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第七章、 小説『沙家浜』

第一節、 小説『沙家浜』事件始末

一、『江南』雑誌社について

『江南』雑誌社は 1980 年杭州で設立され、浙江省作家協会、浙江日報社によって 主宰された。翌年雑誌『江南』を創刊し、中篇小説の発表を主とし、含みのある長篇 小説とその他の体裁の文学作品を併せて掲載した。1982年10月に形や規模が大きい 青年文学季刊に変更し、1983年8月に休刊した。1984年10月に復刊し、最初は季刊

374 薛栄(1969~)、浙江人。第 9 期の上海文学賞、『中国作家』の“大紅鷹”文学賞、浙江省の優秀な 文学作品賞を獲得した。短編小説集『等一個人発瘋需要多久』を出版した。代表的な作品は『記念 碑』『呼吸道』『教育詩』『藍玻璃』『送瘟神』『回家』等がある。嘉興市作家協会の副主席、事務総 長を歴任したことがあった。

375 2 月 22 日の『中国文化報』は張山の「勧君莫罵阿慶嫂」を掲載した。2 月 27 日の『工人日報』は 一刃という署名の「従戯説到胡説」を掲載した。2 月 27 日の『中国青年報』は童大煥の「文学応該保 持尊厳和体面」を掲載した。4 月 25 日の『文匯報』は郝鉄川の「小説『沙家浜』不合理不合法」を掲 載した。『大江南北』雑誌は第 4 号から第 7 号まで特別なコラムを設置して、掲載した関連の文章が合 計で 35 編があり、ここで一つ一つ列挙しない。

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で、1985年1月に隔月刊に変更した。三十余年粘り強く堅持し発展した結果、現在す でに『江南』(隔月刊)、『江南・長編小説月報』(隔月刊)、『詩江南』(隔月刊)の三雑 誌によるトロイカ方式を形成し、江南、全国に広がる「大江南」文学スタイルを確立 している。高光、陸再炎、張盛裕、汪浙成、張暁明らの人たちが『江南』雑誌社で編 集長を歴任した。現在の編集長は袁敏、副編集長は鐘求是である。現在雑誌社には編 集部、発行部、事務部門と江南文学会館があり、正規の職員が 9 人いる。雑誌の類型 は「純文学」刊行物である。376

2003年小説『沙家浜』が掲載された時、雑誌の編集長は張暁明377、副編集長は謝魯 渤378だった。副編集長の謝魯渤もこの小説の責任者である。

小説『沙家浜』が論争を引き起こした後、多数の質疑の声に直面して、編集長の張 暁明は小説『沙家浜』がパロディーではなく、文革期の「高大全」という文学モデル を否定する芸術の探索であると述べた。張暁明は記者の取材を受けた時、「これは模 範劇『沙家浜』と同名の小説である。周知のとおり、模範劇『沙家浜』は「高大全」

という精神による作品で、歴史環境に合わない作品である。この小説はただ「高大全」

という形式を否定する実験的文芸創作に過ぎない。作者は人間性の角度だけで、当時 の歴史条件の下で行われた創作に立脚した。これは「パロディー」と関係がない。」と 言った。同小説の責任者、『江南』雑誌社の副編集長謝魯渤は「当初、この小説を読ん だ時、良いと思い、小説は完全に現実生活における人の本当の気持ち(感情)から始 まり、合理的で心理的な角度から阿慶という主要人物を分析したが、小説の中の阿慶 嫂は二次的な人物になった。我々がこの小説を載せる理由は、ただ一つの実験的で理 性的な創作を行いたいからである」379と述べた。

二、作者の薛栄について

薛栄380(1969~)、浙江人、高校生の時から詩を書き始め、その後小説を書き始めた。

10 年間中学の地理の教師を務めた。第 9 回上海文学賞、『中国作家』「大紅鷹」文学 賞、浙江省の優秀な文学作品賞などを受賞したことがある。その中短編小説は年度小 説ランキング及び多種年度選集に入選した。作品集としては短編小説集『等一個人発

376 『江南』雑誌社 HP(http://www.jiangnan.org.cn/about.asp ) を参照、アクセス日 2012 年 11 月 6 日。

377 張暁明(1945~)、江蘇泗洪人。中国共産党の党員。1970 年に北京大学を卒業した。中国作家協会 の会員。中国作家協会浙江分会の書記処の書記を担当した。長編小説『末代大学生』、中編小説『青山 遮不住』等を書いた。その時に、『江南』雑誌の編集長を担当している。

378 謝魯渤(1949~)、山東莱蕪人。1987 年に武漢大学の作家クラスを卒業した。1975 年に作品を発表 して始めた。1983 年に中国作家協会に参加した。長詩『雪地里的冬青』、詩歌『密密的小樹林』(合 集)『日落回家』、短編小説集『自己的季節』『沈吟的頭』、『旧地重遊』、長編ドキュメンタリー文学

『城北風景』、散文集『独洗蒼苔』などを書いた。『浙江作家報』の編集長を担当した。その時、『江 南』雑誌社の編集部主任、副編集長を担当している。

379 『江南時報』の特派員の友仁、『江南時報』、2003 年 2 月 27 日。

380 薛栄に関する資料は、中国作家網の HP(http://www.chinawriter.com.cn/ )を参照した。アクセ ス日 2012 年 11 月 6 日。

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瘋需要多久』を出版した。中篇小説『記念碑』は中国小説学会が主催した「2000 年度 中国小説ランキング」に入選し、後に『中国中篇小説年鑑』の卷頭に収録された。2001 年には、浙江省第四回青年文学の星賞にノミネートされた。中篇小説を多数創作し、

『呼吸道』は『上海文学』2005 年第十二期に、『教育詩』は『長城』2008 年第一期に、

『藍玻璃』は『上海文学』2008 年第一期に掲載されている。2011 年の『帰家』は『文 学教育』第三期に掲載された。2009 年、浙江省作家協会の契約作家になった。また嘉 興市作協副主席、秘書長に就任した。

2009 年 11 月 21 日、文芸新聞社、中国作家協会創研部、中国青年出版社、『収穫』

雑誌社及び浙江省作家協会は李森祥と薛栄の長編小説『疫病神を送る』の研究討論会 を北京で共同開催した。中国作家協会党組織のメンバー、書記処書記何建明、中国共 産党浙江省委員会宣伝部の副部長、浙江省作家協会党組織の書記呉天行、中国青年出 版社副編集長の李師東、『収穫』副編集長程永新が出席した。研究討論会の席上で、評 論家と学者は、近年、浙江の文学界はずっと文学のリアリズム精神の提唱を堅持して、

より良いリアリズム小説を創作する行動を実施しているが、『疫病神を送る』は正に この行動の中の重要な収穫である。この小説は現代小説の歴史に対する叙述を特に優 れた形で実現した。多くの小説は事件の叙述によって書かれるが、『疫病神を送る』

は人物の性格を形成する中で完成し、歴史を「個性」の中で復活させた。

著名な文学評論家の何西来381は「薛栄の 2005 年からの小説 8 本を細かく読むと、

薛栄は小説を書く素材によって、物語を作り上げ、想像を通して細部まで深く掘り下 げて詳述し、自己の生活の蓄積と情感の蓄積を活性化させ、新たに一つの芸術世界を 作り上げている。またこの世界は相当なレベルで彼の芸術を表現できていると思う。

……薛栄の小説は、題材領域は広範囲に及び、彼の描く人物は、社会の下層階級であ るが、多種多様な職業と仕事に属している。一人の青年作家として、彼は真面目な生 活の蓄積と観察から出発し、重点を異なる人物の運命の掘り下げ方や違った局面の人 間味の展示上に置くことが出来る。これは堅実な広い道である」と述べた。

筆者は作者の薛栄に関して調査した際、発見したのは、2002 年から 2005 年までの 期間、薛栄と薛栄の作品に関する報道はほとんどないこと、更に文学評論家が作品を 評論する時にすべて「2005 年以降の 8 編の小説」を特に強調していることが分かっ た。これが 2003 年『江南』第 1 期が小説『沙家浜』を掲載した後の「文学事件」と 直接に関連があるかどうか、筆者にはまだ分からない。しかし明確になったのは、小 説『沙家浜』発表後、ほぼ二年間薛栄に関する情報がないことである。

381 何西來は(1938~)、陝西臨潼人、有名な文学の批評家である。1958 年に西北大学の中国語学部を 卒業して、中国社会科学院文学研究所の助理研究員、副研究員、研究員、中国社会科学院文学研究所の 副所長、大学院の文学学部の主任、『文学評論』の副編集長、編集長、魯迅文学院などの客員教授を歴 任した。1958 年に作品を発表して初めて、1983 年に中国作家協会に参加した。専門書は『新時期文学 思潮論』『文格与人格』『新時期文学与道徳』(編集長)、『論北京人芸演劇学派』(共著)などがある。

論文集は『探尋者的心踪』『文学的理性与良知』『文芸大趨勢』『京華論評』(共著)、『記実之美』な どがある。散文集は『横坑思縷』『虎情悠悠』等がある。

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三、小説『沙家浜』に関する批判

『江南』が 2003 年の第 1 期に小説『沙家浜』を掲載してから、すぐ広く社会の関 心を引き、新聞雑誌や文学評論家も次々と反応をした。本文は新聞雑誌の報道と学術 的文章を整理し、改めてこの「文学事件」を遡ってみる。

(一)、刊行物と報道

2 月 18 日の『浙江日報』が蕭河の「小説『沙家浜』は何を宣伝しているか」を発表 した。これが最初の批判的報道である。小説は「政治的錯誤がひどい」、「ひどく人民 の感情をひどく踏みにじり、人民の心の中の英雄像を中傷した」と指摘した。

2 月 22 日の『中国文化報』は張山の『阿慶嫂を罵らないよう勧告する』を発表し た。彼はその中で「中編小説『沙家浜』の創作態度は明らかに厳粛ではなく、この時 代の抗日戦争の歴史に対する認識と逆の方向へ向かっている。私達は再び「高大全」

の創作方法で英雄人物を作るわけにはいかないが、それは気の向くままに英雄を侮辱 してもいいということを意味してはいない」と指摘した。

2 月 27 日の『工人日報』は一刀という署名の『パロディーから根拠のない話まで』

を発表した。これは「すでに広く世間に知れ渡り、人々の心の中に根を下ろした人物 と歴史」に対する「でたらめな修正と冒瀆」であり、「この風潮が長引けば、民族の先 進的な文化を壊すだけではなく、更に今後正規の歴史、文化教育はすべて問題になる」

と指摘した。

2 月 27 日の『中国青年報』は童大煥の『文学は尊厳と体面を維持すべきだ』を発表 した。小説『沙家浜』の作者と編集責任者が「思いもよらない話で人を驚かせるため に、またセールスポイントを探すために、少しも他人の尊厳と感受性を顧みないよう になっている。これは我々の社会の文化の病態がすでに驚くほど深刻な状態であるこ とを物語っている」と厳しく叱責した。

2 月 28 日の『工人日報』は滬劇『蘆蕩火種』の著作権を持つ文牧の家族のこの事 件に対する態度を報道した。80 歳近くの文牧夫人篠恵琴は様々な理由で記者による 直接的な取材を受けず、他人を通して自分の意見を述べた。記者は本来の意図に基 づいて整理して報道した。「このような文字或いは文章の出現には反対で、このよう な行為に対して非常に憤慨している。もしあなたが作品を創作するのなら、できる だけ自分の力で生活に深く入り込み、材料を探し集めなさい。『蘆蕩火種』の登場人 物たちの本名を利用する必要はない。このやり方は完全に原作を醜悪化している。

文牧の『蘆蕩火種』は英雄人物を賛美して、社会の中の真善美を賛美するものであ る。現在の社会はこれらを必要とし、尊重している。ではこの小説の作者の目的は 何であろうか。意図と動機は何であろうか。私はこれに非常に憤慨しており、法律 によって控訴する権利を保留する」と言った。

3 月、沙家浜鎮、上海市新四軍歴史研究会はそれぞれ『江南』雑誌社に抗議書を提