中 2し
第 9節 冬至
冬至 は、 旧暦 で い う
24節
気 の 1つ で、 旧暦の正 月の6週
間前 にあた り、北半球 では 日 照 時間が最 も短 い 日であ る とされ る。冬至 は本来 、農 民が収穫 を終 えた こ とを祝 う日で あ り、 この 日には各家庭で「 湯園」 と呼ばれ る団子 を食べ、一家団彙 を楽 しむ 日とされてい た。 また、周 の時代、冬至が元旦 とされていたこ とか ら、冬至は元旦 と縁 のあ る日として 多 くの華人は この 日を重視 して きた とい う。その後、 中国では、寺社や人民が冬至 に貧 し い人 に衣服や粥な どを与 え、慈善的な意味合いを帯び るようにな った。シンガポールは赤道 に近いため、季節 的にも日照時間で も冬至 を感 じることはで きない が、 この 日に「 湯園」 を食 す る習慣だけが、現在 まで受 け継 がれてい る。「 湯園」 とは、
餅 米で作 られ た団子であ るが、 その「 園」の字 には「 円満」 とい う意味が込め られ、家族 の団彙や吉祥 を表 す縁起 の良い食べ物 と して、冬至前 にはスーパー・マーケ ッ トや屋台等 で「湯園」が売 り出され る。華人は、 この 日に「 湯園」 を供 えて 1年の平安 を祖先 に感謝
し、次の1年が無事 に過 ごせ るこ とを祖先 に祈 る。
現在、 多 くの宗郷会館 で も、 一家団彙 と吉祥 を願 つて冬至 を祝 つてい る。 呂氏公会や福 清会館 をは じめ とす る多 くの宗郷会館 で は、一年 の締 め くくりと して、毎年冬至の会 が開 かれ る。福州会館 では1年お きに「冬至聯歓会」 を開催 してお り、「 冬至聯歓会」では湯 園作成 大会 、書道大会、彫刻大会 、歌唱大会等があわせて行われ、非常に大 きな行事 とな つている。1998年の福州会館「 冬至聯歓会」に参加 した主婦 の厳麗華は、「 若 い人 はいつ、
なぜ冬至 を祝 うのか とい うことを知 らない。 この ように会館 がイベ ン トを行 うことによっ て、冬至の意義が理解で き、家族 との繋 が りが深 まる。高齢者 に とって も、 同郷人 と集 ま
る好い機会 となつている。」 と、会館 が行事 を行 うことの重要性 を強調 してい る。・
調査結果 (表
32参
照)で
は、 小学生の84.1%、 中学生の71.6%、 大学生 。院生及び社 会 人の半数以上 が「 冬至 に参加 す る、祝 う」 と回答 してい るように、冬至は「 湯園」で繋 が る身近な行事 と して、若者の中に根強 く存在 していることが確認で きた。 これは、 同 じく冬の行事 であ る重陽節 とは対照 的な結果である。
第
10節第 8章 の要点
シンガポール華人青少年の、華人伝統行事に対する態度を総合的に見てみると、春節、
端午節、中元節、中秋節及び冬至は、宣伝 といつた社会か らのプッシユ要因の強さと、「行 事の伝統的な食物 を食べ る」 とい う食生活 と緊密に結びついていることが、生存への原動 力 となつてお り、参加率や関心の程度も比較的高い。また、先祖や宗族 を重ん じる華人に とつて、清明節や中元節は、途絶えさせ ることので きない行事 として認識されている。一
*1『
聯合早報』、1998年 12月 21日 。135¨
方、乞巧節や重陽節のような、社会か らのプツシユ要因も、伝統的な食物 もない行事は、
忘れ去 られる傾向にある。
また、社会経済の発達、価値観の変化、欧米文化の流入、他民族 との混住等 によつて、
伝統的な生活習慣 に基づいた生活 を送ることが困難になつてきているだけではな く、近年 では、ク リスマス、バ レンタイ ン・デー等の欧米の行事が非常に賑やかに行われるように なつて きている。 また、ナショナル・デー等の国民的行事についても、年々若者の参加者 が増加 し、ナショナル・デーのイベ ン トのチケ ツ トさえも手に入 らない状況が、毎年起 こ ってお り、国家への帰属意識や、国民的行事への興味が強 まつて きていることがわかる。
こういった状況か らみても、「伝統」 よ りも「現状」にそ くした行事を祝 う傾向が、強 く なつて きているということがいえる。
リー・クアンユーが「伝統的な祭 りの果た して どれだけがその意味を維持していけるの か とい うことが問題なのである。」 とい うように、多 くの行事への参加者を確保で きてい ることが重要ではな くて、その行事の意味や存在意義を、今後 どれだけ継承 していけるか どうかが、伝統的行事のみな らず、国民的行事、欧米か らの流入行事に共通する課題であ るということを、本節を通 して指摘することとなつた。
136‑
表
25‑32
華人伝統行事への態度有効/回収票
参加する 。祝 う
(人、
%)
知 つてい るが、
何 も しない
知 らない
(人、
%)
時々参加する
(人、
%)
春節
(25)
小学生 88/90 中学生 88/90 大学生246/300 社会 人267/290
88 100.0 84 95.5 238 96.8 258 96.6
︒
4
. 5
2
. 8
3
. 4 0
4
7
9
0 0
1
0
0
0
0
・ 4
0
清明 節
(26)
小学生 87/90 中学生 88/90 大学生245/300 社会 人 259/290
47 54.0 43 48.9 98 40.0 149 57.5
37 42.5 36 40.9 135 55.1 104 40.2
3 3.5 8 9.1
12 4.9
6 2.3
1 1.1
端 午 節 (27)
/Jヽt許」L 88/90 中学生 88/90 大学生 245/300 社会人 261/290
79 89.8 70 79.5 158 64.5 168 64.4
9 10.2 16 18.2 82 33.5 89 34.1
0 0
2 2.3 3 1.2
2 0.75
2 0.8
2 0.75 乞 巧
節 (28)
/Jヽt声生L 87/90 中学生 88/90 大学生243/300 社会人251/290
3 3.5 7 8.0
12 4.9 34 13.5
71 81.6 39 44.3 140 57.6 150 59.8
13 14.9 42 47.7 91 37.5 67 26.7
一九
中 節 但
小学生 88/90 中学生 87/90 大学生244/300 社会 人260/290
55 62.5 40 46.0 69 28.3 130 50.0
32 36.4 42 48.3 172 70.5 129 49.6
1 1.1 4 4.̀
3 1.2 1 0.4
中秋節 (30)
/jヽ学生 88/90 中学生 87/90 大学生245/300 社会 人263/290
83 94.3 68 78.1 190 77.6 189 71.8
5 5.7
17 19.5 52 21.2 73 27.8
0 0
2 2.3 2 0.8 1 0.4
1 1.1
1 0.4
重 陽 節
(31)
小学生 中学生 大学生 社会 人
244/300
88ノ90
250/290 88/90
5.7 10.2 12.3 46 18.4
5 9 0 3
29 33.0 39 44.2 111 45.5 131 52.4
54 61.3 40 55,6 103 42.2 63 25.2 冬 至
(32)
小学生 88/90 中学生 88/90 ブく錯許生L245/300 社会人262/290
74 84.1 63 71.6 138 56.3 164 62.6
11 12.5 18 20.4 67 27.4 83 31.7
3.4 8.0 15.9 5.7 3
15
7 9
3
1 0.4
1991年
合 田美穂
‐137‑