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調査票調査の分析の枠組み

ドキュメント内 著者 金井 茂樹 著者別名 KANAI Shigeki (ページ 108-111)

第5章 自治体世論調査の品質

第 2 節 調査票調査の分析の枠組み

世論調査の品質を高めるとは一体どのようなことなのであろうか。調査の品質を考える ことは、「調査の正確さ」(accuracy)に関連するといわれている。そして、この正確さは

「母集団の姿をどれだけ正確に反映しているか」という意味とされているが、何をもって

「正確さ」を測るかといった共通理解が存在しないといった問題が指摘されている(本 川,2005,p.60)。そこで、本章では調査の品質を検討するにあたり、調査段階において発生

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する調査誤差に焦点をあてて分析を進めることとした。

調査における誤差については、一般的に標本誤差と非標本誤差に分けて考えられてきた。

しかし、電話調査やインターネット調査などの登場により、調査における誤差をその標本 抽出段階で発生する誤差とデータ収集段階で発生する誤差に明確に分けるとともに、その 発生源によってカバレッジ誤差(coverage error)、標本誤差(sampling error)、無回答誤 差(non-response error)、測定誤差(measurement error)に区分して分析されるように なってきている(Groves,1989)。本章においても、調査の各段階における誤差を明確にす るために、この枠組みを用いることとする。

2.1 カバレッジ誤差

カバレッジ誤差は、調査対象と標本抽出枠のズレに起因する標本抽出段階において発生 する誤差である。標本抽出時に用いる抽出枠(sampling frame)が母集団をカバーしてい ない、すなわち抽出確率がゼロである個体が多く存在していては社会調査の生命である標 本の代表性を確保することができない。「原データがいい加減なものならば、あとからどん な手を加えようといい加減な結果しか得られない」(林,1976,p.53)と指摘されるように、

標本の代表性が崩れてしまっては、たとえ全計画標本を回収して分析したとしても、母集 団の推測は困難になる。

一般的に、社会調査における抽出枠にまつわる誤差は、抽出名簿自体の閲覧時と対象者 名簿作成時に発生するとされている(杉山,1984,p.123)。とくに、この抽出枠をめぐって は住民基本台帳ネットワークの導入(2002 年)、個人情報保護法の制定・施行(2003・2005 年)等を背景に、住民基本台帳・選挙人名簿の閲覧制限や氏名の五十音順閲覧リスト(住 民基本台帳の一部が一覧になった印刷物)への変更などにより、標本の代表性を確保する ことが困難になってきている。また、閲覧リストの利用が可能であっても、その印刷物で あるリストからは手書きによる転記によって対象者を抽出することになるため転記ミスは 避けられず、名簿作成時に誤差が発生する。このように、社会調査の標本抽出段階におけ るカバレッジ誤差を小さくすることが困難になってきているのが現状である。しかし、こ のような調査環境の悪化は自治体以外の調査主体にあてはまることであり、住民基本台帳 や選挙人名簿を管理する自治体がどのように標本の代表性を確保しているかについては明 らかになっているとはいえない。

2.2 標本誤差

標本誤差は、標本抽出すなわち母集団と異質な標本が抽出されることで生じる誤差であ る。この誤差は標本の大きさに応じて生じる誤差であり、調査が母集団の調査単位のなか から一部(標本)を抽出して調査を実施する標本調査として実施されるかぎり、どのよう

97 な調査においても発生するものである。

2.3 無回答による誤差

無回答による誤差は、調査対象者が何らかの理由で回答しないことで生じるデータ収集 段階で発生する誤差である。社会調査における無回答は、「調査不能」(unit nonresponse)

と「項目無回答」(item nonresponse)に二分される。前者は未回収標本として、後者は欠 損データとして扱われる。

調査不能がどれだけあったかは、計画標本数に対する有効回収数の比率である回収率に 表れてくる。調査不能がランダムに発生し、母集団との特性が同等であれば問題は少ない

(島崎,2007)が、未回収分が特定層に集中すると回収標本の母集団に対する代表性に偏り が生じることになり、無回答による誤差が大きくなる1)。回収率については、面接法、留置 法、郵送法など調査法や調査対象者の年齢、性別などの属性によって大きく異なることが 確認されている。たとえば、年齢別でみると高年齢層の回収率が高く、若年層とくに 20 歳 代の回収率が低いこと、性別では女性の回答が多いことが報告されている(森岡,2007)。 また、日本の世論調査について、地域別では大都市圏の回収率が相対的に低く、地方の回 収率より急激な減退を示していることが指摘されている(朝倉,2005)。その他、調査する 地域の特性や範囲・抽出台帳・抽出時期・調査期間・調査員への謝礼など、広義の調査計 画によって回収率は変動するとされている(杉山,1984)。他方、項目無回答の発生要因に ついては、調査のテーマや質問領域によって異なり、日常生活とは直接関係しないように みえる事柄、意識に関する質問、過去や過去から現在に至る事項で多い傾向にあるといわ れている(杉山,1984)。

このように、回収率に関して様々な研究報告がされているが、回収率向上のために決定 的な改善策はなく、いずれの社会調査においてもきわめて深刻な状況にあるといえる。

2.4 測定誤差

測定誤差とは、調査票・設問形式の設計、調査員のスキルの違いによって発生するデー タ収集段階で発生する誤差である。この測定誤差は、調査票の設計(質問紙調査の場合)、

ワーディング、調査員の態度(訪問調査の場合)などによって発生することが多くの研究 で報告されている。自治体の調査に関する研究としては、大阪府 44 市町村市民意識調査を 対象にその調査票の形式と内容の質的評価を行った研究がある(大谷,2002,2003,2004)。

そこでは、44 市町村の全調査票について五つの評価基準から質的総合評価が行われるとと もに、回答者に負担をかける要素と回答しやすくする工夫が提案されている。

以上のように、調査の各段階において誤差が発生するが、自治体が世論調査の品質を向

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上させるためには、そのような誤差を可能なかぎり小さくする必要がある。本章では、こ れらの調査の過程で発生する誤差のうち、標本調査において発生する標本誤差とすでに自 治体世論調査を対象にした先行研究のある測定誤差を除き、カバレッジ誤差と無回答によ る誤差に焦点をあてて分析を進めるものとした。この分析の枠組みをまとめたものが表 5-1 である。

表5-1 自治体世論調査の品質に関する分析の枠組み

対象 誤差の発生段階 誤差の種類 本章での取り扱い

自治体

世論調査の品質

標本抽出段階 カバレッジ誤差 分析対象

標本誤差 -

データ収集段階 無回答による誤差 分析対象

測定誤差 -

(注)筆者作成

ドキュメント内 著者 金井 茂樹 著者別名 KANAI Shigeki (ページ 108-111)