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第5章 産業の動向

5.13 自動車(四輪)

5.13 自動車(四輪)

5.13.1 沿 革

インドネシアにおける本格的な四輪車の生産は1970年代始め頃から行われた。そ の後、完成車輸入禁止によるノックダウン組立開始や、国産化義務付け等の政府の 保護下で国内自動車産業が育成され、1970~1980 年代にかけて四輪車の生産は着 実に伸びていった。

オイルショック後の不況を経て1980年代後半以降、政府が石油依存経済からの脱 却を図るべく外資導入を進めて各種規制緩和を実施し、順調な経済成長を遂げる中 で、1990年代前半に国内四輪車市場は飛躍的に拡大し、1994年に総需要は30万台 に達した。

1996 年に発表された国民車構想により、輸入税・奢侈税免除で韓国から完成車が 輸入されたこともあったが、結局は、WTO 協定違反の裁定が下り、1998 年に国民車 への優遇措置は廃止された。

1997年は 8月に発生したアジア経済危機の影響は受けたものの、当時としては過 去最高になる38.7万台の総需要を記録した。しかしながら、翌1998年5月の暴動、

スハルト体制の崩壊、ハビビ政権誕生の過程における政治・経済・社会の混乱により、

自動車市場は壊滅的な打撃を被ることとなった。ルピア暴落による輸入部品コストの 大幅アップは販売価格の急上昇(経済危機前の約3倍)を招き、また、金利高騰がロ ーンによる四輪車購入を困難にした結果、総需要は急激に落ち込んだ。

1999 年の総選挙が大きな混乱も無く平和裏に実施され、政治・社会情勢が安定に 向かう中、金利低下やそれに伴うファイナンス会社の営業再開もあり、四輪車市場は 回復の兆しを見せ始めた。

2000年に入ると経済活動全般が活発になり、買替需要の復活と各社の新車発表に より市場は急回復し、同年の総需要はほぼ30万台まで戻った。

2001~2002年は堅調な消費を背景に総需要は30万台レベルで推移し、2003年は

AFTA スキームによる ASEAN 諸国生産車の流入が活発となったこともあり、総需要 は35.4万台まで回復した。2004年は各社の新車効果のほかファイナンス会社が大幅 な販売条件緩和策を始めたことから総需要は過去最高となる48.3万台に達した。

2005 年の市場は、石油燃料補助金削減による価格上昇に起因する金融引き締め 策などのマイナス要因がありながらも、、総需要は53.4万台超と過去最高を更新した が、政府の燃料政策への不満が一気に爆発し、各地でデモが起きたことにより、2006 年の自動車需要は31.9万台まで激減した。2007年から2008年にかけて市場は持ち

直し、2008年には過去最高の62.7万台を記録したが、2008年9月のリーマン・ショッ クに伴う世界的な金融危機・世界同時不況の影響は大きく、ルピア暴落による各社の 値上げなどにより、2008年夏から2009年初めにかけ自動車価格は累計で平均10~

15%上昇し、結果として2009年の市場は前年を2割近く下回る50.4万台に留まった。

その後、同国におけるリーマンショックの影響が、輸出への依存度が低かったことも あり、比較的軽微だったため、2009年9月のレバラン明け以降の市場は過去最高で あった2008年並みに復調し、翌2010年もその勢いは継続した。結果として 2010年 の販売台数は前年比157%となる76.5万台と過去最高を大きく更新した。

2011年は、3月11日に発生した東日本大震災と 10月に発生したタイの洪水の影 響を大きく受ける一年となった。日系メーカーの市場シェアが約95%と寡占状態にあ ったことから、日本やタイからのCKD部品や完成車の供給不足が市場の動向を大き く左右する構造になっており、震災発生後の4月や、洪水発生後の11月は、販売台 数が大幅に落ち込んだ。それでも、各社の懸命な復興とソース変更努力により、通年 では前年比117%増の89.4万台と過去最高の台数を記録した。

2012以降は、各社がタイの洪水影響から順調に回復したこで供給も安定し、好調な 経済成長も加わって、総需要が2012年には111.6万台、2013年には123万台に達 し、二年連続で過去最高を記録した。

2014年に入ると、当初は年間140万台を見込む強気の市場予測があった一方で、

ルピア安、金利上昇、インフラ関連予算の遅れ等に起因する市場の伸び悩みが起こ り、2016年に至るまで、市場はそれまでの急成長から100万台前後に留まっている。

潜在需要の大きさから、これは成長の踊り場であるとの見方が一般的であり、長期的 には市場の成長を期待されている。

新しい潮流として、LCGC 等のコンパクトカーや SUV といった車種が人気を集めつ つあり、エントリーカーやセカンドカーへの需要、より上位モデルを求める需要と、そ の多様化傾向が見られる。

5.13 自動車(四輪) 151

5.13.1- 図1 自動車総市場実績(2005年~2016年)

出所: Gaikindo

5.13.2 市場考察

(1) 日本メーカー各社は当初よりインドネシア市場に参入、国産化規制にいち早く 対応する事で今まで独占的な地位を保ってきた。現在、日本車は全体で 95%

以上のシェアを占めている。1999 年の新自動車政策(後述)による完成車輸入 の実質的自由化後、一時期韓国からの完成車輸入が増えたがその勢いは止 まっている。

(2) インドネシアの自動車市場は、国産化政策と税制を背景に、さらには道路事 情や顧客のニーズ等の地域特性もあり、乗商兼用のMPV(多人数乗用または 貨物車)を中心として発展した独特の市場となっている。貨客(乗商)兼用のM PVから発展した税制上の4×2ミニバスカテゴリーが圧倒的なシェアを誇り、そ の中の3列シートMPVは市場の 3 割以上を占める。一方、税制上高率が課せ られる4ドアセダンは約 1%に限られ、他のアジア諸国とは大きく車種構成が異 なる。またピックアップトラックやキャブオーバートラックが中心の商用車は約 2 割の構成比となっている。一方で、2013 年後半から発売された、LCGC(Low

Cost Green Car)と呼ばれる燃費20Km/L以上の低価格小型車が新たなセグ

メントとして確立されつつある。LCGCには、エンジンやトランスミッションなどの 主要構成部品を 5 年以内に現産化することを条件に、政府より奢侈税免除の 恩典が付与されているため、最低販売価格が当時約9,500万ルピア(約95

(千台)

万円)に抑えられており、2016年には販売車種の約2割を占めるまでに成長し た。(構成比はいずれも2016年実績)

5.13.3 自動車産業政策

前述の通り 1990 年代の規制緩和の流れの中、自動車分野でも国産化規制等政府 の保護政策が見直された。1993年に従来の国産化義務付けを廃止し、国産化率に紐 付けて輸入税率を定めるインセンティブ制度に移行した。同制度の下、各メーカーとも 着実に国産化に向けた投資を実施する事により、乗用車を除くほとんどの車種で所 定の国産化率を達成し、輸入税0%を享受した。同制度は国産化促進・技術移転並び に雇用創出の形で自動車産業の発展に寄与したといえる。

しかしながらWTOからの自由化要求の声が一層高まった事を受け1999年7月に 新自動車政策が発表され、インセンティブ制度を廃止し、国産化率を問わず、カテゴリ ー・排気量(一部GVW:Gross Vehicle Weight)・部品供給形態別で部品(HSコード)毎 に輸入税率を設定する制度に移行した。

輸入税率自体は全般的には若干下がると共に、従来乗用車と商用車との間で拡が っていた格差が狭まった(その分奢侈税率で調整しトータルではドラスティックな税率 変更にならないよう工夫されている)。又、依然として税率は高いものの、完成車輸入 が実質的に自由化される事になった。

新自動車政策が発表された当時、所定の国産化率を達成し輸入税0%となっている 車種については税金増による生産コスト上昇につながり、既存自動車製造・部品メー カーの過去の国産化投資が無駄になりかねない等、自動車産業に対する悪影響が 危惧されたが、市場の急回復の流れの中にうまく組み込まれ、問題が大きく顕在化す る事は無かった。それでも完成車輸入の実質的自由化により日本・韓国などからの 完成車の並行輸入が増え、市場での競争が激化している。また自動車製造・部品メ ーカーは従来の法規対応・節税目的からではなく為替変動リスク回避と純粋なコスト 削減のために更なる国産化に取り組むようになってきた。

1996 年 11 月にASEAN域内における産業協力促進プログラムとして、AFTA

(ASEAN Free Trade Association)の前倒し措置となるAICOがスタートしており、インド ネシアでもこのスキームを利用して一部の完成車及び大手部品メーカーがASEAN 域内で部品の相互融通を行っている。2002年にAFTA発足を1年前倒しする形でイン ドネシアを含めASEAN-6ではCEPT(Common Effective Preferrential Tariff) を導入、ASEAN域内調達率が40%以上を満たす品目については 0~5%の域内関 税を適用する事になり、自動車についても多くのメーカーが既に本スキームを活用し タイとの間で完成車輸出入を開始している。

2008年7月には自由貿易協定(FTA)を含むEPA(日本インドネシア経済連携協定)

が発効し、日イ間の貿易・投資拡大などによる経済関係緊密化がより一層図られるこ