第 6章 「スピーク・マンダリン・キヤンペーン」
第 2節 「スピーク 0マ ンダリン ・キャンペーン」と華人青少年
以上のような形で展開された「 スピーク・ 。マング リン 。キヤンペーン」は、上述のよ うに、最初の
10年
間は、 日常生活における華語の使用を目的 としていたが、その後の10 年間は、第8章
第 1節及び第2節
でも述べているように、中華文化に照準を当て、宗郷会 館の活性化、華人の伝統風俗の紹介、中国・香港・ 台湾の華語による映画の上映、華語戯 曲等の文化的な行事を増やすことに力が入れ られて きた。また、中国の改革開放 に伴い、華語は ビジネスにおける重要な言語 として受け入れ られ、インターネ ッ トでも華語は普遍 的に使用されるようにな り、運動 も様相 を見せ るようになっている。Ч
ピー ク・マ ング リン 。キヤンペー ン」開始 と同時 に、マスメデ ィアにおける方言による番 組 はすべて華語 に切 り替 え られ、香港映 画 も広東語か ら華語 に吹 き替 え られ る等の方言廃 止運 動が繰 り広 げ られた。青少年 の親 の世代 にあたる、華語教育 を受けた多 くの華人は も ち ろんの こ と、方言 しか話せ ない高齢者層 の華人 も、仕 方な く華語のテ レビ番組 を視聴 す るようにな り、華人青少年は、家庭あ るいはマス メデ ィアを媒介 に して、毎 日の ように華 語 を耳 にす る機会 を持つ ようにな つた。・
また、
1993年
のシ ンガポール プ レス・ホールデ イング社、1997年
の フォー ブズ 。リサ ーチの調査 による と、8割
以上 の華人 が華語で会話する能力 を有 してお り、華語系の第8 チ ャ ンネルの視聴率は、英語系の第5チ
ャンネル を上 回 り、華語 を媒介 としたマス・ メデイアは、華人の中では依然 として支持 されてお り、それが華人の華語 を聞 く能 力を維持 さ せ てい る ともいわれてい る。中2それ に比べ る と、「話 す」 こ とと「読 み書 き」 をす る機会 は比較的少ない と考 え られ る。
調査結果 の 中で最 も興味深 い点 は、 小学校
6年
生 の華語能力である。「 話す」、「 聞 く」、「 読 み書 き」 の どの方面 をみて も、
fr均
も し くはそれ以上 の能 力 を有 して い る。特 に、6割
以上 の児 童 が「 話す」、「読 み書 き」 に対 して全 く問題 ない と答 えてお り、で きない と答 えた児童は皆無であ つた。それ と対 比 して、 中学生 以上では、「 聞 く」、「話 す」、「読 み書 き」のすべての項 目において、で きない と答 えた被調査者が2‑8%存
在 してい る。この点 か ら、英語主流の教育か ら
2言
語重視 の教育へ 言語政策 が転換 し、2言
語教育及 び「 ス ピー ク・ マ ンダ リン 。キ ャンペー ン」は、既 に教育 システ ムの一環 と して軌道 に乗 り、
成功 を収 めてい る とい うこ とがで きる。
一方、社会 人の華 語能 力が「 聞 く」、「 話 す」、「 読 み書 き」の各方面 ともに、大学生 ・ 大学院生 を上回 つてい るのは、仕 事上で の必要性 や、社交活動の場で華語 を聞いた り使用 した りする機会 が増加 す るためであると考 え られ る。実際 に大学 内で華語 を話す必要性 は な く、華語がで きないために不便 する事 はほ とん どないが、社交活動の場では、かつての 華語学校 出身者や高 年齢層 と接 す る機会 も自動的 に増加 し、華語 の必要性 に直面す ること が多 くなるか らであ る。
また、華語能力の 向上にお け るその他 の要 因 と して、 シンガポールは、
1980年
以 降ア セ ア ン第一位 のGNPを
不動の もの と して以来、国家経済が安定 し、その結果、国民は物 的保 証 と安 らぎの場 を享受 しようとす るようにな ったこ とが考 え られ る。P.ブ
ルデ ユー が、「 未来 を支配 しよ うとす る努力は、成功の最 小限 のチ ヤ ンスが確保 され るの に必要 な 条件 が与 え られて のみ、実際 に試み られ る。その場合、各個人の性 向やイデオ ロギーの体 系が再構造化 され るこ ととな るが、 それは生活の物的条件の決定 的な変化 によるものであ*l Chew S00■
Beng,et.al,eds.,フ
し′レの ακα ι″υs夕JaS οだん gS'″̀瑠
り0′ιακS(SingapOre, Simon and Schuster, 1998), pp.129‑156.
*2周 清海、呉英成「 華語」、『 聯合早報』1998年 9月 12日 。 109‑
り、それはまた、ニカ国語の使用能力、資格、教育水準の向上 もともなっている」・ と述 べているように、 シンガポール国民、 とりわけ青少年は、経済的性向の変化のための経済 的条件 を満たすために、
2言
語の使用能力、資格、教育水準の向上を目指すようになつた。実際に、「スピーク・マンダ リン 。キャンペーン」が開始 されると同時に、それ までは、
学歴、職業教育、資本がな くても得 られる、最 も確実な仕事 と見なされていたタクシー・
ドライバーでさえも、採用条件に
2種
類の言語能力が課 されるようになる等、保証される 職業 を得 るためには、個人の性向の再構造が求め られるようになった。聞 き取 りでも、「高 等教育機関に進学す るためには第2言
語の成績は重要」、「2言
語の習得は就職の際の必 須条件」 といつた意見も多 く見 られ、そのために、教育熱心な親が積極的に家庭内で子供 に華語を使用 させ るとい うケース も多 く、従来の英語教育一辺倒では、生活の 目標を達成 することができない とい う認識が一般的になつて きている。b,家
庭での使用言語調査結果 (表 19参照
)か
ら、現在、華人青少年の華語、英語及び方言すべての言語が、普遍的に使用されていることがわかる。平均の使用率をみると、華語が
35.5%と
首位 を占め、続いて方言の
23.5%、
多言語の併用20。6%と
、英語の20.4%と
いう結果 となつた。1990年のセ ンサスによると、当時
20歳
以下の華人の家庭における主要な使用言語 は、華語が40%、 英語が24%、 方言が20%と
なつてお り、 この数字だけを見ても方言と英語の地位が逆転 していることがわかる。Ⅲ
2英
語ではな く華語が、華人青少年の常用語 として根づいていることは、
2言
語教育、特 に「スピー ク・マング リン 。キャンペー ン」が成功を収めているということができる。
また、小学生の
45.5%、
中学生の48.2%
が華語を家庭内で使用 し、その数字は大学生 。大学院生及び社会人を上回つているように、
年齢が低 くなるほ ど、家庭内で華語を使用する率が高 くなつているということも明 らかに なった。全体的にみると、年齢が低 くなるにつれて、家庭内での英語使用率は減少 し、む しろ華語のみや多言語の併用が多い。シンガポール国立大学 に
lo年
間勤務 している教員は、「5、
6年
前 までは、学生たちの雑談 もほ とんどが英語であつたが、現在は華語をよ く 耳にするようになった。」 と述べている。方言の使用率に至っては、明 らかに減少の傾向にある。約
3割
の社会人 (30。1%)、
大学生 。大学院生(29。
1%)が
家庭内で方言を使用 しているが、中学生及び小学生は17.6%と 17.1%と
低 くなっている。 これは、2言
語政策及び「ス ピーク・マング リン 。キャ ンペー ン」の成果の現れや政府の方言廃止政策 とも関係深いが、その他に家族形態や住環*1(註
8)Pierre Bourdieu,■ Jger′ι6QS″
c″″のEc・οκο ′響ω ι′Sれ
ε″res■ ″POκ′たs(PaHs,Les Editions de Minut,1997).(原 山哲訳、『 資本主義のハ ビ トゥスーアルジェ リアの矛 盾』、藤原書店、1993年 、126‑127頁 。)
*2 Lau Kak Eng,ed.,Sttgη ο″ι Cι
s
sげ
Pψ α"199θ
r Z,″rαり,Zακν αgas,シ
滅 ακ グE力cα″οκ (SingapOre, Deparment Of Statittics,1993),p.4.in『 聯 合 早 報 』 7月 7日。また、家庭での華語使用 については以下の部分 に詳 しい :張 亜群著「 当代東南亜華文 教育面臨的文化伝承問題弁析」、『 華僑華人歴史研究』 1996年 第1期、10頁 。
110‑
′
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境の変化にも起因tノている。現在 、シンガポール政府は少子化及び高齢化問題 を改善する ために、積極的に大家族化 を奨励 し、多出産 と口i親 とtの同居を支持 している。 しか しなが ら、それでも確実 に核家族化が進行tノている現状がある。核家族が増加 し、夫婦共働 きを
1ノている多 くの家庭では外国籍のメイ ドに家4)と ''こ
を任せ、方言を話す祖父母 との同居 や交流も減少 した。また、衛星都市の発達や国民統合の一環 として進め られた公共住宅
(H
J〕 I)住宅)の建設によ り、すみ分けがなされていた方│:群の分散や解体が進んだ。よつて、
青少年を中心に方 言を使用する機会 も減少lノているo
本調査 において、シンガポール華メ青少年の使用111語の特色として明 らかになつたこと は、数種類の 言語の併′Hで ある。被訓1査者の2害1以
it(20.6%)力
S、 華語、英語及び方│:iる114均して使い分けている。大学生 ヽ大学院41では
12.0%、
中学生では16.2%、
小 学イ│)になると28,3%と
、併用の率が高 くなI)ている。英語 と華語に付け加 え、方言 も含 めた多言語の使用は、シンガポールの歴史的背景 と'言
語教 育の副産物であるということ ゾ)`・Cき る。ヽ方、
1990年
の センサスによるとi llL人1鱗帯の中で、最もよ く使用 されているのがな」‐
3i方
言であ り、車人世帯総数の ヽ06%を
占iめ・イいる。方言は全体の半数 を占めている が、10年前の81.6%か
ら比較するた、減少tノていることは明 らかであ り、・ 実際に、 上 述の調査における小学生、中学̀Lの
方言使用率が約
17%で
あることか らも、今後 も下降 移iを迪って行 くであろうと考え2)ね′る。また、方言の現象に伴い、華語を話す世帯は1980 イ11の10.2%か
ら1990イドの29.8%に
、英語を話す家力│:17.9%か ら19.2%に増加 している。また、家庭での使川 言語が単 ヽi言計│である
#人
│ltイ│}は79.5%で
あ り、その中で方 言を 言11う`111帯は 42,9%、 11語 を話す11111ケII11 23,│%、 英「:│を話す世帯は13.2.%と なっている。
11ノ:、
2言
語を話 う111帯は19.9%で、その中で最 も多いのが華語及び非公用語の10.7%、英1喜 と非公用語の 6.3%、 英語 と■111の
2.2%の
み'1な
っているが、中2上
述の調査 におけ る
2言
語の使月1率は20。6%で
、その中でもイ「 齢層が千1ξいほ ど併用の率が高 くなっている。c,公
共の場所での使用言語11人青少年は、場所や状況の如1何によって言語を臨,機応変に使い分ける。場所の雰囲気、
会議相手の言語能力及び態度が、彼 ら)の使用言評1の遺択に直接の影響を与えている。調査 対i果 (表 宏
)参
照)で
は、デバーヽ卜及びフー ドンロ ^卜 (屋台を含む)で
の使用言語を比較tノて分析 を行 つた。調査結果か ら、高級品を扱い外1可製品も充実 しているデパー トでは、
英語を中心 とlンて使用 されていることがわかる()111学4Lの
64.7%、
大学生 。大学院生の80.8%、
社会人の54.5%と
いうように、小学生を除 くすべての年齢層 において、デパ… 卜での英語の使用率の高さがみ られる。
問 き取 りでは、「 デパー トでのll̲語や方言の使用は場所 にそ ぐわない」、 または「高級 ブラン ドの店の中で方言を使 うと変な日で見 られた1鶴:、 デパー トでは英語の使用が当然 といつた意見を述べる被調査者が多かつた。参与観察では、チャイナ 。タウンにあるよう
謂尚志「 人口普査専題論文」、['1勝合1書報』、1996イ「 6月 25日 。 認尚志「人「 1普査専題論文」、『 聯合 早報1』、1996イ116り:;25日 。
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