第 3 章 研究方法
第 3 節 データ収集
1. データ収集の手順
図 18: 量的データと質的データの分析への利用経路図 (筆者作成)
[量的データ]
第12章第2節に記載する調査協力依頼状 様式A、B、Cと第12章第3節に記載するCSQ サーベイの調査表を調査協力企業に渡し、紙、Web、電子メール(エクセル)にて調査した。
調査協力企業は、サンプルが均一になるように、調査用紙を匿名の従業員(図18のミドル 2及 び一般従業員)に配布し、従業員は、2 週間程度の期間内に回答した。得られたデータから、調 査協力企業の仕事の満足度、生産性、インターナルコミュニケーション満足度のスコア(総平 均と標準偏差)を計算した。
[質的データ]
質的データは、2種類ある。1つ目は、社長、ミドル1(CSQアンケートに回答したミドル2 とは異なるミドルで、社長が指名したミドル)、専門部門へのインタビューである。インタビュ ーは、半構造化インタビューガイド(第12章第3節 様式D)に基づき、筆者が行った。社長 に対しては、従業員に対するコミュニケーションのやり方やパターン、そして、どうしてその ようなコミュニケーション行動やプロセスをとるのかについて理由やこだわりをインタビュー した。特に、日々の従業員とのコミュニケーションにおいて、社長が気にしていること、焦点 を当てている点、背景、経験、意図について、インタビューを通じて明らかにした。社長から 指名されたミドル(図18のミドル1)とのインタビューでは、彼らが社長のコミュニケーショ ンや会社のインターナルコミュニケーションについてどう感じているかを、専門部門とのイン タビューでは、組織としての取り組みを中心にインタビューした。インタビューは、ICレコー ダーに録音し、テキスト化した上で分析した。
2つ目は、一般従業員から収集した質的データである。一般従業員については、インタビュー は実施しないが、CSQサーベイの調査票にある自由形式の回答に記述された内容を、従業員の 声として、質的データとして取り扱う。具体的には、仕事の満足度や生産性を向上させるため
社長
ミドル1
一般従業員
インタビュー(質的)
インタビュー(質的)
CSQサーベイ (量的)
CSQ自由回答(質的) CSQサーベイ (量的)
CSQ自由回答 (質的)
成 長 ベ ン チ ャ ー 企 業 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 組 織 的 な 取 組 み GTA で生成される成 長 ベ ン チ ャ ー 企 業 の 汎用プロセスモデル
成 長 ベ ン チ ャ ー 企 業 社長の意識
ミドル2
CSQ による 分類 High Low
には、社内のコミュニケーションをどうすればいいか、現状どのような課題を抱えているか、
どのように解決すべきかについて書かれた内容である。これら 2 種類の質的データを総合して 分析した。
[トライアンギュレーションデータ]
トライアンギュレーションとして、以下のデータを収集した。
① 上場企業の場合は、有価証券報告書等の公開財務データ(過去5年間の業績のトレンド)
② 非上場企業の場合は、インタビューによる業績データ(過去5年間の業績のトレンド)
③ 企業のホームページ、社外広報サイト、会社案内、パンフレット、社長の執筆書籍等によ る公開情報
④ 組織図、企業の社内報(印刷物)、企業の社史等の非公開情報
(2) データ収集における留意点
以下の点に留意してデータ収集した。
① CSQ によるインターナルコミュニケーション満足度スコアは、理論的サンプリングのた めの分類に有効か。
② 質的データのGTAによる分析は、プロセス解明に有効か。
③ 理論的飽和(サンプリングの終了)は、得られるか。
(3) 研究者の立場と役割
研究者である筆者は、客観的な立場で調査協力企業と接し、当該企業の組織には立ち入らな い。CSQサーベイ調査及びインタビューの設定については、企業内の協力者(人事、総務部門 等の専門部門、社長秘書等)に依頼し、企業内協力者が調査協力企業の内部での調査に関する 調整を図り、CSQサーベイ調査結果は、企業内協力者より受け取った。調査終了後、調査結果 を調査協力企業の社長、人事、総務部門に対して報告し、当該企業のインターナルコミュニケ ーション上の問題点、課題について議論した。また、他社を参考に改善策の例も提示した。
(4) 考えられる倫理的な事柄
調査協力企業には、調査開始にあたり、データが博士論文、学術的研究発表等にのみ利用さ れることを説明し、同意の上調査を実施した。博士論文以外の形での、企業名の公表について は、予め原稿を開示し、承諾の上公表することとした。CSQサーベイは、個人が特定できない ように匿名調査とし、回答者がわからない旨、予め回答者に通知の上、アンケート調査を実施 した。インタビューでは、発言者が安心してインタビューに回答できるように、インタビュー 内容は、学術的研究にのみ使われること、個人の意見を特定できるような形で引用しないこと、
機密の保持や調査企業内の他の誰にも開示しないことを約束した上で、インタビューを実施し
た。