第 3 章 来日前不安
3.5 来日前不安と学修観
3.5.1 学修観
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男女差においては、プラス要因に関しては、「04. 自分は他の人と同じくらい物事がうま くできる」と「07. 大体自分に満足している」の 2 点は女性の値の方が高い結果となった が、「02. 自分にはよいところがたくさんある」については男性の値が高くその差が大きい。
マイナス要因について、反転前は男性の数値の方がすべて低いため、男性の方が自分に自信 を持っていることが分かる。特に、「03. 全体的に自分はダメだと思う」については有意差 が出た。
「自己効力感」と「日本語不安」との相関関係を求めたところ、「09. 自分は本当に役に 立たないと思う」や「10. 自分はまったくダメだと思う」のように自身を強く否定する項目 と「日本語不安」とに低いけれども相関関係がみられた。自己効力感が低い場合、自分に自 信が持てず不安感情が高くなる、ということが考えられる。プラスの自己効力感と日本語不 安との相関関係はみられなかった。
また、「自己効力感」と「来日前不安」についても「マイナスの自己効力感」5項目に「来 日前不安」との低い相関関係がみられた。
自己効力感の高い学生は、あまり不安を感じないという傾向にあることが調査結果から 分かった。また、プラスの自己効力感が高い学生は、学習への動機づけも高いという結果が みられたが、「08. もっと自分が尊重できたらよい」とマイナスの感情を持っている学生も、
学習の動機づけが高い傾向にあることが分かった。
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将来を設計するという学生自身の学びの自己評価であると同時に、教職員がその結果を踏 まえて指導助言を行い学生の学びの支援をするために作成されたものである。不安の傾向 を総合的に捉えるだけでなく、個別に対応させた学習支援の在り方を探る一つの手立てと して参考になるのではないかと考える。
学修観の基になる考えとして、市川(2004)の学習動機2要因モデルがある(図3-9参 照)。
(「学習と教育の心理学」p. 21より 一部筆者加筆)
学習内容の重要性と学習の功利性という2つの次元から、6つの学習動機を挙げている。
上段の充実・訓練・実用志向をまとめて、学習内容に関連している動機として、「内容関与 動機」とし、下段の関係・自尊・報酬志向は、学習内容から離れた動機であるため、「内容 分離的動機」と呼んでいる。また、内容関与的動機は学習方法との相関もあるということで、
学習方法の特性として、「失敗に対する柔軟性」「思考過程の重視」「方略志向」「意味的理解 志向」の4点を挙げている。
ここで、使用するアンケート用紙は、前述の「学修観W.G.」が作成したもので、81の質 問項目に5件法で回答をする形式になっている。「充実志向」「運連志向」「実用志向」「関係 志向」「自尊志向」「報酬志向」「失敗に対する柔軟性」「思考過程の重視」「方略志向」「意味 理解志向」「新奇性追求」「肯定的な未来志向」「感情調整」の13の尺度を6つのグループ、
学ぶ目的として「学びの欲求」「学習方法の基にある考え」「立ち直る力」の3分類され、学 びの力として「考えようとする力」「行動しようとする力」「繋がろうとする力」に分類され る。学生の特性に基づいた個別の学習ニーズが明確になれば、的確な支援が可能になると考 える。分析をした後に支援へ繋げるものである。表3-16は学修観の「学ぶ目的」を分類し ている。
図3- 9 学習動機の2要因モデル
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表3- 16 学修観「学ぶ目的」の分類
学びの欲求 問題数
①訓練志向 自分自身の知力を鍛えようとの思いから学習している 6
②実用志向 将来の仕事や生活に活かそうと思って学習している 6
③関係志向 友だちや先生との関係を大切にしている 6
④自尊志向 自分に対する自信をしっかりと持っている 6
⑤報酬志向 将来の生活を豊かに/経済的によい生活をするために学習している 6
⑥充実志向 学習内容や勉強することの意義を十分見出して日々努力している 6 学習方法の基にある考え
⑦失敗に対する柔軟性 失敗したときや躓いたときに自分の感情をうまく調整している 6
⑧思考過程の重視 合理的な考え方や筋道だった考え方で物事を考えようとしている 6
⑨方略志向 学習の仕方を工夫している 6
⑩意味理解志向 学習の中身を理解する姿勢を持っている 6 立ち直る力
⑪新奇性追求 新しい分野も自分にとって有意義なものとして学習している 6
⑫感情調整 自分の感情をコントロールしながら勉強を進めている 6
⑬肯定的な未来志向 学習の先にある、将来に対する明確な目的を持っている 6
区分名 問題数 配点 1
配点2 質問番号
①訓練志向 6 30 7.407 23,27,29,38,39,56
②実用志向 6 30 7.407 24,31,34,35,37,42
③関係志向 6 30 7.407 30,41,47,48,53,55
④自尊志向 6 30 7.407 36,40,43,45,49,57
⑤報酬志向 6 30 7.407 44,46,50,51,52,54
⑥充実志向 6 30 7.407 22,25,26,28,32,33
⑦失敗に対する柔軟性 6 30 7.407 59,62,67,72,74,79
⑧思考過程の重視 6 30 7.407 58,66,70,71,78,81
⑨方略志向 6 30 7.407 60,63,64,73,75,77
⑩意味理解志向 6 30 7.407 61,65,68,69,76,80
⑪新奇性追求 7 35 8.641 1,4,7,10,13,16,18
⑫感情調整 9 45 11.111 2,5,8,11,14,17,19,20,21
⑬肯定的な未来志向 5 25 6.17 3,6,9,12,15
また、学びの力の分類は「Ⅰ考えようとする力」、「Ⅱ行動しようとする力」、「Ⅲ繋がろう とする力」を以下のような区分とし、配点をしている。(表3-17参照)
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表3- 17 学修観「学びの力」の分類
学びの力 区分名 問題数 配点1 配点2
Ⅰ考えようとする力
考えようとする意識の度合 ⑦⑧⑨⑩⑫ 33 165 40.741
Ⅱ行動しようとする力
行動しようとする意識の度合 ①②⑥⑪⑬ 30 150 37.037
Ⅲ繋がろうとする力
回りの評価を気にする意識の度合 ③④⑤ 18 90 22.222 この結果より、表3-18のような学びの力のタイプを8つに分けるようになっている。
表3- 18 学修観「学びの力」の8タイプ
AAA AAB ABA ABB BAA BAB BBA BBB
Ⅰ A A A A B B B B
Ⅱ A A B B A A B B
Ⅲ A B A B A B A B これらのデータを基に、これまで加藤・後藤(2014)が実際に日本人学生に実施し、妥当 性が検証されている。これを、留学生にも実施し、日本人学生との比較をし、留学生ならで はの学修観の違いがあるかを検証する。