40. 大学業務を速やかに回復させるIT-BCP基幹システム
長谷部氏:今回の取り組みのもう一つの特徴は、単なる「IT-BCP 基幹システム」の構築プロジェクトではなく、
両センターの教職員が学びあい育つ場としての側面もあるという点です。両センターではそれぞれ先進的な試みを 行っていますので、人の交流を通してお互いの知見やノウハウを交換できれば大きな財産になります。実際に双方の センターで職員を派遣し合うといったことも行っており、担当者からは「自分たちの組織や業務の進め方を見つめ なおすいい機会になった」「今回の活動を通して異なる組織の人とも何でも相談し合える関係が築けた」といった 感想が上がっています。
ネットワークには SINET の L2VPN サービスを利用されていますね。
志村氏:今回のプロジェクトで大きな課題となったのが、大学の重要な情報資産を いかに脅威に晒すことなく高速に転送するかという点です。インターネットは論外で すし、VPN を使うにしてもVPN ルータを公開するようなことは避けたい。そこで注 目したのが、SINET の L2VPN サービスです。これならデータ転送に必要な VPN 環境を SINET 側で作ってもらえる上に、我々の方で何らかの機器などを用意する 必要もありません。しかも帯域も十分なので、他の業務に影響を与えることなくデー タ転送が行えます。今回のプロジェクトについては、SINET の L2VPN サービスが あったからこそ実現できたと言っても過言ではないでしょう。
具体的にはどのような形でバックアップを実施されているのですか。
三原氏:両大学に遠隔レプリケーション機能を装備したバックアップ用ストレージを 配置し、その機能を利用して昼夜にデータを転送しています。大学運営に関わる多く の重要なシステム群がバックアップ対象となっていますが、ストレージの重複排除機 能や圧縮機能も有効に働いているおかげで、レプリケーションの時間もそれほど長 くは掛かっていません。また、ネットワーク上の特徴としては、両大学それぞれ 1 本 ずつ、合計 2 本の L2VPN を引いて別々に運用管理を行っている点が挙げられます。
これは責任分界点を明確にし、情報セキュリティの確保や人為ミスによるトラブル防 止などを図るのが狙いです。
宇都宮大学 - 横浜国立大学間システム概要図
今回のプロジェクトの評価と SINET への期待についても伺えますか。
永井氏:重要な情報資産を保護する取組みを両大学で協調して円滑に進められたことは貴重な経験になったと 感じています。もっとも、取組みの活動は終わったわけではなく、継続的な改善を続けることが肝要と考えてい ます。今回は 2 大学間での取り組みですが、今後、もし拡大した際には現構成がベストとは限りません。将来的に はネットワーク上のより良いロケーション等を活用することが望ましいということもあります。本学ではこれまでも NII 様から技術面、制度面で貴重なご支援を頂き大変感謝しています。今後、BCP についても私たちを支えて頂 けると嬉しく、期待しております。
長谷部氏:私は経済学が専門ですが、今回のような高速でセキュアな「IT-BCP 基幹システム」の構築が実現でき たということは、大学や研究機関のマネジメントを考える上でも一つの先進事例になると考えています。ただし、
今回はBCP が主な目的ですが、大学内には教育研究に関わる重要な情報資産も数多く存在しています。現在はそ れぞれの研究者が自分で管理していますが、今後はこうしたものの保全をどうするかということも大きな課題に なってくるでしょう。膨大な研究データのバックアップを大学が個別に実施するのは大変な面もありますので、NII や SINET のサービスに期待するところは非常に大きいですね。
ありがとうございました。
今回取材を受けていただいた、宇都宮大学、横浜国立大学の皆様