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ミックス法(並行的トライアンギュレーション戦略)の選択

ドキュメント内 成長ベンチャー企業の (ページ 92-95)

第 3 章 研究方法

第 1 節 リサーチデザイン

2. ミックス法(並行的トライアンギュレーション戦略)の選択

ここまで整理したところで、改めて、本研究の目的を考える。繰り返しになるが、本研究の 目的は、新たな理論を生み出すことであり、その研究対象は、成長ベンチャー企業のインター ナルコミュニケーションプロセスである。プロセス理論の探求や創出を目的とする研究の場合、

質的研究、特にGTAを利用した質的研究が有効である(木下, 2003; Neergaard & Ulhoi, 2007)。 Neergaard & Ulhoi (2007) は、1993年から2004年までのGTAを利用したアントレプレナー シップ研究例をあげ、Eisenhardt (1989)、Yin (1994)、Miles & Huberman (1994)、Strauss &

Corbin (1998) による分析法と質的研究の品質管理法を理論的根拠におき、新規の研究領域に

おける理論的フレームワークを創出する研究手法として、GTA の有効性と将来性を提示した。

本研究の主題である、インターナルコミュニケーションプロセスの研究は、アントレプレナー シップ研究(Neergaard & Ulhoi, 2007)、組織研究(Brewerton & Millward, 2001)、コミュ ニケーション研究(Jensen, 2002)にまたがる研究分野である。これらの分野でも、近年の流 れとして、従来の量的研究アプローチに加えて、質的研究アプローチの研究発表が増加してい る。そこで、本研究の戦略は、プロセスを探求する研究であるという本質と、近年の質的研究 の動向を踏まえ、質的研究を中心としたリサーチデザインとした。

本研究にふさわしい質的データ収集の方法としては、インターナルコミュニケーションを成 長ベンチャー企業の中でどのように行っているかを調査するという観点から、組織の内部に入 り込んだ参与観察、或いはインタビューである。リサーチクエスチョンは、「成長ベンチャー企 業のインターナルコミュニケーション満足度は本当に高いか。」「成長ベンチャー企業のインタ ーナルコミュニケーションプロセスとは何か。」である。そこで、成長性の高いベンチャー企業 と成長性の低いベンチャー企業を比較することで、プロセス上の差を明確にするアプローチを 取ることとした。更に、汎用的なプロセスモデルを生成するためには、成長性が異なる、ある 程度の数のサンプル数を確保した複数ケースの比較調査分析が必要である。従って、一つの企 業に深く入り込んで参与観察するというよりも、なるべく多くの複数ケースを、限られた時間 の中で調査する方法が必要となる。そこで、調査方法は、インタビューとし、組織のインター ナルコミュニケーションプロセスをインタビューによって明らかにする方法とした。

では、複数ケースのサンプリングはどのような基準で、行えばいいであろうか。リサーチク エスチョンを考えると、成長性とインターナルコミュニケーション満足度の点で、継続的な比 較ができるような理論的なサンプルが理想的である。成長性については、基準を設けて、公開 情報をもとに、サンプリング前に成長性の高い企業と、低い企業を判別できる。しかし、イン ターナルコミュニケーション満足度については、CSQで測定してみないと分からない。

そこで、比較分析できるサンプル群を作る方法として、初めに成長性基準で比較できる理論 的サンプルを抽出し、次に抽出されたサンプルに CSQ サーベイを実施してインターナルコミ ュニケーション満足度のデータを収集し、成長性と CSQ のスコアからサンプルを分類分けす る方法とした。そして、分類分けされたサンプルに対して、社長やミドルへのインタビューを 実施し、成長ベンチャー企業のプロセスの特徴を明らかにすることによって、成長ベンチャー 企業の汎用的なプロセスモデルを作る方法をとることとした。

CSQによる量的データの収集とインタビューによる質的データの収集は、同時並行的に実施 できる。更に、ここで行う量的データの収集と質的データの収集は、相互にデータをトライア ンギュレーションする関係にある。ここで、トライアンギュレーションとは、どちらかがどち らかを包含する入れ子の関係ではなく、また、各々のデータについて予めなんらかの理論的な 関係性を前提として収集しているわけではないことを意味する。つまり、この方法は、研究デ ザインとしては量的データと質的データを組み合わせるミックス法であり、「並行的」と「トラ イアンギュレーション」という性格を併せ持つことから、先に説明したミックス法の中では、

「並行的トライアンギュレーション戦略」(図15)となる。

図 15: 並行的トライアンギュレーションデザイン (Creswell & Plano Clark, 2007)

このデザインは、調査研究者が、1 つのケースのデータ収集を、量的及び質的手法を同じ時 間枠の中で同時に、平等の重みで並行して行うという点からは、シングルケースとして取り扱 い可能なデザインである。従って、時間的にも効率的な調査が可能である。量的データである CSQによって、客観的な測定尺度で、当該企業における従業員のインターナルコミュニケーシ ョン満足度を点数付けできる。質的データである社長やミドルへのインタビューによって、社 長やミドルのインターナルコミュニケーションに対する意識、行動、プロセスを明らかにする ことができる。成長性は、企業が公表する有価証券報告書、ホームページ、プレスリリース等 の外部資料や社長とのインタビューによる表明によって明らかにできる。成長性の基準につい ては、様々な判断基準があるが、比較可能な尺度として、データを得られやすい売上の増加、

営業利益の増加、従業員数の増加を基準とした。特に、従業員数の増加は、成長ベンチャー企 業であるか否かを判別する分かりやすい基準である。第3章第2節で詳しく述べる。

まとめると、ミックス法は以下のような方法論的特徴を有し、質的研究法だけでは得られな い、より深い研究を可能にするという効果が期待できる、多様、多元的なデータ収集法を認め る研究デザインである(Creswell, 2003; Cresswell & Plano Clark, 2007; Jensen, 2002;

Neergaard & Ulhoi, 2007; Bryman, 2008; Teddlie & Tashakkori, 2009; Denzin & Lincoln, 2013)。

[ミックス法の方法論的特徴]

同一の調査対象企業からインターナルコミュニケーションに関して、量的アプローチ(大き なサンプルサイズ、傾向、一般化:本研究では従業員に対する CSQ サーベイ)と質的アプ ローチ(小さなサンプルサイズ、詳細、深さ:本研究では社長とミドルへのインタビュー) と いう異なるアプローチを同時に実施し、別々の視点で、同一の調査企業を分析した上で、最 終的に量的、質的データを統合する。

[ミックス法の本研究における期待効果]

① 研究上の問いについて、より深い理解を得られる。

② 量的か、質的かという単独のアプローチを用いるより研究の品質が向上する。

③ CSQサーベイを利用することで理論的サンプリングの飽和が効率的に得られる。

④ 量的データと質的データを関連づけることによって2つのデータセットを1つの総括的解

QUAN(量的データ) QUAL(質的データ)

QUAN + QUAL(結果や分析に基づいた解釈)

釈(CSQサーベイを向上させるインターナルコミュニケーションプロセス)に統合するこ とで、単独のアプローチでは出来なかったような新発見が生まれる可能性がある。

これらの議論から、本研究では、ミックス法、その中で並行的トライアンギュレーションデ ザインを採用することとした。

ドキュメント内 成長ベンチャー企業の (ページ 92-95)

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