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110 ガイドライン婦人科外来編

れている.このような場合は長期に安全に使用可能な薬剤として,低用量エストロゲン・プロゲスチン 配合薬もしくはプロゲスチンを第 1 選択薬として使用する.まず,コストとリスクの観点からは低用量 エストロゲン・プロゲスチン配合薬が使用しやすい3).特に月経困難症については高い有効性が示され ており4),鎮痛剤でコントロール不良なレベルの疼痛があれば,子宮内膜症の進行予防という観点から も早期から投与を検討するべきであると考えられる.わが国ではノルエチステロン・エチニルエストラ ジオール錠(ルナベル配合錠 LD およびルナベル配合錠 ULD)およびドロスピレノン・エチニルエス トラジオール錠(ヤーズ)が月経困難症に対して保険適用が認められている.プロゲスチンは欧米では 酢酸メドロキシプロゲステロン,ノルエチステロンが用いられることが多いが,わが国で子宮内膜症に 対して保険適用が認められているプロゲスチンはジドロゲステロン(デュファストン)と 2008 年に 発売されたジエノゲスト(ディナゲスト)である.ジエノゲストはプロゲステロン作用の特異性が高く アンドロゲン作用などの副作用が少ない特徴により,単独で長期に使用可能であり,低用量エストロゲ ン・プロゲスチン配合薬でコントロール不良な症例にも有効性が期待されている5).特に,血栓症のリ スクという観点から低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬が使用しにくい 40 歳代の症例では有用 な薬剤である.

 一方,GnRH アゴニストやダナゾールは,副作用(GnRH アゴニストではエストロゲン低下によるの ぼせ,ほてり,骨量減少,不眠,うつ症状,ダナゾールでは体重増加,浮腫,ざ瘡,肝機能障害,血栓 症)のため使用期間の制限があり,長期的な管理には向いていないため,低用量エストロゲン・プロゲ スチン配合薬やジエノゲストの普及により最近では用いられることが非常に少なくなった.なお,

GnRH アゴニストを 4~6 か月投与して排卵抑制をはかった後にジエノゲストを開始することでジエノ ゲストによる不正出血を予防し,長期管理を可能とする方法も報告されている6)

 3.レボノルゲストレル放出子宮内システム(ミレーナ)は,欧米では 1990 年代はじめから子宮 内膜症や子宮腺筋症に伴う月経困難症を軽減させる目的で用いられてきており,9 論文を集めたシステ マティックレビューで子宮内膜症に伴う疼痛への有効性が示され7),2014 年のコクランレビューでも 子宮内膜症の痛みに対して有効であると述べられている8).英国のガイドライン9)や ESHRE(欧州ヒト 生殖学会議)3)のガイドラインでも子宮内膜症に伴う疼痛に対する治療選択肢のひとつとして推奨され ている.しかし,チョコレート囊胞などの病巣そのものに対する効果については明らかなエビデンスは ない.1 回の挿入で約 5 年間の効果が期待される7).全身へのホルモン作用がほとんどないため,血栓 や低エストロゲンによる副作用なく比較的安全に使用できるが,不正出血や脱出を起こすこともあり注 意が必要である7).わが国では 2014 年 9 月に過多月経,11 月に月経困難症に対して保険適用となっ た.

 4.子宮内膜症の治療における手術療法は,薬物療法でコントロールしきれない疼痛の緩和と妊孕性 の改善の 2 つを目的として行われる.腹腔鏡下手術において子宮内膜症の病巣切除を行った場合,診断 のみにとどめた場合に比較して有意に疼痛症状が改善され(80%‌vs‌32%)10),内膜症病巣の処置法に ついては,腹腔鏡下の病巣切除術と病巣焼灼術ともに慢性骨盤痛を有意に改善し,両者の間に有意差は なかったことが示されている11)

 なお,子宮内膜症を伴う不妊症に対して薬物療法が有効であるというエビデンスは認められない.コ クランレビューでは,ダナゾール,GnRH アゴニスト,メドロキシプロゲステロン,ゲストリノン,経 口避妊薬による排卵抑制治療と,プラセボとの比較および無治療との比較で,いずれの薬物も妊孕性の 向上に寄与しないことが示されている12).また,ESHRE のガイドラインでも,軽症の子宮内膜症に対 して妊孕能を向上させる目的で排卵抑制治療を行うことは推奨されていない3).一方,IVF 施行時の排卵 誘発法に関して,コクランレビューでは 3~6 か月の GnRH アゴニストの使用により臨床妊娠率は 4

倍増加することが示されている13)

文 献

1)‌Barbieri‌RL,‌Niloff‌JM,‌Bast‌RC‌Jr,‌Scaetzl‌E,‌Kistner‌RW,‌Knapp‌RC:‌Elevated‌serum‌con-centrationsof‌ CA-125‌ in‌ patients‌ with‌ advanced‌ endometriosis.‌ Fertil‌ Steril‌ 1986;‌45:‌

630―634‌PMID:‌3457709‌(III)

2)‌Gambone‌JC,‌Mittman‌BS,‌Munro‌MG,‌Scialli‌AR,‌Winkel‌CA;‌Chronic‌Pelvic‌Pain/Endome-triosis‌Working‌Group:‌Consensus‌statement‌for‌the‌management‌of‌chronic‌pelvic‌pain‌

and‌endometriosis:‌proceedings‌of‌an‌expert-panel‌consensus‌process.‌Fertil‌Steril‌2002;‌

78:‌961―972‌PMID:‌12413979‌(II)

3)‌Dunselman‌GA,‌et‌al.:‌European‌Society‌of‌Human‌Reproduction‌and‌Embryology:‌ESHRE‌

guideline:‌management‌of‌women‌with‌endometriosis.‌Hum‌Reprod‌2014;‌29:‌400―412‌

PMID:‌24435778‌(Guideline)

4)‌Harada‌T,‌Momoeda‌M,‌Taketani‌Y,‌Hoshiai‌H,‌Terakawa‌N:‌Low-dose‌oral‌contraceptive‌

pill‌ for‌ dysmenorrhea‌ associated‌ with‌ endometriosis:‌a‌ placebo-controlled,‌ double-blind,‌

randomized‌trial.‌Fertil‌Steril‌2008;‌90:‌1583―1588‌PMID:‌18164001‌(I)

5)‌Harada‌T,‌et‌al.:‌Dienogest‌is‌as‌effective‌as‌intranasal‌buserelin‌acetate‌for‌the‌relief‌of‌

pain‌ symptoms‌ associated‌ with‌ endometriosis-a‌ randomized,‌ double-blind,‌ multicenter,‌

controlled‌trial.‌Fertil‌Steril‌2009;‌91:‌675―681‌PMID:‌18653184‌(I)

6)‌Kitawaki‌J,‌Kusuki‌I,‌Yamanaka‌K,‌Suganuma‌I:‌Maintenance‌therapy‌with‌dienogest‌fol-lowing‌gonadotropin-releasing‌hormone‌agonist‌treatment‌for‌endometriosis-associated‌

pelvic‌pain.‌Eur‌J‌Obstet‌Gynecol‌Reprod‌Biol‌2011;‌157:‌212―216‌PMID:‌21474232‌

(II)

7)‌Bahamondes‌ L,‌ Petta‌ CA,‌ Fernandes‌ A,‌ Monteiro‌ I:‌Use‌ of‌ the‌ levonorgestrel-releasing‌

intrauterine‌system‌in‌women‌with‌endometriosis,‌chronic‌pelvic‌pain‌and‌dysmenorrhea.‌

Contraception‌2007;‌75:‌S134―S139‌PMID:‌17531605‌(I)

8)‌Brown‌J,‌et‌al.:‌Endometriosis:‌an‌overview‌of‌Cochrane‌Reviews.‌Cochrane‌Database‌Syst‌

Rev‌2014;‌3:‌CD009590‌PMID:‌24610050‌(I)

9)‌Royal‌ College‌ of‌ Obstetricians‌ &‌ Gynaecologists‌ Green-top‌ Guideline‌ 41:‌The‌ Initial‌

Management‌ of‌ Chronic‌ Pelvic‌ pain.‌ https://www.rcog.org.uk/globalassets/documents/

guidelines/gtg_41.pdf(最終アクセス日 2015 年 8 月 23 日)(Guideline)

10)‌Abbott‌J,‌et‌al.:‌Laparoscopic‌excision‌of‌endometriosis:‌a‌randomized,‌placebo-controlled‌

trial.‌Fertil‌Steril‌2004;‌82:‌878―884‌PMID:‌15482763‌(I)

11)‌Wright‌J,‌et‌al.:‌A‌randomized‌trial‌of‌excision‌versus‌ablation‌for‌mild‌endometriosis.‌Fertil‌

Steril‌2005;‌83:‌1830―1836‌PMID:‌15950657‌(I)

12)‌Hughes‌E,‌et‌al.:‌Ovulation‌suppression‌for‌endometriosis.‌Cochrane‌Database‌Syst‌Rev‌

2007;‌3:‌CD000155‌PMID:‌17636607‌(I)

13)‌Sallam‌HN,‌et‌al.:‌Long-term‌pituitary‌down-regulation‌before‌in‌vitro‌fertilization‌(IVF)‌for‌

women‌ with‌ endometriosis.‌ Cochrane‌ Database‌ Syst‌ Rev‌ 2006;‌1;‌CD004635‌ PMID:‌

16437491‌(II)

112 ガイドライン婦人科外来編

Answer

1.腫脹が軽度で症状がない場合は処置を要しない. (B)

2.‌‌膿瘍を形成して症状が激しい場合には緊急の処置として穿刺・切開,ドレナージに より排膿させ,膿の細菌培養検査と抗菌薬の投与を行う. (B)

3.‌‌手術としてはバルトリン腺の機能を温存する造袋術(marsupialization)が有用で ある. (B)

4.‌‌造袋術を行っても再発する症例,バルトリン腺膿瘍の再発を繰り返す症例,腺実質 に腫瘍が疑われる症例などに摘出術を行う. (B)

5.バルトリン腺がんは非常にまれであるが,疑わしい場合は組織学的検索を行う. (B)

Key words

:バルトリン腺,造袋術

▷解 説

 バルトリン腺囊胞の多くは,バルトリン腺開口部の閉塞により,バルトリン腺そのものが腫脹するよ り導管が囊胞状に拡張したものである.囊胞の内容物は粘液性分泌物であるが,囊胞に感染が起こると 膿瘍を形成する.バルトリン腺囊胞の診断は視診と触診により容易である.炎症所見がない波動性腫瘤 の場合はバルトリン腺囊胞を疑い,炎症所見があれば膿瘍である.鑑別を要する外陰部腫瘤には外陰部 良性腫瘍(線維腫,脂肪腫など),腟壁囊腫,外陰悪性腫瘍(多くはバルトリン腺がん)がある.

 1.バルトリン腺囊胞は小さく,無症状なら,経過観察する.なんらかの症状があれば,治療の対象 となる.炎症が比較的軽い場合は,推定起炎菌に感受性のある広域スペクトルの抗菌薬を投与し,起炎 菌判明後は感受性のある抗菌薬に変更する.抗菌薬は一般的には経口剤で十分であるが,重症の場合は 注射剤も使用する.必要に応じて消炎鎮痛剤を併用し,外陰部の清潔保持を指導して保存的に治療する.

炎症や疼痛が強い場合,膿瘍を形成した場合には保存的治療に加えて外科的治療が必要となることが多 い1)2)

 2.急性期の疼痛除去には穿刺,切開術による排液・排膿が有効であり,外来で緊急に実施できる.

切開術後は排液促進と癒着防止の目的でガーゼドレーンを置くことも多いが,切開術は切開部の癒着に より,再発をきたすことが多い1)2).穿刺あるいは切開により膿汁が確認された場合は細菌培養検査を行 うべきである.必要に応じて抗菌薬感受性試験を行い,抗菌薬を選択する.膿瘍の起炎菌は以前には淋 菌が多かったが,現在ではブドウ球菌,連鎖球菌,大腸菌および嫌気性菌が主体となり,各種細菌の複 合感染を起こしていることが多い1)~3).わが国の性感染症のなかで最も患者数が多いクラミジア・トラ コマティスの報告例4)もあり,注意を要する.

 3.外科的治療には穿刺,切開術,ドレナージ,造袋術(開窓術),摘出術があり,術式の選択は臨床 経過と患者の希望も加味して決定する.外来で実施するのは摘出術以外に限られる2).造袋術(開窓術)

は有症状でカプセルのある囊胞および膿瘍が適応となる5)6).外来で局所麻酔下に実施可能で,バルトリ ン腺の分泌機能を温存でき,開窓部を大きくすれば再発も少なく1),第一選択の術式である.急性期も 禁忌ではないが,開窓部が癒合閉鎖しやすいため,術前から抗菌薬を投与し,消炎しておくと手術操作 が容易で術後経過も良好である.CO2レーザーを用いた開窓術も工夫されており,200 例(うち両側

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