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36. 日本およびアジア地域における胎児医療の発展に、

胎児手術には普通の手術とは異なる機器が必要になるのですか。

千葉氏:大人の場合であれば、患者さんに手術台に横になってもらって手術をすることができます。ところが胎児 はお母さんの子宮の中で羊水に浮いていますので、とても同じように手術することはできません。しかも開腹手術 では母体にも胎児にもかなりの負担が掛かりますから、内視鏡などを利用してできるだけ負担を減らしたい。とこ ろが胎児医療先進国のアメリカにおいても、こうした手術の際には一般向けの機器を改造して使用しているのが 実情なのです。もし胎児手術を前提に作られた専用の医療機器があれば、こうした現状を大きく変えることができ ます。そこで我々としても、研究開発を積極的に推進しているのです。

 ちなみに、胎児手術向け機器の開発には、もう一つ大きな意義があります。それは、この技術が大人の治療にも 活かせるということです。たとえば、一般的な内視鏡の直径は 10mmですが、胎児手術向けの場合は 3 〜 5mmと 非常に細い。これを他の手術に利用すれば、大人の患者さんも楽に手術が受けられますよね。特に日本には、こう した精密機器の分野で世界をリードできるだけの高い技術がありますから、日本の医療機器産業の発展にも貢 献できると考えています。

今年 9 月に神奈川県・湘南国際村で開催された国際胎児医療・外科学会 (IFMSS 2010) では、ネットワー クを利用した国際遠隔カンファレンスに取り組まれました。その狙いについてお聞かせ頂けますか。

千葉氏:IFMSS はこれまで米国と欧州でしか開催されたことがありませんでしたが、欧米の理事から今度は日本 で開催してはどうかというお話を頂きました。そこで考えたのが、せっかく日本で開催するのなら、アジア諸国から の参加をもっと促したいということです。IFMSS は約 30 年に及ぶ歴史があるにも関わらず、アジアからの参加者 は未だに非常に少ない。その点、日本で開催される学会に参加してもらえれば、胎児医療をアジア地域に広めてい くための大きな契機になります。

 とはいえ、日本まで足を運ぶのは難しいという方々も多いので、目を付けたのがネットワークを利用した国際遠 隔医療です。ちょうど九大病院の清水周次先生が、内視鏡分野におけるアジアとの国際遠隔医療を推進しておら れましたので、ご協力をお願いしてカンファレンスの実施に踏み切りました。これならアジア各国の医療関係者も、

自国に居ながらにして会議に参加できますからね。

遠隔胎児医療に関する研究 : ネットワーク構成図

具体的にはどのような形でカンファレンスを行われたのですか。

千葉氏:会場となった湘南国際村センターと、韓国、台湾、シンガポール、ベトナム、フィリピン、中国の 6 カ国をネッ トワークで結び、各国からの発表とディスカッションを実施しました。最初はうまくいくか不安もあったのですが、

結果的にはまったく問題なかったですね。各国からの映像や音声もクリアで、スムーズに進行することができまし た。ディスカッションでは、会場内に居ない参加者同士、たとえば香港とフィリピンの参加者が議論するといった場 面もありましたが、こうしたことができるのも国際遠隔医療ならではでしょう。今回のような試みは IFMSS として も初めてだったので、欧米からの参加者にとっても非常に新鮮に映ったようです。

回線には SINET の L1 オンデマンドサービスを利用されていますね。

小林氏:今回のカンファレンスでは、湘南国際村とテレビ会議システムが設置されて いる九州大学 情報基盤研究開発センターとを結ぶ必要がありました。そこでまず 考えたのが、この間の回線には SINETを使うしかないだろうということです。これだ けの距離を結ぶとなると、民間キャリアのサービスでは大変な費用が掛かってしまい ますからね。もっとも、湘南国際村に SINETのノードがあるわけではないので、東京 までは NTT コミュニケーションズの専用線でつなぎ、そこから SINET を経て九大 へ接続。さらに九大から各国へは、SINET、APAN 経由で接続するという形を採 用しました。

 また、もう一つポイントとなったのが、SINET の L1 オンデマンドサービスです。今

回のカンファレンスでは DVTSを利用した動画配信を行いますので、帯域と品質の確保が非常に重要になります。

その点、L1 オンデマンドサービスを利用すれば、他のトラフィックに影響されることなく必要な品質・帯域を確保でき ます。実際の作業では多少トラブルもありましたが、九大 情報基盤研究センターの岡村 耕二先生のご協力のお かげで無事解決することができました。今回のような遠隔カンファレンスの需要は今後も国内外を問わず高まってい くことと思いますが、そこでは SINET のような学術ネットワークの存在が非常に重要であると感じましたね。

最後に IFMSS 2010 の成果、ならびに今後の展望について伺えますか。

千葉氏:アジア全体に胎児医療を拡げていくきっかけになったという意味で、非常に大きな意義があったと考え ています。IFMSS 2010 の終了後、今回参加してくれた 6 カ国の方々に、また同じような形で遠隔医療を行わな いかとメールを送ってみたのですが、全員から是非参加したいとの返事を頂きました。清水先生の学会とも連携し て、アジア地域における胎児医療学会を毎年開催したいと考えています。

 また、今後のもう一つのテーマとして注目しているのが、動画映像のスーパーハイビジョン化です。実は IFMSS2010 でも、NHK によるスーパーハイビジョンの展示を行ったのですが、この技術は遠隔診断、遠隔治療を 発展させていく上で重要なカギとなります。もちろん、そうなるとデータ容量の大容量化もさらに進むことになりま すので、SINET の進化と発展にも大いに期待しています。

ありがとうございました。

関連 URL 国立成育医療研究センター 臨床研究センター http://www.ncchd.go.jp/clinical.php

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