第5章 自治体世論調査の品質
第 5 節 調査法別の事例分析
5.4 複合調査法-中野区と江戸川区
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区の紋章を大きく印刷した角形 2 号封筒を使用している。また、両区とも 2001 年に面接法 から郵送法に変更しているが、その理由も財政的な問題である点も共通である。
②相違点
両区の相違点として、調査票の工夫、リマインダー(督促状)の発送時期があげられる。
新宿区は、調査票に薄い色紙を使用したり、若者世代の回収率を高めるために区の政策を わかりやすくまとめた小冊子を入れるなど細かい配慮を行っている。リマインダーの発送 時期は、新宿区が調査票発送 1 週間後、足立区が 2 週間後になっている。新宿区では、「督 促状発送時点での回収数と最終的な回収数が倍近くになっている」としてリマインダーに よる回収率アップの効果を高めるために発送するタイミングを毎年試行錯誤している。
(4)郵送法の考察
ここで、両区の世論調査の概要、有効回答 1 件当たり経費およびインタビュー調査をも とに郵送法について考察を行う。
郵送法は、調査員が介入しないことから、他の調査法のように不在、転居、拒否、病気 など対象者が返送しない理由が明らかではない。そのため、具体的な対策が難しく、新宿 区でも可能な範囲において細かい配慮を行っているが試行錯誤的な部分も多くなっている。
また、両区ともに世代別の回収率が同じ傾向にある。これは、調査員が介入しないため、
他の調査法でみられるような区の調査方針が反映されることがないからである。
さらに、回答 1 件あたりの経費については、新宿区は 1999 年までの面接法において有効 回答 1 件あたり経費が 3,000 円台半ば、足立区においては 3,000 円台後半~5,000 円台半で 推移していたが、郵送法への変更後には両区ともに 1 件あたり経費が 1,300 円~1,500 円台 となり、それまでの 2 分の 1 程度の水準となっている。面接法から郵送法に変更すること により回収率は低下するが、経費的側面からは郵送法は有効な方法であるといえる。
124 (1)中野区と江戸川区の概要
中野区は特別区の西部、武蔵野台地の東端にあり、区内には神田川、妙正寺川などが東 西方向に流れ、東は新宿区、西は杉並区、南は渋谷区、北は練馬区に接している。面積は 15.59km2で 23 区中 14 番目の広さとなっている。新宿-立川間の甲武鉄道(中央線の前身)
の開通により、中野区が開設され人口が増加し、近郊住宅地として発達してきた。高度成 長期の昭和 45 年には 37 万 8000 人まで急増した人口は、都心部の空洞化、地価の高騰など 様々な原因により 2007 年には約 31 万人となっている(特別区中 12 位)。
他方、江戸川区は、東京都の東側に位置して、西に荒川・中川、東に江戸川・旧江戸川、
南には東京湾を臨む三方を川と海に囲まれ、北は葛飾区、西は墨田区、江東区、東は千葉 県市川市、浦安市、松戸市に接している。面積は 49.09km2で 23 区中 4 番目の広さとなって いる。2010 年 10 月のの人口は 67 万人を超え(特別区中 4 位)、住民の平均年齢は特別区の なかで最も低い 40.8 歳であり、老年人口率は 15.4%で特別区中最も低くなっている。
(2)世論調査の概要
両区が実施している世論調査について、その回収率の推移と 2006 年の世論調査の回収状 況は以下のとおりである。中野区では「調査員による訪問配付、訪問回収・郵送回収」に よる世論調査を毎年実施している。江戸川区では「郵送配付・訪問回収・郵送回収」によ る世論調査を隔年で実施している。
①回収率の推移
中野区と江戸川区の 1996 年からの回収率の推移を表したものが図 5-11 である。2000 年 までは、両区とも 80%前後の高い水準で推移していたが、江戸川区では 2002 年に 76.7%、
2004 年には 74.5%、2006 年には 70%を切る水準にまで低下している。他方、中野区は、
低下傾向にはあるものの 2006 年にも 77.8%とかなりの高水準を維持している。1996 年の 時点にあっては、江戸川区の方が高い回収率であったが、昨今の調査では中野区の方が高 い水準になっている。中野区と江戸川区の 2006 年の世論調査の回収率はそれぞれ 77.8%、
67.8%であり、約 10 ポイントの差がある。
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図5-11 中野区と江戸川区の世論調査の回収率の推移(1996 年~2006 年)
②世論調査の回収状況
両区の 2006 年の世論調査報告書から、調査の概要、男女別・世代別回収率、訪問回収と 郵送回収の内訳を整理したものが表 5-11 である。
表5-11 中野区と江戸川区の最新世論調査の概要
区分 中野区 江戸川区
調査名 中野区政世論調査 江戸川区民世論調査
調査期間 平成 18 年 7 月 11 日~7 月 31 日 平成 18 年 6 月 1 日~6 月 10 日
回収数/標本数 1,012/1,300 1,358/2,000
訪問と郵送の内訳 訪問 775(76.6%) 郵送 237(23.4%) 訪問 405(29.8%) 郵送 953(70.2%)
回収率 77.8% 67.8%
抽出方法 層化二段抽出 層化二段抽出
対象者抽出日 5 月 1 日 5 月 1 日
担当部署 経営室広聴広報分野 経営企画部広報課
男女別・世代別回収数
20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 70 歳以上 合計
中野 男性 78 93 84 79 65 49 448
女性 74 132 111 99 74 74 564
江戸川 男性 91 118 90 115 114 53 581 女性 119 176 124 137 115 65 736
80.1% 81.7% 81.8% 81.3%
82.1%
86.3%
82.3% 83.4% 83.6%
81.8%
77.8%
83.6% 84.3%
79.9%
76.7% 74.5%
67.8%
50%
60%
70%
80%
90%
1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
中野区 江戸川区
中野区
江戸川区
126 男女別回収率
回収 未回収・無回答 計
中野 男性 446(68.7%) 203(31.3%) 649
女性 564(86.6%) 87(13.4%) 651
計 1,012(77.8%) 288(22.2%) 1,300 江戸
川
男性 581(56.8%) 441(43.2%) 1,022 女性 736(75.3%) 242(24.7%) 978
計 1,356(67.8%) 644(32.2%) 2,000
また、中野区と江戸川区が実施した世論調査(中野区は 2004 年、2005 年、2006 年の調 査、江戸川区は 2002 年、2004 年、2006 年の調査)の世代別回収率を表したものが図 5-12、
図 5-13 である。
図5-12 『中野区政世論調査』(2004 年~2006 年)の世代別回収率
59.4%
85.5% 86.2%
96.0%
95.4% 95.5%
52.1%
70.2%
82.6%
109.0%
98.3%
109.6%
52.2%
74.0%
95.6%
88.1%
84.2%
91.8%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
110%
20-29 30-39 40-49 50-59 60-69
70-2004年 2005年 2006年
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図5-13 『江戸川区民世論調査』(2002 年~2006 年)の世代別回収率
中野区の調査における世代別回収率をみると、いずれの調査も 20 歳代の回収率が相対的 に低くなっていて、全体の傾向としては年代が高くなるほど回収率も増加している。世代 階級と回収率の関係を分析すると、中野区の 2004 年調査では相関係数 0.837(P < 0.05)、 2005 年調査では、相関係数 0.926(P < 0.01)と有意な関係を確認できたが、2006 年の調 査における年齢と回収率との間に有意な関係は確認できなかった。
他方、江戸川区の調査における世代別回収率は、いずれの調査においても同じ傾向を示 している。江戸川区のグラフの形状をみると、18~20 歳代、50 歳代、60 歳代が相対的に高 く、ゆるやかな横S字型をしているのが特徴といえる。2002 年から 2006 年までは、グラフ が形状を維持されたまま下方にシフトして、すべての世代の回収率が低下していることが みてとれる。世代階級と回収率の関係を分析したが、いずれの年の調査でも年齢と回収率 との間に有意な関係は確認できなかった。また、表 5-11 をもとに中野区と江戸川区の男女 別の回収率についてカイ二乗検定を行った。その結果、両区ともに性別により回収率に有 意差があることが確認できた。
(3)インタビュー調査の結果
ここでは、中野区と江戸川区の世論調査担当者へのインタビュー調査の結果を述べる。
中野区の担当者へのインタビュー調査は、2007 年 10 月 24 日(午後 2 時 30 分~午後 3 時 45 分)に中野区役所(東京都中野区中野 4-8-1)で実施した。江戸川区の担当者に対し ては、2007 年 10 月 31 日(午後 4 時~午後 5 時)に江戸川区役所(東京都江戸川区中央 1
72.3% 72.3%
76.1%
82.4%
88.9%
78.5%
71.2%
66.1%
64.5%
79.2%
84.1%
73.6%
65.8%
60.3%
65.1%
77.4% 78.4%
64.6%
40%
60%
80%
100%
18-29 30-39 40-49 50-59 60-69
70-2002年 2004年 2006年
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-4-1)にて実施した。このインタビュー調査の概要を整理したものが表 5-12 である。
表5-12 インタビュー調査の概要(中野区・江戸川区)
区分 中野区 江戸川区
調査対象者 経営室広聴広報分野 1 名 経営企画部広報課 1 名
事前通知の有無 実施してない 実施してない
調査員の質 統計調査員(注)へ委嘱 13 人 国民健康保険料徴収員への委嘱 29 人
訪問時間 調査員にまかせている 調査員にまかせている
リマインダー(督促
状)発送時期 未回収者のみにはがき郵送 実施なし
調査票の配慮 訪問回収が困難な対象者に対して 郵送回答用の封筒を渡す
調査票郵送時に 郵送回答用の封筒を同封する
(注)統計調査員とは統計法に基づく指定統計調査において調査票の配布・回収・点検などを行う非常勤公務 員である。
①類似点
両区の類似点として、事前通知を実施していないこと、調査票の回収を独自に委嘱した 調査員が行っていること、および訪問時間を調査員の判断にまかせている点があげられる。
調査員の質については、中野区では指定統計調査の統計調査員に調査票の回収を委嘱して いるのに対して、江戸川区では国民健康保険料徴収員に調査業務を委嘱している。両区の 調査員とも調査対象地域の地理や交通機関に詳しく個人情報の取り扱いにも慣れていると いう面では大きな差はないと思われるが、江戸川区の調査員は通常業務として統計調査を 行っているわけではないことから、中野区の調査員との比較においては調査に関する知識 やノウハウは十分とはいえない。
②相違点
両区の相違点としては、リマインダー(督促状)の有無および郵送用封筒を対象者に渡 すタイミングがあげられる。中野区はリマインダーを、未回収者を対象に封書で 1 回送付 しているが、江戸川区は実施していない。また、中野区では調査期間の中で調査員が訪問 しても会うことができない対象者に対してのみ郵送用封筒をポストに入れているが、江戸 川区では調査票送付時に返信用封筒を同封している。中野区はあくまでも原則は訪問回収 であり、郵送による回収は補完的手段としていることがわかる。これに対して、調査票の 送付時に同封していることについて、江戸川区担当者から「調査員が調査に関する専門知 識を必ずしも有しているわけではないので、調査員の訪問回収の負担を軽減するという意 味もある」というコメントがあり、専門知識がない調査員に対して配慮していることがう