16. 全国地震観測データ流通ネットワーク
ネットワークに対する要件としては、どのような点が挙げられますか。
鶴岡氏:このネットワークは全国の地震研究のインフラですし、24 時間・365 日観測 データが流れ続けています。それだけに、「止まらないネットワーク」であることが、非 常に重要なポイントです。もしデータが取れなかったりしたら、後から解析を行うこ ともできませんしね。ちなみに、各拠点に設置する地震データ集配信サーバなどの機 器については、まず我々のところで十分なテストを行ってから導入しています。
JDXnet を流れる観測データは、どのような形で活用されているのですか。
鷹野氏:現在 JDXnetでは、全国約1,300カ所に上る観測点の地震データが流通しており、各大学・機関では、これ らのデータをリアルタイムで研究に活用することができます。また、「リアルタイムである必要はないが、後から解析 を行いたい」といったニーズに備えて、各地域の地震データをアーカイブした研究者向けWebサイトも、全国 9 大学 で公開しています。たとえば、岩手・宮城内陸地震のデータを解析したいと思ったら、東北大学の Web サイトへ行 けばデータを入手し研究することができます。さらに一般向けには、防災科研の Hi-net の Web サイトでも利用可 能ですし、気象庁では、地震の震源・マグニチュードを決定する際に、JDXnet のすべての機関の地震データを使用 しています。このように、様々な形での活用が行われています。
鶴岡氏:たとえば、私の場合は、JDXnetを利用して、地震のメカニズムをリアルタイムで決定する研究を行っていま す。地震が発生するメカニズムには、逆断層型や正断層型や横ずれ型など、いくつかの種類がありますが、これら のどの種類で発生した地震なのかを、素早く決定する研究をしているわけです。もちろん、オフラインのデータを 使ってもメカニズムは決定できますが、その都度必要なデータを自分で探したり、集めたりしなくてはならず、時間 がかかってしまいます。その点、観測データをリアルタイムに得られれば、迅速かつ効率的にメカニズムを決定でき るというわけです。JDXnet のような仕組みがあることで、研究者の意識やモチベーションも高まると思います。
リアルタイム地動モニター(地震観測データの監視)
地震発生時の地震波動伝播の例
SINET3 の L2VPN サービスも新たに導入されましたね。
鷹野氏:先にも話があった通り、このネットワークには非常に高い信頼性が要求されます。SINET3 の基幹ネット ワーク図を見ると高い信頼性が期待できたので、SINET3 の L2VPN サービスを利用して JDXnet のデータ交換 網を構築したいと思いました。また JGN2 も利用して、通信経路の二重化を図ることにしました。これにより、もし 片方に何らかの回線障害が発生したとしても、データを止めることなく流し続けられるようになりました。
また、SINET3 のメリットとして、ネットワークのカバーエリアが広いという点が挙げられます。基本的にデータ交 換はブロードキャストで行っていますが、中には広域 L2 網に直接参加できない大学もあります。そうした場合は、
拠点となる大学とフレッツ網でつないで、データを中継してもらっているんですね。その点、SINET3 は全国の大 学をカバーしていますので、今までよりも多くの大学が直接広域 L2 網に参加することができます。さらに、「自前 では観測点は持っていないが、観測データをリアルタイムで活用したい」という大学に対しても、SINET3 経由で データを提供することができます。日本の地震研究を活性化していく上で、こうした環境が実現できた意義は非常 に大きいと言えます。
今後の地震研究にも大いに役立ちそうですね。
鶴岡氏:現在 JDXnet には観測データのみを流していますが、将来的にはそれ以外の情報、たとえば地震データ を加工したデータや、そこから得られた様々な情報なども流せるようにしていきたいですね。そうすれば、今とは 違った形での情報活用が実現していくことと思います。
鷹野氏:私は地震観測データ流通の仕組みを長年研究していますが、今回のような環境が実現したことで、また 新たな可能性が拡がったと感じています。もっとも、こうした仕組みをさらに発展させていくためには、データだけ でなく「人」のネットワークも欠かせません。今後引き続き、研究者のネットワーク作りにも、力を注いでいきたいと 思います。
ありがとうございました。