• 検索結果がありません。

華社自 助理事会 (CADC)の 成立と 発展

ドキュメント内 甲南女子大学学術情報リポジトリ (ページ 156-167)

第 9章   新国 民 統合政策下に おける 「民族」のあり方

第 5節   華社自 助理事会 (CADC)の 成立と 発展

間に突如 として暴動を発生させ る。そのような状況の中、幸運 にもシンガポールでは、多 文化、多民族、多宗教が共生 し、国民は強い家庭観念を有 している。シンガポール人は こ れを当然のことと思 うことな く、国民の間に更に強い自身と信頼心を築 き、経済問題に対 応 していかなければな らない。」 と述べ、「 トータル・デ イフエンス」の重要性 を強調 し た。・

しか しなが ら、政府側が一方的に、国民教育展 を開催 した り、「 トータル・デ イフエン ス」を訴えた りすることだけでは、それが原動力にはなることはあつて も、国民の中に団 結や国家への帰属意識が簡単に形成されるとは限 らず、実際には難 しいものがある。そこ で、近年、政府の支持の下で相次いで設立されたのが、マレー・ イスラム教社会発展理事 会、イン ド人発展協会、華社 自助理事会 といった、民族 ごとの 自助組織であ り、これ らの 機構の活動によって、民族の相互扶助を施 し、国民教育及び「 トータル・デ イフエンス」

といった全体的な政策 と共に、国民統合 を目指 し、活動を展開 している。

で、華人就業者の中央公積金局の回座か ら毎月直接、月収2,000ド ル以下の者で0.5ドル、

2,000ド ルを超える者で 1ド ルが、華社 自助理事会へ寄付金 として差 し引かれているので ある。これは強制ではな く、寄付の意志のないものは、署名を添えて不参加 申請書を提出 することができる。

1997年の時点では、華人の中央公積金会員は約 750,000人 であ り、その うち約 550,000 人が 2,000ド ル以下の収入であることか ら、そこか ら換算すると、華社 自助理事会は中央 公積金か ら毎月約 470,000ド ルの寄付 を得 ることとな り、基本的な経費はそれによつて賄 うことができるという。・ また、政府は、華社 自助理事会設立か ら

5年

間の計画で、毎年 最高 2,000,000ド ル、

5年

間で計 10,000,000ド ル という手当を多額の支給することとなつ ている。中2

華社 自助理事会は、上述のように、シンガポール華人国民の中央公積金か らの寄付や政 府か らの手当によって成 り立っているが、その他、政治家や企業家を含めた人々か らの多 額の寄付 も得ている。その中でも大 国のものは、

1992年

の 自助会信託委員会及び寄付委 員会主席の黄祖lleか らの亡父黄慶 昌の名義による1,000,000ド ル、1996年の リー・クアン ユー上級相 か らの 416,0∞ ドルの一部及び リー・ シエンロン (李顕龍

)副

首相 か らの 644,000ド ルの一部があげ られる。 リー父子の寄付金は、彼 らのマンシヨン購入の際の割 引金額全額であ り、華社 自助理事会、イ ン ド人発展協会、マ レー・イスラム教社会発展理 事会に寄付 されることになつた。

"こ

れか らみて も、華社 自助理事会は、一般市民か ら企 業家、政治家に至 るまでの階層の華人か ら寄付によつて成 り立っている民間機構であると いえ、決 して政府、或いは宗郷会館聯合総会及び中華総商会等の付属機構であるというわ けではないこと力`わかる。

1995年 4月

、華社 自助理事会、マ レー・イスラム教社会発展理事会、イ ン ド人発展協 会の

3団

体は、初めて合 同で、シー リン中学校普通クラスに在籍する

4年

生101人を対象 に、生徒の 自信 とアイデ ンテ ィテ ィを強化 させるために、各団体がそれぞれ 400ド ルを支 出 し、専門家を招いて各団体の紹介や、各種講座についての説明会 を 2日 間かけて行つた。

イン ド人発展協会会長カニサ ンは、「

3団

体の共 同開催は、各民族の学生を助けるだけで はな く、各民族が交流する良い機会を提供することとなつた。」 と述べている。Ч

また、同年

12月

には、上述の

3団

体 に欧亜裔人士協会 を加えた

4団

体が合同で、3日 間の「少年

2000キ

ヤンプ」を開催 した。キヤンプは、参加者に対 して、遊戯、グループ 討論会、 フォークダンス、文化活動等の、文化を超 えた学習 と交流を通 して、異文化及び 異なる価値観や言語に対 して理解 を深めさせ、 リーダー シップを洒養 し、団体生活の精神 を習得 させ ることを目的 としている。キヤンプには、小学

5年

生及び

6年

生の児童が 20 ドルを払つて参加 した。チュン・ ジッコン (庄日昆

)社

会発展部高級政務部長が主賓 とし

*1鄭

明杉編著『 黄祖耀伝』、名流出版社、香港、1997年、180頁 。

*2『

聯合早報』、1997年 1月 20日 。

*3『

聯合早報』、1996年 6月 4日。

*4『

聯合早報』、1995年 4月 26日 。

‑151‐

て出席する等、政府側 も支持を表明 した。・ 上述のように、 これ らの

3団

体は、政府の推 進する多民族 との協調 も日標 に置いて、

1995年

か ら、各民族で独 自に活動を展開するだ けではな く、 このような合 同形式の活動を展開するようにもなっている。

華社 自助理事会はまた、

1996年

前後か ら、ポンゴール、 ブキ ツメラ、

 

トアパ ヨ、ユー イン、イーシユン等、シンガポール全域 に、

7つ

の華社 自助理事会付属の「学生サー ビス

・センター」を設置 しているが、その中で も代表的な

1994年

に設立された トアパ ヨ学生 サー ビス・センターには、小型図書館、

21台

のコンピユーターを持つコンピユータール ーム、 自習室等が備 え られてお り、

40人

のボランテ イアによつて、補習、コンピユータ ー講座、遠足等の活動が行われている。同セ ンターは、1996年 1月 の時点で 1,040人 の会 員を有 し、セ ンターの管理は、地域コ ミユニテイーにおける

26人

の指導者による管理委 員会 によって行われている。中2

1995年 12月に、

 

トアパヨ学生サー ビス・センター開幕式兼開放 日に出席 したチヤン・

ソーセ ンは、「 セ ンターの管理を無駄のない ように行 うために、完成 した学習サー ビス・ セ ンターを、地域コ ミユニテイと住民に委ね、政府は財政や管理面での協力を行 うように

しているが、 こういつた組織 システムは、現在の ところ良い成績 を収めている。」 とセ ン ター と地域コ ミユニテ イの合作の成果 とその必要性 を強調 し、「 1つの学生サー ビス 。セ ンターを設置するのに、150,000〜 200,000ド ルの費用を要するが、地区コ ミユニテ イ組 織 と住民の反応が良ければ、ボランテ イアエ作者 も増加 し、活動は更に盛んになるであろ う。そ うなれば、 これ らの投資は価値のあるものであるといえるようになる。」 と今後の 見通 しを語 つている。Ⅲ3

こういった「 学生サー ビス・セ ンター」には、

6歳

か ら

18歳

までのシンガポール公民 及び永住権所有者 (Pannanent Residence,PR)が 会員 として登録することができているが、

1996年

5月 よ り開始 された、非華人学生の華社 自助理事会への準会員 としての参加 申請 者数は、同年 12月 31日 までだけで、マ レー系103人、イン ド系36人、欧亜系14人を含 む153人となつた。他の民族グループは中央公積金か ら華社 自助理事会に寄付 をしていな いことか ら、こういつた準会員の会費は

3年

で 7.5ド ル と、華人の 5ド ル と比較すると若 干高 くなつている。チヤン・ソーセンは「 それぞれの 自助会 には、児童・生徒の都合に応 じて他民族 を受け入れるといつた暗黙の了解がで きている。 しか し、実際には児童・生徒 は、 自分の属する民族グループの活動に参加することを望み、他民族の 自助会の活動に参 加するケースは多 くない。 また各 自助会 も積極的 に他民族 を受け入れることを していな い。」 と述べているように、やは り、 自助会は基本的には各民族 ごとで活動を継続 してい

くことを目標 としている。Ч

また、

1996年

度か ら、華社 自助理事会は「学生サー ビス・セ ンター」の設置以外 に、

全国に計 1,713の クラスを有する

78の

「補習セ ンター」を設置 し、20,428人 の児童 。生

『 聯合早報』、

『 聯合早報』、

『 聯合早報』、

『 聯合早報』、

1995年 11月 9日。 1996年 1月 1日 。 1996年 1月 1日 。 1997年 1月 24日 。

152‐

徒が補習を受けることとなった。「技術訓練課程」において も、低収入の華人青年

328人

に対 して、48種類の技術訓練課程を提供 し、1995年に課程 を修 了 した者の中で

41%に

あ たる者の給与に、

20%以

上の増加が見 られる等の成果が現れた。Ч

同年、華社 自助理事会は、中学普通コース1年生184人を対象に、彼 らに特進コース 2 年 に進学で きる学力をつけさせることを目的 として、

9校

の中学校 と合同で「補習 クラス」

を開設 した。 この計画に参加 した

9校

が、各 自補習科 目を決定 し、

10人

の少人数制 とし た「補習 クラス」の責任 を負 うこととした一方で、華社 自助理事会側が必要な教員、教材 を提供 し、生徒の教材

50%を

負担することとなつた。また、 この計画で年間1人の生徒 にかかる費用は 400ド ルであるが、華社 自助理事会は、生徒か らは毎月 20ド ルを徴収 し、

低収入家庭の生徒 に対 しては免除 としている。

元国会議員 リー・クンチ ヨイがかつて「私の息子は小中学校時代 に成績が非常に悪かつ たが、彼は大器晩成型で、現在は医者になつている。 しか し、彼がもし、現在の教育シス テムの中で学んでいれば、潜在能力が認め られないまま、タクシーの運転手のような仕事 に就 くことになっていたか もしれない。

Jと

話 したように、

3大

器晩成型の生徒が、敗者 復活戦に参加することがで きない現在のシンガポールの教育 システムは、近年批判を浴び ていたが、 この華社 自助理事会の「補習 クラス」開設の決定は、普通コースに在学する生 徒 に一筋の希望を与えることとなった。

ウォン・カンセン内務相 も、「能力があるにもかかわ らず、小学校の卒業試験での成績 が良 くなかったために、特進 クラスに進学することがで きなかつた中学生が多い。」 とし て、潜在能力のある学習意欲が旺盛な生徒のために、 この学校 ぐるみの「補習クラス」の 開設を支持 しきたが、それでも「華社 自助理事会は、資源の無駄 を省 くために、可能性の ある生徒のみを受け入れ、全ての生徒 を参加 させ ることは しない。」 としている。 これは やは り合理的な学歴分流主義を採 つているシンガポール らしい考 え方である。・

このように、

1996年

は、華社 自助理事会 にとつて、活動を増やすことだけではな く、

従来の主旨である低収入及び低技能の青年、定収入家庭の学業成績の低い児童・生徒の生 活及び教育水準を向上させ ることだけの 目標か ら、他民族の参加者を準会員 として受け入 れることを決定 しただけではな く、シンガポールの教育システムに影響を与えるような「補 習 クラス」を設置することとな り、 これまでのあ り方か ら一歩進んだ活動を展開する年 と なつた。

華社 自助理事会は、

1997年

以降、政府の一層の支持 を得 なが ら、従来の活動か ら更に 活動を展開させてい くこととなった。

1997年

は華社 自助理事会 が、政府の補助 を得 る最 後の年であることか ら、政府の賛助によ り、活動資金の獲得 を目的 とした「 チヤ リティー

・ゴルフ・コンペ」が特別に開催 された。ゴルフコンペには、華社 自助理事会賛助人のゴ ー・チ ョク トン首相 をは じめ、S・ ジャヤクマル律政相兼外相、 ヨー・チエウ トン (挑

*1『

聯合早報』、1996年 5月 26日 。

*2『

聯合早報』、1996年 5月 26日。

*3李

畑才「談 1991年 大選」、『 聯合晩報』、1991年 9月

8日

*4 

『 聯合早報』、1996年 5月 26日 。

153‐

ドキュメント内 甲南女子大学学術情報リポジトリ (ページ 156-167)