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的には CA19-9・CA72-4・CA15-3・CEA・STN の中から選択する.若年者の場合は,胚細胞腫瘍 が多いため,AFP・hCG・CA125・LDH の検査を行う1)8)~11)

3)MRI

 卵巣腫瘍の診断において,MRI は非常に有用である.骨盤内臓器である子宮や卵巣に対しては,CT よりも MRI 検査が優れている.T1 および T2 強調画像に加えて,造影 MRI を行うと,より一層良悪 性の診断をつけやすくなる.MRI で悪性を疑わせる所見は,表 1 が代表的なものである12)

4)CT

 CT は,一般的に骨盤内臓器である卵巣には,不向きである.しかし,リンパ節腫脹や遠隔転移など を検出するためには,有用である.悪性が疑われる場合には,造影 CT を行う.

 2.長径 6cm 以上の囊胞では,捻転のリスクが高く,手術を勧める.長径 6cm 未満では,捻転のリ スクが低いため,経過観察を勧める報告が多い13).なお,妊娠中の卵巣囊胞の取り扱いについては産婦

(図 1) 卵巣腫瘤のエコーパターン分類

Ⅰ型

Ⅱ型

Ⅲ型

Ⅳ型

Ⅴ型

Ⅵ型

囊胞性パターン

(内部エコーなし)

囊胞性パターン

(内部エコーあり)

混合パターン

混合パターン

(囊胞性優位)

混合パターン

(充実性優位)

充実性パターン 分類不能

(表 1) MRI での卵巣癌の診断基準 主所見

囊胞部分と充実性部分の混在

隔壁の不規則な肥厚,隔壁内の結節の存在 腫瘍内壊死や出血の存在

内部構造の不均一な造影効果の存在 随伴所見

生理的範囲を逸脱した腹水の存在 リンパ節の腫大

周囲への拡大浸潤傾向

腹膜,腸間膜,大網への播種巣の存在

100 ガイドライン婦人科外来編

人科診療ガイドライン産科編 CQ504 を参照されたい.

 3.未熟奇形腫は若年者に多く,全奇形腫の 3% にみられること,成熟囊胞性奇形腫の悪性転化は 40 歳以上に多く,1~2% にみられることから14),長径 6cm 未満でもこのような腫瘍を考える場合は,

手術を考慮する.また,手術する場合は,囊腫摘出と付属器切除の選択,腹腔鏡手術と開腹手術の選択 について,説明のうえで決定することが重要である.

 4.手術をしない場合で,機能性囊胞や良性と考えられる卵巣囊胞の場合は,最初は月経周期を考慮 して,1~3 か月後に再診をする15).また,貯留囊胞など 3~6 か月で変化するものが疑われる場合は,

3~6 か月ごとに経過を観察する16).手術を選択するか,経過を観察するかについては,それぞれの利 点とリスクをよく説明し同意を得たうえで,管理を続けていくことが必要である(図 2).

 5.最終的な良悪性の診断は,病理組織学的検査によること,また,手術をしないで臨床的に診断す る場合の精度には,限界があることを説明する.

文 献

1) Curtin JP: Management of the adnexal mass. Gynecol Oncol 1994; 55: S42―S46 PMID:

7835810 (II)

2) Crayford TJB, Campbell S, Bourne TH, Rawson HJ, Collins WP: Benign ovarian cysts and ovarian cancer: a cohort study with implications for screening. Lancet 2000; 355:

1060―1063 PMID: 10744092 (II)

3) 小林 浩:症例から学ぶ生殖医学 4)子宮内膜症/子宮腺筋症卵巣チョコレート囊胞と癌化.日産婦誌  2005; 57: N351―N355 医中誌:2006007039(II)

4) 石原楷輔,唐沢忠夫,吉松和彦,竹内正弥,崎山武文,塩原和夫:【婦人科疾患の画像診断】婦人科超音 波診断の実際.産婦治療 2006; 92: 15―24 医中誌:2006082238(III)

5) 日本超音波医学会用語・診断基準委員会:卵巣腫瘤のエコーパターン分類の公示について.J Med Ultrasonics 2000; 27: 912―914

https://www.jsum.or.jp/committee/diagnostic/pdf/ranso.pdf#search=’%E6%97%A5%E 6%9C%AC%E8%B6%85%E9%9F%B3%E6%B3%A2%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E4

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(図 2) 卵巣腫瘤の診断と管理のフローチャート

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86%E9%A1%9E’(最終アクセス日 2015 年 6 月 18 日)(III)

6) 崔  華,竹内久彌:超音波断層法ならびに超音波カラードプラ法による卵巣悪性腫瘍の診断.超音波 医学 2001; 28: J109―J119 医中誌:2001233961(II)

7) 小林 浩:【産婦人科でのスクリーニングの実践】婦人科 卵巣癌のスクリーニング 2)腫瘍マーカー.

産婦の実際 2006; 55: 1875―1878 医中誌:2007051304(II)

8) Freydank MK, Laubender RP, Rack B, Schuhmacher L, Jeschke U, Scholz C: Two-marker combinations for preoperative discrimination of benign and malignant ovarian masses.

Anticancer Res 2012; 32: 2003―2008 PMID: 22593479 (II)

9) Donach M, et al.: Combined use of biomarkers for detection of ovarian cancer in high-risk women. Tumour Biol 2010; 31: 209―215 PMID: 20393825 (II)

10) Tanyi JL, Scholler N: Oncology biomarkers for gynecologic malignancies. Front Biosci 2012; 4: 1097―1110 PMID: 22201939 (III)

11) Aggarwal P, Kehoe S: Serum tumour markers on gynaecological cancers. Maturitas 2010; 67: 46―53 PMID: 20510555 (III)

12) Stevens SK, Hricak H, Stern JL: Ovarian lesions: detection and characterization with MR imaging at 1.5T. Radiology 1991; 181: 481―488 PMID: 1924792 (III)

13) Houry D, Abbott JT: Ovarian torsion: a fifteen-year review. Ann Emerg Med 2001; 38:

156―159 PMID: 11468611 (III)

14) 安田 允,田中忠夫監修:婦人科腫瘍病理アトラス,東京:金原出版,2003; 68―76(III)

15) MacKenna A, Fabres C, Alam V, Morales V: Clinical management of functional ovarian cysts: a prospective and randomized study. Human Reprod 2000; 15: 2567―2569 PMID: 11098028 (II)

16) Alcázar JL, Castillo G, Jurado M, García GL: Is expectant management of sonographically benign adnexal cysts an option in selected asymptomatic premenopausal women? Hum Reprod 2005; 20: 3231―3234 PMID: 16024535 (III)

102 ガイドライン婦人科外来編

Answer

1.問診,BBT,腹部所見,超音波所見などから総合的に診断する. (B)

2.腹腔内出血を認めた場合,異所性妊娠を除外する. (B)

3.‌‌多量の腹腔内出血が疑われ,バイタルサインが不良の場合,あるいは,血色素量が 急激に低下し出血の持続が疑われる場合は,緊急手術を行う. (B)

Key words

:出血性黄体囊胞,卵巣出血

▷解 説

 1.卵巣出血は婦人科急性腹症の代表的な疾患である.

 1)成因は多様で腹腔内出血をきたす婦人科急性腹症では異所性妊娠に次いで頻度が高い.広義の卵 巣出血は,その成因により,外因性・内因性・特発性の 3 者に分類される1).外因性卵巣出血の成因は,

外傷性(IVF-ET などの採卵,卵巣手術,腹部外傷など)と非外傷性(子宮内膜症や悪性腫瘍などの卵 巣への波及によるもの)に分けられ,内因性卵巣出血の成因には,全身性の血液凝固異常や抗凝固剤の 服用,過排卵刺激に起因する局所の循環動態の破綻などがある.特発性卵巣出血には,卵胞出血および 出血性黄体囊胞からの出血がある.排卵に伴う断裂血管からの出血が卵胞出血であり,卵胞出血による 血液が黄体内に貯留して血腫を形成し囊胞化したものが出血性黄体囊胞である.卵巣出血は,出血性黄 体囊胞から腹腔内へ出血したものが多い.

 2)発症年齢は,12~52 歳までの報告があり生殖年齢全般にわたる.その分布は 20 歳未満が 12%,

41 歳以上が 10% であり,特に好発年齢を認めない2).経妊・経産には有意差はない2)3).症状は,急 性の下腹部痛を主訴とすることが多い.圧痛・筋性防御などの腹膜刺激症状のほかに,悪心・嘔吐・下 痢などの消化器症状も呈する.腹痛の程度は,出血の程度によりさまざまである.

 3)診断では,問診により月経周期,性交の有無と時期,出血傾向や抗凝固剤の使用などの既往歴,

不妊治療の有無,腹痛の状態を聴取する.月経周期との関係は,黄体期である第 15 日から第 28 日ま でが最も多く,出血性黄体囊胞による卵巣出血の頻度が高い.卵胞出血は排卵期の前後となる.また,

性交がきっかけとなることが多く3),部位は左よりも右に多い.これは解剖学的に直腸および S 状結腸 がクッションとなるためと考えられている2)

 2.画像診断  1)超音波検査

 腹腔内出血の診断は,経腟超音波検査でダグラス窩の echo free space を確認することでほぼ可能 であるが,迷う場合は,ダグラス窩穿刺による小凝血塊の混じった非凝固性血液の吸引も有用である.

前述のように,卵巣出血のほとんどが出血性黄体囊胞であり,その超音波所見は,主に出血後の凝血の 形成やその吸収などの時間的推移により多彩で,以下の 4 つのエコー像に分類される4)5)

 ①びまん性高輝度点状・線状エコー像:比較的新しく,少量の卵巣内出血を表す.

 ②比較的境界明瞭な充実性部分様エコー像:卵巣内出血後の溶血過程で,凝血と血清部分が分離し,

その境界が画像上比較的明瞭に示される.

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