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遠隔教育としての e ラーニング活用教育

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 41-44)

第 2 章 先行研究の概観と研究課題

2.4 日本語教育における e ラーニング活用教育

2.4.4 遠隔教育としての e ラーニング活用教育

遠隔教育としてのeラーニング活用教育の意義として、岩崎(2015)は教育や学習の機会 の拡大と、社会的、経済的な格差の解消に繋がるとしている。遠く離れた地の人々がテレビ 会議で繋がる同期型や、作成したコンテンツを海外に住む学生に発信できる非同期型など、

離れている人と人とを繋ぐ教育機会としてその可能性は大きい。遠隔教育の代表的なものの 一つとして、2012年頃から全米に広がったMOOCs(Massive Open Online Courses)が挙 げられるが、「だれでも」が無料で大学の講義を受けられることから、教育・学習の経済的格 差を減らす可能性を持っていると岩崎(2015)は述べている。

遠隔教育の中でも、自学自習が主流の非同期型である一般的な狭義のeラーニングとして、

本研究のeラーニングによる「来日前日本語学習教材」も位置づけることができる。その特 徴として8~10の利点や欠点がこれまでの先行研究で挙げられているが、それらを利点と欠 点に分け、表2-5、表2-6のようにまとめた。

46 “the difference between student outcomes for online and face-to-face classes… was larger in those studies contrasting conditions that blended elements of online and face-to-face instruction with conditions taught entirely face-to-face” (p. ix). と著して いる。

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表2- 5 eラーニングの利点

eラーニング(非同期型)の利点

①時間と場所の柔軟性 いつでもどこでも学習が可能である。

②個人ペースの学習が 可能

自分の理解度やペースに応じて学習できる。個人の興味を追求する こともできる。

③インタラクティブ性 ネットワークの向こう側、学習者と指導者、あるいは学習者同士の 対話が可能である。

④情報管理 学習管理システム(LMS)により、学習履歴情報が残り、学習者も 指導者もその進捗状況等が把握できる。

⑤教材のカスタマイズ 学習者のレベルやニーズに合わせて自由に教材をカスタマイズでき る。学習者が作成することも可能である。

⑥学習者の主体的学習 マルチメディアのリソースが学習の動機づけになり、学習者の主体 的な学習を促進する。

⑦即時性

ジャスト・イン・タイム・ラーニングとして、学習者が学びたいと き学べ、演習問題などは、即時に解答解説が出ることで、弱点の把 握と補強のための反復学習も可能である。

⑧協調学習 時間や場所に制限されない学習コミュニティの構築を可能にする。

eラーニングの利点47は上記の8項目とした。「スケールメリット」については、学習者に とっては、通学費用等学習に必要な間接的な費用を抑えることができるが、教材提供者側に とっては、教材開発に関するコストは決して安価だとはいえないため、あえて削除した。

欠点として挙げられるものが、表2-6である。

47 『eラーニング白書2002/2003年版』によると、その利点は、①個別学習、②学習者 が主体性をもつ、③教材の選択範囲が大きい、④インタラクティブ、⑤進捗管理が容易、

⑥いつでも、どこでも、⑦低コスト、⑧分散している学習者に学習の機会を提供、⑨学習 効果、研修効果の向上、⑩教材の配信スピードが迅速、としている(pp. 52-53)。

ナイト(2004)は、①接続性、②柔軟性、③相互作用性、④強調学習、⑤機会の拡大、

⑥動機づけ、⑦情報管理、を挙げている(p. 113)。

青木(2012)は、①学習場所の柔軟性、②学習時間の柔軟性、③スケールメリット、④ 学習履歴、⑤自分のペースで進められる学習、⑥復習、⑦ジャスト・イン・タイム・ラー ニング、⑧時間や場所に制限されない多数の学習者の同時アクセス、⑨保守・管理・更新 の容易さ、⑩学習者中心主義の学習、を挙げている(pp. 14-16)。

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表2- 6 eラーニングの欠点

eラーニング(非同期型)の欠点

①学習者の自律性 学習者は自律性を持って学習を行わなければならず、モチベーシ ョンを維持して学習を継続することが困難である。

②コミュニケーション 機会の減少

対面授業のように、質疑など即時の問題解決がしにくい。指導者 や他の学習者との交流が取りにくい。

③単位認定 単位認定がされない場合がある。

④学習者の把握 学習者の状況をデータからしか判断できない場合がある。

⑤教材開発 作成に時間がかかる。イニシャルコストが高い。実技を必要とす る科目には向かない。

⑥維持管理

eラーニングを企画・運営するには、様々な専門家が必要で ある。企画・管理をするコンサルタント、教材開発をするイン ストタラクタ、コンテンツスペシャリスト、学習者支援をする チューター、システム運用をするシステム管理者などが必要で ある。

2011年にアメリカで始まり2012年に大ブームとなったMOOCsも、Haber(2014)は、

その問題点として、2012年時は700万人もの受講者があったが、90%もの中退者がいて修

了率は5~8%と低いこと、開発費や運営費が嵩み、持続可能性に欠けるということを挙げて

いる。また、船守(2016)も、クレイント・クリスチャンセンが提唱した概念である「高 等教育の破壊的イノベーション」と呼ばれたMOOCsであるが、開発費が大きいことから、

学内の教育の質の向上のためと反転授業やアクティブ・ラーニングとして、大学の授業と 連携させる方向に進んでいるという。

2013年に設立された JMOOC(日本オープンオンライン教育推進協議会)も2017年4 月現在では日本の大学・企業が累計140講座、50万人以上が学習をしている現状があり、

幅広い層に学習の機会を提供している。知識基盤社会への移行に伴う、高等教育のマス化、

ユニバーサル化への対応として、オンライン教育は有効に活用されるのではないかと考え る。

以上のように、eラーニングは、無限の可能性を持つと同時に、課題も見えてきている。

本研究においては、eラーニングの可能性を生かしつつ、指摘されている課題に留意して設 計開発を進める。本研究が目指すeラーニング日本語教材は、来日前という限定的な時期、

地域を限定しその大学に特化した場面設定、自ずと限定された学習者である。内容に関し ても、通常の講義とは違い、不安軽減と来日後のスムーズな生活適応と実践的コミュニケ ーション能力向上を目指した学習教材である。学習者のニーズに沿った学習形態を構築で きるのもeラーニングの遠隔教育のメリットの一つである。

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