さらに今回、基幹サービスサーバのクラウド化にも踏み切られました。これにはどのような背景があったので しょうか。
多田氏:本学では平成 20 年からキャンパスの耐震改修に着手しましたが、この時に工事に起因する停電が多 発し、システム停止を余儀なくされるケースがありました。現在ではメール/ Web が教職員や学生の活動に欠か せない重要なインフラになっていますので、たとえ一時的とは言え、これが使えなくなることに対する苦情は相 当なものでした。センターとしても、自家発電設備導入などの対策を考えてみたものの、コスト的に見合うもので はありません。そんな時に思い出したのが、SINET4 の説明会で聞いた商用データセンタとの接続サービスで す。学外の施設に置いたサーバ群に SINET 経由で接続できれば、停電によるシステム停止の問題を解消できま すし、学内のサーバ/ネットワークとも一体的な運用が行えます。
秋山氏:外部データセンタを利用してクラウドを構築する場合には、ネットワークに掛かる費用が一番大きな問題 になります。サーバやネットワーク機器の設置費用はなんとか捻出できても、ネットワークに掛かる費用はそうもい きません。最近では、大学においても BCP( 事業継続計画 ) の策定が大きな課題になっていますが、安全性を高 めようとして遠隔地のセンタを採用すれば、それだけネットワークコストも増大してしまいます。その点、本学・デー タセンタ間のネットワークに SINET が利用できれば、こうした問題に悩まされる心配はありません。我々にとって SINET の商用データセンタ接続は、まさに「渡りに船」のサービスだったのです。
データセンタ
東日本大震災以降は、大学クラウドを BCP に活用しようという機運も高まっていますね。
多田氏:もともと本学では、キャンパスの停電対策がクラウド化に踏み切るきっかけでしたが、東日本大震災では 電話よりもメールやWeb、SNSなどが情報収集・発信手段として大きな役割を果たしました。こうした事例を見聞き していると、大規模災害時においても学内ネットワークが生き続けることの重要性を改めて強く感じましたね。本 学でも東海・南海地震への備えが大きな課題ですので、今回構築した「Kyo2 Cloud Center」を有効に活用してい きたいと考えています。
現在はどのような形で Kyo2 Cloud Center を運用されているのですか。
秋山氏:メールサーバやWebサーバなどの業務サーバのほか、スパム対策サーバやDNS サーバなどのインター ネット系サーバを、350km 以上離れた遠隔地のデータセンタに設置しています。また、これらのサーバ群は災害 時の待機用というわけではなく、普段の業務にそのまま使用しています。せっかくコストを掛けて導入したわけ ですし、データセンタの方が電源などの設備もしっかりしていますので、平時からデータセンタ側をメインのシス テムとして使っているわけです。
Web/メールサーバ
データセンタはキャンパスから相当遠い場所にありますが、レスポンスなどに問題はないのですか。
秋山氏:ping を打てば遅延が少し多いかなと感じるかも知れませんが、日常業務でメールや Web を使用し ている分には特に問題ありませんね。SINET のネットワークも非常に高速で安定していますから、実用上支 障が出るようなことは皆無です。学内のユーザーの中には、サーバが 350km 先のデータセンタに移動したと は全く気付いていない人も多いと思いますよ ( 笑 )。大学・データセンタ間でファイルサーバの遠隔バックアッ プなども行っていますが、こちらも問題なく運用が行えています。ちなみに今回の構築作業では VLAN の設 定で少々悩んだ部分があったのですが、SINET 利用推進室の支援のおかげでスムーズに解決できました。
ネットワーク構成図
今回の取り組みの成果をどのように考えておられますか。
多田氏:まず大きいのが、万一の大規模災害時にも、メールや Web が止まらない環境が実現できた点ですね。学 内ユーザーに対しては以前のように停電などで迷惑を掛けることもありませんし、大学の Web サイトも 24 時間・
365 日体制で対外的な情報発信が行えます。また、サービスサーバ群をデータセンタへ持っていったことで、学内 サーバルームの消費電力削減や空調温度設定の見直しなど、省エネ面での効果も実現できました。さらに今後は、
学内向けの新たなサービスを提供するインフラとしても、クラウド環境を活用していきたい。ICT の難しさを感じ させることなく、教員や学生の利便性を高められるようなサービスが提供できればと思います。
ありがとうございました。