第 5 章 来日前日本語学習教材の実施と評価
5.3 アンケート及びモニタリングによる検証
5.3.2 モニタリング-調査 7-
次に、「調査6.b」を実施した学生を対象に、アンケートの後にモニタリングを実施した。
これを「調査7」とする。ここでは、学習者の日本語レベルとしては、初中級の中級をまと めて、初級前半・初級後半・初中級/中級・上級の4つのレベルに分け、モニタリングの結 果を以下の表にまとめた。英語表記は日本語に訳し、敬体は常体に書き換えた。
(1)モニタリング:学習の動機づけについて
まず、学習の動機づけについて、表5-11にまとめた。
表5- 11 学習の動機づけについて レベル別回答
Q学習をしようと思ったか、内容は理解できたか 初級
前半
・佐賀大学は海外生活を準備するためにとて も思慮深く思いやりがあると思った。
・この教材を受け取ったとき、とても嬉しか った。
・自分のできる範囲でベストを尽くした。
・とても忙しくてできなかった
・私には難しすぎた。
・速く話すので難しい。
・少し見た
初級 後半
・この内容を理解するのは簡単だった。
・教材の日本語がクリアーだったのでよく理 解できた。
・学校が始まるまでの時間、生活に慣れ るのに忙しかったので完全にできな かった。
・日本語まだまだだから全部は出来な かった。
初中級
・中級
・個人的にメールをもらって嬉しかった。
・内容は難しくなかったからよく理解でき た。
・中国の学習の仕方と違うけど大体分かっ た。
・教材の内容の言葉が難しくないから理解で
・メールをもらったとき、学習教材だっ たので、大変だと思った。
・忙しかったら、全部はできなかった
・バイトをしていて忙しかった
・時間がなかった。
・メールをもらっていたらやっていた。
163 いた。
・使い方の説明があったから分かった。
・英語での説明もあったのでよく分かった。
上級
・メールをもらったとき嬉しかった。学習教 材をちゃんと勉強しなければと思ってやっ た。
・初めてなので最初はあまり分からなかった が、あとは理解した。
・使い方の説明があったので、よく分かった。
・映像もあるから理解しやすかった。ビデオ を見て分かりやすくなった。
・先生がメールで詳しく使い方を説明してく れた。
・日本語を勉強していたので内容はよく分か った。
・休みの日によく外出したから全部は できなかった。
・中国の大学の授業が多すぎて見られ なかった。
・大体分かるから。
・メールをもらったとき、ちょっと負担 だった。
これらの回答から、以下のような結果を得た。
①教材配信の案内メールに対し、好印象を持っている回答が多かった。全レベルの学生 から「メールをもらって嬉しかった」という回答を得、不安第2因子の精神面での不 安の軽減に繋がると考えられる。
②逆に学習教材であったこと、大学から送られたメールであったことで負担感を持った 学生もいた。初級前半の学生にとっては内容が難しいのは当然なのだが、出来る範囲 で学習を試みたことが分かった。
③eラーニングによる学習が初めての学生も多く、インターネットはよく利用している 学生も操作方法に最初は戸惑っている様子がうかがえる。
④来日前は、これまでの生活の片づけ、これからの準備、生活のためのアルバイトなど 忙しくてなかなか時間が取れないことが分かった。
(2)モニタリング:教材内容の情報としての有効性について
教材内容の情報としての有効性についての記述を表5-12にまとめた。
表5- 12 教材内容の情報としての有効性について レベル別回答
Qこの「来日前日本語学習教材」は、佐賀の情報を得るのに役立ったか 初級
後半
・ここで習った単語のいくつかを学生たちが 使っているのを聞いたので役立ったと思っ た。
初中級
・中級
・すべてのビデオが役に立った
・佐賀の情報をたくさん教えてくれた。
・基本的な情報を得られて、あまり不安でな くなった。(特に買い物の課)
・佐賀の天気の情報がある。
・写真や電車の乗り方など役に立った。
・周辺のスーパーの情報はよかった。
・今も役に立っている。
・練習のような感じがしたので。
・e ラーニングをもらう前に自分で準備 した。
・佐賀に来る前にネットで調べた。
・塾で勉強していたし、佐賀の情報は直 接目で見たかった。
164 上級
・内容は分かりやすいので、全部した。
・佐賀大学や佐賀駅でなどたくさんの情報を 得てとても役に立った。
・バスの乗り方、買い物の仕方が役に立った
・佐賀の情報から学校生活までも情報を詳し く教えてくれた。銀行の手続きの仕方。
・バスの乗り方や図書館の使い方等よく分か った。
・佐賀大学の情報とか生活とかよく役立っ た。(第1課と第3課)
・映像があるから理解しやすかった。
・実例は生々しくてよい。
・留学生活がどんな感じか行く前に分かるよ うになった。
・面白くて実際に使える。
・ビデオを見ていたので、一人で口座が開設 できた。
<役立った教材>
第1課、第3・4・6課、すべて、第2課 の順に多かった。
・現地に来ると想像以上の問題がまた 起こる。
・日本語科の学生なのでこれくらいは 理解できる。
これらの回答をまとめると、以下のようになった。
①映像教材であったため、実際の場面を見ることができたのがよかったという回答が多 かった。
②実際に来日後に役立ったという回答が多くあった。
③情報を入手したことで、不安(不安第1、第3因子)が軽減したと実感した学生も多 かった。
(3)モニタリング:教材の日本語学習としての有効性 教材の日本語学習としての有効性を表5-13にまとめた。
表5- 13 教材の日本語学習としての有効性について レベル別回答
Qこの「来日前日本語学習教材」は、日本語学習に役立ったか 初級
前半
・あいさつ
・会話練習 初級
後半
・音声になった言葉がどれも他の学生と会話 するとき役だった。
初中級
・中級
・基本的は語彙や表現が役に立った。
・日本人の習慣などが分かってよかった。
・どんなものでも役に立つ。
・図書館の課が役立った。
・生活によく使われる言葉がある。
・日常会話がよかった。書くのは大丈夫だが、
話すのが苦手だったので。
・教材の日本語が大体分かるから。
・教材の中の日本語が大体分かるか ら。
・日常生活の必要な言葉がある。 ・普通の挨拶だけでなく、もっと深いの
165 上級
・会話の仕方
・日本人がどんな風に話すのかを教えてくれ たので、非常に役立った。
・生活に役立つ。実用的。
・聴解が役立った。
・理解しやすい。(特に研究室の課)
・面白くて、実際に使える。
・お店に入ったときに自分が買いたいものを 店員に伝えることができた。
<役立った課>
第6課、第4課、すべての課、第1課 の順
を勉強したかった。
・昔もう勉強した内容だった。
・もう知っていた言葉だから。
・簡単だったから。
これをまとめると、次のようになった。
①会話と聴解の練習になったという回答が多かった。長く母国で学習をしてきた学生も、
母国では教室外で日本語を話す機会は少ないため、実際の場面の会話は役立つようだ。
②この教材の学習をしたことで、実際の場面で使うことができたという回答が多かった。
これは、不安第4因子の軽減に繋がる。
(4)モニタリング:来日後に困ったこと
来日後に困ったことをまとめると、以下の表5-14のような回答があった。
表5- 14 来日後に困ったことについて レベル別回答
Q来日後に困ったことは 初級
前半
・日本語が分からない、話せない。(多数)
・日本語が下手で話せないこと。
・誰とも会話できなくて寂しかった。
・環境が違うし生活も違う。
・佐賀の人の話が全然わからなかった。佐賀の人が英語は分からなくて困った。
・日本文化を知らない。
・日本語がわからないから買い物が大変だった。
・インターネットの接続に時間がかかったこと。
初級 後半
・アパートの家具等すべてそろえなければならなかった、、安いお店を探すこと。
・日本語が上手ではなく、自由に会話をすることができなかったこと。
・Wi-Fiが使えなかったこと。
・分からないことを聞いたけど、相手の言っていることが分からなかった。
初中級
・中級
・アパートが汚れていたのがショックだった。冷蔵庫がないのが困った。
・日本の習慣と自分の日本語が通じるか不安だった。
・色々な手続きが難しかった。
・日本語が上手ではなくて、日本人と話す時よく問題がある。
・国の料理が食べられなくなった。
上級
・生活する上で欠かせない様々なルールが国と大きい差があるからちょっと慣れな かった。
・道が全然覚えられなかった。
・日本人チューターが曖昧な断り方をすること。
・ゴミの分け方など。
・自転車が壊れた。自転車に乗れないこと。
166
この結果から、事前に学習をしていても、実際に経験すること、困ったと感じることはそ れぞれ違うし様々なことが起こることが分かる。新たに起こることに対しても臨機応変対 応できるようなスキルと、基本知識を提供することが重要ではないかと考える。
(5)モニタリング:教材に追加したらよいもの
次に、この教材に追加したらよい項目を尋ねると、表5-15のような回答を得た。
表5- 15 この教材に追加したらよい項目 レベル別回答
Qこの教材に追加したらよいと思う項目 初級
前半
・佐賀大学の紹介
初級 後半
・具体にはあげられないが、レベル別の教材であったらよかった。
・よく使われている佐賀弁
・礼儀作法、敬語
初中級
・中級
・レストランでの注文、佐賀の観光、ジムの見つけ方
・言葉遣いと敬語
・携帯電話とSIMカードについての情報
・周りの観光情報
・インタラクティブなコンテンツ 上級
・日本でSIMの登録の仕方
・サークルに入った後の、日本人との使い方
・佐賀の歴史、名物、見どころについて
・バイトを探す時の話し方
・どんな面白いイベントがあるか
・日本の習慣や佐賀の観光地などの紹介
・自転車の直し方
・特にない、充実している
・どんなサークルがあるのか、どんな面白いイベントがあるのか
重要な回答としては、「レベル別の教材であったらよかった」がある。この回答のように、
初級・中級・上級といった3つのレベルに分けることができれば、学生はより自身のレベル に合わせた学習が可能となる。特に演習問題は、レベルに応じた問題を精査して出題すべき であった。今後の大きな課題である。
学生は個々に様々な興味・関心を持っているため、すべての要望に応えることはできない が、今後教材内容を精査する際の参考にしたい。多量の情報をうまく分類して提供すること ができれば、学生たちの負担感も少なくなる。
(6)モニタリング:インタラクティブな交流について
さらに、教材配信の中で、インタラクティブな交流ができることについて質問を行ったと ころ、表5-16のような回答を得た。