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試行配信による検証-調査 5-

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 150-155)

第 5 章 来日前日本語学習教材の実施と評価

5.1 来日前日本語学習教材の配信

5.1.4 試行配信による検証-調査 5-

2013年に母国にいる来日前の学生に、初めて配信した「試行配信」の結果と、アンケー

ト「調査5」を実施した結果を述べる67

5.1.4.1 学習状況

まず、配信した結果として、レベル別の学習者を任意に抽出し、課毎の学習時間を累積し たものを図5-5に示した。Aは初級前半、Bは初級後半、Cは初中級、Dは中級、Eは中上 級の学生を示す。

この結果から分かることは、日本語レベルに関わりなく、それぞれの学習者によって興味 を持つ内容が異なること、自分の関心のある内容の課の学習時間が長いことなどである。

A1、A2は2課しか学習していないが、その学習時間は長く、ほとんど日本語の知識がな

い段階であるため、その学習には努力がみられる。Eレベルの学生は、日本語力があるため、

短時間で全課を学習することができたのだと予測できる。しかし、同じE レベルの学生で も長時間かけてゆっくりと学習した学生もみられる。学習者の学習方法は、日本語レベルで 分けることはできない。

配信は来日8週間前からである。図5-6に学習者のアクセス時期を示した。これは、上記 の学生のアクセス時期を折れ線グラフに表したものである。

67 これら試行配信に関するものは、早瀬他(2015)「ICTを活用した来日前日本語学習教 材-試行配信による検証-」の論文に一部掲載済みである。

0:00:00 1:12:00 2:24:00 3:36:00 4:48:00 6:00:00 7:12:00

A1 A2 B1 B2 C1 D1 D2 E1 E2 E3 E4

8課 7課 6課 5課 4課 3課 2課 1課 時間

図5- 5 学習者の課別学習時間(試行配信)

140

このグラフからも分かるように、学習時間や時期は個人差が大きく、短期間で集中的に学 習した学習者もいれば、長期的に少しずつ学習した学習者、来日直前になって慌てて情報収 集のために学習をした学習者など様々であることが分かる。配信時期は、学習期間の差はあ るものの、学習者のモチベーションを考えると 8 週間前というのは妥当な時期であったと 言える。

以上で示したように、学習時間や時期は個人差が大きいが、それはまさにeラーニング学 習の、①時間と場所の柔軟性、②個人ペースでの学習が可能、③学習者の主体的学習、とい う利点に合致する結果である。

ただし、案内メールを出し、ログインIDとパスワードを送付した、1週目から3週目ま でに学習が集中していることが分かる。途中、Moodlej上の「掲示板」に佐賀大学の最新情報 を写真入りで送付するなど、何度か学習意欲を喚起させるための働きかけを行った。その際 にアクセスが若干増加したという結果がみられた。

配信に当たりいくつかの問題点を予測し対策を立てていたが、予想よりも大きな混乱は なく、21名中14名、67%にあたる学生がアクセスをした。

5.1.4.2 受講者へのアンケート「調査 5」

来日後「来日前日本語学習教材」を受講した14名を対象に、アンケート「調査5」を実 施した。

1)対象者:「来日前日本語学習教材」を来日前に学習した留学生

2)現在の日本語クラス(日本語レベル)

初級前半1、初級後半4、初中級1、中級4、中上級4、 計14名

3)実施期間:2013年11月 授業後に実施。

4)実施内容:

Ⅰ・メールは届いたか 0

5 10 15 20 25 30

第1週 第2週 第3週 第4週 第5週 第6週 第7週 第8週

A1 B2 D1 D2 E1 E3 E4

図5- 6 学習者別アクセス状況(試行配信)

141

・メールの内容が分かったか

・学習しようと思ったか

・ログインの仕方が分かったか

・教材の使い方の説明は分かり易かったか

・教材の操作の仕方は分かったか 以上、はい、いいえ の2件法 ・教材配信時期は、よかった、早かった、遅かった の3件法

・どのくらい学習したか すべて~全然 の5件法

・学習場所 自宅、大学、その他 3件法

Ⅱ・佐賀の情報を得るのに役立ったか 5件法

・日本語学習に役立ったか とても役立った~全然役立たなかった の5件法

・教材のレベルはどうだったか 3件法

・日本語レベル 6件法

・問題の意味が分かったか 5件法

・音声のスピードは、 5件法

・この教材を学習して役立ったこと 自由記述

・留学前に知りたかった情報 自由記述

・教材に追加したいもの 自由記述 以上18項目についての調査を実施した。

このアンケートから、以下のような結果が出た。

① 「メールの内容を理解したか」については、「はい」が86%であり、メールの文章に 関しては問題がなかった。

② 「ログインの仕方が分かったか」は、「はい」が86%であり、概ね理解できたと考え る。ログインできない学生に対しては個別の対応を行った。

③ 「教材の使い方の説明は分かり易かったか」については、「はい」が86%であり、概ね 理解できたと考える。ただ、理解できなかった学生への対応ができないことが問題であ る。

④ 「教材の操作の仕方が分かったか」は、「はい」が93%で、説明が理解できたと判断で きる。

上記4項目に関しては、大きな問題点はなかった。また、以下のような効果を確認する ことができた。

⑤ 教材配信時期については、「2 カ月前でちょうどよかった 79%」、「早い 14%」、「遅い

7%」であり、2カ月前の配信は妥当であると考える。

⑥ 学習場所は、主に「自宅 」が90%で、ほぼ自宅での学習であった。

⑦ 「佐賀の情報を得るのに役立ったか」は、平均ポイント3.77p/5pであった。以下のよ うな回答があった。

・生活に役立つ。実用的。面白い。

142

・佐賀大学に来る前に色々心配した。日常生活のこととか教材はそれに役立った。

・佐賀大学の情報が役に立った。佐賀について知りたかった。

・知りたいことがたくさん入った教材で喜んで学習した。

・とても生活に役立つから毎日やっていました。

・佐賀に来る前、佐賀について知らなかったが、これを見て分かった。

⑧ 「日本語学習に役立ったか」については、平均ポイント3.77p/5pで以下のような回答 があった。

・とても役立ったと思う。生の日本語だと思う。

・書くのは大丈夫だったけど話すのは苦手なので日常会話が役立った。

・聴解の練習になった。

⑨ 教材のレベルは、「ちょうどよかった45%」、「易しかった45%」、「難しかった7%」

は、今回の回答者が、中級から上級の学生が多く、初級前半の学生が少なかった結果で あると考えられる。

⑩ 音声のスピードは、平均値3.08でほぼちょうどよかったと考える。

⑪ 「この教材を学習して役立ったことについて」(自由記述)は、以下のような回答があ った。

・来日 タクシーに乗ったとき ・聴解の練習ができた

・ビデオに出てきた場所での会話 銀行、買い物、食堂、スーパー ・内容と単語、聴解練習

・お店に入ったとき、自分が何を買いたいか、店員に伝えられるようになった。

日常生活に欠かせない物の日本語が分かった。

・銀行で、一人で口座を開設できた。

5.1.4.3 モニタリングによる調査結果

その後、モニタリングを実施した。モニタリングをしての問題点として以下の 4 点が挙 がったため、改善点も併せて記す。

① メールの案内については、画面いっぱいの日本語は苦手で読みたくなかった。

≪改善点≫ イラスト入りの簡潔な説明を加える。

② メールが届かなかった。メールを見落とした。

≪改善点≫ 何度かメールを送ること。

③ 内容がよく分からなかった。(映像教材があることに気付かなかった。)

≪改善点≫ 表示方法を検討する。

④ 来日前は忙しかったので全部は見られなかった。

夏休みは忙しかった。時間が足りない。

≪検討課題≫ 配信時期の検討等、課題として残る。

143

また、第4章2節で述べたガニェの9教授事象の検証を行うと、表5-5のようになった。

表5- 5 ガニェの9教授事象を用いた「来日前日本語学習教材」の検証

9教授事象 「来日前日本語学習教材」の構造 検証

導 入

事象1:

学習者の注意を喚起す る

来日前の留学生にメール送付し、

教材内容の概要を日本語と英語で紹介する。

案内文 修正 事象2:

講座の目標を知らせる

メールの案内文にて教材の特徴と目標を提示す る。ログインIDとパスワードを送付する。

事象3:

前提条件を思い出させ る

最初にアクセスするWebページに、イラスト で教材内容を分かりやすく説明する。

プレースメントテストで今の力を把握する。

より理解容 易な内容に 変更 情

報 提 示

事象4:

新しい事項を提示する

Moodleの使い方の説明をする。(日本語と英

語)

Moodleの学習コースに、学習内容を写真入り

で表示し、学習の流れを図示する。

提示方法の 変更

事象5:

学習の指針をあたる

レベル別に学習内容を選択させる。

映像教材の中に学習ポイントを指示する。

学習方法の 変更 学

習 活 動

事象6:

練習の機会を作る

映像教材作成。

映像教材から重要表現を取り出し、リピーティ ングと会話練習を行う。

映像教材学習後に演習問題を解かせる。

教材の内容 の精査

+α教材の 追加 事象7:

フィードバックを与え る

演習問題実施後に、答え合わせとフィードバッ クを行う。

「談話室」へのインストラクターや受講者の書き 込み

インタラク ティブ性の 確保

ま と め

事象8:

学習の成果を評価する

演習問題を解くことで、学習がどれだけ理解で きたかを評価する。

レベル別 事象9:

保持と転移を高める

来日後、学習した状況に遭遇した場合に、使え るかどうかで保持が分かる。実生活に即応した 場面で応用ができたことで長期記憶への転移と なる。

今後の検討事項として、モニタリングで挙げた4点とともに、ガニェの9教授事象を検 証した結果、案内文や説明文をより理解容易な内容に変更すること、Moodle の表示方法 を分かりやすくすること、教材学習の方法をレベル別にするなどの検討、教材内容の精査 とプラスの教材の検討、フィードバックの方法などよりインタラクティブ性を持たせるに はどうすればよいか、など、新たな検討事項が出てきたので、併せて検討していかなけれ ばならない。

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