新 規 事 例
50. 研究用情報基盤のクラウド化
今回、センターの情報基盤のクラウド化を実施されましたが、その背景について伺いたいのですが。
高田氏:当センターでは、共同研究を円滑に進めるために、Web サイトやグループ ウェア、認証用 ActiveDirectory、メールなどのサービスを独自に提供しています。し かし、以前はこれらのサービスを支える業務サーバ群を自前で構築・運用していたた め、日々の運用管理や障害への対応などが重い負担となっていました。
システムを持つ以上誰かが管理を行わなくてはなりませんが、当センターには専門 の技術職員が居るわけではありません。そこで、ネットワークやサーバに関する知識 を持つ研究員がボランティアベースで作業にあたっていたのです。とはいえ、そもそ も研究員の本分はあくまでも研究ですので、あまりこうしたことに時間を取られるの は望ましい状況とは言えません。
武井氏:それと、もう一つ大きかったのがコストの問題です。物理サーバをセンター内に置いて 24 時間体制で動 かすとなると、冷却のための空調費用も馬鹿になりません。また、東南海地震など大規模自然災害への備えにつ いても考える必要がありましたので、業務サーバ群のクラウド化によってこれらの問題を解消しようと考えたの です。
クラウド化にあたって課題となった点などはありましたか。
武井氏:当センターでは様々な先端研究を行っていますので、学外のパブリッククラウドなどにそのままシステム を置くのはセキュリティ/機密保護の面で難しい。また、当センターは名古屋大学の研究施設として情報発信など を行っていますので、学外のサービスを利用することで、大学のドメイン名が使えなくなってしまうのも困ります。
さらに、もう一つの不安要素として、事業者のサービス方針が当センターの ICT 活用ポリシーと合わなくなった 場合にどうするかという問題がありました。事業者からは「アプリケーションも含めて全部サービス利用の形態に すればどうか」という提案ももらいましたが、もしかすると将来またセンター内にシステムを戻すという判断がある かもしれません。そうした時に簡単に戻せるのかと聞くと、そんな事態は想定していないと言われてしまうわけで す。こうした点がネックになり、単純な商用クラウド利用は難しいかなという印象でした。
クラウドサービス導入前のネットワーク構成
そこで SINETクラウドサービスを導入されたわけですね。
武井氏:そういうことです。ちょうど SINET の説明会に出席した時に、SINET クラウドサービスについての紹介 がありました。これなら、クラウド側にサーバを持って行ったとしても、論理的にはセンター内に置いていた時と同 様の運用が実現できます。Web サイトやメールのドメイン名も変わりませんし、ネットワークについても学内 LAN の延長として考えれば良い。
ユーザー環境から見れば今までと何も変わらない上に、懸案であったサーバ/ネットワークの運用管理負担か らも解放されます。まさに当センターにとっては渡りに船のサービスだったため、早速 SINET クラウドサービスの 採用を決定しました。
現在は NTT コミュニケーションズのサービス上で各種業務サーバを稼働させ、当センター内のスイッチ経由で SINET を経てアクセスする構成にしています。
クラウドサービス導入後のネットワーク構成
導入効果についてはいかがでしょうか。
高田氏:ユーザー管理などの通常業務は変わりませんが、システムの障害対応などは格段に減少しましたね。以 前は、建物の法定設備点検で年二回の停電がありましたが、これが終わってシステムを立ち上げる際にしばしばト ラブルが発生し、その原因究明と復旧作業に半日近く費やすこともありました。もちろん、クラウド化を行った現在 では、こうしたトラブルに悩まされることもなくなっています。
また、システム移行についても非常にスムーズでしたね。今回はクラウド側に新規にサーバを立ち上げてデータ だけを移行していますが、作業期間的には 2、3 日くらいしか掛かっていません。ちなみに当センターでは、2015 年 5 月に別の建物への引越を予定していますが、その際の対応も容易になることと見込んでいます。
武井氏:コスト削減の面でも非常に大きな効果がありました。以前は気温の上昇する夏場などにはサーバ室の空 調機器がフルパワーで稼働していましたが、物理サーバがなくなったことでこれも止められるようになりました。こ の結果 2014 年度のデータでは、以前と比較して年間約 100 万円もの電気代が削減できています。
それは凄いですね。
武井氏:こうしたことが実現できたのも、SINETという共通の学術ネットワーク基盤があればこそです。我々のよ うな大学の研究機関が、自前で商用クラウドに L2 接続するというのは様々な面で非常にハードルが高かった。
その点、SINET を利用することで、望み通りのクラウド化が実現できましたし、大学の情報基盤センターも積極 的に協力してくれました。この点には大いに感謝しています。
最後に今後の展望についても伺えますか。
高田氏:当センターでは、個々の教育研究プロジェクトに応じてサーバを立ち上げるケースもありますので、追加や 削除が柔軟に行えるクラウドのメリットを最大限に活かしていきたいですね。
また、企業だけでなく他大学との共同研究などもありますので、こうしたところでもSINETのサービスを活用し ていければと思います。
ありがとうございました。