第1章 インドネシアのあらまし
1.4 文化・社会制度
1.4.4 保健衛生、医療制度、社会保障
(1)人口動態
平均寿命(0歳児の平均余命)は71歳で14歳以下の人口割合は29%、60 歳以上は8%(2013)である。合計特殊出生率(一人の女性が一生に産む子供 の数の平均)は、2.3(日本は1.4)で、インドネシアでも徐々に高齢化に向かい つつある。
(2)母子保健
乳児(1歳未満)死亡率および5歳未満児死亡率、妊産婦死亡率を1.4.4-
表1に示したが、これらの数値は近隣諸国と比較すると高い状況にある。日本独 自に発展した母子健康手帳は、日本の支援などによりインドネシア全土に広まり、
現在では全妊婦の8割以上に母子健康手帳が普及していると推計されている。
子どもの栄養不良児については、5歳未満児の36.4%が成長阻害、13.5%
が消耗症である一方、11.5%が過体重で、いわゆる栄養不良の二重負荷の 問題に直面している。
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1.4.4-表1 母子保健指標の国際比較
項 目 インドネシア タイ マレーシア ヴェトナム 日本 新生児児死亡率
(対1,000出生) 13.5 6.7 3.9 11.4 0.9 5歳未満児死亡率
(対1,000出生) 27.2 12.3 7 21.7 2.7 妊産婦死亡率
(対100,000出生) 126 20 40 54 5
(3)感染症
① 結核
インドネシアは結核患者発生数世界第2位で、人口10万人に対する推 定患者発生率は395人である。実際に発見されて治療に入る患者はその 推定患者数の32%で、全患者のアクセスを確保することが目標である。治 療完了率は2006年の91%から2014年には84%と低下している。地域 格差、検査精度の問題などが指摘され、また新規患者の2.8%と推定され る多剤耐性菌への対応も課題である。
② デング出血熱
罹患数は毎年増減し、2014年には100,347人(人口10万人当たり3 9.8人)の患者が報告された。致死率は0.9%で例年とほぼ変わらない。
特に雨季である1月から3月に患者発生が多い。
③マラリア
2000年から開始されたRoll Back Malariaイニシアティブによりマラリア 発生率は徐々に下がってきている。それでも依然罹患率は感染リスクが高 い人口1,000人に対して年間0.99例でああり、パプア州、西パプア州、
東ヌサトゥンガラ州など東部地域に多い。
④HIV/エイズ
インドネシアはアジアで最も感染が拡大している国の一つで、成人のHIV 感染率は0.5%、HIVとともに生きる成人は69万人、うち女性は25万人で あると推計されている。2015年の新規感染者数は73,000人で、エイズ 患者の累計報告数は2014年末までに65,790例、2015年のエイズを 原因とした死亡者数は35,000人であった。地域差が大きく、ジャカルタ、
東ジャワ州、西ジャワ州が最も多い。感染経路は異性間性行為が最も多く 78%を占め、薬物使用者が9.3%と減少しているが、2番目に多い。女性 の感染に増加が見られるが、母子感染予防のための適切な服薬をしてい る HIV 陽性の妊産婦は9%のみにとどまり、母子感染による子どもの感染 の増加が懸念されている。
⑤鳥インフルエンザ
インドネシアは世界で最も多いヒト感染症例と死亡例を報告しており、20 14年12月までの累計は、確定診断数197例、うち死亡165例で、致死率 が約84%である。世界の死亡症例数の半数近くを占めているほか、致死 率も世界全体の60%に比較して高い。特に地方での住民や医療関係者の 知識不足もあり、早期診断と適切な対応能力の強化が課題である。
規定されているワクチンを全部接種した子どもは全体の86.9%(2014年)
まで到達した。ポリオは、2001年より発生が確認されず撲滅されたかに思われ たが、2005年には再興し349例が報告された。その後は、2006年1月の最 後の患者より現在までポリオの発生は確認されていない。
5)
保健医療サービス
(1)保健予算
保健予算のGDPに対する割合は2009年に2.1%だったものが2014年は 2.9%に達したが、他の多くのASEAN諸国が4%を超えているのに対して依然 低い。
(2)保健人材
インドネシアの医療関係者には、医師(専門医、総合医)、歯科医師、薬剤師、
助産師、看護師、栄養士、歯科衛生士、理学療法士、公衆衛生士、放射線技師、
臨床検査技師、作業療法士などの職種がある。以前は医師を含め、これらの職 種に対しては日本のような国家試験制度や免許制度はなく、大学や専門学校を 卒業した時点で資格を取得したことになっていたが、2011年の大臣令において、
全ての保健人材に能力試験(Competency Test)の合格を義務付け、その合格 証(Competency certificate)を5年ごとに更新しなければならないと規定した。合 格証更新にあたっては、継続教育への参加が2012年から義務化された。イン ドネシアにおける保健人材の目標指数は、人口10万人あたり専門医(10人)、
一般開業医(40人)、助産師(100人)、看護師(158人)であるが、2014年時 点の達成状況は、それぞれ専門医(18.64)、一般開業医(16.18人)、助産 師(49.56人)、看護師(94.07人)となっている。
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(3)医療施設
2014年の統計では、全国に国公立病院(軍病院なども含む)が1,599施設、
私立病院が807施設で、私立病院の多くはジャワ島に集中している。
保健所(Puskesmas)は第一次医療施設として位置付けられ、多くは医師が常 駐しコミュニティーと密着して基礎的な医療サービスを提供している。全国で9,
731の保健所があり、人口3万人に対して平均1.16施設である。
1.4.4-図1 インドネシアの医療施設特徴
第三次医療施設 国立病院
第二次医療施設 州立又は県/市立病院
第一次医療施設 保健所(Puskesmas)
コミュニティー運営の 簡易医療施設
保健所支所(Pustu)
村保健ポスト(Poskedes)
統合保健ポスト
(Posyandu、Posbindu)
地域助産所(Polindes)
コミュニティーレベルでは、コミュニティー運営の保健医療施設があるのがイン ドネシアの大きな特徴である(1.4.4-図1)。村保健ポスト(Puskesdes)は基礎 保健サービスや災害や緊急への対応準備など設定された基準の保健サービス インフラを備えたヘルスポストで、2006年から推進された Alert Village(Desa Siaga)戦略により設置が促進されている。統合保健ポスト(Posyandu)は村落レ ベルでコミュニティーが運営する一つの簡易保健施設で、母子保健や下痢対策 などの優先課題に対して、「Kader」と呼ばれるコミュニティーのボランティアが活 動の中心となって保健医療サービスを提供している。2014年には全国で289,
635施設(村平均3.42施設)のPosyanduがある。また、地域助産所(Polindes)
では、分娩や予防接種などの母子保健サービスを提供している。現在保健省は 保健所やコミュニティーの保健医施設の有効活用・活性化を図っている。
●参考文献・ホームページ
○ WHO World Health Statistics 2016
○ インドネシア保健省 Indonesia Country Profile 2014
○ WHO Global tuberculosis report 2016
○ WHO Website (http://www.who.int)