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第三章 手続き的公正

3.2 HLW 処分に関する各国の取組

3.2.6 イギリス

イギリス99においては、15基(8,923MW(e))の原子力発電所が運転中である100。政府 は、温室効果ガスの排出量抑制やエネルギー安全保障の観点から、2030年代までに電力供 給の脱炭素化を目指し、再生可能エネルギー、原子力発電などを用いた多様なエネルギー ミックスを構築する考えである。2013年12月には、民間による原子力発電への新規参入 や投資を促すことを目的とした新たなエネルギー法が制定されている。

イギリスにおいては、2006年、HLWの地層処分に関する政策決定が公開討論を通じて 政府に勧告してもらうという方式で実施された。これは、放射性廃棄物に関する政府の取 組に関して市民の信頼を得るためには、公開討論を通じた議論が不可欠であるという認識 によるものである。また、公開討論そのものの運営の在り方や組織についても、市民から の意見を求めた。2003年、政府は、公開討論の運営や政策提案を行う組織として、委員長 を含む13名を公募、選出し、放射性廃棄物管理委員会(Committee on. Radioactive Waste Management、以下、CoRWM)を設置した。日本学術会議(2012)によれば、CoRWM は、原子力政策の所管官庁からも、またHLW処分の実施機関からも完全に独立した組織 であり、CoRWMの委員は、原子力政策、環境科学、環境法、経済学などの分野の学識経 験者や環境保護団体の創設者によって構成されていた。

CoRWMは、「公衆・利害関係者参加プログラム」(Public and Stakeholder Engagement Programme)を進め、放射性廃棄物の管理の在り方について、技術面やコスト面に関する 論点だけでなく、社会的側面や倫理的観点からも検討し、協議を行った。2006年、CoRWM は、政府に対し、HLWの管理に当たって取り得る選択肢を勧告した報告書101を提出した。

日本学術会議(2012)によれば、この勧告において注目される論点は、すでに専門家の間 では地層処分のみが取り得る技術的選択肢であると理解されていたにも関わらず、再度、

考えられる主要な技術的選択肢(例:海洋底処分、宇宙処分等)の利害得失を決め打ちせ ず一から評価し、そのうえで地層処分を取るべき選択肢として勧告したことであり、また、

地層処分場が設置されるまではHLWを中間貯蔵すること、そして、この中間貯蔵プログ ラムは将来あり得る地層処分の遅延や困難にも対応できるものであることを明示したこ とである。また、勧告をまとめる際には、委員会の内部での議論のみに依存せず、委員会 の会合はすべて公開で行われ、開催場所もイギリス国内を巡回した。さらに、技術的事項 の検討は専門家パネルで多数かつ幅広い分野の専門家の協力を得て行われ、また、市民か らの意見は市民パネルや立地地域での円卓会議等を通じたステークホルダー・インボルブ メントの手法により聴取された。

政府は、CoRWMの勧告を受け入れ、HLW等の地層処分を含む管理方針を決定した。

また、処分事業の実施主体は、HLW 等の中間貯蔵の責任を有していた原子力廃止措置機 関(Nuclear Decommissioning Authority、以下、NDA)とされた。CoRWMの勧告にお

99 脚注でとくに参考文献等を示さない限り、イギリスについては、経済産業省資源エネルギー 庁(2019, pp.131-154)を参照。

100 IAEA(2019)前掲, p.9。

101 Committee on Radioactive Waste Management (CoRWM)(2006) Managing our Radioactive Waste Safely, July 2006。

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いては、地層処分場の立地選定における成功要因として、自治体の主体的参加と地域社会

(コミュニティ)とのパートナーシップ(互恵関係)が示されていた。2008年6月、政府 は、『白書:放射性廃棄物の安全な管理―地層処分の実施に向けた枠組み』102を公表し、地 層処分場のサイト選定の進め方や初期スクリーニングの基準を明確化したうえでサイト 選定プロセスを開始した。

サイト選定プロセスは、CoRWMの勧告に従い、自治体の主体的参加と地域社会とのパ ートナーシップを重視した公募方式で行われた。具体的には、サイト選定プロセスは、① 自治体からの関心表明、②不適格な地域を除外する初期スクリーニング、③自治体でサイ ト選定プロセスに参加するか否かを判断、④机上調査、⑤地表からの調査、⑥地下での活 動(調査、建設を含む)の6段階に分けられた。最初の三つの段階は、自治体と政府が議 論する期間であり、第一段階では、自治体がサイト選定プロセスへの参加を確約しなくて も、その関心を表明するだけで十分であるとされた。また、第二段階の不適格である場所 を選別するための調査は、処分実施主体ではなく、地質調査所(British Geological Survey、

以下、BGS)が実施した。第三段階では、自治体は、BGSによる調査結果を得てから、サ イト選定プロセスへの参加を検討し、プロセスへの参加意思を正式に決定することができ ることとされた。第四段階以降は、処分事業の実施主体であるNDA が調査を実施するこ ととされていた。また、第四段階の前までに地域立地パートナーシップが設立され、地元 の意見を反映できる形で選定作業が進められることとなっていた。なお、イギリスのサイ ト選定プロセスでは、第六段階の地下での調査及び建設が始まるまでは、自治体が選定プ ロセスから撤退する権利をいつでも行使できることが保障されていた。しかし、2013年1 月、関心表明を行っていたカンブリア州西部の自治体がサイト選定プロセスから撤退する こととなった。この結果、2008年から進められていたサイト選定プロセスは終了した。

サイト選定プロセスの終了を受け、2013 年 5 月、政府はサイト選定プロセスの見直し に着手し、これまでのサイト選定プロセスに関する経験から教訓を見出すため、サイト選 定プロセスに参加した者、関心を持って観察してきた者から意見を収集した。そして、集 められた意見に基づき、2013年9月に『協議文書:地層処分施設のためのサイト選定プロ セスのレビュー』103(以下、協議文書)を公表し、約3ヶ月間の公開協議を行った。協議 文書では、自治体からの関心表明を含む自治体の主体的参加及び地域社会とのパートナー シップに基づくアプローチを維持しつつ、自治体が十分に準備を整える前に何らかの約束 を迫られる状況に追い込まれないよう配慮する考えを示した。

政府は、2014 年 4 月に放射性廃棄物管理の全体計画策定などを担う実施主体として、

放射性廃棄物管理会社(Radioactive Waste Management、以下、RWM社)をNDAから 分離する形で設立した。また、政府は、2014年7月、HLW等の地層処分施設の設置に向 けた新たなサイト選定プロセスを示した報告書『地層処分―高レベル放射性廃棄物等の長

102 Department for Environment, Food and Rural Affairs(2008) Managing Radioactive Waste Safely – A Framework for Implementing Geological Disposal, (A White Paper by Defra, BERR and the devolved administrations for Wales and Northern Ireland), June 2008。

103 Department of Energy and Climate Change(2013) Consultation Review of the Siting Process for a Geological Disposal Facility, September 2013。

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期管理に向けた枠組み』104を公表した。同報告書で示された新しいサイト選定プロセスで は、サイト選定に関する活動の期間を大きく二つに分けている。まず、2014年から2016 年の約2年間は初期活動の期間と位置付けられ、この期間では、自治体に対し、地質、社 会・経済的影響、自治体への投資等の地層処分施設に関連する情報の提供を行うこととし ている。自治体が地層処分に関する技術的事項及び実施主体と自治体との協働事項の両方 に関して明確かつ証拠に基づいた情報を得ることにより、より安心してサイト選定プロセ スに参加できるようになると考えられている。また、初期活動の期間では、スコットラン ドを除くイギリス全土を対象とした地質学的スクリーニングの実施や自治体との協働プ ロセスの策定などが行われることとなっている。なお、地質学的スクリーニングは、今後 自治体が地層処分施設の設置について検討する際に必要な地質学的情報に容易にアクセ スできるようにすることを目的としており、地層処分施設の設置に向けたエリアの判定や 絞り込みに使用するものではないと位置付けられている。また、2016年以降の15年間か ら 20 年間は、初期活動での成果に基づき、関心を表明した自治体と実施主体との間で地 質調査の実施などに関する正式な協議に入ることとされている。また、サイト選定プロセ スからの撤退権についても明確化されており、自治体が地層処分施設の設置についての住 民の支持を確認するまでは、いつでもプロセスから撤退できるとされている。

政府は、2018年12月、2014年7月の報告書で示されたサイト選定プロセスの初期活 動が概ね完了したことから、新たな政策文書『地層処分の実施―地域社会との協働:放射 性廃棄物の長期管理』105(以下、政策文書)を公表し、改めてサイト選定プロセスを開始 した。この政策文書で示されたサイト選定プロセスでは、地層処分施設の設置に関心を有 する者はRWM社との初期対話を開始することができるとされている。また、より具体的 な検討に進む場合には、その地域が含まれる自治体に報告し、地域社会全体での対話に発 展させることとなっている。地域社会全体での対話では、RWM社、関心を有する者、独 立したグループ長及びファシリテータによるワーキンググループを設置し、市議会、州議 会などの自治体組織の参加も得ながら議論を進め、地層処分施設の立地に向けた調査エリ アを特定していくこととされている。また、ワーキンググループの活動によって調査エリ アの範囲が定まっていくにつれて、地域社会における情報共有や、地層処分、サイト選定 プロセス及び地域への便益に関する対話と理解を促進するため、コミュニティパートナー シップを設立することとされており、メンバーには少なくとも一つの自治体組織が参加す ることが求められている。政府は、地域社会のサイト選定プロセスへの関与を促進するた め、コミュニティパートナーシップを形成する地域社会に対し、サイト選定プロセスの初 期段階においては1地域当たり年間最大で100万ポンドを、さらに地下深部ボーリング調 査の実施に至った際には年間最大250万ポンドを、それぞれ資金提供することとしている。

政策文書においては、自治体組織が果たす重要な役割である住民支持の調査及び確認と 撤退権に関する条件を明確にしている。とりわけ、撤退権に関しては、住民支持の調査及

104 Department of Energy and Climate Change(2014) Implementing Geological Disposal – A Framework for the Long-term Management of Higher Activity Radioactive Waste, July 2014。

105 Department for Business, Energy and Industrial Strategy(2018) Implementing Geological Disposal – Working with Communities, December 2018。

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