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第三章 手続き的公正

3.2 HLW 処分に関する各国の取組

3.2.2 フィンランド

フィンランド90においては、4基(2,784MW(e))の原子力発電所が運転中91である。原 子力発電所で発生した使用済燃料は再処理されず、そのままHLWとして処分される。フ ィンランドでは、原子力施設の許可取得者が放射性廃棄物を処分する責任を有する。1994 年の原子力法改正により、フィンランドの原子力発電所で発生する放射性廃棄物は、使用 済燃料を含めて、自国内で最終処分することとされた。この方針に基づき、1995年、原子 力発電所を運転するフォルツム・パワー・アンド・ヒート社(Fortum Power and Heaty Oy)とテオリスーデン・ボイマ社(Teollisuuden Voima Oyj)は使用済燃料の処分を行う 実施主体としてポシヴァ社(Posiva Oy)を設立している。

フィンランドの HLW 処分に向けたサイト選定は、1983 年に政府が出した放射性廃棄 物の処分目標に関する「原則決定」(Decision in Principle)に基づいて開始された。原則 決定はフィンランド特有の手続きであり、政府や行政省庁が施策を実施する根拠として政 府が決定する文書である。原則決定で定められた事項は民間事業者にも一定の効力が及ぶ とされる。1987年の原子力法改正により、原則決定の手続きはHLW処分場を含む原子力 施設の導入においても不可欠な法的手続きとなった。この手続きでは、事業者が申請する 事業計画が社会全体の利益になるか否かを、まず政府が判断して承認し、そのうえで、政 府による原則決定を文書にして国会に提出し、国会の承認を受けることとされている。政 府が原則決定を行うためには、原子力施設の立地候補地となる地元自治体の文書による同 意が必須とされている。また、フィンランドの原子力規制機関である放射線・原子力安全 センターが、事業内容について安全面から支障がないことを確認する必要もある。原則決 定に係る文書は、その後、事業者が規制当局に対して原子力施設の建設許可申請を行う際 に必要とされる。

90 脚注でとくに参考文献等を示さない限り、フィンランドについては、経済産業省資源エネル ギー庁(2019, pp.33-57)を参照。

91 IAEA(2019)前掲, p.8。

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1983年に政府が出した放射性廃棄物の処分目標に関する原則決定では、HLWの最終処 分地のサイト選定を2000 年末までに終えることを目標として、サイト選定調査を三つの 段階に分け、1983 年から1985 年までにサイト確定調査(主として文献調査によるもの)

を、1986年から1992年までに概略サイト特性調査(地表からのボーリング等によるもの)

を、1993 年から2000 年までに詳細サイト特性調査を、それぞれ進めることを規定した。

1983年から1985年までの間に行われたサイト確定調査では、フィンランド国内の102ヶ 所の地域が選定された。松田(2002)によれば、これらの中から、地質上問題がない、地 震が少ない、活断層がない、人口密度が小さい、原子力発電所から遠くない、自然保護地 区でないなどの条件を踏まえ、また、調査に対する自治体からの同意を得る等のプロセス を経たうえで5ヶ所を選定し、これらの5ヶ所を対象に、1986年から1992年までの間、

概略サイト特性調査が行われた。さらに、1993年から2000年までの間、概略サイト特性 調査の結果でより適したサイトと考えられた4ヶ所について、詳細サイト特性調査が行わ れた。また、これらの 4 ヶ所については、1998 年から 1999 年の間に環境影響評価

(Environmental Impact Assessment、以下、EIA)も実施された。その結果、ポシヴァ 社は、すでに原子力発電所が立地されており、住民の理解が比較的に得やすい地域であっ たユーラヨキ(Eurajoki)のオルキルオト(Olkiluoto)を選定した。そのうえで、1987年 の原子力法改正により導入された原則決定の手続きに基づき、1999 年に政府に申請を行 い、2000年に政府による原則決定が発出され、2001年に国会による承認を得て、最終処 分地としてオルキルオト(Olkiluoto)が正式に選定された。その後、オルキルオト

(Olkiluoto)では、2004年から地下特性調査施設(ONKALO)の建設が開始され、また、

2016年12月から実際のHLW処分施設の建設が開始されている。

フィンランドのサイト選定プロセスにおいて特徴的なことは、サイト決定に求められる 原則決定に関する手続において地元自治体の同意が必要とされる点である。また、自治体 や自治体に住むステークホルダーの意見や要求を反映する手続きが制度面でも確立され ている点も重要である。具体的には、処分場のサイト選定過程において自治体や自治体に 住むステークホルダーの意見を反映するために、EIA手続法に基づき、EIA手続きの中で、

EIAを実施する前のEIA計画書の審査と、EIAを実施した後のEIA報告書の審査の二つ の段階で、ステークホルダーに対してEIA計画書案やEIA報告書案などの情報を開示す るとともに、ステークホルダーからの意見聴取が行われる。まず、EIA計画書案を作成し た段階で、サイト選定対象地域のステークホルダーに対しEIA計画書案を公表し、意見を 求める。なお、EIAの内容は狭い意味での自然環境への影響だけでなく、社会生活への影 響や経済的な影響等を含めた総合的なものである92。また、EIA実施後のEIA報告書につ いても、EIA報告書案の開示とステークホルダーからの意見の聴取が行われる。こうした プロセスにおいて、ステークホルダーから出された意見は意見書としてまとめられる。こ の意見書の中で地元自治体が事業に対して肯定的であることが示されることが、政府が原 則決定を行う際の判断材料となる。さらに、原子力法に基づく原則決定の手続きの中でも、

安全性を含めた処分場の建設及び操業計画について、情報開示と意見聴取が行われる。

92 フィンランドの EIA では、住民の生活条件と全般的な幸福さへの影響、処分場立地の受け 入れに対する住民の意識や、住民の持つ不安やリスクの状況、原子力技術に対する意識、風 評被害など様々な問題についての調査も行われている。

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ポシヴァ社は、このように制度化された情報開示と意見聴取の手続きに加え、HLW 処 分事業計画やEIAに関するステークホルダーの理解を深めるための活動として、ステーク ホルダーが容易に情報を入手できるよう資料を配布するとともに、ステークホルダーが積 極的に参加し、自由に意見を表明できる機会を設けている。たとえば、ポシヴァ社は、HLW 処分事業やEIA について、一般の人びと向けに分かりやすく書いたEIAニュースレター や資料を作成し、自治体内の各世帯に配布したり、ポシヴァ社の現地事務所でHLW処分 事業計画や進捗状況に関する情報、EIA 手続きに関する情報や EIA 報告書を提供したり するなどステークホルダーへの情報提供に努めている。また、パブリック・イベント(催 し物)や少人数のワーキンググループ会合を開催し、ステークホルダーによる意見表明や ステークホルダー間の意見交換を促すためブレーンストーミング(自由討論)の機会を設 けている。これらの会合にはポシヴァ社の専門家も参加し、ステークホルダーの疑問や質 問に答え、また、懸念や心配を聞き、意見や要求を聴取している。さらに、可能な限り多 くのステークホルダーに参加してもらい、活発に議論してもらうため、ポシヴァ社は、様々 な「地域コミュニケーション組織」を設けている。たとえば、自治体の代表者とポシヴァ 社の代表者をメンバーとする「協力とフォローアップのグループ」は、EIAの初期の頃か ら組織され、HLW処分事業に関する様々な問題に加え、HLW処分計画やEIAに関する 手続きや内容等について、ほぼ2ヶ月に一回の頻度で会合を行っている。地域コミュニケ ーション組織などを通じて出されたステークホルダーの疑問や意見は、EIA計画書案の作 成の際に反映され、またEIAを実施する際にも考慮されている。

我が国とフィンランドのHLW問題をめぐる社会的合意形成プロセスを比較した場合、

フィンランドでは、サイト選定に係るEIAや原則決定等の手続きを進めるに当たり、自治 体や自治体に住むステークホルダーの意見や要求を反映する手続きが制度面で確立され ている点が大きく異なる。我が国においても、HLW 処分に関する立地選定プロセスを進 めるに当たり、文献調査から概要調査へ、さらに精密調査へと段階を移行するためには、

住民投票等による地域住民の合意の確認と地元自治体の意見の聴取や地元自治体の了解 の取得等の手続きを経る必要があるが、HLW 処分に関する立地選定プロセスの途中で表 出された地元自治体や住民などのステークホルダーの意見や要求を聴取し、それを HLW 処分事業に反映するような仕組みや手続きについては制度上整備されていない。

一方、フィンランドでは、たとえば、EIA実施前の段階において、EIA計画書案に対す るステークホルダーからの意見の聴取が行われ、EIA計画書案に反映されることとなって いる。また、EIA 実施後のEIA 報告書を作成する段階においても、EIA 報告書案は開示 され、EIA報告書案に対するステークホルダーからの意見の聴取が行われる。ポシヴァ社 は、自治体や自治体に住むステークホルダーに対する情報提供や広報活動を行うだけでな く、EIAプロセスを活用する形で、ステークホルダーによる意見表明やステークホルダー 間の意見交換を促すための機会を積極的に設け、ステークホルダーの疑問や質問に答え、

懸念や心配を聞き、意見や要求を聴取し、これらをEIAの計画や実施に反映している。ま た、ポシヴァ社が地元のために設けた会合や地域コミュニケーション組織は、ポシヴァ社 と地元との対話や議論を通じて、ステークホルダーとの相互理解の深化やステークホルダ ーによる処分事業への主体的参加の促進が図られていることが特徴である。

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