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第一章 本研究の背景等

1.4 我が国における HLW 処分に関する取組

1.4.1 最終処分法の制定

1998年(平成10年)5月、HLW処分についての社会的及び経済的観点を幅広く議論 するために原子力委員会が設置した高レベル放射性廃棄物処分懇談会は、処分懇報告書を 発表した。処分懇報告書では、我が国では、いまだに処分事業の具体化がなされておらず、

諸外国と比較しても10年ないし20年余りの遅れがあるとの認識を示した。そのうえで、

処分懇報告書は、HLW 処分の安全性が確保され、また、透明性のある制度に基づき責任 体制が明確化されることによって、処分事業に対する国民及び地域住民の理解を得ること がHLW処分を進めていくうえで必要であり、そのためには、国民各層の間でHLW問題 についての議論が行われ、一人ひとりが自らの身に迫った問題であるとの意識を持つこと が望まれると指摘した。さらに、処分懇報告書では、HLW処分の問題については、政治の 場においても現世代の意思を立法の形で明らかにすることが必要であり、そのためにも、

国民の各層における議論が十分に行われ、国民の理解と信頼を得るように努めること、国、

電力会社、実施主体などの関係機関が一体となって、HLW 処分の制度と体制の具体的な 整備に取り組むことなどを求めた。

処分懇報告書に掲げられたこれらの提言を受け、通商産業省(現在の経済産業省)の総 合エネルギー調査会原子力部会において、処分事業の在り方や処分の実施方法などの検討 が重ねられ、2000年(平成12年)6月、最終処分法が制定された。これにより我が国に おけるHLWの地層処分の実施に向けた基本的な制度的枠組みが整ったのである。最終処 分とは、放射性廃棄物の安全性及びセキュリティを確保するために、社会による継続的な 監視、制度的な担保や保障、資金的、あるいは、人的な資源の投入を伴う能動的な管理に 頼る必要がない状態に処分することである。このような最終処分を目指すのは、数千年、

数万年単位の期間にわたり、「能動的な管理」を継続することが容易ではないためである。

すなわち、HLWの最終処分とは、人の手を離れても大丈夫なように、時間をかけて「能動 的な管理」の部分を減らしながら、最終的に安全な状態にしていく概念である。

最終処分法では、国や電力会社の責任、HLWの処分地選定に関するプロセス、HLW処 分に係る費用の確保、HLW処分の事業主体であるNUMOの設立などが明記されている。

HLW の最終処分を進めるための基本方針や最終処分の全体計画については、経済産業大 臣が策定し、閣議決定を経ることとされている。HLW の最終処分に必要な費用は、電力 会社などHLWを発生させている事業者が「発生者責任の原則」に従って負担することと されており、これらの事業者は最終処分法によりNUMOに対する拠出金を納付するよう 義務付けられている。拠出金単価については、最終処分に要する費用が確実に確保される よう、政府が毎年見直しを行っている。納付された拠出金は、NUMO の内部積立ではな く、原子力環境整備促進・資金管理センター(Radioactive Waste Management Funding

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and Research Center、以下、RWMC)44が管理し、HLWの最終処分事業に必要な費用は、

経済産業大臣の承認を得たうえでRWMCから取り戻すこととなっている。

最終処分法においては、最終処分地の選定に向けて、概要調査地区選定、精密調査地区 選定、最終処分施設建設地選定の三つの段階により進められることとされている。各段階 における調査や評価に関する事項は、法令において明確化されており、このプロセスを省 略して最終処分地を選定することはできない。また、概要調査地区選定に先駆けて、文献 調査を行うこととされている。最終処分地の選定プロセスの各段階においては、十分に時 間をかけて丁寧に調査を行う予定であること、また、一つの段階から次の段階に移行する ためには、住民投票などによる地域住民の合意の確認、地元自治体の意見の聴取や地元自 治体の了解の取得などの手続きを経る必要があることから、文献調査から精密調査地区選 定までは20年程度の期間を要するものと想定されている(図1.4.1)。

図1.4.1 HLWの処分地選定プロセス

出典:原子力・エネルギー図面集8-3-1145より転載

文献調査は、NUMO が調査受入れ自治体の公募を行い、自治体からの応募を受け付け たうえで行う。文献調査後、概要調査地区を定めようとするときは、地元市町村長及び関 係都道府県知事の意見を聴き、これを十分に尊重したうえで定めなければならないとされ ている。NUMOは概要調査地区、精密調査地区、最終処分施設建設地のそれぞれの選定に 際しても、地域の意見に配慮することとされている。加えて、経済産業大臣がNUMOの 調査地区選定を承認する際には、地元市町村長及び関係都道府県知事の意見を十分に尊重 して行い、いずれかが反対の場合には次の段階に進まないこととされている。また、政府

44 RWMCは、最終処分法に基づき経済産業大臣が指定する公益法人。資金管理業務を行う。

45 日本原子力文化財団, 原子力・エネルギー図面集。

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として意思決定を行う場合には、閣議を経ることとされている。なお、後述するとおり、

2007年(平成19年)4月の高知県東洋町の応募取下げを受けて、地方自治体からの文献 調査への応募を待つ公募方式に加えて、国から地方自治体に対して文献調査への協力を求 める申入れ方式によって文献調査を開始する仕組みも取り入れられることとなった。しか し、文献調査に協力する地方自治体が出てこない状況が続いていた。

こうした状況に対し、放射性廃棄物WG(2014)は、広く全国を対象とした調査地域の 公募では、「応募/申入れいずれの場合でも、調査受入れの科学的妥当性(『なぜここか』)

の説明が困難であり、住民の理解が得られないとともに、交付金目当てとの批判を受ける 等、受入れを表明する自治体の説明責任・負担が重くなっている」(放射性廃棄物WG, 2014,

p.24)とし、したがって、「国は、科学的により適性が高いと考えられる地域を示す等を通

じ、地域の地質環境特性を科学的見地から説明し、立地への理解を求めるべき」(同上)と 指摘した。こうした指摘も踏まえ、政府は、文献調査の開始に向け、①国による科学的有 望地の提示(マッピング)、②重点的な理解活動(説明会の開催等)、及び③自治体からの 応募に加え、複数地域に対する国からの申入れ、といった新たなプロセスを導入すること とした46。2017 年(平成29 年)7月、経済産業省は、科学的有望地を提示する科学的特 性マップを公表した。政府としては、科学的特性マップを活用して、全国各地における国 民との対話を積み重ねることにより、国民の理解が深まり、また、複数の地域が文献調査 を受け入れることを期待している。

HLW 処分施設は、他の発電用施設と同様に、文献調査の段階から電源三法交付金の対 象とされている。放射性廃棄物WG(2014)によれば、文献調査の段階では、調査を受け 入れた自治体に対し、1年間に10億円、最大20億円の交付金が支払われ、また、概要調 査の段階では、1年間に 20憶円、最大 70憶円の交付金が支払われることとされている。

電源三法とは、国全体として電力の安定供給を図るため、発電所の立地地域に発電所から 得られる利益が還元されることで発電所の立地を促進することを目的として、1974年(昭 和49年)に制定された『発電用施設周辺地域整備法(昭和49年法律第78号)』、『電源開 発促進税法(昭和49年法律第79号)』、及び『電源開発促進対策特別会計法(昭和49年 法律第80号)』の総称である。国は、電源地域の振興、電源立地に対する国民的理解及び 協力の増進、安全性確保及び環境保全に関する地元理解の増進など、電源立地の円滑化を 図るため、これらの電源三法を根拠に発電所の立地自治体に対し、電源立地地域対策交付 金などを交付する。これを電源三法交付金という。

最終処分法では、HLW 処分事業を進めるために電力会社の発意によって設立された NUMO が、経済産業大臣による監督を受けて、概要調査地区等の選定を含む最終処分地 の選定プロセスの実施、HLW 最終処分の実施、電力会社からの拠出金の徴収などの業務 を行うこととされている。最終処分法では、万一、NUMOが不測の事態により業務困難と なった場合、業務の引継ぎなどの必要な措置が取られ、それまでの間は、経済産業大臣が 業務を引き受けることとされている。また、NUMO は勝手に解散することはできないと されている。HLW の最終処分事業は長期にわたることから、これらの措置は最終処分事 業の安定性確保のうえで必要である。

46 経済産業省(2016)「高レベル放射性廃棄物の最終処分について」(地層処分フォーラム政策 説明参考資料), 2016年(平成28年)3月20日, p.6。

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