法 務
1 エクイティ・ファイナンス手段の多様化
1 規制の現状と進捗状況 制度の概要
【優先株】
・会社は利益、残余財産の分配又は利益による株式の消却について、内容の異なる数種の株式を発行することができる。
(商法第222条第1項)その一つが優先株である。
・無議決権優先株の株数は、発行済株式総数の3分の1を超えることができない。(商法第242条第3項)
【トラッキング・ストック】
・トラッキング・ストックとは、経営権や組識形態を分けずに特定部門又は特定の子会社の業績を基礎に市場から資金 調達を行う種類株式である。
・現在の商法では、定款への記載方法、ディスクロージャーの在り方等について明確になっていない。
【1株当たり純資産規定及び株式発行授権枠】
・1株当たり純資産額は、5万円を下回ってはならない。純資産額の計算の基礎については、最終の貸借対照表による。
(商法218条第2項後段等)
・会社が発行する株式の総数は、発行済株式総数の4倍を超えて増加することができない。(商法第347条)
政府の対応(規制緩和 推進3か年計画)
記載なし。
進捗状況、検討状況
・平成12年4月から、法務省の法制審議会商法部会会社法小委員会において検討されている。
・優先株の発行限度枠については、産業活力再生特別措置法の中で、時限的な措置として、商法上の3分の1から2分 の1へ拡大する措置が講じられている。
2 論点整理
(注)・◇は当委員会の規制改革の意見・考え方であり、◆は◇に対する所管省庁等の説明や意見・考え方を示す。
・(IT関連)は、IT化関連の論点を含むことを示す。
【優先株について発行枠の拡大や発行手続の簡素化等制度の整備】(IT関連)
論点1:優先株については、資金調達手段の多様化の観点から、発行枠の拡大や発行手続の簡素化等といった商品性の改善により、制度を整備 すべきではないか。
◇平成2年の法改正により、無議決権優先株の株数は発行済株式総数の4分の1から3分の1に拡大された。産業活力再生特別措置法では、債務 の株式化の為の環境整備の一環として、発行限度枠を商法上の3分の1から2分の1へ拡大する措置が講じられている。今後、MBO
(Management Buyout)等の実施に伴う場合など、(無議決権)優先株発行による資金調達ニーズが強まることが考えられることから、商法
においても、発行限度枠を拡大すべきではないか。
◆無議決権優先株は平成2年の法改正後もほとんど利用されていないことから、その発行限度枠の拡大については、実務界の現実のニーズを把握 した上で検討をすべきものと認識している。
◇株式の消却原資を配当可能利益額の範囲内とする制約については、平成10年の消却特例法改正により、公開会社について、時限的だが、法定 準備金(資本準備金と利益準備金の合計)が資本金の4分の1を超える場合、超えた額の範囲内の資本準備金で株式の買入れ消却が認められて いる。これを恒久化し、商法本体に取り込むべきではないか。
◆資本準備金による株式の消却は減資と実質的に同じ効果を持つことから、その恒久化については、減資手続に係る規制との整合性を確保する必 要があることを踏まえた議論が必要である。また、商法上、資本準備金等の法定準備金の使途は限定されており、資本制度の在り方を含めて検 討を行う必要がある。
◇株主の側からの転換のみが認められる転換株式については、会社側からの転換権も容認すべきではないか。
◆現行法においても、優先的内容の明確性及び客観性を害しない範囲で、種類株式の優先的内容に解除条件若しくは期限を付すことは可能と解さ れている。
【トラッキング・ストックの導入】
論点2:トラッキング・ストックについて、株式による資金調達手段の多様化を図る観点から、環境を整備すべきではないか。
◇現在の商法でも、数種の株式を発行することができるものとされているが、定款への記載方法、ディスクロージャーの在り方等についての環境 整備が必要ではないか。
◇残余財産の分配について、親会社が倒産した場合は子会社の資産について解散時に優先的に配当できるようにする一方で、子会社が倒産した場 合、発行体自体は存続しているので、発行体が時価で株式を買い取るような優先株が認められるべきではないか。
◆親会社が発行した株式に、別法人であり、かつ、株主の払込資金が投下されていない子会社の資産に対する優先的な残余財産分配請求権を認め ることは困難である。また、子会社が倒産した場合の指摘については、償還条項の定め方の問題である。
◇トラッキング・ストックを発行した後、子会社の株式公開、他社との合併、事業売却等の事業再編時に、発行会社が任意に償還すること(現金、
親会社普通株式、子会社普通株式などを対価として)ができる(可逆性を確保する)ようにすべきではないか。
◆償還条項若しくは優先的内容の解除条件の定め方の問題である。
【1株当たり純資産規定の廃止及び株式発行授権枠の拡大】(IT関連)
論点3:株式分割の自由を高め流動性を確保する観点から、1株当たり純資産規定を廃止するとともに、株式発行授権枠を拡大すべきではない か。
◇情報通信関連等の高株価企業が自由に株式分割を行うことができず、流動性の阻害要因になっている。株式分割によって株数が増えて1株当た り純資産額が減っても、資本基盤が弱くなるわけではないので、1株当たり純資産額を5万円以上にする規制は合理的といえなくなってきてい
る。米国ではこのような規制はなく、また、発行済株式数の設定は株主の判断に任され、十分な数量の株式の発行が可能である。出資単位の細 分化の防止は、法律で規制せず、基本的には市場原理に基づき個々の企業が株主管理コストの負担との兼ね合いで行えばよいのではないか。
◆株式分割における純資産額規制については、現行法が規律する投資単位に関する他の規定に対する影響を考慮しながら検討を行う必要がある。
◇現在の授権資本制度の下では、新規発行株式数が発行済株式数の4倍を超える時は、株主総会を開いて定款変更する必要がある。特に、株式分 割の場合などは、既存株主の権利を侵害するものではない。株式発行授権枠については、現在の4倍を拡大してもよいのではないか。
◆授権資本枠は、株主保護の見地から、発行株式数に関する取締役会の権限を制限する趣旨のものである。授権資本枠の拡大については、機関の 権限分配の在り方にもかかわる問題であり、株式分割の場合に既存株主の権利を侵害するものではないという理由だけで、一般的に授権資本枠 を拡大することはできない。