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Answer

1.‌‌年齢,囊胞の大きさ,挙児希望の有無を考慮して経過観察・薬物療法・手術療法の いずれかを選択するが,破裂・感染予防および病理学的診断の観点からは手術療法 が優先される. (B)

2.‌‌手術療法にあたっては,根治性と卵巣機能温存の必要性を考慮して術式を決定する.

(B)

3.‌‌年齢,囊胞の大きさ,充実部分の有無により悪性化のリスクが高い症例では患側卵 巣の摘出を選択する. (C)

4.保存手術を行った場合は再発予防のため,ホルモン療法を行う. (B)

Key words

:‌‌卵巣子宮内膜症性囊胞,手術療法,悪性化,再発予防,低用量エストロゲン・プロゲスチ ン配合薬,プロゲスチン

▷解 説

 1.卵巣はダグラス窩とならび子宮内膜症の好発部位のひとつであり,チョコレート囊胞は子宮内膜 症の一病変である.しかし,悪性を含む多様な卵巣腫瘍との鑑別が必要であること,破裂や感染をきた しやすいこと,病変自体や手術が卵巣機能に直結することなど,他の内膜症病変と異なる特徴を有する.

したがって,治療の基本方針は囊胞性病変を伴わない子宮内膜症と同様であるものの,チョコレート囊 胞の治療では手術療法が優先される.

 また,卵巣がんにおける病理学的な検討でチョコレート囊胞の合併が高頻度に認められることから,

チョコレート囊胞が卵巣がんの発生母地となっている可能性が注目されている.チョコレート囊胞では 薬物療法を選択することもあり,手術療法が選択される場合でも腹腔鏡下卵巣囊胞摘出術を行うことが 多い.したがって,診断においては他の卵巣腫瘍との鑑別を慎重に行う必要がある.チョコレート囊胞 の診断において MRI 検査は有用であり,特に T1・T2 強調画像と脂肪抑制法が有用であり勧められ る1).悪性腫瘍との鑑別で重要な所見は壁の不整や充実性病変であり,これらの所見を認めた場合には,

パワードップラー法や MRI 造影検査により血流の状態を確認することが勧められる.また,子宮内膜症 では血清 CA125 が高値を示すことが多い2)

 なお,ESHRE(欧州ヒト生殖学会議)のガイドラインでは,子宮内膜症が卵巣がんの発症リスクを 多少上昇させるとしても,それを下げる方法が確立していない以上,悪性化との関連を根拠に子宮内膜 症の管理方針を変えるべきではないとの見解を示している3).悪性化予防の観点からだけではなく,病 理学的診断の確定,破裂・感染の予防といった手術を行うメリットと,手術による侵襲や卵巣機能への 負の影響といった手術のデメリットを,総合的に判断し方針を決定することが望まれる.

 2.手術療法として卵巣摘出,囊胞摘出,囊胞壁焼灼などがあげられる.コクランレビューでは,チョ コレート囊胞に対する腹腔鏡下囊胞摘出術は囊胞壁焼灼術に比較して,月経困難症(OR:0.15,95%‌

CI:0.06~0.38),性交痛(OR:0.08,95%‌CI:0.01~0.51),慢性骨盤痛(OR:0.10,95%‌

CI:0.02~0.56)の症状改善率が有意に高く,再発率(OR:0.41,95%‌ CI:0.18~0.93),再 手術率(OR:0.21,95%‌CI:0.05~0.79)は有意に低いことが示されている.また,不妊症例に

おいては,腹腔鏡下囊胞摘出術は囊胞壁焼灼術に比較して,術後の自然妊娠率は有意に高かった(OR:

5.21,95%‌CI:2.04~13.29)が,排卵誘発や人工授精などの不妊治療を行う場合への影響につい ては十分なエビデンスが得られていない4).生殖補助医療を行う場合については,2010 年のコクラン レビューにて,生殖補助医療前の卵巣囊胞に対する外科的介入(囊胞摘出もしくは内容吸引)は,外科 的介入をしなかった場合に比し,臨床妊娠率に有意な利益をもたらさなかったことが示されており,さ らに囊胞摘出は,採卵数には影響しないものの,調節卵巣刺激に対する反応は下げることを示してい る5).同様に,日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会『本邦における子宮内膜症治療が卵巣予備能に 与える影響に関する検討小委員会』の平成 24 年度の調査でも,囊胞既往群(うち 85% が囊胞摘出後)

は囊胞合併群(囊胞摘出なし)に比べて,生殖補助医療を行った場合の良好胚率,臨床妊娠率,胚移植 あたり妊娠率,流産率には有意差を認めず,卵巣予備能の指標である FSH 基礎値(p<0.01),AMH

(p<0.05),FSH 使用量(p<0.01),採卵数(p<0.01)はいずれも有意に悪化していた6).以上よ り,不妊症患者の囊胞の取り扱いについては不妊治療の方針と合わせ十分な検討を行う必要がある.

 チョコレート囊胞に対する手術の根治性と術後卵巣機能の温存は重要な課題であり,術式として卵巣 摘出,囊胞摘出,囊胞壁焼灼,エタノール固定,吸引洗浄の順に根治性が高く再発率は低いが,逆に卵 胞発育,卵巣機能が喪失・低下するリスクも高い.そこで,チョコレート囊胞の手術療法に際してはそ の目的(疼痛緩和,孕性改善,悪性化予防)を明確にして,根治性と卵巣機能の温存の観点から術式を 選択する7).比較的小さな腫瘤で,挙児希望があるものは経過観察あるいは不妊治療を優先する場合が 多い.

 3.11 年間に登録された 6,398 人(平均観察期間 12.8 年)を対象とした日本での前方視的コホー ト研究によると,チョコレート囊胞から卵巣がんが発生する頻度は 0.7% 程度と推定され,50 歳以上 で有意に頻度が上昇することが報告されている8).日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会は,チョコ レート囊胞に対して手術が行われた症例の調査により,全体の 3.41% に卵巣がんが合併し,合併率は 年齢とともに高くなり,40 歳代では 4.11% と高率であることを報告した(表 1).また,囊胞の大き さ別に卵巣癌の合併率をみると 10cm 以上で合併率が高くなっている(表 2)9).これらのことから,

チョコレート囊胞の悪性化には十分注意する必要がある.特に 40 歳以上で長径 10cm 以上あるいは 急速な増大を認める症例では,超音波検査や MRI 検査で評価したうえで,悪性化の組織学的検索を目的 とした卵巣摘出術も考慮する必要がある.

 4.若い患者に囊胞摘出術を行った場合,再発して手術を繰り返すなどして結果として卵巣機能を低 下させることを避ける意味でも,術後再発防止に努めることはきわめて重要である.術後薬物療法は 6 か月未満の使用では再発予防の効果はないと報告されていたが,2013 年に発表された低用量エストロ

下げ ●表番号のない表で見出しらしきものがあるときはタイトル扱いとする(12Q じゅん 34) ●表中:11Q 12H または 16H じゅん 101 ●脚注:11Q  じゅん 101 16H 

【統一事項】●図表とタイトルのアキ 2.5 mm ●ローマ数字は二バイトⅠ・Ⅱなどを使用 ●イタリックは従属書体の斜体 10 度

(表 1) 年齢別の卵巣癌合併数

年齢 チョコレート囊胞(人) 卵巣癌合併数 合併率(%)

20 歳未満 46 0 0.00

20 歳代 1,908 11 0.58

30 歳代 3,450 45 1.30

40 歳代 2,362 97 4.11

50 歳代 415 91 21.93

60 歳代 55 27 49.09

70 歳以上 27 11 40.74

合計(人) 8,263 282 3.41

日産婦生殖・内分泌委員会:エンドメトリオーシス研究会会員を対象と したアンケート調査による

107 ガイドライン婦人科外来編

ゲン・プロゲスチン配合薬を 12 か月以上用いたスタディーを対象としたシステマティックレビューで は,術後無治療の場合,再発率が 34%(95%CI:29~40%)であるのに対し,術後に経口避妊薬を 継続投与した場合には再発率は 8%(95%CI:6~11%)にとどまっており,低用量エストロゲン・

プロゲスチン配合薬の継続使用と非使用の OR は 0.12(95%CI:0.05~0.29)と,再発を劇的に減 らすことが示された10).2014 年に改定された ESHRE のガイドラインも,術後に挙児を希望しない患 者にはすぐに低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬を処方するべきだと提唱している3).したがっ て,術後に挙児を希望しない場合には,低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬やジエノゲストなど,

長期間投与可能な薬剤を用いて再発予防を目指すべきである.

文 献

1)‌Togashi‌K,‌et‌al.:‌Endometrial‌cysts:‌diagnosis‌with‌MR‌imaging.‌Radiology‌1991;‌180:‌

73―78‌PMID:‌2052726‌(III)

2)‌Barbieri‌RL,‌et‌al.:‌Elevated‌serum‌concentrations‌of‌CA-125‌in‌patients‌with‌advanced‌

endometriosis.‌Fertil‌Steril‌1986;‌45:‌630―634‌PMID:‌3457709‌(III)

3)‌Dunselman‌GA,‌et‌al.:‌European‌Society‌of‌Human‌Reproduction‌and‌Embryology:‌ESHRE‌

guideline:‌management‌of‌women‌with‌endometriosis.‌Hum‌Reprod‌2014;‌29:‌400―412‌

PMID:‌24435778‌(Guideline)

4)‌Hart‌ RJ,‌ et‌ al.:‌Excisional‌ surgery‌ versus‌ ablative‌ surgery‌ for‌ ovarian‌ endometriomata.‌

Cochrane‌Database‌Syst‌Rev‌2008;‌2:‌CD004992‌PMID:‌18425908‌(I)

5)‌Benschop‌L,‌et‌al.:‌Interventions‌for‌women‌with‌endometrioma‌prior‌to‌assisted‌reproduc-tive‌technology.‌Cochrane‌Database‌Syst‌Rev‌2010;‌11:‌CD008571‌PMID:‌21069706‌

(I)

6)‌日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会報告:日産婦誌 2013;65:1355―1373‌(II)

7)‌Chapron‌ C,‌ et‌ al.:‌Management‌ of‌ ovarian‌ endometriomas.‌ Hum‌ Reprod‌ Update‌ 2002;‌

591―597‌PMID:‌12498427‌(III)

8)‌Kobayashi‌H,‌et‌al.:‌Risk‌of‌developing‌ovarian‌cancer‌among‌women‌with‌ovarian‌endome-trioma:‌a‌cohort‌study‌in‌Shizuoka,‌Japan.‌Int‌J‌Gynecol‌Cancer‌2007;‌17:‌37―43‌PMID:‌

17291229‌(II)

これは婦人科・雑誌用のガイドラインの雛形です【版面】W:149.46mm(1段組み) H:208.14mm 【本文】41 行 13Q 20.48H

【図】●図番号:12Q じゅん 34 ●図タイトル・説明:12Q 17H じゅん 34 ●タイトル・説明:1 行の場合はセンター 折り返し字下げなし ●図説 の幅 片・全段ともに図幅 

【表】●表番号:12Q じゅん 34 ●表タイトル・説明:12Q 17H じゅん 34 ●タイトル・説明の折り返し字下げなし ●表説の幅 表幅より左右 1 字 下げ ●表番号のない表で見出しらしきものがあるときはタイトル扱いとする(12Q じゅん 34) ●表中:11Q 12H または 16H じゅん 101 ●脚注:11Q  じゅん 101 16H 

【統一事項】●図表とタイトルのアキ 2.5 mm ●ローマ数字は二バイトⅠ・Ⅱなどを使用 ●イタリックは従属書体の斜体 10 度

(表 2) 囊胞径と卵巣癌発生率

大きさ(cm) チョコレート囊胞 卵巣癌合併数 合併率(%)

15 以上 157 23 12.8

14 50 4 7.4

13 206 7 3.3

12 107 5 4.5

11 50 5 9.1

10 256 13 4.8

  9 521 8 1.5

  8 884 10 1.1

  7 1,504 10 0.7

  6 1,454 9 0.6

  5 1,818 6 0.3

  4 884 6 0.7

  3 以下 364 0 0.0

日産婦生殖・内分泌委員会:エンドメトリオーシス研究会会員を対象 としたアンケート調査による

108 ガイドライン婦人科外来編

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