第5章 産業の動向
5.5 鉱業(石油・天然ガスを除く)
5.5.2 主要鉱産物の現状
ウド島に至る。活火山がなく、起塩基性岩などのオフィオライトを含み、スラウ
ェシ島Pomala、Soroako、ゲベ島 Gebeなどのラテライト型ニッケル鉱床が分
布する。
(5) イリアンジャヤ構造帯
イリアンジャヤ構造帯は、オーストラリアプレートに属し大陸地殻と呼ばれ るプレート張り出しの北端に位置する。本構造帯は、東西に走る北部山脈と 中央山脈および南部地域に三大別できる。北部山脈は古生代の変成岩・超 塩基性岩などを基盤とし、中生代の火山岩類や新第三紀の堆積岩類が発達 する。中央山脈地域では古生代から新生代までの堆積岩類(石灰岩・砂岩・
頁岩等)が厚く堆積し、これに新第三紀の花崗岩類が貫入している。この火 成活動によってGrasberg ポーフィリー銅鉱床が形成された。南部地域には、
中生代の石灰岩類と第四紀堆積岩類が広く発達するが、目立った金属鉱床 は知られていない。
この他、中央カリマンタン弧(Kelian 金鉱床、Mt.Muro 金鉱床)、ハルマヘラ 弧(Gosowong金鉱床)がある。
その他インドネシアの鉱産物としては、石油・天然ガス・石炭が有名で、また ボーキサイト・マンガン・鉄・クロムなどの金属、アイアンサンド・天然アスファル トなどもある。
5.5 鉱業(石油・天然ガスを除く) 105
山・製錬所位置を5.5.2-図1に示す。
5.5.2-表1 インドネシアの鉱物資源量と生産量
鉱産物 単位
資源ポテンシャル(純分量)
(2014年12月時点) 資源量 埋蔵鉱量
錫 千t 2,350 282
ニッケル 千t 54,450 21,378 銅 千t 108,698 25,603 金 t 7,614 2,591 銀 t 837,950 1,692,854 ボーキサイト 千t 724,391 239,598
出典:資源ポテンシャルはMineral and Coal Information 2015, Directorate General of Mineral and Coal
5.5.2-図1 インドネシアの主要鉱山・製錬所・鉱床位置図
5.5.2-表2 インドネシアの鉱種別生産量・国内販売量・輸出量(2010年~2014年)
鉱種別生産量(2010年~2014年)
鉱 物 種 unit 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
1 銅 ton 879,697 545,263 8,653,408 1,643,282 385,729
2 銅精鉱 dmt 3,466,771 2,236,233 1,927,239 2,351,978 1,516,902
3 金 kg 104,550 76,764 54,108 68,278 69,645
4 銀 kg 278,784 200,982 206,176 254,788 252,710
5 錫地金 ton 49,810 53,428 31,394 25,416 34,702
6 ボーキサイト mt 15,595,049 17,634,897 30,281,150 51,855,931 3,095,520 7 ニッケル・コバルト(マット中) ton 77,186 68,000 72,899 78,074 80,341 8 ニッケル鉱 wmt 7,522,759 15,973,337 50,087,747 65,979,083 4,792,986 9 ニッケル(フェロニッケル中) ton 18,688 19,690 19,578 17,026 16,923
10 砂鉄 wmt n/a 110,952 n/a n/a n/a
11 花崗岩 ton 2,343,133 3,968,136 901,310 1,659,864 2,018,463 12 鉄鉱石 ton 1,983,960 3,294,325 6,079,889 45,975,502 1,154,231 13 ダイアモンド crt n/a n/a n/a n/a n/a 出典:Mineral and Coal Information 2015, Directorate General of Mineral and Coal
5.5.2-表2 インドネシアの鉱種別生産量・国内販売量・輸出量(2010年~2014年)(続) 鉱種別国内販売量(2010年~2014年)
鉱 物 種 unit 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
1 銅 ton 227,812 229,014 176,388 184,076 217,642
2 銅精鉱 dmt n/a 744,099 855,726 883,807 840,427
3 金 kg 22,069 22,508 15,383 13,992 20,819
4 銀 kg 62,807 59,020 33,955 40,873 56,895
5 ニッケル・コバルト(マット
中) ton n/a n/a n/a n/a n/a 6 ダイアモンド crt n/a n/a n/a n/a n/a
7 錫地金 ton n/a n/a n/a n/a n/a
8 ニッケル鉱 wm
t n/a 102,600 n/a n/a n/a
9 ニッケル(フェロニッケル中) ton n/a n/a n/a n/a n/a 1
0 ボーキサイト wm
t n/a 31,091 n/a n/a n/a
1
1 砂鉄 wm
t n/a n/a n/a n/a n/a
1
2 硫黄 ton 3,696 4,560 n/a n/a n/a
1
3 花崗岩 ton n/a 2,574,677 15,965 147,238 59,465
出典:Mineral and Coal Information 2015, Directorate General of Mineral and Coal
5.5 鉱業(石油・天然ガスを除く) 107
鉱種別輸出量(2010年~2014年)
鉱 物 種 unit 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
1 銅 ton 612,368 336,420 8,653,408 1,423,207 198,409
2 銅精鉱 dmt 580,066 1,020,032 1,927,239 1,415,942 785,214
3 金 kg 81,209 59,303 54,108 55,234 59,758
4 銀 kg 226,719 169,820 206,176 187,061 205,525
5 錫地金 ton 47,187 39,261 31,394 154,963 9,730
6 ボーキサイト mt 15,236,492 16,785,677 30,281,150 66,175,642 2,889,126 7 ニッケル・コバルト(マット中) ton 77,035 n/a 72,899 77,294 79,478 8 ニッケル鉱 wmt 6,393,145 13,458,071 50,087,747 64,835,271 3,865,572 9 ニッケル(フェロニッケル中) ton 18,253 22,154 19,578 15,422 19,748
10 砂鉄 wmt n/a n/a n/a n/a n/a
11 花崗岩 ton n/a 2,711,763 901,310 1,189,601 2,080714
12 鉄鉱石 ton 3,865,385 4,403,968 6,079,889 46,016,408 1,154,231 13 ダイアモンド crt n/a n/a n/a n/a n/a 出典:Mineral and Coal Information 2015, Directorate General of Mineral and Coal
5.5.2-表3 インドネシアの主要鉱産会社別生産量(2010~2014年)
会 社 名 unit 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
1 Antam Tbk, PT
ニッケル鉱 wmt 6,998,484 0 9,730,531 10,897,972 1,142,814
高品位鉱 wmt 3,617,563 0 5,961,150 7,556,474 1,142,814
低品位鉱 wmt 3,375,891 0 3,769,381 3,341,498 n/a ニッケル(フェロニッケル中) ton 18,688 19,690 19,578 17,026 16,923
金 kg 2,890 2,667 2,867 4,817 2,334
銀 kg 18,529 19,518 60,954 18,819 17,777
ボーキサイト mt 104,692 32,748 79,454 556,509 267,292 2 Timah Tbk, PT
錫精鉱 ton 36,289 20,149 16,829 13,534 n/a
錫地金 ton 38,957 36,014 29,512 11,882 27,565
3 Freeport Indonesia, PT
銅精鉱 dmt 2,575,006 1,746,022 1,606,045 2,018,346 1,227,025 うち銅純分 ton 632,325 415,812 332,891 445,294 312,253 うち金純分 kg 61,833 45,400 27,878 36,347 36,256 うち銀純分 kg 172,778 108,176 81,930 155,370 81,440 4 Koba Tin, PT
錫精鉱 ton 7,723 3,491 1,668 0 0
錫地金 ton 5,930 5,231 1,882 0 0
5 Vale Indonesia Tbk (International Nickel Ind. Tbk, PT)
ニッケルマット ton 89,048 85,643 7,167 97,683 99,890 うちニッケル・コバルト ton 77,186 68,000 72,899 78,074 80,341 6 Karimun Granite, PT
Granite ton n/a n/a 901,310 1,659,64 1,418,784
7 Indo Muro Kencana, PT
ドーレ kg 3,378 16,887 9,833 16,834 0
うち金純分 kg 1,272 750 838 675 0 うち銀純分 kg 2,104 16,019 20,561 15,143 0 8 Newmont Nusa Tenggara, PT
銅精鉱 ton 891,765 490,211 321,194 333,632 289,877
うち銅純分 ton 245,051 128,130 77,337 75,731 73,476
5.5 鉱業(石油・天然ガスを除く) 109
うち金純分 kg 22,930 9,890 2,187 1,547 2,436 うち銀純分 kg 73,899 33,401 13,390 10,431 14,107 9 Nusa Halmahera Mineral, PT
ドーレ kg 26,003 20,298 n/a n/a n/a
うち金純分 kg 13,973 13,449 13,817 9,350 10,255 うち銀純分 kg 8,109 7,840 9,460 12,606 14,254 10 Galuh Cempaka, PT
ダイヤモンド crt n/a n/a n/a n/a n/a
金 kg n/a n/a n/a n/a n/a
11 Avocet Bolaang Mongondow, PT
ドーレ kg 1,966 1,789 361 1,552 2,296
うち金純分 kg 1,480 1,321 1,364 953 2770 うち銀純分 kg 493 341 438 456 601 12 Natarang Mining, PT
ドーレ kg n/a n/a 9,354 n/a 1,785
うち金純分 kg 268 1,234 725 53 435 うち銀純分 kg 2,868 14,693 7,775 791 1,351 13 Ensbury Kalteng Minng, PT
ドーレ kg 22 78 62 63 65 うち金純分 kg 15 45 30 30 34 うち銀純分 kg 3 21 18 16 15 14 Meares Soptan Mining, PT
ドーレ kg n/a n/a n/a 6,896 6,270
うち金純分 kg n/a 1,272 2,192 2,507 2,208 うち銀純分 kg n/a 673 2,882 4,388 4,062 15 Yambang Tondano Nusajay, PT
ドーレ kg n/a n/a n/a 6,145 9,784
うち金純分 kg n/a 56 1,897 2,155 2,438 うち銀純分 kg n/a 100 5,034 3,990 7,346 16 Kasongan Bumi Kencana, PT
ドーレ kg n/a n/a n/a n/a 43,821
うち金純分 kg n/a n/a 313 1,123 1,518 うち銀純分 kg n/a n/a 3,735 27,235 42,139
17 Agincout Resources, PT
ドーレ kg n/a n/a n/a 50,997 78,480
うち金純分 kg n/a n/a n/a 8,720 8,566 うち銀純分 kg n/a n/a n/a 45,542 69,618 出典:Mineral and Coal Information 2015, Directorate General of Mineral and Coal
1) 銅
主な産地はイリアンジャヤ(Grasberg鉱山)、スンバワ島(Batu Hijau鉱山)である。
インドネシアの2012年の銅精鉱生産量は、前年比13.8%減の193.7万tとなっ た。これは、インドネシア銅生産量の約65%を占める主要銅・金山である Grasberg 銅・金鉱山の露天掘り鉱床の低品位化が進行したこと、Batu Hijau鉱山のピット剥土作 業に伴う低品位鉱石ストックによる生産に伴うことが主な要因である。
2) ニッケル
2012年のニッケルの鉱石生産量は、前年比214%増の50百万t(マテリアル量)
となり、輸出も爆発的に増加した。一方、ニッケル・コバルトマット及びフェロニッケル の生産・輸出はほとんど変化がなく、鉱石輸出の急激な増加が目立つ形となった。
3) 錫
2012年の錫生産量は、前年比41.2%減の3万1,394tとなり、大幅に生産が 減少した。錫価格の低迷のため、多くの錫製錬事業者が操業停止したためであった。
4) 石炭
石炭資源の分布については、スマトラ島に全体の46.4%、カリマンタン島に53.
3%となっている。品質では、発熱量(cal/gr)がMediumクラス(5,100-6100)
の資源量が65.1%と一番多く、次にLowクラス(<5,100)が25.4%、High ク ラス(6,100-7,100)が7.9%、VeryHighクラス(>7,100)が1.6%となっ ており発熱量が低い比率が高い。(地質庁 地質資源センターの2013年データよ り)
インドネシアにおける石炭は2000年代半ばには枯渇が予想される石油に代わ る最重要エネルギーソースと位置付けられており、インドネシア政府は石炭資源の 有効利用(石炭火力発電等)に注力している。また、さらには石油産油国から輸入 国に転じ、しかも近年の石油価格の高騰も重なりインドネシアにおいては石炭の重 要性は益々高まってきている。一方、中国・インドを中心に世界的にも石炭需要が 高まってきており、これらの消費地に近く輸出余力の大きいインドネシア産石炭のニ
5.5 鉱業(石油・天然ガスを除く) 111
ーズも高まってきている。
石炭の生産量は近年急速に拡大している。1988年の生産量は450万トンであ ったが、1990年には1,060万トンと倍増、2000年には7,700万トンに達し、2 002年には1億トンを超えた。2013年の生産量は4億2,150万トンと世界でも有 数の石炭生産国へと増産してきている。これらの石炭生産はそのほとんどが露天 掘りによるものである。
インドネシア国内における石炭需要を見ると、1988年当時は20万トン程度で あった。しかし、1990年にインドネシア最大のスララヤ石炭火力発電所が完成し
(400MW×4、600MW×3)、その後もパイトン石炭火力発電所の建設などが相 次ぎ、2000年には2,000万トン余り、2013年には9,780万トンと国内需要は 年々増加している。国内の石炭需要は同国の経済成長と供に確実に伸びてきてお り、今後2020年には1億3,090トンに達すると見込まれている。その要因として は、2020年までに完成予定の10,000MW 計画(クラッシュプログラム)による石 炭火力発電所の新規建設や増設が挙げられる。
一方、輸出量の増加も著しく、1988年は430万トンであったのに対し、2000年 には5,800万トン、2013年には3億1,740万トンに達している。輸出量は全石 炭生産量の約75%を占め、インドネシアの重要な輸出品目の一つとなっている。近 年は日本への輸出量も増加し、2013年の輸出量は3,815万トンである。(インド ネシア貿易統計)
インドネシアの石炭は無煙炭や瀝青炭の埋蔵量の割合が低く、亜瀝青炭や褐炭 の占める割合が高いという特徴があり、一般的に言って豪州の石炭よりも品位が劣 り、また製鉄用に使用される原料炭の産出は希である。以前は、良質の瀝青炭は 海外への輸出向け、亜瀝青炭や褐炭は国内向けという構図であった。特に亜瀝青 炭や褐炭は低カロリーで水分の含有量が大きく、しかも自然発火しやすいので輸送 面に問題があった。しかし、灰分が少なく硫黄分が低いという好条件も有しているこ とから、中国・インドを中心としたアジア諸国への輸出向けが増加している。
地質面では2億年以上も前の古生代に生成された石炭が中心の米、豪の石炭に 比べ、インドネシアの石炭は日本と同じように若い地質時代(新生代、第三紀、古く て数十万年前)にできたものである。地質構造的には断層や褶曲が多く、一般的に 言って豪州の石炭よりも生産条件は劣っている。特に瀝青炭は炭層が薄く、炭層傾 斜も大きいため、生産コストが高く、経済的に採掘可能な埋蔵量は減少傾向にある。
1981年インドネシア政府は石炭開発を開放する新たな石炭政策を打ち出した。
その結果、これまで国営企業PTBA(PT. Tambang Batu Bara Bukit Asam)が独占し ていた石炭開発に海外からの投資が参入できるようになり石炭開発が拡大していっ た。開発初期段階では、外資系を含む企業はインドネシア政府との間で採掘契約を 結び、その後石炭探査、開発事業が可能となった。これらの企業はコントラクターと
呼ばれ、契約年次(契約形態CCOW)によって、第一世代(1981年~1993年)コ ントラクター、第二世代(1993年~1996年)コントラクター、第三世代(1996年以 降)コントラクターとそれぞれ呼ばれている。1990年に入り第一世代からの生産が、
2000年になると第二世代及び第三世代からの生産が始まり、インドネシアの生産 量は飛跳的に伸びてきた。その他、石炭生産現場としては、国営企業であるPTBA、
採掘権企業(KP/Kuasa Pertambangan)、協同組合(KUD/Koperasi Unit Desa)等が ある。
2009年1月に、国家利益の最大化、国民福祉向上を目的として、新鉱業法(新 鉱物石炭鉱業法)が公布された。この中で、上記外国投資に活用されてきたCCO W制度は廃止され、代わりに石炭生産を行う際には中央政府もしくは地方政府が発 給する鉱業事業許可(IUP)を取得(入札制)する事になった(探鉱許可と生産許可 の2段階制)。新鉱業法下では、その他国内での生産物高付加価値化義務や、石炭 の国内供給義務、最低輸出価格制度等が導入され、石炭開発、生産、販売に対す る政府の影響力が強まってきている。尚、上記国内での生産物高付加価値化義務 は、新鉱山法制定時は2014年から導入される予定であったが、2012年に入り急 遽政府が実施前倒しを決定し2012年5月より導入、それに付随する形で未加工鉱 物の輸出に対し輸出税が課され、2014年1月同鉱物の輸出を禁止した。一方、現 時点では、石炭に関しては国内での高付加価値義務化及び輸出税賦課の対象とは なっていない。
また、これまでは鉱業の管理・監督は中央が主体で行われてきたが、2001年に 施行された地方分権化により、上記IUPの発給業務等、多くの業務が地方自治体 へ移管された。しかしながら、地方自治体の管理能力や技術力の不足(鉱業権の許 認可、鉱山監督など)、汚職の温床となる等の問題が顕在化しており、汚職撲滅委 員会のよる監査や中央政府によるクリーンアンドクリアー認定等、中央からの管理・
監督の目が厳しくなってきている。
このように豊富な石炭の埋蔵量を有しているインドネシアの石炭事情の中、国内 の石油代替エネルギーとして、また主要な輸出財源の一つとして今後ますますその 重要性を増すものと思われる。しかしながら、最大の問題は埋蔵量の大半は低品 位炭であり、その有効利用に関する技術開発及び環境にやさしい石炭利用技術の 開発である。
日本の技術協力による石炭利用技術(ガス化、液化、ブリケット、改質:改良品質 と石炭を便利に使うために加工する技術)や環境にやさしいクリーンコール技術(C CT)、坑内採掘技術や技術者の育成などが推進されており、今後の発展が期待さ れる。特に、褐炭等の低品位炭の有効利用技術と坑内採掘技術などの支援につい ては、インドネシアの将来に渡ってのエネルギー安定供給という観点から、インドネ シア政府の関心は高い。