第4章 自治体世論調査の現状
第 3 節 世論調査の実施状況
3.3 東京都、東京都下特別区・市、内閣府の世論調査における調査法と回収率
次に、調査回収率の水準が危機的状況にあるといわれている都市部の自治体に焦点をあ てて現状を確認する。ここでは東京都および東京都下の特別区部5)および市部が実施した調 査と日本全国を対象とした内閣府の世論調査を事例としてとりあげ、それぞれの調査にお ける調査法と回収率について整理を行った6)。
(1)対象とした世論調査
①東京都が実施する世論調査
まず、東京都に居住する個人を調査対象とする調査として東京都の『都民生活に関する 調査』をとりあげた。この調査は、東京都全域に住む満 20 歳以上の男女 3,000 人を住民基
16.0%
14.1%
16.4%
13.0% 11.3% 11.9%
9.8%
7.3%
11.1%
8.0%
52.2% 53.9%
52.5%
60.1%
57.2%
61.2%
58.1%
59.8% 61.1%
64.8%
22.9% 23.5%
16.6%
14.9% 16.8% 15.8% 18.1%
15.6%
12.1% 14.1%
4.2% 4.9% 5.3%
6.2% 7.3% 5.1% 8.5%
10.5%
8.9% 7.1%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005
個別面接聴取法 個別記入法 郵送法
電話法 集団記入法 その他
2つ以上併用したもの
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本台帳に基づく層化二段無作為抽出法で抽出して、調査員による面接法により実施されて いる。この調査は、1997 年以前は『都市生活に関する世論調査』および『都民要望に関す る世論調査』として二つの別々の調査として実施されていたが、1998 年に『都民生活に関 する調査』に統合されたものである。
②東京都下の特別区および市が実施する世論調査
次に、東京都下の特別区部および市部の世論調査をとりあげた。特別区(23 区)では豊 島区以外の 22 区で世論調査が実施されている。毎年実施している団体が 10 区、隔年で実 施している団体が 9 区、そして 3 年毎の実施が 2 区、5 年毎の実施が 1 区である。3 年に 1 度や 5 年に 1 度に実施する区がある一方で、練馬区のように 1 年間に二度実施(1996、1997
~2001 年)した区もあり、自治体によって世論調査に対する取り組みは大きく異なってい る。また、東京都下の市部にあっては、26 市中 24 市で実施されている。毎年実施している 市が 6 市、隔年での実施が 1 市、3 年毎の実施が 3 市、4 年毎の実施が 1 市、5 年毎の実施 が 7 市、その他必要に応じた実施が 6 市である。
東京都下の特別区および市が発行している世論調査報告書を調査した結果、これらの世 論調査は、四通りの調査方法(「面接法」、「郵送配布または訪問配布・訪問回収(留置法)」、
「郵送配布・郵送回収(郵送法)」、「郵送配布・訪問回収と郵送回収の併用(複合調査法)」)
で実施されていることを確認できた。電話法やウェブ調査法を採用している自治体は確認 できなかった。また、これらの世論調査では抽出台帳として「住民基本台帳」が活用され ていて、抽出方法は層化二段無作為抽出法または単純無作為抽出法が採用されていること も確認できた。調査法別に東京都下の特別区および市部を表したものが図 4-3 である。な お、ここでは一部の団体で実施されている複合調査法を留置法に含めて整理している。
図4-3 東京都下の特別区部および市部の調査法別地図
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③内閣府が実施する世論調査
内閣府が実施している日本全国を調査対象とする調査として、『国民生活に関する世論調 査』および『社会意識に関する世論調査』をとりあげる。『国民生活に関する世論調査』は
「現在の生活や今後の生活についての意識、家族・家庭についての意識など、国民の生活 に関する意識や要望を種々の観点からとらえ、広く行政一般の基礎資料とする」ことを目 的とするものであり、『社会意識調査に関する世論調査』は「社会や国に対する国民の基本 的意識の動向を調査するとともに少子高齢化等の社会の在り方に関する国民の意識を調査 し、広く行政一般のための基礎資料とする」ことを目的とするものである。いずれの調査 も、全国 20 歳以上の 10,000 人を層化二段無作為抽出法により抽出し、調査員による面接 法により実施されているものである。また、これらの調査以外にも内閣府は、政府の施策 に対する国民の意識を特に早期に把握することを目的とした「特別世論調査」を含めて、
ほぼ毎月世論調査を実施している。
(2)調査法別回収率
次に、東京都、東京都下の特別区および市、内閣府の二つの世論調査に関する報告書を とりあげ、調査法別の回収率(計画標本数に対する有効回収数の比率)の変化を時系列で 整理することにした。
回収率の傾向をみるためには、「調査実施主体、調査内容、サンプリングフレーム、調査 期間、調査方法、調査地域、調査対象者などの諸条件がかなりの期間一定であることが要 求」(奥田,1984,p.47)され、その分析対象は慎重に選択する必要があるといわれている。
ここでとりあげたいずれの調査も、実施主体が一定の目的と調査方法で継続的に実施して いるものであり、指摘された条件を満たすものと考えられる。
①面接法
面接法を採用しているのは、東京都、内閣府以外には特別区では4区(特別区は22区実施)、 市部で1市(市部は24市実施)である。1996年から2006年までに面接法で実施された調査の 回収率の推移を表したものが図4-4である。
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図4-4 面接法による回収率の推移(1996 年~2006 年)
1996 年において面接法を採用していた八つの世論調査の平均回収率は 76.0%であったが、
2006 年では 66.6%となっている。各団体の 2008 年 1 月時点における最新の調査結果では 最大値は 85.1%、最小値は 55.9%となっている。東京都が実施した調査の回収率は 70%前 後で推移していたが、2003 年から 2004 年は 60%台前半で推移し、その後回復して 2006 年 には 69.4%となっている。また、内閣府の 2 つの調査の回収率は 2004 年まで 70%前後で 推移していたが、2005 年に急落し、2006 年にはそれぞれ 59.4%と 55.9%といったように 6 割を割り込む水準になっている。特別区部と市部にあっては、墨田区のようにこの 10 年間 に回収率が 10 ポイント以上低下している団体もあるが、その他の団体は大幅な低下はみら れない。そのなかで江東区の世論調査の回収率はむしろ上昇傾向にあるのは注目すべきこ とである。
このように、個々の調査をみれば回収率が上昇している団体もあり、面接法による調査 の回収率が一律に低下しているとはいえないが、全体としてはやはり低下傾向にあると考 えられる。ただし、面接法を採用している調査のうち、内閣府と東京都を除く特別区およ び市部だけの数値をみると、最新の調査結果での平均回収率は 74.9%となり、内閣府と東 京都を含めた全体よりも 8 ポイント以上高い水準になっている。つまり、この面接法にお いては、国や都と比較して相対的に狭い地域の住民を対象にする区や市の世論調査の回収 率は、国や都の調査ほど悪化していないといえる。
②留置法
次に、留置法による回収率の変化を確認する。留置法を採用している団体は、特別区で
81.8%
68.2%
79.5%
84.8%
78.2%
74.9%
71.3% 71.6%
90.8%
85.1%
71.1%
69.4%
73.0%
59.4%
71.2%
50.7%
55.9%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
墨田 江東 品川 大田 府中市 東京都 内閣府 内閣府
大田 墨田 江東
品川
東京都 内閣府①
内閣府② 府中
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12 区、市部で 4 市である。ここでの留置法の回収率の変化の推移には複合調査法(留置法 と郵送法の併用)を採用している中野区、北区および江戸川区を含めている。1996 年から 2006 年までに留置法で実施された調査の回収率の推移を表したものが図 4-5 である。
図4-5 訪問留置法による回収率の推移(1996 年~2006 年)
1996 年から 1997 年における七つの調査の平均回収率は 80.6%であったが、2005 年から 2006 年において留置法を採用していた 13 の調査の平均回収率は 67.6%となっている7)。ま た、2005 年から 2006 年時点で最大値は 82.4%、最小値は 61.0%となっている。個々の調 査をみると、特別区部の千代田区と練馬区の回収率の変動幅が大きくなっている(千代田 区:65.9%~77.1%,練馬区:61.7%~81.4%)。これ以外の団体では、北区が 60%台前半と なっているほかは、ほとんど 70%前後またはそれ以上の高い水準で推移している。最大値 は荒川区の 86.7%(2003 年)である。市部では、羽村市が実施した 2004 年の調査の回収 率 43.8%から 2005 年の 76.9%へと大きく変動しているが、その他の調査は 70%台後半で 推移している。最大値は、国立市の 83.8%(2000 年)である。
このように、留置法を採用している調査の回収率も全体としては低下傾向にあるが、前 述した面接法ほど変動幅は大きくなってはいない。
③郵送法
最後に、郵送法による回収率を確認する。2006 年時点で郵送法を採用している団体は、
特別区で 6 団体、市部で 19 団体である。郵送法は、三つの調査法のうち最も採用団体が多 い方法となっている。1996 年から 2006 年までに郵送法で実施された調査の回収率の推移を
70.1%
70.7%
71.6% 73.1%
80.1%
77.8%
77.7%
82.4%
74.4%
79.1%
61.7%
67.3%
83.6%
67.8%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
千代田 中央 文京 台東 世田谷
中野 杉並 荒川 練馬 葛飾
江戸川 昭島 国立 福生 羽村
杉並 葛飾
世田谷 千代田
中央
中野 荒川
昭島
練馬 台東
羽村 国立
80 表したものが図 4-6 である。
図4-6 郵送法による回収率の推移(1996 年~2006 年)
1996 年と 1997 年に郵送法を採用していた三つの調査の平均回収率は 64.3%であったが、
2005 年から 2006 年においては 16 団体に増え、その平均回収率は 49.5%となっている。各 団体の 2008 年 1 月時点における最新の調査結果では、最大値は 68.4%、最小値は 36.5%
となっている。個々の調査をみると、特別区部では港区が昭和 61 年から郵送法を採用して おり、回収率は 1996 年から 1999 年において 60%前後で推移していたが、2001 年から 2003 年にかけては 50%前後、2005 年には 30%台半ばとなり、この 10 年の間に約 40 ポイント低 下している。また、2006 年から世論調査を開始した渋谷区が特別区のなかで最も高い回収 率 56.1%であり、全体の平均値よりも高い数値となっている。また、市部では 2006 年時点 で郵送法を採用している 19 団体のうち、1996 年時点で郵送法を採用していたのは清瀬市の みであり、他の 18 団体では面接法、留置法による調査または未実施であった。
(3)調査法の変更と回収率の変化
ここでは、面接法または留置法から郵送法へ、調査方法を変更した自治体における回収 率の変化を確認する。特別区ではこの 1996 年から 2006 年の間に三団体が面接法から郵送 法に変更している。変更したのは、目黒区(1998 年)、新宿区(2001 年)、足立区(2001 年)
60.3%
36.5%
80.0%
45.0%
75.6%
46.1%
72.2%
58.6%
61.1%
60.9%
88.5%
52.2%
68.4%
76.7%
39.3%
82.0%
54.1%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
港 新宿 目黒 渋谷 板橋
足立 八王子市 武蔵野市 青梅市 調布市
町田市 小平 日野 国分寺 狛江
清瀬 東久留米 武蔵村山 多摩 稲城
あきる野市 立川 三鷹 小金井 東村山
港 新宿
・渋谷
板橋
多摩
青梅
八王子
調布
清瀬 町田
日野 東久留米 武蔵村山