第 5 章 GTA による汎用プロセスモデルの生成
第 3 節 概念間の関係とカテゴリーの生成
次に、分析ワークシートで生成された24個の概念を利用して、個々の概念の論理的関係性 を考えてグルーピングし、カテゴリーを作成した。抽象化を一段上げて、分析手順に従って、
コミュニケーションの発し手と受け手を考えて、概念間の関係を丁寧に読み解いた。
概念の定義を参照しながら、24個の概念は、6つのカテゴリーにまとめることが出来た。そ れぞれのカテゴリーに含まれる概念から、カテゴリーを定義し、言葉で表現した。表16にカ テゴリーと概念のまとめを示す。なお、表15の概念コード(AからFの記号)は、カテゴリ ーのコードAからFと一致する。表16から、カテゴリーのうち、「A: 社長のメッセージ創 出と継続的な伝達意思」と「F:専門スタッフによる積極的な活性化とぬくもりの伝達」は、
H群固有の概念がほとんどであることが分かる。このことから、カテゴリーA やカテゴリーF は、H群、特に、成長ベンチャー企業固有のカテゴリーであることが示唆される。
表 15: オープンコーディング、軸足コーディングの結果(概念とカテゴリーの生成)
[H2 群事例、HR: H 群対極例、L: L 群類似例、LR: L 群対極例] (筆者作成)
H/共 概念名 概念の定義 H群事例と対極例、L群類似例と対極例 (発言内容)
H A-1.
社長 は、理 念を作 り、浸 透させ る。
理念、ビジョ ン、行動規範、
スローガンを 作り、従業員 に対して、繰 り返し、熱く 語り、浸透さ せること。
H
H
H
H H HR LR
-毎月の全社集会で、理念や行動規範について、よく出る質問に対して、毎回、毎回真剣に 答えている。(ケースK:M社長)
-新入社員300人全員を一同に集めて、3-4時間かけて、理念に対する質問に一人ずつ、回 答していく。(ケースK:Hさん)
-みんなが同じ方向に向かって、(会社という)船を漕がなければ難しい。価値観、ビジョ ンの共有は、重要です。(ケースL:T社長)
-ビジョンの提示はしつこく、しつこくやりますね。(ケースJ:S社長)
-一番気をつけていることは、理念がある。(ケースA:S社長)
-経営理念はないです。作ろうとは思っています。(ケースG:T社長)
-社是、社訓は、今はありません。あった方がいいと思っています。(ケースD:O社長)
H A-2.
現状と 将来 像、変 革を語 り、従 業員を 導く。
会社の現状を 説明し、将来 像、変革の方 向性、変革に 対する社長の 考えや姿勢を 示し、従業員 の不安を取り 除き、1つの 方向に導くこ と。
H
H
H
HR
-変革の必要性、背景、これからどのようにしていくかを、全社員の前で、2、3時間、とくと くと話し、社員と共有する。(ケースA:S社長)
-社長が、マネジメント会議で最後に話すことは、大くくりな、今どういう方向に向かってい るとか、何に気をつけてほしいという話です。(ケースL:T執行役)
-情報開示に対する不満は、あまりないです。数字を超えた理念と経営陣の思い、結果として の風土や文化みたいな企業なのだと思います。(ケースK:K部長)
-グローバルには拡大しているが、国内は生産縮小。将来に対する不安があるというのが正直 なところ。自分達が知りたいのは、この会社がこういう中で、どういう方向で社長は国内を 建て直そうとしているか。(ケースH:O部長)
H A-3.
強い企 業文化 を作っ て、従 業員の 自律的 行動を 促す。
理念の実現の ため、強い企 業文化を形成 し、維持する ことで、組織 規模が大きく なっても、従 業員が自分で 判断でき、会 社が目指す方 向と同じ方向
H
H
H
HR
LR
-企業文化がとても大切だと思っているのは、主体的にやってほしい訳です。この企業文化に ついてこれる社員だけが残る。(ケースH:K社長)
-全ての軸である、文化、行動規範を軸に、みんな動いているので、仕組みを真似ることは出 来ても、意思をもって動かすことが難しい。(ケースK:Hさん)
-企業文化は、やはり目指すところです。風通しがいい、透明性が高い、そういうことです。
(ケースL:T社長)
-この会社の社風は、カラーはこういうものなんだと、言葉の定義、みんなが共通して持てる よう、もっと強化していきたいと思います。(ケースJ:A部長)
-理念。これは温度差があるだろうな。いろんな解釈があると思う。(ケースI:M課長)
に行動できる ようにするこ と。
共通 A-4.
お客様 第一を 従業員 に繰り 返し伝 える。
社長自ら、ミ ドル、一般従 業員に、お客 様を大事にし なければなら ない、お客様 を向いて仕事 をしなければ ならないとい うメッセージ を繰り返し伝 えること。
H
H
H
L
-社長は、社員やスタッフに対しては、成長とかぎらぎらというより、お客様に対して満足し て頂くとか、小売業として当たり前のことを当たり前にやって欲しいという考えが、実は、
凄く強いです。(ケースL:Mマネージャー)
-我々は、顧客満足を中心とした経営をしている。プライオリティが高いのだから、販売会議 ではそれを最優先に話していこうと話します。(ケースH:K社長)
-社員には、お客様から喜ばれて、感謝される仕事をしろと、誰に対しても、言っています。
(ケースB:Y社長)
-会社の理念は、ホスピタリエィ。ホビーやゲームを通して、お客様のおもてなしを大切にす ることをやる会社なのだよと言います。(ケースC:T社長)
H A-5.
社長の メッセ ージに 対する 従業員 の理解 を確認 する。
社長は、自分 のメッセージ が従業員に、
きちんと伝わ らないことが あると認識し て、従業員の 声のフィード バックの仕組 みをもち、理 解度を確認し ながら、メッ セージを発す ること。
H
H
H
LR
-週報とか、いろんなところで社員の情報を集めているのは、自分の経営の舵取りのためであ って個別の問題の対処ではない。自分の言ったことが全然伝わっていないと分かると、全体 会議の時に、それを話します。(ケースK:M社長)
-組織として、今起きていることを、社長にレポートすることこそ、間に挟まっているミドル の仕事と思っています。(ケースL:T執行役)
-理解しているかは、相手の顔色を見ていると分かる。顔色、反応が見える範囲で。それ以上 は会議に呼べない。(ケースA:S社長)
-なかなか導入しようと思ってできないのですが、目安箱のようなマネジメント層に上げたい ことを社員から直接書かせる仕組みですが。(ケースI:O社長)
H B-1.
社長は 強いリ ーダー シップ を示
社長は、リー ダーとしての 姿を示し、ぶ れずに、真摯 に、自分の思 うところ、理
H
H
H
-一体感があるとすれば、それは、強力なリーダーシップ。リーダーがいないところ、組織と しての一体感はないですね。(ケースL:T社長)
-社長のことを、素直に尊敬していますし、面白い人だなと思います。本当に、自分の頭で考 えて、自分の言葉でしゃべり切る。凄くエネルギーをもった方だと思います。(ケースK:I 部長)
-社長というのは、自分の好き嫌いを明確に出す。それをメッセージとして伝える。明確に出
す。 念に従って突 き進み、社員 は、その姿を みて、尊敬し、
感動するこ と。
すことによって、それに合わない価値観をもった人は辞めていく。だから一体化していくの です。(ケースH:K社長)
共通 B-2.
社長が 社員集 会で、
熱く全 社員に 語る。
定期的に(毎 月から3ヶ月 に1度)、従業 員全員が集ま る集会を開催 し、社長が、
全員の前で、1 時間以上、熱 く語リ、エネ ルギーを示 し、社員を「や るぞ」と震い 立たせるこ と。
H
H
HR
LR
LR
-毎月、全社集会は、全員参加で、1時間半。月曜日の午前中ですね。そこで、社長が、直接 その時々に考えていることをプレゼンします。社員から見た時に、考えていることと、行動 自体は流石だなと思えます。(ケースK:K部長)
- 3ヶ月に1回、全社集会を行っています。社長は、90分とか、もう延長したりとか、業績、
方針、ビジョン。本当に、会社全体に伝えたいメッセージをその場で言っていく感じです。
(ケースJ:Yさん)
-全社集会は、年に5回くらい。ひとつの場所に集めて、会社の理念を分かってもらう。自分 のパートは、15分くらいです。(ケースB:Y社長)
-毎月の全社集会で、社長の話は、一番最後なので、短いときは5分。長い時は30分くらい です。(ケースI:M課長)
-創業の時は、全体コミュニケーションを年に4回。2回は全体会議。会社の内容をよく理解 してもらうということでね。残りの2回は、コミュニケーションの日(レクリエーション大 会)でした。(ケースC:T社長)
共通 B-3.
社長 は、と にか く、わ かりや すく伝 える。
社長は、抽象 的な内容、難 しい言葉は避 けて、具体的 に分かりやす く、誤解がな いように、ま た、従業員と の立場や理解 度の違いも考 えて、従業員 にメッセージ を伝えるこ と。
H
H
HR
L LR
-社長の話は、非常に明確かつ、分かりやすい。具体例も出して頂いて、私に対してというよ りは、店長の間で、みんなの間で話して頂くのですが、そこで、いかにも、分かりやすく語 って頂けます。(ケースL:Mマネージャー)
-気をつけているのは、まずは、分かりやすいように内容を噛み砕いて、誰にでも理解できる ように分かりやすく伝えること。それから、社員側から見た時、どう見えるかは意識します ね。(ケースJ:S社長)
-社長の言っていることは、抽象的なので、もう少し具体的にわかりやすく話をして欲しい。
言われた時にその言葉が分かると、その人に対する親近感も飛躍的にあがるじゃないです か。(ケースH:Mマネージャー)
-難しい話はしない。社長は分かりやすい話で伝える。(ケースC:T社長)
-分かりやすく伝える。何百回でも、何千回でも同じことを繰り返す。それが、ちょっと、出 来ていなかったかな。(ケースI:O社長)