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学習者のニーズ調査-調査 1.b-

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 111-121)

第 4 章 来日前日本語学習教材の設計と開発

4.4 学習者のニーズ調査-調査 1.b-

「来日前日本語学習教材」作成の参考にするため、「来日前不安」調査とともに、学習者 の属性やニーズ及び意欲調査を実施した。この調査は、第3章3節で行った「来日前不安」

の「調査 1.a」と同時に実施したものであり、来日前の不安や来日後に困ったことの他に、

来日前の日本語学習経験と来日時に必要だと思う日本語レベルなど属性やニーズ、及び学 習意欲等を知るために次のように実施した。

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1)対象者:佐賀大学、福岡大学に来日したばかりの留学生79名。

2)現在の日本語クラス(日本語レベル)

初級前半 13名、 初級後半 21名、 初中級 16名、

中級 18名、 中上級 11名、 上級 0名

3)実施期間:2014年9月~10月 授業内(後)に実施し即時回収。

4)質問紙の構成:「来日の目的」は上位3位までを順位をつけて選択

「来日前の日本語学習歴」「来日時に必要な日本語レベル」…選択肢

「知りたかった情報」「来日前に得た情報」選択肢(2件法)

「必要な学習教材や学習内容」選択肢(4件法)

「来日前不安」「来日後に困ったこと」第2章3節に記載済み(4件法)

この「調査1.b」の結果を、次のようにまとめる。

(1)来日前に日本語を学習した期間

・まったく学習しなかった 25%

・半年未満 13%

・半年~1年 4%

・1年~2年 29%

・2年以上 29%

半年未満までがほぼ初級レベルに属するのだが、その割合が38%、半年~2年までは日 常会話はある程度できる中級までのレベルの学生になるのだが、その割合が 33%(ただ し、半年~1 年は初級とみなすこともある)、2 年以上勉強した学生はほぼ上級レベル相 当の学生になるのだがその割合が29%と、それぞれ3分の1ずつを占める。母国での学 習期間がそのまま日本語レベルには相当しないのだが、ここで分かることは、様々な日本 語レベルの学生がいるということである。

(2)来日前の母国での日本語学習方法

・高校・大学の授業で 49%

・日本語学校で 11%

・独学 26%

・インターネットの日本語学習サイト 11%

・その他 5%

高校・大学の授業及び日本語学校で勉強した学生は約 60%で、自分で本などを買って 勉強したという独学の学生が25%であった。特に注目すべきはWeb上の日本語学習サイ トを使用した学生が 11%もいたことで、留学を希望する学生の将来の学習方法を示唆し ている。

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(3)来日目的

来日目的について以下の 10 項目の中から、1~3 の順位をつけて選択する方法で調査 を実施した。

・日本語を勉強するため ・日本文化を勉強するため ・専門の勉強をするため ・大学院へ行くため ・学位を取るため ・留学のチャンスがあったから

・国際的な経験を積みたかったから ・就職に必要な技術や知識を身に付けるため

・就職に有利だから ・その他

その結果として、順位1として挙げられたものを多い順に示すと以下である。

1位:日本語を勉強するため 2位:大学院へ行くため 3位:専門の勉強をするため

目的の第1位は、「日本語を勉強するため」という学生が多いことが分かる。これは、来 日後に日本語の授業を選択している学生への調査であること、この時期来日する学生は交 換留学生が多いという理由であると考えられる。目的の順位 3 までを累計した総合順位を みると、以下のように変化した。

1位:日本語を勉強するため 2位: 日本文化を勉強するため 3位:留学のチャンスがあったから

上位 3 つの目的が少し変化した。大学院生や大学院への進学希望者もいるが、日本語の 授業を取っている学生の多くは、1年程度の短期留学生が多く、日本語の勉強や日本文化の 勉強、さらには交換留学生として留学のチャンスがあったから、という目的が多くを占めて いる。

(4)来日前に必要だと思う日本語レベル

5段階に分類したそれぞれのレベルの学生に、来日時にどの程度の日本語力があったらよ かったと思うかを調査したものである。

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また、レベル別の平均値は、以下の表のようになった。

表4- 7 レベル別 来日後必要と感じた日本語レベルの平均値

初級前半 初級後半 初中級 中級 中上級

平均値 2.92 2.81 3.69 4.72 4.82

標準偏差 2.019 1.504 1.493 1.638 1.401

全体の分布として多いのは、図4-1からも分かるように1位2位は以下のようになった。

1位「3.生活に必要な基本的な会話ができる」

2位「4.日本人の話がある程度分かる」

この結果から、全く分からないままに来日するよりも、最低レベルとしては、ある程度の 日常会話ができる初級後半から初中級レベルが必要であると考えていることが分かる。し かし、まったくゼロでよいと回答した学生もわずかではあるがいた。

さらに、表4-7からも分かるように、自身の日本語レベルが高くなるにしたがって、平均 値が上がっているため、必要と感じるレベルも上がっていることが分かる。日本語レベルと 必要だと思う日本語レベルの相関係数を求めたら、r=.488 となり、相関関係があることが 分かった。ただし、この質問の意図をどのように理解したかで回答が分かれ、一般論として

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

1 2 3 4 5 6 7 8 9

必要レベル 初級前半Ⅰ 初級後半Ⅱ 初中級Ⅲ 中級Ⅳ 中上級Ⅴ

0 1 2 3 4 5 6 7 8 10

9 8 7 6 5 4 3 2 1

必要レベル 0.全然分からなくてもいい (0レベル)

1.ひらがな・カタカナが書ける(ほぼ0レベル)

2.基本的な単語が分かる (初級前半レベル)

3.生活に必要な基本的な会話ができる(初級後半レベル)

4.日本人の話していることがある程度分かる(初中級レベル)

5.日本人と日常会話ができる(中級レベル)

6.新聞などが読める(中上級レベル)

7.日本語でディスカッションができる(中上級レベル)

8.大学の専門の授業が分かる(上級レベル)

図4-2 日本語レベル別 来日後必要と感じた日本語レベル

図4- 2 日本語レベル別 来日後必要と感じた日本語レベル

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必要な日本語力と解釈した学生と、自分自身を考えて答えた学生とでは、必要レベルが違っ ている。中級・中上級レベルの学生の必要レベルのばらつきがそれを表している。

(5)来日前に困ったこと

第3章1節でも取り上げた「来日後に困ったこと」について別の視点から分析を行った。

表4-8に平均値と標準偏差を示す。

表4- 8 レベル別 来日後に困ったこと(平均値)

困ったこと 1. 日本語がわからない 2. 日本人の言うことが理解できない 3. 自分の日本語を理解してもらえない 4. 文化や習慣の違い 5. 食事の違い 6. 友だちができない

7. 一人暮らしが淋しい 8. 新生活の準備 9. 様々な手続き

来日後に困ったことについての調査結果として表 4-8 から分かることは、日本語力に関 する「困り1、2、3」の平均値は初級前半、次に初級後半と高く、日本語力がないことで困 ったと感じた学生が初級レベルの学生に多いことが分かる。図4-2と比較すると、「生活に 必要な会話ができる」方がよいと感じている学生が平均的には多いが、来日前に日本語力が どの程度必要であるかは、個人レベルで差異があることが分かる。その他のレベル別の違い については、第2章1節に述べた通りである。

(6)現在の得意分野とこれから勉強したい分野

学習経験のある学生に、現在の得意分野とこれから勉強したい分野について調査を行っ た。図4-3に示す。

困り 1

困り 2

困り 3

困り 4

困り 5

困り 6

困り 7

困り 8

困り 9 初級

前半

平均値 3.08 3.38 2.92 1.92 2.31 1.85 1.85 2.23 2.46

標準偏差 1.115 .870 1.038 .641 1.182 1.144 1.128 1.092 1.050 初級

後半

平均値 2.67 2.90 2.71 2.05 1.52 1.57 1.67 2.00 2.33

標準偏差 1.017 .995 .956 .973 .873 .811 1.065 .894 .796 初中

平均値 2.06 2.38 2.44 1.81 2.06 2.13 2.00 2.50 2.50

標準偏差 .680 .719 .814 .403 .998 .885 1.033 .966 .894

中級 平均値 2.28 2.61 2.72 2.00 2.06 1.89 1.44 2.17 2.56

標準偏差 .826 .778 .752 .840 1.110 .963 .616 .924 1.042 中上

平均値 2.09 2.36 2.09 2.00 1.73 1.64 1.91 2.45 2.73

標準偏差 1.136 .674 .831 .775 .786 .674 1.044 1.128 .905

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この結果をみると、これまでの日本語学習により、「文法」や「読解」を得意と感じてい る学生が多いことが分かる。さらに、今後学習したいと思っている分野としては、「会話」

や「聴解」、さらに「発表」、「討論」が挙げられている。「読み・書き」という文字分野はあ る程度自信があるが、「聞く・話す」という音声の分野に関して自信がない学生が多く、今 後の課題となっている。母国での学習は文字学習が多くなり、実際に日本人とコミュニケー ションを行う機会が少ないため、学習経験が長い学生も会話力や聴解力に不安を抱いてい ることが分かる。

(7)情報の入手方法

来日前に本学及び地域の情報をどのような手段で得たかを調査した。質問は、以下の6項 目である。

・大学に直接問い合わせた ・インターネットで調べた

・母国の教員に相談した ・親戚や友人や先輩に聞いた

・日本留学フェア、教育展に参加した ・その他

この結果としては、「インターネットで調べた」、「母国の先生から聞い」「友達や先輩に聞 いた」がそれぞれ25%程度でほぼ同数であった。それと同数なのが「聞かなかった」という

のも 28%あった。協定校など毎年交換留学生を送り出している大学では、先生や先輩など

から情報を得ることが容易である。ただし4 分の1以上が情報を得なかったという回答に 注視したい。

また、留学するまでにどんなことに苦労したかを、以下の7項目から1・2・3位と3つ 選択するようにして質問をした。

・情報収集 ・日本語の学習

・留学先の大学、指導教員との連絡 ・留学ビザの取得

・留学(入学)試験 ・留学資金準備 ・その他

その結果、「情報収集」と「日本語の学習」、次いで「留学資金準備」に苦労したという回 答が多かった。第2位3位については「ない」ということで無回答が増えていた。つまり総

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

文法 会話 作文 聴解 読解 発表 討論 その他

得意分野 今後の学習

図4- 3 現在の得意分野と今後学習したい分野

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