• 検索結果がありません。

ても進展する率は 22~25%3)7)8)であり,相当数が消退する.特に 30 歳未満の若年女性や妊婦では消 退することが多い3)9)~11).また,レーザー蒸散術を除き,子宮頸管の切除は早産や低出生体重児の増加 など周産期予後を悪化させる可能性が指摘されている12)13).以上より,若年女性や妊婦はフォローが原 則である.フォローアップの方法としては,3~6 か月ごとに細胞診とコルポスコピーを併用して CIN1 よりも厳重に行う.もともとの細胞診が,SCC が疑われるにもかかわらず,組織診が CIN2 であった というような細胞診・組織診不一致例で診断的頸部切除が必要な場合には過度の切除を避ける配慮が望 まれる.

 3.ハイリスク HPV のなかでも子宮頸がん発症のリスクは検出される HPV のタイプによって異なる ので14),CIN1/2 患者のフォローアップにおいて HPV タイピング検査の結果はリスク評価に有用と考 えられる15).わが国の主要 HPV 論文のメタアナリシス16)の結果からは浸潤癌からの検出頻度が高い HPV16,18,31,33,35,52,58 の 7 つのタイプで進展リスクが高いと推定される.わが国の 前方視的研究では,9 施設の CIN1/2 患者 185 例をフォローアップしたコホートスタディにおいて HPV16,18,33,52,58 の 5 つのタイプ陽性の患者で CIN3 への進展リスクが有意に高かったこ とが報告されている17).わが国で行われた LSIL/CIN1/2 患者 570 例をフォローアップしたコホート スタディ(JHACC スタディ)では,前述のメタアナリシスでとくにリスクが高いと考えられた 7 つの タイプ(HPV16,18,31,33,35,52,58)のいずれかが陽性の病変では有意に自然消失しに くく(P<0.0001),かつ CIN3 へ進展しやすいこと(P=0.0001)が裏付けられている3).CIN3 への進展リスクは,ハイリスク HPV 陰性患者の進展リスクを 1.0 として比較した場合に,HPV16 で は 11.1 倍,HPV18 では 14.1 倍,HPV31 では 24.7 倍,HPV33 では 20.3 倍,HPV35 では 13.7 倍,HPV52 では 11.6 倍,HPV58 では 8.9 倍高い(このうち,HPV16,31,33,52,

58 では統計的に有意)が,ほかのハイリスクタイプ(HPV39,51,56,59,68)では 4.0 倍程 度である.CIN2 が 5 年以内に CIN3 に進展する可能性は HPV16,18,31,33,35,52,58 の 7 タイプのいずれかが陽性の症例では 40.5% であるが,それ以外の症例では 8.3% しかない.同様 に,CIN1 が 5 年以内に CIN3 に進展するリスクは 7 タイプのいずれかが陽性の症例では 16.6% であ るが,それ以外の症例では 3.3% にすぎない.また,ASC-US,LSIL および CIN2 以下の HSIL 患者 1,467 例のコホートスタディでもこの 7 タイプのいずれかが陽性の症例ではそれ以外の症例と比較し て CIN3 への進展リスクが高いことが示されているが,7 タイプのなかでも HPV16,18,33 ではと くに CIN3 への進展リスクが高いことが報告されている18).わが国では頸がんからの HPV45 の検出頻 度は極めて低いが16),海外では HPV16,HPV18 に次いで検出頻度が高いので14),HPV45 も HPV16,

18,31,33,35,52,58 と同等に取り扱うべきと考えられる.

 これらの結果から,HPV タイピング検査を行った場合には,HPV16,18,31,33,35,52,

58 の 7 タイプに 45 型を加えた合計 8 タイプのいずれかが陽性の CIN1/2 患者とそれ以外の CIN1/2 患者では区別して管理することが勧められる.

 図 1 に HPV タイピング検査を行った場合の本書の CIN1/2 の管理指針を提示した.ハイリスク HPV13 タイプを区別できるフルタイピング検査を日常臨床に導入している国はわが国以外にはないた め,HPV タイピング検査を取り入れた CIN1/2 の管理指針を提唱している海外ガイドラインは今のと ころ皆無である.しかしながら,CIN1 と CIN2 では CIN3 への進展リスクが明らかに異なること,ま た上述のように HPV タイプによって進展リスクが明らかに異なることから,CIN グレードと HPV タ イプによって管理指針を分けることは妥当と考えられる.本書(2014・2017 年)では HPV タイピ ング検査を行う場合の CIN1/2 の管理指針は,1)わが国の多施設共同コホート研究では,HPV16,

18,31,33,35,45,52,58 の 8 タイプのいずれかが陽性の CIN2>同 8 タイプ陽性の CIN1

54 ガイドライン婦人科外来編

>同 8 タイプ陰性の CIN2>同 8 タイプ陰性の CIN1 の順で CIN3 への進展リスクが高かったため,こ の順でフォローアップ間隔を短くした.2)海外ではただちに治療の対象としている CIN2 については,

HPV16,18,31,33,35,45,52,58 の 8 タイプのいずれかが陽性の CIN2 では CIN3 への 進展リスクが格段に高いため,ただちに治療の対象とすることも容認した.フォローアップ間隔も含め 最適な CIN 管理指針を決めるために十分なエビデンスは依然として不足しているため,本管理指針は絶 対的なものではなく今後も 3 年ごとのガイドライン改訂の際に会員のコンセンサスに基づいて改訂が 検討される予定である.

 4.妊娠女性を除き,1~2 年間のフォローアップで自然消退しない場合3),HPV16,18,31,

33,35,45,52,58 のいずれかが陽性である場合,本人の強い希望がある場合,何らかの理由に より継続的な受診が困難な場合では CIN2 は治療の対象としてもよい.組織診で CIN2 と診断された症 例の中に上皮内癌が 14.8%,微小浸潤癌が 3.2% にみられたとの報告もあり19),CIN2 の診断の難し さがある.また CIN のフォローにおいては多施設コホート研究においても脱落例がおよそ 10% にみら れたとの報告がある3).上記の実状を考慮するならば,経過観察を原則としているわが国においても CIN2 に対しては選択的に外科的介入も容認される.治療は,LEEP(loop electrosurgical excision procedure)(CQ 205 参照),レーザー蒸散(CQ 205 参照),電気メス・laser・cold knife などを 用いた円錐切除術で行うが,将来妊娠を希望する患者には必要最低限の切除など可能な限り妊娠時の流 早産リスクを上げない配慮が望まれる.冷凍治療法は治療後に浸潤がんの発生が多いという報告があ る20)

文 献

1) Moscicki AB, et al.: Regression of low-grade squamous intra-epithelial lesions in young women. Lancet 2004; 364: 1678―1683 PMID: 15530628 (II)

2) Schlecht NF, et al.: Human papillomavirus infection and time to progression and

下げ ●表番号のない表で見出しらしきものがあるときはタイトル扱いとする(12Q じゅん 34) ●表中:11Q 12H または 16H じゅん 101 ●脚注:11Q  じゅん 101 16H 

【統一事項】●図表とタイトルのアキ 2.5 mm ●ローマ数字は二バイトⅠ・Ⅱなどを使用 ●イタリックは従属書体の斜体 10 度

(図 1) HPV タイピング検査を行う場合の管理指針

55 ガイドライン婦人科外来編

regression of cervical intraepithelial neoplasia. J Natl Cancer Inst 2003; 95: 1336―

1343 PMID: 12953088 (II)

3) Matsumoto K, et al.: Predicting the progression of cervical precursor lesions by human papillomavirus genotyping: a prospective cohort study. Int J Cancer 2011; 128: 2898―

2910 PMID: 20734388 (II)

4) Wright TC Jr, Massad LS, Dunton CJ, Spitzer M, Wilkinson EJ, Solomon D: 2006 consen-sus guidelines for the management of women with cervical intraepithelial neoplasia or adenocarcinoma in situ. Am J Obstet Gynecol 2007; 197: 340―345 PMID: 17904956 (Guideline)

5) Wright TC Jr, Massad LS, Dunton CJ, Spitzer M, Wilkinson EJ, Solomon D: 2006 consen-sus guidelines for the management of women with abnormal cervical cancer screening tests. Am J Obstet Gynecol 2007; 197: 346―355 PMID: 17904957 (Guideline)

6) Massad LS, et al.: 2012 updated consensus guidelines for the management of abnormal cervical cancer screening tests and cancer precursors. Obstet Gynecol 2013; 121:

829―846 PMID: 23635684 (Guideline)

7) Östör AG: Natural history of cervical intraepithelial neoplasia: a critical review. Int J Gyne-col Pathol 1993; 12: 186―192 PMID: 8463044 (II)

8) Holowaty P, Miller AB, Rohan T, To T: Natural history of dysplasia of the uterine cervix. J Natl Cancer Inst 1999; 91: 252 PMID: 10037103 (I)

9) Melnikow J, Nuovo J, Willan AR, Chan BK, Howell LP: Natural history of cervical squamous intraepithelial lesions: a meta-analysis. Obstet Gynecol 1998; 92: 727―735 PMID:

9764690 (I)

10) Yost NP, Santoso J, Mcintire DD, Iliya FA: Postpartum regression rates of antepartum cervical intraepithelial neoplasia II and III lesions. Obstet Gynecol 1999; 93: 359―362 PMID: 10074979 (III)

11) Peto J, et al.: Cervical HPV infection and neoplasia in a large population-based prospective study: the Manchester cohort. Br J Cancer 2004; 91: 942―953 PMID: 15292939 (I) 12) Kyrgiou M, Koliopoulos G, Martin-Hirsch P, Arbyn M, Prendiville W, Paraskevaidis E:

Obstet-ric outcomes after conservative treatment for intraepithelial or early invasive cervical lesions: systematic review and meta-analysis. Lancet 2006; 367: 489―498 PMID:

16473126 (I)

13) Arbyn M, et al.: Perinatal mortality and other severe adverse pregnancy outcomes associ-ated with treatment of cervical intraepithelial neoplasia: meta-analysis. BMJ 2008; 337:

a1284 PMID: 18801868 (I)

14) Smith JS, et al.: Human papillomavirus type distribution in invasive cervical cancer and high-grade cervical lesions: a meta-analysis update. Int J Cancer 2007; 121: 621―632 PMID: 17405118 (III)

15) Wheeler CM, Hunt WC, Schiffman M, Castle PE: Atypical Squamous Cells of Undetermined Significance/Low-Grade Squamous Intraepithelial Lesions Triage Study Group. Human papillomavirus genotypes and the cumulative 2-year risk of cervical precancer. J Infect Dis 2006; 194: 1291―1299 PMID: 17041856 (II)

16) Miura S, et al.: Do we need a different strategy for HPV screening and vaccination in East Asia? Int J Cancer 2006; 119: 2713―2715 PMID: 16929495 (III)

17) Yokoyama M, et al.: Prognostic factors associated with the clinical outcome of cervical intraepithelial neoplasia: a cohort study in Japan. Cancer Lett 2003; 192: 171―179

56 ガイドライン婦人科外来編

PMID: 12668281 (II)

18) Hosaka M, et al.: Incidence risk of cervical intraepithelial neoplasia 3 or more severe lesions is a function of human papillomavirus genotypes and severity of cytological and histological abnormalities in adult Japanese women. Int J Cancer 2013; 132: 327―334 PMID: 22729477 (II)

19) 植木 健:子宮頸部初期病変に対する管理法と治癒的円錐切除法への確立へのアプローチ.日産婦誌  2006; 58: 1752―1759 医中誌:2007029379(III)

20) Melnikow J, McGahan C, Sawaya GF, Ehlen T, Coldman A: Cervical intraepithelial neoplasia outcomes after treatment: long-term follow-up from the British Columbia Cohort Study. J Natl Cancer Inst 2009; 101: 721―728 PMID: 19436026 (II)

Answer

診断・治療としての LEEP は

1.‌‌組織診で確認された CIN3(高度異形成あるいは上皮内癌)で,病変の全範囲がコ ルポスコピーで確認でき,病変が頸管内深くに及んでいない場合に行う. (B)

2.‌‌組織診で確認された CIN2(中等度異形成)では,1. の CIN3 での適用条件を満た せば,CQ204‌ Answer‌4.に従って対象にすることができる. (B)

治療としてのレーザー蒸散は

3.‌‌複数回の組織診で確認された CIN3 で,病変の全範囲がコルポスコピーで明瞭に確 認でき,頸管内病変がない場合に,若年女性に限って行うことができる. (C)

4.‌‌複数回の組織診で確認された CIN2 では,3. の CIN3 での適用条件を満たせば,

CQ204‌ Answer‌4.に従って対象にすることができる. (B)

Key words

:LEEP,レーザー蒸散,子宮頸部円錐切除術,低侵襲代用法

▷解 説

 LEEP(loop electrosurgical excision procedure),レーザー蒸散は子宮頸部円錐切除術の低侵襲 代用法として day surgery(日帰り手術)が可能な有用な治療法であるが,その特性を熟知し,症例を 選択して行うことが肝要である.

 1.LEEP は局所麻酔下に簡便に病変組織を切除できるが,切除範囲が広い場合は複数切片(平均 1.88 個1),平均 3.4 個2))となり,切除標本の組織再構築が困難となることがある.子宮腟部全体に病 変が広く及ぶような場合,頸管内深くに病変が存在する可能性がある場合,明らかに浸潤癌が疑われる 場合は,診断の正確性と治療の根治性を高めるために,通常の円錐切除術を選択するのが妥当と考えら れる.CIN の治療として円錐切除法,冷凍治療法,laser ablation,LEEP の成績を評価するため,21 文献(RCT)からの 3,811 症例を検討したメタ分析3)では,CIN の grade に関係なく,病変の消失率 はいずれの方法も差はなく,治療後に浸潤癌の発生は報告されていないが,中央観察期間が 12 か月と 短いため,長期予後は評価できていない.長期のフォローで LEEP やレーザー蒸散を含む CIN 治療例 全体の浸潤がんになるリスクは比較コホートより高いとの報告もある4).したがって,LEEP による CIN の保存治療後は長期のフォローアップが必要である.

 2.CIN2 は American Society for Colposcopy and Cervical Pathology のコンセンサス・ガイ ドライン(2006 年5)・2012 年6))では治療の対象とされているが,相当数(43%7),2 年以内で 33%8),5 年以内で 63%8),10 年以内で 82%8))が自然消退するので,治療することもフォローす ることもいずれも妥当と考えられる.1~2 年のフォローアップで自然消退しない場合,HPV16,18,

31,33,35,45,52,58 のいずれかが陽性の場合,本人の強い希望がある場合,継続的な受診が 困難な場合は,医師の判断により LEEP 治療することが容認されると考えられる(CQ204 Answer 4. 参照).

Outline

関連したドキュメント