• 検索結果がありません。

配信後の改善点

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 157-164)

第 5 章 来日前日本語学習教材の実施と評価

5.2 学習意欲を高める対策

5.2.2 配信後の改善点

教材は何年も検証を重ねて修正を加えていかなければならない。ビデオ教材やアニメー ション教材は、簡単に修正することができないため十分な検証が必要であるが、実践をして いくうえで、補足修正可能なものから、少しずつ修正をしていった。

「メール配信」に関しては、①英文に加え日本文も併記する、②一斉メールにしない、③ メールを見なかったという学生には日常使用しているメールアドレスを確認する、などを 改善した結果、次年度には問題がなくなった。

eラーニングによる学習が初めての学習者も多いため、まずその使い方や学習の仕方の 説明が必要なのだが、「操作の仕方や学習の仕方の説明文がわかりやすかったか」という質 問に対し、86%の学生は、「英語と日本語で書かれていたので理解できた」「順を追って書か れていたのでわかりやすかった」というプラス評価であったが、「画面いっぱいに書かれた 日本語を見ようとしなかった」「英語も日本語も得意ではなかったので,意味を調べるのに 時間がかかった」というマイナス評価もあった。長い解説書は得意な言語においても負担感 がある。eラーニング教材を初めて使う学習者に対し、その使用方法をメールのみで伝える ことは、遠距離での指導の難点の一つである。対面式の授業の際でも、パソコン操作が苦手 な学生がいるため、分かりやすくするための改善を7項目加えた。

① 学生が最初にアクセスする紹介Webページ「佐賀大学・日本語学習サイト」に、文字 だけの説明から、学生に人気のある LINE 風なイラストを入れ興味を引くように工夫し た(図5-7参照)。

147

② Moodleの『初めての佐賀大学―カッチー君とまなぼう!』の学習コースの上部に学習

の手順を図示した(図5-8参照)。

文字ばかりで書かれていた説明文を、

LINE風にイラストを入れ、吹き出しを 付けることで親しみやすくした。

図5- 7 改善したWebサイト1

148

③ 映像教材のあることが分かるように各課に映像の写真を挿入した(図5-9参照)。

学習の流れがよく 分かるように、

イラストを入れ

➡を入れて、

視覚的にも理解し やすいようにし た。

当初は、この流れ が分からず、何を していいのかがは っきりしない学生 がいた。

学習の流れと内容が分かるように、

映像の一部を挿入し「ビデオでなまぶ」と 書き、➡で次に何をするかを示した。

さらに、この写真の部分をクリックするだ けで、ビデオ教材に移行するようにした。

課ごとの説明のところに、

「来日らいにち(Arriving in Japan)」とい ったタイトルとともに内容説明を付記。

よりこの課の内容が分かりやすくなった。

図5- 8 改善したWebサイト2

図5- 9 改善したWebサイト3

149

④ アンケートを英文と日本文の両方の表記に変更した。

⑤ 少しでも評価を得ることで自己効力感の向上に繋がるようにと、学習後に教師のフィ ードバックスタンプを配信した(図5-10参照)。

⑥ 大学の案内文や操作手順の説明文を、日本文に加え英文も併記した。

⑦ Moodleの「学習の仕方」の説明の中に、日本語レベルにより学習内容を選択できるこ

とを分かりやすく明記した。

例えば、上級レベルの学習者は、「リピーティング」や「会話練習」をスキップしても いいこと、初級レベルの学習者は、「練習 2」は選択にしていいこと、ゼロ初級の学習者 は、英語表記で「0課」の学習だけでもいいこと、などを記載した。

さらに、eラーニング学習は学習意欲を継続させることが難しいと言われている。そのた めの対策の一つとして、「掲示板(news forum)」に投稿して励ましメールを送付すること は初年度から実施していたのだが、2015年からは、それに加えて次の2点を中盤の時期か ら配信するようにした。

⑧ 中間時点から、一定間隔を開けて『ぷらすα』74 教材の配信をする。

短いアニメーションの「問題編」と、ビデオ映像と音声解説の「解決編」に分かれてい る。短編4編を2回に分けてアップロードした(図5-11参照)。

⑨ 「プラスα」アップロード後、「談話室」にインストラクターが「プラスα」視聴を呼び かけ、いくつか質問を投げかけ学習者から回答を求めた。指導者と学習者、学習者同士の コミュニケーションの場とし、来日前からインタラクティブな相互交流を目指した(図

5-12、図5-13参照)。

74 これは、佐賀大学の「デジタルコンテンツ・クリエーター育成プログラム」の講義で学ん だ学生 2 名が、授業の最終課題として、この日本語学習教材に掲載するという意図で作 成したものである。

学習成果が可視化できるようにした。

大きな報酬を与えることができないので、課ごとにわず かな達成感が味わえるように工夫した。

課の学習が修了するごとに、ビデオ学習をどの程度達成 できたかを記し、さらに、小テストの得点により、スタ ンプの種類を変えた。

図5- 10 改善したWebサイト4

150

4.交通ルールに関する短い動画

【問題編】

アニメーションになっていて、登場 人物の留学生の女の子が自転車に乗 って独り言を言っているのを聞く。

交通ルールが分からず事故に遭う。

【解決編】

実際の映像を見せながら、留学生の 女の子に交通ルールを教えてあげる ような構成になっている。

プラスαの動画を流した後、

学習者に質問を投げかける。

ここでは、1.お金 2.トイレ についての質問をした。

(学習に余裕のある中上級レベ ルの学習者を対象にしている)

8課の学習を終えた学生や、学 習の途中で教材をしばらく見て いなかった学生も、この「談話 室」の配信をきっかけに、再度 ログインした。

下方にあるのは、回答の一部で ある。

自身が投稿するだけではなく、

他の学生の原稿が読めること も、来日前の交流となり、効果 的である。

図5- 11 インタラクティブ性を高める方策

図5- 12 談話室の例1

151

この 2 点の追加項目は、後述するモニタリングの結果からも分かるように、学習者の動 機づけになり学習意欲向上を図ることができた。比較的容易に日本語教材の学習が終了す る中級以上の学習者に、文字通り「プラスα」を感じてもらう意図であった。2016年のア クセス状況を図5-14に示すが、2013年のアクセス(図5-6参照)が、前半時期に偏っていた のと比べ、2016年のものは任意に抽出した学生のアクセス分布も、何度かの山がみられる のが特徴である。

「談話室」を使って、学生同士が自己紹介をしている。

たった一人で来日する学生が多いので、来日後に出会うであろう学生同士が、事前にイ ンタラクティブに交流できることは、不安軽減と学習意欲向上に繋がると考える。

図5- 13 談話室の例2

152

また、年ごとの受講率の変化とその中の全課受講率を表5-6に示す。

表5- 6 4年間の受講率と全課学習率の変化

2013年 2014年 2015年 2016年

受講率 68.4% 64.7% 66.7% 75.9%

全課学習率 23.1% 27.3% 66.7% 40.9%

全課受講率が2015年に急増したのは、学習者に占める上級レベル(中上級と上級を合わ せている)の学生数が多かったこともあるが、中・上級レベルに照準を合わせた新たな教材 配信と「談話室」などの働きかけがあったからと想像できる。2016年は、受講率は高くなっ たのだが全課学習率が減少したのは、初級前半(日本語未学習を含む)の学習者が34%もい たことが挙げられるため、あまり問題視をしなくてもよいと判断できる(図5-15参照)。

以上のように、学習意欲を高めるための対策をした後の効果を示す。

① 分かり易さ:メールや Web ページの紹介文、Moodle の学習コースなどを分かり易く するための対策を講じたことで、日本語や英語があまり理解できない学生にも内容理解 が容易になり、スムーズな学習へと繋がっていった。

0 10 20 30 40 50 60

1 2 3 4 5 6 7 8

A2 A4 B2 B3 C1 C3 D3 D5

0% 20% 40% 60% 80% 100%

2016 2015 2014 2013

初級前半 初級後半 初中級 中級 上級

図5- 14 2016年のアクセス状況

図5- 15 4年間の日本語レベル別受講者の割合の変化

153

Moodle 上の学習の手順を写真やイラストを使って表記したことで、何を学習するのか、

どういった流れで学習していけばよいのかが容易に理解できるようになった。これは、

やり方が分からずにドロップアウトする学生を減らす効果があった。

② 学習意欲の維持:配信直後はアクセスも多いのだが、しばらくすると学習者が減少する のは、どの自習教材でも起こることである。しかし、学習意欲を維持するための手立てと して、途中配信の教材の追加、そこに「談話室」を活用したメールの送信をすることで、再 度学習意欲が高まることが分かった。

③ 動機づけ:学習状況の可視化として、プレースメントでの個別のメール送付、演習問題 の即時回答と得点表示、さらに課ごとに、どの程度学習をしたか教師のフィードバックと してスタンプを送るなど、定期的に学習者が学習状況を可視化できることは動機づけに おいても効果的であった。また、わずかな評価も自己効力感に繋がっていく。

④ インタラクティブな交流:「談話室」に投稿し、教師が学生に質問を投げかけ、それに学 生が答えるといった会話があったり、学生同士が会話をしたり、また、ただ他の人の投稿 を見るだけでも人との繋がりは感じることができるため、遠距離にありながらインタラ クティブな交流ができることは、eラーニングの利点の一つだが、有効であることが分か った。

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 157-164)