第 4 章 CSQ サーベイ結果の量的分析とケースの分類
第 1 節 CSQ サーベイの調査結果
2. 調査データの信頼性と妥当性
E 90 73 20 27% 50%
A 40 36 13 36% 46%
G 30 28 10 36% 40%
注1)回答者の全対象数とは、正社員と契約社員(ケースによっては準社員と称する社員)の合計
であり、パート、アルバイトは除く。
表13から、統計的なデータの信頼性の基準であるDownsの基準を満足するのは、ケースJ のみとわかる。650人規模では、Downsの基準は212人であり、今回の調査での回答数は240 人と満足する。ケースJ以外の調査協力企業ではDownsの基準より少ない回答者数である。こ れは、実際に、Downsの基準を満足する回答者数を確実に集めることは困難であったことに起 因する。調査協力企業にとって、多くの人数を集めることは負担が大きく、無理強いすると調 査そのものを拒絶されるリスクが大きいためである。そこで、調査協力企業には、ベストエフ ォートベースの調査とし、企業の個別事情に合わせて、できる限り多くの回答者数を集めるこ とをお願いした。
Downsの基準を満たさないので、今回の調査で得られた量的データは、調査の目的に使用で
きないかというと、そうではない。もともと、量的データは、統計的な分析を行うために収集 していないからである。量的データの収集は、飽くまでも、ケースの分類分けの目的と、ケー スの質的データをICSのディメンジョン単位でより深く分析する目的のために行った。従って、
Downsの基準を必ずしも満足する必要はない。そうは言っても、あまりに少ない回答者数も問
題が有る。本研究では、表13に示すように、Downsの基準は満足しないケースでも、Downs の基準に対して8%(ケースK)から44%(ケースL)の回答者数を確保した。更に、回答者数 の中で、部下がいる人に対する固有の質問への回答者数から、全体の回答者に対する部下がい る回答者の比率(部下有り回答者率)を計算すると、ケースFとIを除いて、回答者の38%(ケ
ースK)から68%(ケースB、C)である。企業の管理職比率は、半数程度と想定すれば、こ
れらの数値から、母集団に対する偏りもなさそうである。なお、ケースFとIは、管理職を対 象として調査したため、ほとんどの回答者が部下有りとなっている。
そして何よりも、図19からDownsの基準を満たすケースJだけでなく他のケースも、ケー スJ同様に、ICSとJS、Proとの正の相関関係の傾向を示しており、CSQフレームワークの理 論に合致している。これらの点を総合して、調査データは、本研究における量的データの利用 目的の範囲において、母集団(ケースごとの調査対象数)に対する回答者数、回答者の分布の 点において、十分な信頼性はあると考えられる。
次に、妥当性についての議論であるが、まず、CSQサーベイは、従業員個人の満足度の調査 票としては、多くの研究で妥当性が検証されている。本研究では、ケースレベルの満足度を計 算するために、個人レベルのスコアの総平均値(回答者の総平均値)を用いた。これは、ICS やJSの高い従業員が組織の中に多くいるケースでは、その総平均値も高い数値となると考えら
れるからである。実際にケースごとに回答者個人の回答を使って、個人レベルのICS-JSの散布 図を描いてみると、どのケースでも母集団としての大きな偏りはないこと、ケースの集団レベ ルのICSとJSが高いケースは、個人レベルのICS-JSの塊も高い傾向を示すことが確認された。
つまり、「ICSが高い人は、JSやProが高い」という個人レベルでの関係性が、ケース(集団)
レベル(従業員の総平均値)でも成り立つことを意味する。これらの検証から、12ケースのデ ータにおいて、ケースレベルのICSやJSとして、従業員の個人レベルの回答の平均値を用い る方法には妥当性があることが分かった。