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第2章 日本との関係

2.3 学術・文化交流

2.3.2 文化の交流

国際交流基金が2012年に全世界で実施した調査によると、インドネシアにおけ る日本語学習者数は872,411人に達し、世界第2位、東南アジアにおいては第1 位であり、日本語学習が盛んであることを示している(速報値が発表されている20 15年の同調査の学習者数は745,215人)。中等教育段階(ほとんどが高校生)

の学習者が全体の95%を占め圧倒的に多いのが特徴である(2.1.2-表1)。

インドネシアでは、2006年の高校のカリキュラム改定が追い風となり、2006年 調査時点で272,719人だった学習者が2012年までに3倍以上に急増したが、2 013年のカリキュラム改定で日本語を含む第二外国語の位置付けが変わり、201 5年調査では学習者数が全体で約14.6%減少した。具体的には、それまで実質 的に「選択必修科目」であった第二外国語が「選択科目」のひとつとなったことを受 け、第二語国語の授業を中止・削減したり、地方行政や学校が優先する科目や受 験に有利な科目に切り替える等の動きが見られた。

インドネシアにおける日本語教育に対して、日本外務省が所管する独立行政法 人国際交流基金は、①日本語専門家の派遣、②現地日本語教師の訪日研修、③ 各地の日本語弁論地区大会の実施支援、および全国大会の実施上位入賞者の日 本招へい、④インドネシア各地での日本能力試験の実施、⑤高校日本語教科書の 開発、⑥教育行政関係者の日本招へい等、多様な支援事業を行っている。

2.3.2-表1 日本語教育の機関数、教師数及び学習者数(2012年)

項 目 初等教育 中等教育 高等教育 学校教育以外 計 機関数 24 2,049 133 112 2,318 教師数 29 3,037 879 495 4,440

学習者数 4,286 824,921 20,817 8,103 858,127

注: 1人の教師が複数機関を担当している場合があるので、計は一致しない。

2014年からは、新たに設立された同基金アジアセンター事業のひとつとして、

現地日本語教師と生徒の「パートナー」となる日本人をネイティブスピーカーとして 日本語教育を実施する高校に派遣する“日本語パートナーズ”派遣事業を開始し、

3年目となる2016年度は、全国11の州で計146人が活動している。

国際協力機構(JICA)もシニア海外ボランティア及び青年海外協力隊によって、

各地の大学・専門高等学校等における日本語教育を支援している。

また、国際交流基金では、日本・インドネシアの経済連携協定(EPA)に基づき、

日本が受け入れる看護師・介護福祉士候補者に対し、約6ヶ月間の渡日前日本語 研修を実施しており、研修に参加する候補者の数は増加傾向にある。

2) 文化・芸術の交流

(1) 造形美術

日本では1990年代はじめから、インドネシアを含むアジアの現代美術を紹介 する展覧会が日本各地で開かれるようになったが、福岡市は他に先がけて198 0年代からアジア美術の紹介に力を入れており、1999年には福岡アジア美術館 を開館した。また、現在「福岡アジア美術トリエンナーレ」も実施しており、これま でに多数のインドネシア人の作品が紹介されている。近年、日本各地で開催され ているアート・ビエンナーレ、トリエンナーレなどで、インドネシア人作品が展示さ れる機会も増え、両国の美術交流は広がりを見せている。2017年7月からは、

新国立美術館と森美術館の2館で同時開催する大規模な東南アジア現代美術展

『サンシャワー』が予定されており、インドネシアからも 20点ほど作品が展示され る予定である。

また、国際交流基金ジャカルタ日本文化センターでは、アニメ・漫画など日本の ポップカルチャーに強く影響を受けたインドネシア人の漫画家や写真家など、次 世代の日本との美術交流が期待されるインドネシア人の若手アーティストの作品 展などを実施し、好評を得ている。

インドネシアにおいても、国際美術展の枠組みのなかで日本の現代美術が小 規模ながら紹介されることが、徐々に増えている。2013年には、日・ASEAN友 好協力40周年を記念して、国際交流基金が開催したインドネシアを含む東南ア ジアと日本のメディア・アートを紹介する「Media/Art Kitchen」では、日本人作家4 名を含む15組のアーティストの作品を紹介し、大きな反響を得た。2014年から は東南アジアの若手キュレター育成プログラムが開始され、ジャカルタなどでそ の成果展が開催されている。

(2) 芸能・舞台芸術

インドネシア国民が日本文化に関心が高いことから、日本の伝統芸能にも関 心が向けられ、「ジャカルタ日本祭り」や「縁日祭」でインドネシア人や在留邦人が 盆踊りや和太鼓演奏等を披露している。スラバヤ市ではインドネシア人と在留邦 人が一緒になって、「スラバヤよさこい祭り」が毎年行われている。

2.3 学術・文化交流 47

日本でのインドネシア文化紹介といえば、以前は伝統芸能が主流であった。ガ ムラン音楽やワヤン影絵芝居、ジャワやバリの伝統舞踊は、インドネシアのグル ープだけでなく、日本ワヤン協会やバリのケチャックで有名な芸能山城組、東京・

大阪の芸大生を中心に結成されている幾つかのガムラン・グループ等、日本人 によるインドネシア伝統芸能グループが、日本国内でのインドネシア文化紹介に 貢献している。。

近年では、国際舞台芸術ミーティング in 横浜(TPAM)で、ほぼ毎年インドネ シアの現代舞踊・演劇グループが紹介されており、ここでの公演が好評であった ことをきっかけに、エコ・スプリアントの作品「Cry Jailolo」の世界ツアーが実現した。

インドネシアで最も有名な日本の歌といえば五輪真弓の「心の友」が挙げられ るが、若者を中心に嵐やAKB48等のアイドルグループや、根強いファンのいる

L’ark-en-Ciel 等ビジュアル系ロックに大きな関心が向けられている。日本のミュ

ージシャンがインドネシアでコンサートを行うのは稀であるが、2012年2月に開 催された日本ポップカルチャーフェスティバルでAKB48が、同年5月に

L’ark-en-Ciel が、それぞれインドネシアで初めてコンサートを開催する等、日本人アー

ティストの来イが増える傾向にある。また、AKB48の海外初の姉妹グループJK T48も若者を中心に話題となっており、ジャカルタ日本祭り等多くのイベントに出 演している。インドネシアのジャズ・フェスティバルである、ジャワ・ジャズ・フェステ ィバルには、ほぼ毎年日本人ジャズ・ミュージシャンが出演しており、交流が続い ている。また、頻繁ではないが、日本のクラブDJが、ジャカルタやバリのクラブに 出演することもある。また、2003年から名古屋で毎年開催されている世界コスプ レサミットに、2012年初参加でインドネシアのコスプレーヤーが3位に入賞、20 16年には優勝を勝ち取り、インドネシア・コスプレイヤーのレベルの高さが世界 的に認められた。

(3) 映像

日本映画をリメイクしたハリウッド映画、日本人俳優が出演しているハリウッド 映画が上映される例はあるものの、インドネシアの商業映画館で日本映画が上 映されることは稀である。が、2014年に『るろうに剣心』、2016年に『君の名は』

が上映され、インドネシアでもヒットを記録する日本映画が出ている。2016年に は、国際交流基金アジアセンターが「日本映画祭」を主催し、『ちはやふる』やアニ メ『バケモノの子』などの話題作を含む 14本の新作映画を上映し、多くの日本映 画ファンが来場した。

日本においても商業映画館でインドネシア映画が一般上映されることは稀であ るが、国内外でのヒットを記録した『ザ・レイド』が2012年に日本でも上映され、イ ンドネシア発アクション映画として大きな話題を呼び、続編には日本人俳優も出

演している。2014年には、インドネシアの現代史に踏み込んだ『アクト・オブ・キ リング』が日本でも上映され、大きな話題となった。また、2015年のアジアフォー カス・福岡国際映画祭で「マジック☆インドネシア」、2016年の東京国際映画祭 では「カラフル・インドネシア」と題したインドネシア映画特集が組まれ、往年の名 作と共に、若手インドネシア監督の作品も多く紹介された。日本でのインドネシア 映画への注目度は増しているといってよい。

テレビでは、2014年にスカパーJSATが日本の番組を24時間インドネシア語 で放送する「WAKUWAKU JAPAN」を開局し、ドラマ『あまちゃん』やアニメ『宇 宙兄弟』のほか、Jリーグの試合なども放映している。有料放送ではあるが、日本 のテレビ番組が一挙に見られる機会ができており、徐々に都市部を中心に日本 の番組の視聴者が広がりつつある。

(4) 図書・出版

現在、日本の出版物で最も親しまれ、商業的にも成功しているのはコミック漫 画であろう。あり、「なかよし」も日本の出版社と正式に契約し、インドネシア語で 発刊されている。最近はアニメのキャラクターに似せたコスプレショーも、学校の 文化祭のほか様々なイベントで開催されている。

他方で、コミック漫画以外のジャンルでこれまでインドネシア語に翻訳された日 本の書物はまだ少なく、吉川英治の『宮本武蔵』『太閤記』や芥川龍之介『鼻』『羅 生門』、森鴎外の『舞姫』などが翻訳されていただけであったが、最近になって村 上春樹の『ノルウェーの森』『海辺のカフカ』や村上龍の『In the miso soup』『69』、

吉本ばななの『キッチン』など、現代の日本を代表する作品も翻訳出版されている。

また、2013年に日本でも人気を博した『ドラゴン桜』のインドネシア版『Kelas Khusus Naga』をインドネシア出版最大手のコンパス・グラメディアグループの出版 部門から出版する共同事業が始まった。インドネシア人若手漫画家が、同事業に 携わっている。

一方、インドネシアの書物を日本語に翻訳する仕事は、主に日本の民間出版 社や財団の手によって進められており、大同生命国際文化基金の「アジアの現 代文芸」翻訳出版プログラムや、東南アジアに関する書物を多数発行しているめ こん社やアジア文庫等の尽力により進められている。