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来日前日本語学習教材の学習意欲デザインプロセス

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 121-126)

第 4 章 来日前日本語学習教材の設計と開発

4.5 来日前日本語学習教材の開発

4.5.1 来日前日本語学習教材の学習意欲デザインプロセス

不安軽減を目指した「来日前日本語学習教材」を開発する際は、インストラクショナルデ ザインと学習意欲デザインを検討しなければならず、本章 1 節の中でそれぞれのデザイン を検討した。ここでは、学習意欲のデザインプロセスは、IDプロセスと同様のステップを 踏むため、相互に関連させた教材開発の検討をする。表4-10にそののIDステップと学習 意欲デザインを設計した。

表4- 10 「来日前日本語学習教材」のIDステップと学習意欲デザイン

ステップ IDステップ 学習意欲デザイン

分 析

1)コース情報収集 コ ー ス 概 要 と 実 施 理由

来日前の不安軽減を目的とし、来 日先の情報や文化等を紹介するこ とでスムーズな異文化適応を促進 し、実践的コミュニケーションス キルを高める

来日直前の2カ月間の集中講座。

一般的なものではなく地域や大 学に特化したオリジナリティーの あるもの。

・大学オリジナルということをアピ ールすることで、興味を喚起する。

・今の大学生がどのような視覚的好 奇心を持っているか、日本人学生や 留学生等から調査を行う。

・文字だけでなく、イラストや写真を できるだけ多く掲載する。

2)学習者情報収集 学習者の特性、開始 前のスキル把握

留学生への調査を実施し、学習者 の来日前不安の他に、来日目的、

日本語レベル、知りたい情報、こ れまでの学習方法等を把握する

学習者は、佐賀大学に留学直前の 留学生。対象日本語レベルは、初級 後半から中上級。日本語の基礎文 法は少し学習済みの学習者を想 定。

プレースメントテストで学習者 のある程度の日本語力を把握す る。

・学習者の特性については、アンケー トを実施し、来日前不安・日本語学習 に関する不安、動機づけ・自己効力感 などを把握する。

・どのような教材であれば学習意欲 が高くなるかのアンケートも実施。

3)学習者分析 学 習 意 欲 の プ ロ フ ィール

アンケート調査を分析し、学習者 の大まかな特徴を把握し、そのニ ーズにできるだけ対応できるもの は何かを分析する

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これまで日本語学習の経験はあ るが、実際に来日は初めての学生 に焦点を当て、実践に役立つ教材 を検討。

・アンケート調査で収集した情報を 分析し、不安要素を少しでも軽減で きるような内容を選択する。

4)既習教材分析 現在の教材、他の資 源 に は ど の よ う な ものがあるか

先行研究を基に、既存の教材にあ るものと不足しているものを選定 書籍化された文法積み上げ教材が Web学習教材となっているものも ある。書籍の中のビデオ教材も参 考になる。また、現在、YouTubeな どで簡単に見られるビデオ学習教 材等も多数存在する。さらに、情報 提供を目的としたものも、各大学

のH.P.に存在する。

文法積み上げではなく、来日直後 に役立つ表現を厳選した大学オリ ジナル教材を作成する意義は大き い。

・学習意欲や動機づけが高くなるよ うな教材とはどのようなものか、既 存のWeb教材を分析。

・その中で、目的に合致した内容のも のを参考にはできる。

・場面シラバスは、アンケート結果と 重なるものもあるが、映像教材は、あ くまで実際の場面での撮影で学習者 の興味を喚起するものを作成する。

5)目標/評価項目 作成

学 習 者 の 意 欲 に 対 し 何 を ど う や っ て 達成したいか

来日直後に遭遇する場面で実際に 使える表現を載せる

評価は自身が実際にその場面で使 うことができたか自己評価する。

・実際の場面を想像できるような映 像教材を作成する。オーセンティッ クな会話を作成する。

・アニメーションは学習者に語り掛 けるようなシチュエーションにす る。

設 計

6)利用可能方策一 覧

ARCS方策

第 4 章の ARCS 方策一覧に詳細 は掲載済み

メール配信、イラストを入れたガ イダンス、フローチャート式の学習 段階の提示、ビデオ、アニメーショ ン、イラスト、Moodle上の演習問 題解答と解説。

・映像と写真とイラストを多用し、視 覚的にも興味をそそり学習意欲を高 めることができるものを設計する。

・映像を短くカットすることで、学習 者の負担を軽減すること。また、学習 レベルに合わせ、映像をストップさ せ、会話のリピーティングを行える ようにするなどの工夫が可能。

7)方策の選択と設 計

学習者、場面等から 見 て 最 も 許 容 さ れ る方策

配信時期の選定

プレースメントテスト結果は、双 方向にするために、個別にコメン トを記載する。

1 課終了後に学習内容を確認す るための基本演習問題と、学習内 容の展開としての応用問題を設 定。できるだけイラストを入れた 音声問題を多くする。

・学習意欲が高まる時期と、学習可 能な時期とを考え配信時期を設定 する。

・個別コメント記載により、学習者 の学習意欲を高める。

・演習問題は Moodle 上にあげるこ とで、学習直後にフィードバックが 可能となり、学習意欲の促進と再挑 戦をすることで自己効力感も増す。

8)教授法との統合 ID と学習意欲の統 合、実施すべきもの

場面・機能シラバスに沿った教材 作成

文法学習のための易しい会話練習

・調査結果からも分かるように、この 教材はできるだけ聴解を重視し、す

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ではなく、あくまでもオーセンティ ックなものを教材にする。その会話 の中から、押さえるべき表現を取り 出し、リピーティングや会話練習が 行えるようにする。

べての項目に音声を入れることにす る。

・音声だけでは不安になる学生が多 いため、これまでの学習形態に合わ せ、すべてプリントアウトできる紙 ベースの教材も準備する。また、日本 語初級者向けに英語訳をつける。

開 発

9)教材の選択と開 発

学 習 環 境 に 応 じ た 教材の改訂

教材内容の選択は、来日後遭遇す るもので、実際の場面を事前に見る ことで役立つものを選定する

他の教材との差別化は、地域性の あるもの、実際の場面を映像化し臨 場感のあるものにすること。

会話練習に関しては、日本語初級 教材に多く見られるような重要表 現を選定する。

演習問題では、その表現を正しく 覚えているかをチェックする基礎 編と、その表現が別の場面でも使い こなせるように応用編を作成。

・来日後に遭遇するであろう場面を 事前にシミュレーションできる た め、動機づけとして大きい。

・一般的なものではなく、地域に特化 したものを学ぶことは、来日直前で 不安を抱いている学習者に安心を与 えられる。

・学習経験者にとっては、既習の表現 がどの場面で使用できるのか、実際 の場面で、どのようにコミュニケー ションを行えばいいかが分かり、こ れまでの学習が実践に使えることを 知り、自信へと繋がる。

実 施

・ 評 価

10)評価と訂正 学 習 者 の 反 応 を 集 め、満足度を確定、

改訂

パイロットテストを実施し、小集 団評価を行い、内容が適切である かの評価をおこなう。次に、試行 配信を行い、実際に海外で運用で きるかを調査する。その後、実際 に配信を行い、学習状況を管理す る

形成的評価活動。インタビューを 実施し、教材の構成、内容、動機づ けの評価などを行う。それを毎回 繰り返し、改善を行う。

・定期的に進捗状況をチェックする。

学習が途中で止まってしまった学習 者へのメールでの声掛けなどを行 い、学習意欲の喚起を行う。

・満足度を測るため、来日後のインタ ビューを実施。

・毎回実施後に、アンケートとインタ ビューを行う。その結果を基に改善 を行う。

・この教材が、どの程度来日前の不安 の軽減になったかを調査する。また、

学習意欲が継続できる教材であるか も調査する。

また、アンケートを基に、学習意欲分析を行ったのが、図4-7である。これは、学習意欲 と学習効果を分析するYerkes & Dodson(1908)の「逆U字カーブ」にARCSモデルを当 てはめ、筆者が作成したものである。

113 作成したグラフの説明を次の表4-11にまとめた。

表4- 11 「来日前日本語学習教材」における学習者の意欲予想

A注意 日本語か英語が理解できる学習者(A1)は自身が留学する大学 からのメールを見て興味を喚起させられる。学習意欲が適度に高い。

しかし、大学からの強制された学習だと感じれば、それは高過ぎる 刺激となり、マイナスの要因となる。

英語も日本語もあまり得意でない学習者(A2)はたくさんのメー ルの中からうまく注意を引くことができず、学習意欲に繋がらない 場合もある。

R関連性 はじめは中程度ないし高い。イラストや写真をみて自身が必要な 情報があるとわかれば、関連性を知覚し学習意欲が高まる。

しかし、eラーニングに初めて接する学習者は、どのような学習を すればよいのかパソコン操作に苦心する可能性がある。

あくまで個人の自由意思で学習を開始するため、継続も個人の意 思次第である。

C自信 学習者の日本語レベルにより、その活用の仕方は違う。初級後半 から中級レベルの学習者にとっては、ビデオ教材を学ぶことで来日 後の生活や会話表現を新たに学び大きな自信へと繋がる。

また、上級レベルの学習者にとっては、自身の既存の知識が実践 に役立つことを知り、改めて自信となる。

しかし、初級レベルの学習者は、実際のビデオを見て、表現を学ぶ ことはできるが、過剰な情報となるため、実際に使えるかと不安に なりマイナスに働く可能性がある。

S満足度 多様。すべてを達成した学習者(S1)は、大学から送られてきた 教材を終えることができた達成感と来日後に役立つ様々な情報を 得、満足度は高い。しかし、学習しなければならないと思いながら、

来日準備で多忙であったり、パソコンのないという様々な状況下で、

十分学習できなかったと感じる学習者(S2)は、満足感を純分に得 ることができないと予測する。

C

S1 A2

A1

S2

R

図4- 7 学習者分析結果のグラフ 逆U字カーブ

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