法 務
3 コーポレート・ガバナンスに関する制度の改善 (※)
1 規制の現状と進捗状況 制度の概要
【取締役会、監査役会、株主代表訴訟制度】
・取締役会は、会社の業務の執行を決定し取締役の職務の執行を監督することとされている。(商法第260条第1項)
しかしながら、従来の実務では、後者の監督機能が果たされているかは疑問がある。
・取締役会は、定められた重要事項の業務執行の決定につき、取締役に委ねることができない。(商法第260条第2 項)執行役員については、権限・責任が明確化されていない。
・監査役は、取締役の職務執行を監査する。監査役は、取締役、支配人、使用人に対し営業報告を求め、会社業務及び 財産の状況を調査することができる。(商法第274条)しかしながら、例えば、社外取締役に監査機能を与えるこ とはできない。
・6か月以上株式を保有していれば、取締役の責任を追及する株主代表訴訟の提起を請求することができる。(商法第 267条)
【株主総会】
・株主名簿の閉鎖期間及び基準日の設定は、3か月以内と定められている。(商法第224条の3)
・株主総会の決議事項については、商法で定められた役員・監査役の報酬の決定、計算書類(利益処分等)の報告・承 認、又は定款に定められた事項を決議することとされている。(商法第230条の10、第269条、第279条、
第283条)
・株主総会の特別決議は、発行済株式総数の過半数にあたる株主の出席が求められ、必要多数として出席株主の議決権 の3分の2以上が求められている。(商法第343条)
・株主提案権行使期間は、会日の6週間前までとなっている。(商法第232条の2第1項)
政府の対応(規制緩和 推進3か年計画)
・株主総会の在り方については、他の関連する制度との関係、コーポレート・ガバナンスに関する議員立法の動向等に 留意しつつ、株式会社の経営の効率化を図り、その業務執行の適正を確保することにより、株主の権利を実現すると いう観点から、会社の機関の在り方、会社の情報の適正な開示の在り方等を含め総合的に検討し、結論を得て、順次 所要の措置を講ずる。(平成12年度検討、結論を得て、順次措置)
進捗状況、検討状況 ・平成12年4月から、法務省の法制審議会商法部会会社法小委員会において検討されている。
2 論点整理
(注)・◇は当委員会の規制改革の意見・考え方であり、◆は◇に対する所管省庁等の説明や意見・考え方を示す。
・(IT関連)は、IT化関連の論点を含むことを示す。
【取締役会及び監査役会の在り方及び株主代表訴訟制度の改善】(IT関連)
論点1:企業の経営や組織が様変わりする中で、企業の統治システム(コーポレート・ガバナンス)の自由度を高くする観点から、取締役会及 び監査役会等を含めた組織の見直しと個々の取締役・監査役・執行役員の権限の明確化、株主代表訴訟制度の改善を行うべきではないか。
◇企業活動の「効率性」と「健全性」と確保するために、取締役会・監査役(会)等を含めた組識の見直しと個々の取締役・監査役・執行役員の 権限・責任の明確化が必要ではないか。
◇外国人株主の増加など企業の経営や組織が様変わりしている中で、商法で定められている企業の統治システム(コーポレート・ガバナンス)を より自由度の高いものにすべきとの指摘が多くなされている。企業が変化していく経営環境に対応していくためには、選択制の採用、規模・公 開性の考慮、ガイドラインの活用、取締役会におけるテレビ会議の認容、といったより弾力性のある法体系が必要ではないか。
◇株主代表訴訟制度については、実際上有効かつ合理的に活用できるよう制度の充実を図るべきではないか。
◇透明性の確保とディスクロージャーは、コーポレート・ガバナンスの基本であることから、例えば、取締役・監査役の人事については、そのプ ロセスの中に、株主等に対する透明性を確保することが必要ではないか。
◆執行役員制度の導入、会社の機関相互の権限や株主代表訴訟制度の見直しは、会社の組織の在り方の根幹にかかわるものであるから、その改正 を検討するに当たっては、まず、現行の制度自体にどのような問題があるのか、その原因は何であるのかについて具体的に明らかにしなければ ならず、その上で、その問題点を解消するために有用な方策として、上記制度の導入や見直しが適合するものなのか、他により合理的な方策は 採り得ないのか等について、検討する必要がある。
現在、法制審議会商法部会会社法小委員会において、上記の観点から検討を継続しているところである。
【株主総会制度の改善】
論点2:株主総会については、株式会社の経営の効率化を図り、その業務執行の適正を確保することにより、株主の権利を実現するという観点 から、会社の機関の在り方、会社の情報の適正な開示の在り方等を検討すべきではないか。
◇株主名簿の閉鎖期間及び基準日の設定は3か月以内と定められているため、株主総会は期末日から3か月以内に開催することになる。招集通知 発送から総会開催日までの期間に余裕を作り、株主(特に外国人)の議案検討期間を確保するといった観点から考えると、この制度を廃止(定 款で定めることとする)あるいは緩和(6か月など)することを検討すべきではないか。なお、配当の支払時期が遅くなるといったデメリット については、下記◇で述べる「利益処分を株主総会の決議でなく取締役会の決議で決定する」ことにより早期支払が可能となる。また、ディス クロージャーの後退といった点に関しては、後退の姿勢を見せる企業に対しては、株主の評価が厳しくなることから、市場の評価・判断に委ね るべきではないか。
◇株主総会の決議事項の中で、利益処分については、株主総会の決議でなく取締役会の決議で決定することが可能であれば、配当を現在よりも早 く払えるようになり、株主の利益にもなる。また、役員報酬についても、取締役会決議で決定できることとすれば企業の機動性を高められる。
その際は、株主に対するディスクロージャーの後退を避ける観点から、事後開示を充実させることが必要である。また、取締役会決議につき各 取締役が責任を負うことは言うまでもない。したがって、ついては、利益処分及び役員報酬を株主総会の決議事項から取締役会の決議事項に移
行することを検討すべきではないか。
◇株主総会特別決議の定足数の見直し、株主提案権行使期限の繰上げについては、規制緩和推進3か年計画(再改定)を踏まえ、検討状況を注視 していく。
◆株主総会の取締役会に対する権限委譲にかかわる一般論については、会社の機関相互の権限の見直しとして、論点1において述べたとおりであ り、上述の観点から検討を継続しているところである。
なお、個別事項に関しては、改正の必要性について具体的に明らかにする必要があるとともに、株主名簿の閉鎖期間及び基準日の設定期限の 上限については株式の流通に対する障害となり得るものであること、利益処分の確定については会社の所有者である株主の固有権であるとの指 摘もあること、役員報酬については現行規定の趣旨の確保が必要であること等の根本的な問題も存在する。
4 100%子会社における機関の在り方の見直し
1 規制の現状と進捗状況
制度の概要 ・100%子会社については、それが大規模な会社であっても、株主は親会社1社だけである。にもかかわらず、多数 の株主を前提としたコーポレート・ガバナンスの規制が適用されている。
政府の対応(規制緩和 推進3か年計画)
記載なし。
2 論点整理
(注)・◇は当委員会の規制改革の意見・考え方であり、◆は◇に対する所管省庁等の説明や意見・考え方を示す。
・(IT関連)は、IT化関連の論点を含むことを示す。
【100%子会社における機関の在り方の見直し】(IT関連)
論点:100%子会社については、株主である親会社の合意があれば、債権者保護に関する規定を除いて、一定の範囲で商法の強行規定の適用 を排除することを認めてもよいのではないか。
◇100%子会社は、株主が親会社1社に限定されている。その場合、株主である親会社と会社の役員との議論を経て、会社の重要事項について 意思決定がなされているにもかかわらず、商法上の規定があることにより、余分な手間やコストが掛かっている。株主である親会社の決定があ れば、株主総会を省略することができるようにしてもよいのではないか。
◇100%子会社については、親会社が執行や監査をする選択肢を認め、取締役の員数は1名以上とし、また、監査役については親会社が法人監 査役となることを認めてもよいのではないか。
◆完全子会社の機関の在り方に関しては、一定の範囲で商法が定める強行規定の適用を排除することが許容され得るかについて、現在、法制審議 会商法部会会社法小委員会において検討が行われているところであるが、この検討に当たっては、個々の規定ごとに適用排除の可否、排除の仕 方、代償措置の要否等を個別具体的に検討するとともに、さらに、設立後に完全子会社になった場合や完全子会社でなくなった場合に関する移 行措置等を検討する必要がある。
なお、完全子会社においては、株主は文字どおり完全親会社のみであるが、判例上、一人会社については、その株主さえ出席すれば、招集手 続がなくても、株主総会は成立するものとされているから、株主総会を省略する必要性は薄いと考えることもできる。また、完全親会社自身が 監査等を行うことととすることについては、監査役の権限として現行法で認められているものの取扱いをどうするのか、また、そもそも、その ような会社に独立した法人格を付与できるのか等の問題が生じ得る余地がある。