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日本語不安の調査・分析 -調査 2.b-

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 71-77)

第 3 章 来日前不安

3.2 来日前不安と日本語不安

3.2.1 日本語不安の調査・分析 -調査 2.b-

来日前不安には、第二言語不安である特定状況不安ばかりではなく、特性不安や状態不安 があることを前節で明らかにした。しかし、日本語学習教材の設計・開発においては、第二 言語不安についてより詳細なデータが必要となる。そこで、本節では、第二言語不安の下位 概念となる日本語不安に焦点を当てた分析を試みる。

日本に来たばかりの留学生が日本語学習においてどのような不安を抱いているか、その 実態を把握するために「調査 2.b」を実施した。アンケート項目として、元田(2005) が 作成した、日本語不安をさらに教室内不安と教室外不安に分けた「日本語不安尺度」14項 目を使用した。

1)対象者:佐賀大学、九州大学、福岡大学をはじめ福岡県及び山口県の大学に留学した 学生合計225名である。その中で、日本語学習経験が0の学生は対象外とし たため、測定対象者は186名となった。アジア地域が中心であるが、様々な 国から来日している。

2)性別 :男性60名、女性107名、不明19名

3)学習歴: 0年 38名(省略) 0~半年 19名 半年~1年 17名

1年~2年 46名 2年以上 105名

4)実施期間:2016年9月~10月、2017年4月

授業内(後)に実施し即時回収。

5)質問紙の構成:ここでは質問紙の「b.日本語不安」尺度を使用しアンケートを実施。

(これは「調査2」「a.来日前不安」のアンケートとともに実施したもので、詳細は3.1.5 を参照)

日本語教室内不安としては、「発話不安」「聴解不安」「間違いに対する不安」「指名不安」

「他の学習者に対する不安」「授業の進度に対する不安」「教師の評価に対する不安」の7項 目で、教室外不安は、「発話不安」「聴解不安」「間違いに対する不安」は教室内不安と同様 で、さらに「コミュニケーション不安」「電話での日本語使用不安」「教室と異なる日本語に 対する不安」「助力を求める時の不安」などが加えられている。英語訳(オリジナルの修正 版を作成)と中国語訳のものを作成した。回答は5件法である。

3.2.1.1 「日本語不安」の項目別度数分布

調査結果を表3-6に示した。教室内不安は01.~07.、教室外不安は08.~14.である。

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表3- 6 日本語不安(教室内・教室外)の項目別不安度数

SD:全く違う D:少し違う M:あてはまる A:よくあてはまる SA:とてもあてはまる

SD D M A SA 平均値 標準偏差 01. 日本語の授業中、日本語で発言するとき緊張する。

9 52 60 39 26 3.11 1.112 02. 先生が日本語で何を話しているかわからないとき不安になる。

13 43 70 38 22 3.07 1.091 03. 先生に自分の日本語を低く評価されるのではないかと不安になる。

17 56 69 30 14 2.83 1.051 04. 日本語の授業中、指名されそうになるとどきどきする。

16 62 63 29 16 2.82 1.073 05. 自分より他の学生の方が日本語ができると思って不安になる。

32 46 63 29 16 2.74 1.172 06. 日本語の授業中、日本語を間違うことを心配している。

19 46 73 34 14 2.88 1.064 07. 取り残されるのではないかと不安になるほど日本語の授業の進みが速い。

27 65 53 27 13 2.64 1.114 08. 日本語で自分の意見を言わなければならないとき、緊張する。

17 51 71 33 14 2.87 1.052 09. 電話で日本語を話さなければならないとき、緊張する。

13 28 61 49 34 3.34 1.150 10. 教室で学んだものと違う日本語を使われたとき、不安になる。

20 55 69 29 12 2.77 1.049 11. 日本人と話すとき、おかしな日本語を使っているのではないかと不安だ。

25 29 60 42 30 3.12 1.248 12. 日本人が何を話しているのかわからないとき、不安になる。

10 37 63 49 26 3.24 1.092 13. 日本語で、自分が伝えたいことがうまく通じなかったらどうしようと不安になる。

11 32 70 48 25 3.24 1.074 14. 困ったことがあって、日本人に日本語で助力を求めなければならないとき緊張する。

22 54 58 36 15 2.83 1.124

この結果を分析すると、平均値が 3.0以上と不安が高かったのは、「教室内不安」では、

以下の2項目で、「あてはまる(M+A+SA)」の回答をした割合は、それぞれ67%、70%で あった。

・01. 日本語の授業中、日本語で発言すると緊張する 3.11

・02. 先生が日本語で何を話しているかわからないとき不安になる 3.07

また、「教室外不安」では、以下の4項目が挙げられ、これらはすべて「あてはまる(M+A

+SA)」を選択した割合が70%を超えている。

・09. 電話で日本語を話さなければならないとき、緊張する

・11. 日本人と話すとき、おかしな日本語を使っているのではないかと不安だ

・12. 日本人が何を話しているのかわからないとき不安になる

・13. 日本語で自分が伝えたいことがうまく通じなかったらどうしようと不安になる 全般的に「教室外不安」の方が大きいという結果がみられた。学習の場である教室内より も、実践の場である教室外の方が、不安が大きいことが分かった。

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これら14項目は、13項目において、「あてはまる(M+A+SA)」を選択した割合がほぼ

60%に近い数値(04. 05. 10. が58%、14. が59%)を超えており、全般的に不安を感じる

学習者が多いことが分かる。

しかし、「07. 取り残されるのではないかと不安になるほど授業進度が速い」のみ50%で あった。これは、教室内での授業内容が学習者のレベルに適応しており適切な指導を受けて いた成果と考えられる。また、「05. 自分より他の学生の方ができるかもしれないと不安に なる」の平均値も、2.72 と低く、あまり他人と比較して不安を抱くということは少ないこ とが分かった。

さらに、教室外で、「10. 教室で学んだものと違う日本語を使われたとき不安になる」と いう回答が低かったのは、海外において、教室外で実際に日本語を使う機会が少なかったの か、あるいは、分からない言葉が多いことは当然と受け止めているのか、その両者であると 推測する。

3.2.1.2 「日本語不安」の相関関係

次に、日本語不安の相関関係をピアソンの積率相関分析によって求めた。

すべての項目に相関関係はみられたのだが、特に顕著なものを以下に述べる。

① 発話不安:

・「01. 授業中の発言不安」は、「08. 教室外で意見を言う緊張」と相関関係があった

(r=.622, p<.001)。また、「01. 授業中の発言不安」は、話すことの不安に繋がる「04.

指名される不安」との相関(r=.592, p<.001)もみられた。

・「08. 教室外で意見を言う緊張」は、「01. 授業中の発言不安」(r=.622, p<.001)ととも に、「04. 指名される不安」との相関(r=.563, p<.001)や「06. 間違った発言に対する 不安」との相関(r=.513, p<.001)、「09. 電話での日本語使用不安」との相関(r=.538,

p<.001)、「10. 知らない日本語を聞く不安」との相関(r=.594, p<.001)、「11. 日本人

との会話の不安」との相関(r=.502, p<.001)、「13. 伝えたいことが伝わらない不安」

(r=.567, p<.001)や、「14. 助力を求める時の不安」(r=.500, p<.001)など多くの項目 と相関係数がみられた。

以上のように、様々な場面で自分の言いたいことが言えるか、言いたいことが相手に伝 わるかといった発話不安を持っていることが分かる。

② 聴解力の不安:

・「02. 教室内での聴解の不安」は、「01. 授業時の発言不安」と相関関係(既出)や

「07. 授業進度の不安」との相関関係(r=.562, p<.001)がみられた。

聴解力がないと発言も阻害されてしまい、授業についていけなくなることが分かる。

・「12. 教室外での聴解不安」は、「13. 通じるかどうか不安」との相関(r=.677, p<..001)

や「14. 助力を求める不安」との相関(r=.597, p<.001)、「10. 知らない日本語を聞く 不安」との相関(r=.564, p<.001)、「11. 日本人との会話の不安」との相関(r=.569, p<.001)などがみられた。

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このように、聴解能力が発話能力と関連していることがよく分かる。

③ 会話能力の不安:

・「11. 日本人との会話の不安」と、「13. 通じるかどうかの不安」との相関関係は非常に 高く(r=.700, p<.001)これらはコミュニケーション能力の不安と考えられる。

また、「11. 日本人との会話の不安」は、「12. 教室外での聴解不安」との相関(r=.569,

p<.001)や「10. 知らない日本語を聞く不安」との相関(r=.576, p<.001)、「14. 助力

を求める不安」との相関(r=.566, p<.001)、「06. 授業時に間違う不安」との相関(r=.561,

p<.001)、「08. 教室外で意見を言う緊張」との相関(既出)などがみられる。

・「13. 通じるかどうかの不安」は、「11. 日本人との会話の不安」との相関(既出)の他 に「12. 教室外での聴解不安」との相関(r=.562, p<.001)や「14. 助力を求める不安」

との相関(r=.652, p<.001)、「10. 知らない日本語を聞く不安」との相関(r=.567,

p<.001)、「08. 教室外で意見を言う緊張」との相関(既出)などもみられた。

・「14. 助力を求める不安」は、「12. 教室外での聴解不安」との相関(r=.597, p<.001)

や「13.」「11.」「08.」との相関(既出)がみられた。

以上のことから、実際のコミュニケーション場面では、「話す・聞く」を関連させな がら会話をしていかなければならないため、「話す」「聞く」が関連した不安項目において 相関関係が高くなることが分かる。

④ 授業進度と自身の伸びの差の不安:

「07. 教室進度の不安」は、「02. 教室内での聴解の不安」との相関(r=.562,

p<.001)や「03. 評価不安」との相関(r=.567, p<.001)、さらに「04. 指名される不安」

との相関(r=.529, p<.001)がみられた。

自分の力が授業進度についていけなくなったとき、発話や聴解などに影響を与えてし まうことが分かる。

⑤ 相関関係がみられなかった項目:

・「05. 他の学習者との比較による不安」については、アンケート集計結果でも平均値が 低かったが、「03. 先生からの低い評価不安」との相関(r=.538, p<.001)があったもの の、他の項目との相関関係はあまりみられなかった。もともとあまり不安を感じていな いとあったため、不安の相関関係も低い結果であることは理解できる。

・「09. 電話での会話不安」については、平均値が3.34と最も高い数値であったもの の、「08. 教室外で意見を言う緊張」との相関関係(r=.538, p<.001)があっただけ で、その他の項目との相関関係は高くない結果となった。

電話は、見えない相手とのコミュニケーションであるため、特別な不安が生じ易いこ とが分かった。

3.2.1.3 「日本語不安」の学習歴による違い

日本語不安に関し、学習歴による違いがあるかを検討してみた。ここでは、学習歴を「A.

2年以上」(度数105)と「B. 2年未満」(度数81)に分け、さらにそれぞれを教室内不安と

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