第 3 章 研究方法
第 1 節 リサーチデザイン
3. データ収集手順とリサーチデザイン
釈(CSQサーベイを向上させるインターナルコミュニケーションプロセス)に統合するこ とで、単独のアプローチでは出来なかったような新発見が生まれる可能性がある。
これらの議論から、本研究では、ミックス法、その中で並行的トライアンギュレーションデ ザインを採用することとした。
インタビューは、図 16に示すように、組織の3階層のうち社長とミドル、専門部門に対し て個別に実施した。組織内のインターナルコミュニケーションは、それぞれの階層間(縦)、階 層内(横)で行われる。社長は、ミドルと一般従業員に対して、ミドルは、社長と一般従業員
(部下)と同僚に対して、一般従業員は、ミドル(上司)と同僚に対してコミュニケーション を行う。社長とミドルに対するインタビューでは、それぞれがどんな風にコミュニケーション を行っているかをヒアリングした。
図 16: 調査対象者・データ収集方法の概要 (筆者作成)
図17に全体のリサーチデザインを記す。リサーチ全体は、大きく7段階に分かれる。
第 1 ステップ:調査企業の成長性分類(量的データを利用)
12ケースの調査協力企業を公開情報(ホームページに記載されている財務情報、有価証券 報告書)、非公開情報(社長のインタビューを通じてヒアリングされた財務情報)によって、
売上、営業利益、従業員数の観点から、成長性を判断する。過去5年間の推移によって、成 長性High、Middle、Lowに分類する。結果は、第4章に記載する。
第 2 ステップ:インターナルコミュニケーション満足度による分類(量的データを利用)
調査協力企業のCSQサーベイの結果によって、インターナルコミュニケーション満足度と 仕事の満足度、生産性、やる気度、成長性の関係性を検証する。そして、調査協力企業をICS の高さから、ICS = High のH群、ICS = Low のL群に分類し、更に、JSの高さから、H 群をJS = HighのH2群、JS = LowのH1群に分類する。結果は、第4章に記載する。
① 社長へのインタビュー
② ミドル(2名)へのインタビュー
③ 一般従業員へのアンケート
(ミドル、専門部門も含む)
④ 専門スタッフへのインタビュー [図中の矢印はコミュニケーションの流れ]
社長
ミドル
一般従業員
専門 部門
第 3 ステップ:汎用プロセスモデルの生成(質的データを利用)
調査協力企業の質的データ(インタビューデータ)を、GTAにより分析する。第2ステッ プの分類による ICS = High (H群:H2群とH1群)とICS = Low (L群) の2つの質的データ を対比することで、継続的比較を行い、新たな発見がなくなる(理論的飽和)まで、データ 収集 → 比較分析を繰り返す。データ収集は、合計12ケースで理論的に飽和し、その時点で 終了した。収集されたデータをもとに、インターナルコミュニケーションプロセスの概念、
カテゴリー、汎用的なプロセスモデル(プロセス図)を生成する。結果は、第5章に記載す る。
第 4 ステップ:成長ベンチャー企業社長の意識分析(質的データを利用)
調査協力企業の中で、成長ベンチャー企業3ケースの社長の質的データ(インタビューデ ータ)から、社長のインターナルコミュニケーション意識として共通な部分を抽出する。抽 出されたインターナルコミュニケーション意識は、ミドルも認識しているか、ミドルのイン タビューデータを利用して信頼性を検証する。検証されたインターナルコミュニケーション 意識が、第3ステップで生成された汎用プロセスモデルにどのような影響を与えているか考 察する。結果は、第6章に記載する。
第 5 ステップ:組織的な取組みの比較:クロスケース分析(質的データを利用)
調査協力企業の質的データ(インタビューデータ、CSQの自由形式の回答、企業情報)を 利用して、実際のインターナルコミュニケーションの内容(どのように組織的に運営されて いるか)を、12ケースそれぞれをシングルケースとして整理する。整理された12ケースの データを、企業規模(大規模/中規模/小規模)、CSQサーベイの結果(H2/H1/Lの3グルー プ)の分析軸で、表の形に整理し直し、特に、H2群ケースの際立った組織的な取組みの特徴 を明確にする。更に、インターナルコミュニケーションの組織的な取組みの違いが、ICSの8 つのディメンジョンのどこに差をもたらすのかを分析する。結果は、第7章に記載する。
第 6 ステップ:CSQ統合プロセスモデルの生成
CSQサーベイと第3ステップで質的データから得られた汎用プロセスモデルを統合して、
成長ベンチャー企業のCSQ統合プロセスモデルを生成する。CSQ統合プロセスモデルは、
CSQサーベイよるICSが高くなるインターナルコミュニケーションプロセスとは何かを説明 するモデルである。初めに、CSQサーベイで定義されるICSの8つのディメンジョンと想定 するコミュニケーションパターンを整理する。その際、CSQサーベイの質問項目に加えて、
第5ステップで整理された、成長ベンチャー企業におけるインターナルコミュニケーション の組織的取組み内容も利用する。得られたコミュニケーションパターンと汎用プロセスモデ ルを、ICSのディメンジョン単位で統合してCSQ統合プロセスモデルを生成する。
最後に、CSQ統合プロセスモデルによって、CSQサーベイ結果のトップスコアのケースと その他のケースのスコアの違いが、プロセス的に説明出来るかを検証する。結果は、第8章 に記載する。
第 7 ステップ: 組織の発達によるインターナルコミュニケーションの変化の考察
リサーチクエスチョンに対する回答を整理した上で、CSQ統合プロセスモデルが、組織の インターナルコミュニケーションの診断ツールとして実務的に有効であることを様々な視点 から提示する。更に、組織規模が異なる12ケースの調査結果を利用して、組織規模が拡大す るとインターナルコミュニケーションプロセスが発達することを提示し、組織の発達による インターナルコミュニケーションプロセスの違いを検証する。結果は、第 9 章に記載する。
図 17: リサーチデザイン (筆者作成)
理論的飽和
成長ベンチ ャーの汎用 プロセスモ デルの生成
成長ベンチャー企業のCSQ統合プロセスモデル生成
組織の発達によるインターナルコミュニケーションの変化の考察 理論的サンプリング (調査対象企業抽出)
インタビュー調査 CSQサーベイ調査 公表情報調査
インタビューデータ(質的)
自由回答 (質的)
スコア (量的)
情報 (質的)
情報 (量的)
コミュ ニケー ション の組織 的取組 みの クロス ケース 分析 GTAによ
る分析
成長性 分析
スコアの 差を分析 概念、カテ
ゴリー生成
プロセスモ デル生成
過去5年間の売 上、利益、従業員 数の推移、増加率 企業規模別、CSQサーベイ別の分類
ICS、JS、 Pro、Ded、
相関分析
CSQによる 分類 CSQサーベ
イ計算
成長性の分類
成長ベンチャ ーのコミュニ ケーションの 組織的取組み
の特徴 成長ベン
チャー社 長のコミ ュニケー ション意 識の生成 成長ベ ンチャ ー社長 のコミ ュニケ ーショ ン意識 の分析
CSQサーベイが想定するコ ミュニケーションパターンの 整理(5要素モデルで分析)
ICSの質問項目
(CSQサーベイ)
4章
8章 7章
4章
6章
5章
9章 3章