 162cm/A型/東京都出身/契約社員(年収 250 万)
プロフィール
・短大(情報系学科)卒業後、新宿の会社に就職
・短大時代に、シスアドの資格を取得
・28 歳の時に結婚。結婚後、仕事を続けながら夫の住む川崎市へ転居
・30 歳で第一子を妊娠、会社を退職
・31 歳の時、夫の実家に近く、A自治体にマンションを購入
・32 歳で第二子を出産
・33 歳で仕事を再開 家族構成
(子ども 2 人)
・夫:38 歳、新宿区にある中堅商社で営業(年収 500 万)
・長女:4 歳、中央保育園に通園中。体が弱く、熱を出しやすい
・長男:2 歳、中央保育園に通園中。体は比較的丈夫。外で遊ぶのが大好き
繁忙性
(忙)
・「子どもにはできるだけよい環境を提供してあげたいと思うんです」
○山○子さんは、2007 年 11 月にマンションの購入にともないA自治体に転入してきま した。この街は公園が多く子育てにも優しい街だとネットでの評判を聞いたからです。
二児の母で、普段は子どもを保育園に預けながら、日本橋にある会社で契約社員(午 前 9 時~午後 4 時)として勤務しています。夫は職場が遠いため、保育園の送り迎えは すべて○子さんがしています。また、長女がよく熱を出すので、残業や時間の制約の 少ない契約社員の仕事を選びました。
・毎朝 6 時に起床します。夫は 7 時半には家を出ます。夫が出勤してから、子どもたちを 起こして朝食を食べさせます。自分も身支度を済ませて、自転車で保育園に送ります。
そのまま最寄りの駅に向かいます。駅では駐輪場を定期利用しています。日本橋の職 場までの乗車時間は 16 分程度ですが、電車は毎日満員状態です。
情報通信技術 に関する 経験・知識
(高)
・PC操作は前職場の研修で習得。仕事でも使っていたので得意。
・利用サービス:ネット通販、オークション(チケット等)、子育て情報を交換する掲示板、
Twitter 登録。ネットで調べ物をするときは丁寧に画面を見てからクリックするタイプ。
ネットでは個人情報を安易に入力しない。