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広告導入の現状と阻害要因の分析

ドキュメント内 著者 金井 茂樹 著者別名 KANAI Shigeki (ページ 191-195)

第8章 自治体広報紙を活用した広告事業

第 4 節 広告導入の現状と阻害要因の分析

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図8-2 千葉県内市町村の人口規模と広告の掲載状況(■実施団体■実施を断念した団体)

今回の調査から、中位値より小さい中小規模の自治体においても広告が導入されている こと、及び中位値より大きな自治体であっても広告の導入を断念している例が少なからず あることが明らかになった。以上から、大規模な自治体は広告導入に関してスケールメリ ットという有利な条件を持つ一方で中小規模の自治体にはない導入の阻害要因があると推

0 100,000 200,000 300,000 400,000 500,000 600,000 700,000 800,000 900,000 千葉市

船橋市 松戸市 市川市 柏市 市原市 八千代市 佐倉市 習志野市 野田市 流山市 浦安市 我孫子市 木更津市 成田市 鎌ケ谷市 茂原市 君津市 香取市 四街道市 八街市 銚子市 旭市 印西市 東金市 袖ケ浦市 山武市 白井市 富津市 館山市 大網白里町 富里市 南房総市 いすみ市 匝瑳市 鴨川市 横芝光町 栄町 勝浦市 酒々井町 九十九里町 多古町 東庄町 長生村 白子町 印旛村 一宮町 大多喜町 長南町 鋸南町 本埜村 長柄町 芝山町 御宿町 睦沢町 神崎町

→ 28 番目 = 51,200

→ 1 番目 最小値 = 6,700

→ 29 番目 = 54,500 中位値 = 52,850

→ 14 番目 = 16,400

→ 15 番目 = 17,200 第 1 四分位値 = 16,800

→ 42 番目 = 120,500

→ 43 番目 = 121,800 第 3 四分位値 =121,150

↱ 56 番目 最大値=930,300

人口(人)

180 測される。

表8-5 広告導入に関する人口規模別団体数

人口規模 掲載している 12 団体(比率) 掲載を断念した 10 団体(比率)

最小値 第 1 四分位値 4(33.3%) 0(0%)

第 1 四分位値 ― 中位値 4(33.3%) 0(0%)

中位値 第 3 四分位値 1( 8.3%) 5(50%)

第 3 四分位値 ― 最大値 3(25.0%) 5(50%)

4.2 広告導入の阻害要因

それでは、大規模な自治体における広告導入を妨げる要因とは一体何なのであろうか。

広告の導入を断念した自治体からの回答を分析することにより導入時の阻害要因を明らか にしていく。表 8-6 は導入を阻害する要因について回答数の多い順に整理したものである。

表8-6 広報紙への広告掲載の阻害要因(10 団体からの回答・複数回答)

阻害要因 選択した団体数 比率(%)

(1) 収入以上に経費がかかりそうだから 7 70.0

(2) 行政の定期広報紙への広告掲載が民業圧迫になるから 5 50.0

(3) 掲載企業を推奨している印象を与えるから 2 20.0

(4) 広告掲載の需要が見込めないから 1 10.0

(5) 自治体のイメージダウンになるから 0 0.0

(6) 住民に対する納得が得られるかどうかわからないから 0 0.0

(7) その他(自由記述) 4 40.0

この表からは、導入を断念した 10 団体のうち 7 団体が「収入以上に経費がかかりそうだ から」という理由を選択していることが確認できる。また、その他に分類された 4 件の阻 害要因の自由記述回答も「増ページをしなければ現在の情報スペースの確保が困難」とい う主旨であり、これは紙面に広告スペースを確保するためには経費の増加は避けられない ことを意味することから、「収入以上に経費がかかりそうだから」と同様の理由と考えるこ とができる。つまり、導入を断念したすべての団体が広告事業に関わる経費を問題視して いることがわかる。これは、広告事業が自主財源の確保を目的とするものである以上当然 の結果ともいえる。

次に、導入を断念した 10 団体のうち 5 団体が選択した「行政の定期広報紙への広告掲載 が民業圧迫になるから」、2 団体が選択した「掲載企業を推奨している印象を与えるから」

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という理由について検討する。前者の問題は、自治体が広報紙に広告を掲載することが地 域内の特定の民間事業者(競合企業)に不利益を与える可能性があることを意味するもの である。この場合の競合企業とは地域限定の新聞、コミュニティ誌、フリーペーパーなど の印刷媒体を発行している媒体社が想定される。後者の問題は、自治体の意図とは関係な く自治体が広告掲載事業者を推奨しているという印象を住民に与えることによって、特定 企業に広告料を超える利益を与える可能性があることを意味するものである。この二つ問 題は事業の運営にあたって公平性が強く要求される自治体独自の要因であるといえる。

以上の結果から、広告の導入を阻害する主な要因として、収益性の問題と公平性の問題 を指摘することができる。以下では、どのような場合に収益を確保することができるのか、

またどのような場合に公平性の問題が阻害要因となるのかについてさらに分析を進める。

4.3 収益性の問題

本調査においては広報紙への広告掲載事業を決定したプロセスについて多肢選択式で回 答を求めた(表 8-1 の問 6)。その結果、導入している 12 団体のうち 11 団体がコスト分析 を行っていないことが明らかになった。このことは、導入を断念したすべての自治体が経 費の増加に関する問題を阻害要因としていることと対照的な結果となっている。

それでは、収益を確保できる自治体と確保できない自治体との違いはどこにあるのであ ろうか。先に示した表 8-1 の「導入後の記事スペース」および「広告枠の設定」の項目か ら広告を導入したほとんどの自治体は、レイアウトの工夫(文字の大きさ、余白の縮小)

または記事掲載スペースの縮小など経費が増加しない方法によって(コスト維持を前提に)

広告を設定している。このことが掲載自治体のほとんどがコスト分析を行っていないとい う結果に結びついたと推測される。他方、導入を断念した自治体は、広告枠の設定にあた って、経費の増加(制作、印刷、配布コストの増加)を伴う方法を選択せざるを得ない状 況にあったと推測され、結果として収益の確保が困難であるとの判断に至ったと考えられ る。もちろん経費が増加することが、必ずしも収益の確保を妨げることを意味するもので はないが、表 8-3 の「設定枠数」および「広告掲載料(円/枠)」の項目からわかるように 広報紙の各号に掲載される広告枠が少ないこと、及びその広告料(5,000~30,000 円/枠)

が安価であることを考えると、これまで以上に経費がかかってしまっては収益を確保する ことは困難であると考えられる。

以上のように、収益を確保できるか否かは、広報紙上にどのように広告枠を設定してい くかといった広報紙の制作方針や紙面づくりといった技術的な問題と深く関係していると 考えられる。とくに大規模な自治体ほど、広報紙への掲載記事も多いことから記事スペー スを縮小することは困難であり、広告枠の設定には増ページによる経費の増加を選択せざ るを得ない状況にあると考えられ、結果的に阻害要因になりやすいと推測される。

182 4.4 公平性の問題

広告の導入を阻むもうひとつの要因は公平性の問題である。ここでは、民業圧迫の問題 がどのような場合に阻害要因となるのかを中心に検討を行う。表 8-3 および表 8-6 から、

広告を導入している 12 団体のうちの 11 団体、導入を断念した 10 団体のうち 5 団体がこの 問題を検討していることが確認できる。それでは、導入自治体と導入を断念した自治体と では、この問題への対応がどのように異なるのであろうか。

この問題は、前述したように地域内に競合企業が存在することが前提であることから、

競合企業がなければ阻害要因とはなり得ない。しかし、競合企業がある地域であっても、

全ての自治体が導入を断念しているわけではない。このことから、競合企業があるケース では自治体は民業圧迫の問題に対して以下のような選択をしていると推測される。ひとつ は、競合企業との競争そのものを回避するという選択であり、もうひとつは既存の競合企 業に配慮しながら事業を展開するという選択である。前者を選択した自治体は、必然的に 広告導入を断念することになる。この選択は、地域産業の振興という役割を担っている自 治体においては十分説得力を持つものである。後者を選択した自治体は、競合企業の持つ 媒体の特性や広告料金など様々な点に配慮しながら事業運営を行うことになる。言い換え れば、競合企業への配慮によって広告事業として成り立たなくなると自治体が判断した場 合、または配慮しても競合企業に不利益を与えることが明らかな場合は広告導入を断念す ることになる。

以上のように、民業圧迫が阻害要因となるのは、自治体が広告導入の際にどこまで競合 企業の事業に配慮することができるかに深く関係している。とくに人口が集中している地 域ほど民間企業が事業展開している可能性が高いことから、結果的に大規模な自治体ほど 民業圧迫の問題は阻害要因になりやすいと考えられる。

なお、広告掲載企業を推奨している印象を住民に与えることについては、短期的には民 間事業者を推奨している印象を与える可能性はあるが、広報紙に民間事業者の広告を掲載 していることの周知や記事と広告を明確に分けるなど誤解を与えないような工夫を継続的 に行っていくことで解決可能であると考えられる。

ドキュメント内 著者 金井 茂樹 著者別名 KANAI Shigeki (ページ 191-195)