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第二章、 滬劇『蘆蕩火種』

第四節、 滬劇『蘆蕩火種』が成功した原因

前節で述べた芸術成果は、滬劇『蘆蕩火種』が独特の魅力を持っていることを説明 している。本節では、筆者はこの劇の魅力を発掘し、更に滬劇『蘆蕩火種』が成功し た原因を分析する。

一、堅実でしっかりした生活基盤

この作品の創作体験に言及する時、文牧は「私は南方の茶館の生活に関することを よく知っている。私は思い通りに『擺出八仙桌、招待十六方、塁起七星竈、全靠嘴一 張』(『四角いテーブルを並べ、十六人を招待し、七星竈を作り、皆をもてなす』)を書 いた。阿慶嫂が茶館のような特定の環境の中で胡伝魁、刁徳一と闘争を展開するのも 順調に書くことが出来た」と述べている。更に「崔左夫の文がどうして私を引きつけ たのか。それが目新しく、伝奇的で、特色があるためだが、もし私の生活の蓄積がな かったならば、たとえ貴重な募集原稿の材料を積み上げても私の共鳴は引き起こされ なかっただろう」97と述べている。

前節では執筆者の文牧の豊富な生活の見聞と芸術的造詣を紹介した。生活は芸術の 源で、現代劇の創作は更に生活の啓発と蓄積から離れられない。滬劇『蘆蕩火種』は 下準備から誕生まで、同様に生活からの変化が富んでいる過程を体験した。その芸術 の魅力は執筆者の基盤のしっかりした生活の蓄積から来たものである。脚本を構想す る時、文牧は絶えず自分の生活の感銘を部隊へ取材に行った時に得た創作素材の中に 充分に注ぎこみ、両者を有機的に結び付け、滬劇『蘆蕩火種』を創作する堅実な生活 の基礎を構成した。新四軍の負傷兵を掩護する闘争は劇の主要なプロットになった。

あの生き生きとした『智闘』の場面は、大体は彼がその年の茶館の内外での見聞と生 活の蓄積から来たものである。

生活から芸術まで、滬劇『蘆蕩火種』の創作は一度に昇華と飛躍を体験した。この

97 文牧、「『蘆蕩火種』創作札記」『大江南北』創刊号、1985 年 8 月 15 日、参照。原文「崔文为什么 吸引了我,不止是它新鲜、传奇、有特色,但假如没有我的生活积累,即使有一大堆宝贵的征文材料也引 不起我的共鸣」

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昇華と飛躍は作者の堅実でしっかりした生活の基盤の上に成立したため、以前の滬劇 の現代劇が一度も達してない新しい高度にまで登ることができた。部隊から間接的に 獲得した生活経験と自身の若い頃に直接獲得した生活経験の両者は互いに浸透し融 合し補充し、芸術的創造に豊富な源と強大な動力を提供した。そして最後に全国的に 広く世間に知れ渡り、長い間持続できる強大な生命力を持った現代劇になった。

二、独自の芸術的構想

滬劇『蘆蕩火種』は演劇現代劇の創作の上で重要な突破を得たが、そのもう一つの 肝心な点は作者が独自の芸術的な構想を持っていたからである。

脚本98は阿慶嫂に党の地下連絡員、また江南の小鎮茶館の女将の二つの身分を与え た。この二種類の役は見たところ調和しにくい身分を一つに融合させ、そこで自然に 一幕、一幕がすばらしく何度見ても飽きさせず、人を興奮させるよい芝居を形成して いる。阿慶嫂の独特な個性と気質も鮮明に人々の目の前に現れている。新四軍の負傷 兵を掩護するために、彼女は茶館の女将の身分で出迎えたり見送ったりし、お茶をい れてたばこを差出し、八方美人なように見えて、情熱的で周到であると同時に、また 言葉と顔色で人の心をうかがって、敵情を分析し、対策を考えている。その土地の元 締めである刁徳一を何一つ把握できなかったが、胡伝魁が日本軍に投降した真の情況 を掌握していた。このような処理は人物に対する損害をもたらさず、かえって矛盾を 転化させる過程で、阿慶嫂の個性的なまばゆい輝きを射出させた。敵が彼女に赤ラン プを掛けるように迫った後、負傷兵の安全のために、非常に危うい状態の際、笠をか ぶり急須を湖の中へ投げ捨て、敵を誘惑して声を聞かせ発砲させ、負傷兵に情報を知 らせる目的を果たした。敵が厳密に湖の中の船を封鎖した時、彼女はまた沙七龍をか ばい入水して船を出し、水を湖の中にぶちまける音で敵を騙した。最後に敵は沙婆さ んを家に戻し、人を派遣して阿慶嫂と彼女の関係を尾行、監視した。思いがけず外に 出ると、阿慶嫂は沙婆さんと掴み合いの喧嘩をし、これは刁徳一をも五里霧中に落と し、彼らの陰謀は徹底的に破綻した。毎回ほとんど抜け出せない窮地に直面しながら、

阿慶嫂はすべての危機を平穏に変え、意表をついて勝利することができた。これらの 曲折に満ち、人を感動させる芝居の場面の描写の中で、阿慶嫂の地下党員としての機 敏な性格は十分に表現されている。

褚伯承が言ったように、現代劇の創作は昔から免れがたい一つの共通した欠点があ る。それは正が邪を抑えず、悪役がよく生き生きとして真に迫り、進歩的人物の活力 が不足し、いつも弱々しく力なく作られることである。99滬劇『蘆蕩火種』が創作上 で最も人目を引く突破はこの定説を打ち破ったことである。一号人物100はよく作られ、

98 1964 年、滬劇『蘆蕩火種』劇本、上海文化出版社。

99 褚伯承、「滬劇現代戯的強大生命力―滬劇『蘆蕩火種』創作経験探索」『郷音魅力―滬劇研究和欣 賞』、上海社会科学出版社、2004 年。

100 これは「三突出」によって、序列が一位の人物、唯一無二の完璧な英雄人物として書かれた人物で

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真に信用できる優秀な地下工作者の阿慶嫂の生き生きとした人物像を成功裏に創作 した。

上述したように、この劇は実際を離れて神話的英雄的人物をひたすら描くのではな く、阿慶嫂を、思うままに大自然を支配する大きな力と悪党をねじ伏せる力を持って いるスーパーマンのように描写したのでもない。逆に、できるだけ彼女を生活化、大 衆化、郷土化している。

三、出演上の創新と突破

褚伯承の叙述101によれば、阿慶嫂役の女優である丁是娥は舞台の上で正確に人物像 を表現するために、絶えず茶館の女将の動作などを観察してまねをした。多くの地下 闘争を反映した本も読み、部隊に行き生活を体験する時にまた部隊の偵察英雄に教え を請い、何度も脚本家、監督及び他の役者と検討し相談した。これにより、徐々に阿 慶嫂のイメージは丁是娥の脳裏の中で充実してきた。彼女は茶館の女将と地下連絡員 の間で、一部を以て全体を考え、人物に拠り所を失わせることはできないと考えた。

阿慶嫂の服装、舞台姿、一挙手一投足は確かに茶館の女将に似ており、敵に応対する 時も多少の義侠心を持っている。しかし心の中で、阿慶嫂は敵に対する恨みが骨髄に 達しており、常に負傷兵を救い出す機会を探し、ずっと高い警戒心と責任感を維持し ている。そこで、人物像を深く理解した後、丁是娥の演技はきめ細かく正確で、みご とに阿慶嫂のイメージを形成した。

当然、滬劇『蘆蕩火種』がこのような芸術成果を取ったのは、役者が努力し性格が 鮮明な人物のイメージを形作っていたことと切り離せない。特に地下連絡員である阿 慶嫂の機転の利いた勇敢で真に迫る英雄のイメージと切り離すことは出来ない。人物 の配役のイメージの樹立は、台本がもちろん基礎を提供するが、出演者が成功裏に演 技することもまた極めて重要である。役者が農村や部隊に行き生活を体験したことで、

正確に配役を理解し把握し、演出を成功させるために重要な保証を提供した。

四、制作レベルの全く新しい突破

演劇の成功はほとんど脚本、監督、音楽、美術等の各方面の革新と突破のお蔭であ ると思うが、筆者は実際の舞台を見ていないので、中国滬劇網102の叙述に基づいて、

以下の考察を行う。

監督の楊文龍は各種の芸術手段を運用し、この劇の伝奇的な色彩を努力して強化し ていたため、全ての劇の公演は非常に人々を引きつけた。例えば、彼は全体のスタイ ルの把握において、異なる造型、手配と節回しを運用し、阿慶嫂、刁徳一と胡伝魁の

ある。

101 褚伯承、「滬劇現代戯的強大生命力―滬劇『蘆蕩火種』創作経験探索」『郷音魅力―滬劇研究和欣 賞』、上海社会科学出版社、2004 年。

102 中国滬劇網、http://www.chinahuju.com/、アクセス日 2012 年 6 月 26 日、参照。

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各自の内心的活動を描写し、地域の特色を強調して、アパレルの造型、せりふの節回 しから舞台セットまで、すべて濃厚な江南水郷の趣があることを求め、人々を信用さ せる丁寧さが感じられる。

それ以外に、音楽、節回し、舞台美術設計などの方面でも、すべて革新と突破があ る。例えば、プロットの需要に適応するため、高揚するメロディーを割合多く運用し ている。舞台セットの方面では、『突囲転移』の場面において、舞台上の戦士たちが大 きな波がとうとうと流れる中で耐え難く勇敢に前進する場面は、映画効果が持ってい る手法を大胆に運用し、感情と風景の融合、豊富な戯劇情緒の効果を取り入れている。

上述したように、この劇は当時抗日軍民が勇敢に闘争する雄大な情景を掻い摘んで 表現し、それによって人民戦争が必然の勝利を取るという主題を鋭く掲示した。当時 の観衆に刻苦奮闘の革命精神を発揚し、革命的英雄主義、革命的楽観主義精神を発揚 するという伝統教育を与えた。脚本の創作は堅実でしっかりした生活の基盤に根を下 ろしている。まず題材上は抗日伝奇劇に位置づけられ、作者は独特な芸術構想を運用 し、伝奇劇が必要なサスペンス性とプロット性を提供した。次に、役者は正確に人物 イメージをとらえ、人物の性格がずっとプロットの発展をコントロールし、更に芝居 衝突の中から十分な描写を得た。同時に、芝居の制作レベルの方面で、音楽の節回し から舞台美術設計まで全く新しい突破によって向上させた。そこで、このような現実 的教育意義のあるレパートリーは、また観衆を引きつける伝奇、サスペンスのプロッ トを持っており、役者の巧みで完璧な演技と高い水準の制作によって、上京公演に招 かれ党と国家の指導者の称賛を得られるようになった。連続上演ができ、多くの大衆 を引きつけたのは、容易に理解できる。