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変をもたない一過性の不顕性 HPV 感染が特に sexual activity の高い 20 代の若年女性に多いことに 起因しており,米国食品医薬品局(FDA)は 30 歳以上の女性に限って細胞診との併用を承認し,米国 のガイドラインは 21~29 歳の女性には細胞診のみによる 3 年ごとの検診を推奨している3)4).  30 歳以上の女性に対して細胞診とハイリスク HPV 検査を併用して両方とも陰性の場合は,検査し た時点で CIN 2 以上の病変があるのに見逃されている可能性はほとんどないと考えてよい1)~5).さら に,細胞診とハイリスク HPV 検査の両方が陰性の場合はその後 5~10 年のあいだに CIN 2/3 以上の 病変がみつかる確率も極めて低いため7)8),米国のガイドラインでは次のスクリーニング検査は 5 年後で よいとしている3)4).また,米国ガイドラインでは,併用検診において細胞診が陰性であってもハイリス ク HPV 検査陽性の場合はすでに病変をもっていて見逃されている可能性と今後病変を生じてくる可能 性があるので,12 か月後に両方の再検査が推奨されている3)4).あるいは,HPV16 型もしくは 18 型 陽性者では CIN 3 以上の病変のリスクが高いため9)~11),細胞診陰性で簡易ジェノタイピングで HPV16 型もしくは 18 型陽性の場合はただちにコルポスコープ検査を,HPV16 型および 18 型が陰性の場合 は 12 か月後に細胞診とハイリスク HPV 検査の両方の再検を行うというオプションがリコメンデー ションに加わっている3)4).この根拠として,簡易ジェノタイピングを用いた ATHENA(Addressing THE Need for Advanced HPV Diagnostic)スタディの中で,30~69 歳で細胞診が陰性(NILM)

でも HPV16 型もしくは 18 型が陽性であれば CIN 2 以上の病変が発見されるリスクは 11.4%

(95%CI 8.3~14.7%)であり,HPV16 型と 18 型以外のハイリスク HPV 陽性者の 4.6%(95%CI 3.5~5.7%)に比べて有意に高く,またハイリスク型 HPV 陰性者では 0.8%(95%CI 0.3~1.5%)

と低かったことが示されている11).さらに,この研究の中で様々な検診のトリアージ方法を分析した結 果,HPV 検査を用いた検診に 16/18 型の簡易ジェノタイピングと細胞診トリアージを加えることが CIN 3 以上の検出に効率的であったとしている12).わが国では現在のところ,HPV16 型もしくは 18 型を他の型と区別できるハイリスク HPV 検査として,コバス®4800,アキュジーン®HPV が体外診断 薬として承認を受け使用できる.

 欧州の主要国では,イタリア(NTCC trial, New Technologies for Cervical Cancer Screening trial)13), オ ラ ン ダ(POBSCAM trial, Population-Based Screening Study Amsterdam trial)14)15),イギリス(ARTISTIC trial, A Randomised Trial In Screening To Improve Cytol-ogy)16),スウェーデン(Swedescreen)17)18)の各国で行われた大規模な縦断的ランダム化比較試験の データをもとに,30 歳以上の女性に対してはハイリスク HPV 検査単独検診(子宮頸がん検診の 1 次 検診検査としてハイリスク HPV 検査を施行し,陽性の女性には 2 次検査として細胞診を行うトリアー ジ方式)を推進する動きがみられる.これらの RCT では,従来の検診方式である細胞診単独群と,HPV 検査を導入した併用群の 2 群に振り分けて,1 回目と 2 回目(3~5 年後)の計 2 回の検診データを 検討している.これまでの横断的研究と同様に,1 回目の検診データの解析から,ハイリスク HPV 検 査は CIN 2 以上の病変の検出感度において細胞診よりも約 45% 感度が高いことが示された.さらに注 目すべきことは,初回の検診でハイリスク HPV 陰性であった女性では細胞診陰性であった女性と比較 して 2 回目の検診(3~5 年後)において CIN 3 以上の病変が約 50% 減少したことである.イタリ ア・オランダの研究では,頸がんの減少も統計的に有意であった.これは,ハイリスク HPV 検査の方 が CIN 3 以上の病変のリスクの高い女性を細胞診よりも早くみつけるためと考えられており,HPV 検 査のもつ優れた頸がん予防効果を示している.オランダのデータでは14),5 年後の 2 回目の検診で CIN3 以上の病変がみつかるリスクは,初回の検診で HPV 検査陰性の場合は 0.2% であり,HPV 検査・細 胞診の両方に陰性であった場合(0.1%)よりも高いが,集団検診では容認されるといわれているリス ク(2% 未満)よりもはるかに低い.米国での 315,061 名の併用検診後のフォローアップ・データ8)

48 ガイドライン婦人科外来編

でも,5 年以内に頸がんがみつかるリスクはハイリスク HPV 検査陰性であった女性では 3.8 人/10 万 人/年で,HPV 検査と細胞診の両方に陰性であった女性(3.2/10 万人/年)よりもわずかに高いが,

それでも細胞診陰性であった女性(7.5/10 万人/年)の約半分であった.これらのデータは,ハイリス ク HPV 検査を頸がん検診に導入する場合に費用対効果を考慮すると必ずしも細胞診と併用する必要は ないことを示すデータともいえる.オランダはこれまで 30~60 歳に 5 年ごとの細胞診による頸がん 検診を行ってきたが,自国での費用対効果も検討したうえで世界に先駆けて 2016 年より HPV 検査単 独検診と陽性者の細胞診トリアージを実施し,40 歳または 50 歳でハイリスク HPV が陰性の女性は 検診間隔が 10 年に延長されることになっている19)

 日本では,現在一部の自治体が細胞診・HPV 検査併用検診を導入・施行している.ハイリスク HPV 検査をわが国の子宮頸がん検診に導入することについては,上記のようなハイリスク HPV 検査の特長 を活かして細胞診・HPV 検査の併用検診を推奨する動きがある20)一方で,HPV 検査を導入することに 伴う有効性と不利益(過剰検査・過剰診断に伴う過剰治療)のエビデンスが十分でないとの意見もあ る21).わが国の子宮頸がん検診(とくに対策型検診)にハイリスク HPV 検査を導入するにあたっては,

医療経済学的な検討も含めて運用面での検討が必要である.

 2.米国ガイドラインでは,細胞診が ASC-US の場合にはハイリスク HPV 検査を行って,HPV 陰 性者は 12 か月後の再検でよいが,HPV 陽性者ではただちにコルポ診を行うことが推奨されている1)~4). 米国ガイドラインの基礎データを提供した ALTS(ASCUS-LSIL Triage Study)にて,ハイリスク HPV 陽性の ASC-US の女性にただちにコルポ診を行った場合に CIN 2 以上の病変がみつかるリスク は 17.9% であり,LSIL(low-grade squamous intraepithelial lesion)の場合(17.8%)と同等 であった22).同様に,2 年以内に CIN 2/3 と診断されるリスクも LSIL と同等(約 27%)であること が報告されている.このようにハイリスク HPV 陽性 ASC-US は LSIL と同様のリスクと考えられてい るので,LSIL と同様にただちにコルポスコープ検査を行う3)4)23).一方,ハイリスク HPV 陰性の ASC-US では 2 年以内に CIN 3 以上の病変がみつかるリスクは 1.4% で,ハイリスク HPV 陽性 ASC-US の場合の 10 分の 1 しかなく細胞診陰性の場合とほぼ同等であるので24),ハイリスク HPV 陰 性の ASC-US は 1 年後の再検でよいとされている.わが国でも ASC-US に対して,ハイリスク HPV 一括判定としての HPV DNA®キアゲン HCII およびアプティマ®HPV と,簡易ジェノタイプ判定とし てのコバス®4800 とアキュジーン®HPV が,施設基準を満たす届け出施設では保険適用となっている.

 3.ハイリスク HPV 検査は CIN 治療後のフォローアップにおいて病変の残存・再発の早期発見に有 用であるとする報告がある25)~29).ハイリスク HPV 検査を行うタイミングについては,治療 6 か月後 に行っているスタディが多い.長井らは円錐切除術を行った CIN 3 患者 58 例の前方視的研究を報告し ている25).治療前にハイリスク HPV DNA 陽性であった 56 例のうち,45 例(80%)が円錐切除後 に HPV DNA 陰性になった.治療前からハイリスク HPV DNA 陰性だった症例 2 例も含めて円錐切除 後にも陰性であった症例では一例もCINの再発をみなかったが,円錐切除後も引き続きハイリスクHPV DNA 陽性であった 11 例中 5 例(45.4%)で CIN の再発がみられた.米国ガイドライン3)4)では,CIN 2/3 治療後のフォローアップでは 12 か月後と 24 か月後に細胞診とハイリスク HPV 検査の両方を行 い,その両方が陰性であった場合はさらにその 3 年後に再度細胞診とハイリスク HPV 検査の両方を行 うことが勧められている.いずれかの検査で陽性であった場合はただちにコルポスコープ検査を行う.

すべての検査が陰性の場合は通常のがん検診プログラムに戻ってよい(ただし,治療後少なくとも 20 年間はフォローアップする)としている3)4)

文 献

1) Wright TC Jr, et al.: Interim guidance for the use of human papillomavirus DNA testing as an adjunct to cervical cytology for screening. Obstet Gynecol 2004; 103: 304―309 PMID: 14754700 (Guideline)

2) American College of Obstetricians and Gynecologists: ACOG Practice Bulletin No. 99:

management of abnormal cervical cytology and histology. Obstet Gynecol 2008; 112:

1419―1444 PMID: 19037054 (Guideline)

3) Massad LS, et al.: 2012 updated consensus guidelines for the management of abnormal cervical cancer screening tests and cancer precursors; Obstet Gynecol 2013; 121:

829―846 PMID: 23635684 (Guideline)

4) Saslow D, et al.: ACS-ASCCP-ASCP Cervical Cancer Guideline Committee: American Can-cer Society, American Society for Colposcopy and Cervical Pathology, and American Soci-ety for Clinical Pathology screening guidelines for the prevention and early detection of cervical cancer. CA Cancer J Clin 2012; 62: 147―172 PMID: 22422631 (Guideline) 5) Mayrand MH, et al.: Canadian Cervical Cancer Screening Trial Study Group: Human

papil-lomavirus DNA versus Papanicolaou screening tests for cervical cancer. N Engl J Med 2007; 357: 1579―1588 PMID: 17942871 (I)

6) Cuzick J, et al.: Overview of the European and North American studies on HPV testing in primary cervical cancer screening. Int J Cancer 2006; 119: 1095―1101 PMID:

16586444 (III)

7) Kjaer S, et al.: The absolute risk of cervical abnormalities in high-risk human papillomavi-rus-positive, cytologically normal women over a 10-year period. Cancer Res 2006; 66:

10630―10636 PMID: 17062559 (II)

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Lancet Oncol 2011; 12: 663―672 PMID: 21684207 (II)

9) Kjær SK, Frederiksen K, Munk C, Iftner T: Long-term absolute risk of cervical intraepithelial neoplasia grade 3 or worse following human papillomavirus infection: role of persistence.

J Natl Cancer Inst 2010; 102: 1478―1488 PMID: 20841605 (II)

10) Khan MJ, et al.: The elevated 10-year risk of cervical precancer and cancer in women with human papillomavirus (HPV) type 16 or 18 and the possible utility of type-specific HPV testing in clinical practice. J Natl Cancer Inst 2005; 97: 1072―1079 PMID: 16030305 (II)

11) Wright TC Jr, Stoler MH, Sharma A, Zhang G, Behrens C, Wright TL; ATHENA (Addressing THE Need for Advanced HPV Diagnostics) Study Group: Evaluation of 16 and HPV-18 genotyping for the triage of women with high-risk HPV+cytology-negative results. Am J Clin Pathol 2011; 136: 578―586 PMID: 21917680 (I)

12) Cox JT, Castle PE, Behrens CM, Sharma A, Wright TC Jr, Cuzick J; Athena HPV Study Group. Comparison of cervical cancer screening strategies incorporating different combi-nations of cytology, HPV testing, and genotyping for HPV 16/18: results from the ATHENA HPV study. Am J Obstet Gynecol 2013; 208: 184.e1―184.e11 PMID:

23174289 (II)

13) Ronco G, et al.: New Technologies for Cervical Cancer screening (NTCC) Working Group:

Efficacy of human papillomavirus testing for the detection of invasive cervical cancers and

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