第 4 章 CSQ サーベイ結果の量的分析とケースの分類
第 2 節 インターナルコミュニケーション満足度 (ICS) と関係性がある変数
ュニケーションの効果が出ている。
3. やる気度
次に、インターナルコミュニケーション満足度とやる気度の関係を検証する。やる気度は、
文字通り、仕事に対して、やる気、情熱を感じているかである。図19を見ると、ケースJ、ケ ースHは、仕事の満足度は、平均以下なのに対し、やる気度は、平均以上になっている。これ は、仕事の満足度は低くても、やる気度が高い社員がいることを示す。もともと、仕事そのも のは、自分の好きな仕事内容であり、興味のある分野であるということかもしれない。ケース Jはゲームアプリの開発であり、ケースHは精密バネ製造業である。どちらも技術を磨くとい う点で、個人としては情熱を感じている従業員が多いのかも知れない。ケースLも、仕事の満 足度に比べてやる気度が高い。世の中にない新しい眼鏡の小売りビジネスという革新的なビジ ネスに情熱と誇りを感じている従業員が多いと推測される。このようなやる気度の高い従業員 は、自分にとっての仕事の意味を見いだしており、誇りをもって仕事をしている。
ケースKは、仕事の満足度もやる気度も高い。ケースJ、Hのように、やる気度は高いが、
仕事の満足度が低い従業員がいる企業において、やる気度が高い従業員を仕事の満足度も高い 状態にもっていくためには、ケースKのように、インターナルコミュニケーション満足度を突 き抜けさせるような何らかの工夫が必要である。
4. 企業規模
調査企業の企業規模(従業員数)は、従業員数30名から3000名と大きく異なる。企業規模 が違えば、社長と従業員の距離感に差が出る。つまり、組織が大きくなればなるほど、社長と の距離は長くなる。この距離感を埋めるのが、ミドルの役割となると考えられる。一般的には、
企業規模が拡大していくと、インターナルコミュニケーションの密度が薄くなり、ICSの数値 は下がってくると思われる。表12では、規模が小さいケースG、Aでは、ICSは平均以上で あり、従業員が増えて、ケースE(90名)からケースF(290名)までは、ICSは平均以下で ある。しかし、更に従業員が増えて、ケースB(300名)からケースK(2850名)になると、
またICSは平均以上になる。ケースBより大きな企業は、小規模の企業から中規模、大規模へ の変化していく過程において、社長のコミュニケーション上の伝道者となり得るミドルによる 効果的なコミュニケーションが構造的に築かれている可能性がある。
つまり、成長ベンチャー企業は、企業規模が拡大する過程において、インターナルコミュニ ケーションについて、何らかの組織的な工夫を行っていると思われる。そのことは、後述する 社長のインタビュー、ミドルのインタビューの内容にも反映されている。
30名から3000名という企業規模の違いを考慮して今回の調査企業を比較したとき、100名 から300名規模の組織が、それ以上に突き抜けるためには、組織的なインターナルコミュニケ ーションの仕組みの必要性を示唆する。実は、ケースFとケースIは同一の企業であり、2012
年度と2013年度に継続して調査したケースである。ケースFの調査の後、筆者からの結果報 告により、ケースFの社長のインターナルコミュニケーションに対する意識が強くなり、組織 的な取り組みが行われて、その効果が現れて2013年はICSのスコアが大幅に改善した可能性 がある。
5. 成長性
成長性とICSの関係について、表12に基づいて議論する。成長性がHighであるケースK、
L、JのICSは全て平均以上と高い。一方、成長性がLow であるケースF、I、EのICSは全 て平均以下である。このことから、成長性とICSは正の相関性があると推測される。
成長性がMiddleである企業については、ICSが平均以上と、平均以下のケースがある。各
ケースの個別の事情を考慮することで、それぞれ説明できる。
製造業であるケースA、ケースD、ケースHは、リーマンショックで売上が大きく減少した ため、成長性はMiddleとなった。ケースAは、ICSが平均以上である。その理由は、ケース Aの社長が主導する社内変革プロジェクトによる積極的な従業員へのインターナルコミュニケ ーションや、強力なメッセージの伝達である。但し、業績については、回復は着実なものの、
国内の住宅産業が継続的に厳しく冷え込んでいるため時間がかかっている。ケースDは、ICS が平均以下である。その理由は、ケースDの社長は、積極的に現場従業員と直接話すことがな く、むしろ、ミドルに権限委譲しているためである。業績は、アジアの新興国市場における商 用車需要の急増の影響で、急激な売上の回復を実現した。ケースHは、ICSが平均以上である。
ケースHの社長は、インターナルコミュニケーションに熱心であり、そのことが結果に影響し ている。業績は、リーマンショックで大きな打撃を受けて、国内工場の閉鎖、大胆なリストラ を実行したことで大きな赤字を計上したが、3年前より業績は回復しており、安定的な利益を 計上できるまでになった。今後は、グローバル展開による成長路線に転換する戦略である。
サービス業であるケースBと小売業であるケースCも、成長性基準はMiddleであるが、ケ ースBのICSは平均以上、ケースCのICSは平均以下である。ケースBは埼玉県内に20数 店舗、ケースCは、全国に40店舗弱の店舗展開を行っている。ケースBの社長は、店舗を巡 回できるが、ケースCの社長は、なかなか全国の店舗を回り切れないとインターナルコミュニ ケーション上の課題を表明した。
このように、成長性がMiddleのケースは、個別の企業の事情により、ICSが高いケースと 低いケースになる。